【時視各角】「韓国防波堤論」は日本に通用しない(中央日報)
最近、韓日間の外交で見られる悲喜劇は最悪の両国関係を赤裸々に表している。東京・ソウルに先日それぞれ赴任した姜昌一(カン・チャンイル)、相星孝一両新大使ともに相手国の首脳どころか外交トップにも会っていない。慣例上、あり得ないことだ。菅政権が慰安婦・強制徴用問題に対する不満から姜大使の外相・首相面談を先送りすると、韓国も同じ態度を見せた結果だ。
(中略)
さらに韓国の安全保障上の重要性を見る日本の目が変わった。過去の日本は韓国を北朝鮮の脅威を防ぐ「防波堤」と考えていた。1980年代に盧信永(ノ・シンヨン)元首相が出した「防波堤論」は、中曽根政権が借款40億ドルを出す力になった。2年前の韓日軍事情報包括保護協定廃棄問題で韓日関係が歪むと、文大統領が防波堤論を取り出したりもした。
しかし最近はこの論理が色あせている。昨年末、日本ではリチャード・ローレス元米国防副次官の主張が話題になった。ローレス氏は韓半島(朝鮮半島)の未来について3つのシナリオを提示した。(1)核保有国として振る舞う北朝鮮に韓国が政治的に従属する(2)韓国が韓米同盟から離れて独自の核武装を追求する(3)南北が緩い連邦制の形態に進む--という見方だ。いずれにしても日本は韓半島から核の脅威を受けることになり、中距離核戦争力(INF)が必要というのが彼の結論だった。要するに、韓国という防波堤がなくなるため、独自の抑止能力を備えるべきということだ。
このように最近の日本では韓国を防波堤と見る雰囲気は消えている。その代わり米国・オーストラリア・インドとの4カ国協議体クアッド(QUAD)で脅威に対応しようという声が高まっている。こうした情勢を把握できず米国への圧力という古い手法を使っても通用するはずがない。
(引用ここまで)
ムン・ジェイン大統領による「韓国防波堤論」は
一昨年の11月、GSOMIA破棄宣言を撤回する寸前になってから出たものでした。
「韓国はGDPの2.5%もの国防費を費やしているのに、日本のそれは1%にもならない。韓国が日本の安保に貢献しているということ」とか言い出したものでして。
「韓国が北朝鮮、中国の防波堤となっているのだから、日本はありがたく思え」というものでした。
いまにして思うと、あの時点でかなり韓国は追い詰められていたのでしょうね。
異常なくらいに唐突な発言でしたから。
ほとんど断末魔に近いものがあったのではないかと思われます。
そんな中で出てきた発言だからこそ、本音に近いものがあるのではないかとも思われるのですけどね。
記事中にもあるようにこの文脈で全斗煥政権は日本から1兆円規模の援助をぶんどっていったという経緯があります。80年代のこと。
この経緯については元駐韓日本大使の小倉和夫氏による「秘録・日韓1兆円資金」に詳しいので興味があればどうぞ。
このように韓国にはいまだに「韓国が防波堤として日本の重荷を肩替わりしている」という考えかたがあるのです。根本的な視点として、ですね。
ただ、現在の韓国の立ち位置というのは80年代と大きく異なっています。
最大の違いは「我、防波堤ぞ」と言っている韓国が、中国におもねっており、北朝鮮には秋風を送りまくっていてまともな国家としては成り立っていないこと。
米韓合同軍事演習すら拒絶していて、「北朝鮮には確固たる非核化の意思がある」って繰り返している。
IAEAからは「北朝鮮は核施設を稼働している」という報告が今日、出たばかりなのですけどね。
北朝鮮 核施設の稼働継続=IAEA(聯合ニュース)
こんな北朝鮮に対して、韓国がムン・ジェイン政権がやっていることは無駄な延命行為でしかない。
日米から見れば足を引っ張っている存在と化しているのですよ。
そんなこんなしている間に、日本はインド太平洋戦略の中枢を担うようになり、クアッドの提唱者として重用されるようになっている。
もはや「韓国抜きでの戦略」を考える時期になっているのです。
地政学的に満点に近い日米韓の三角同盟での対応というのも、アメリカとしては捨てがたいのでしょうけどね。
アメリカもクアッドに傾斜しつつある。
韓国がそこに「クアッドプラス」として加わるかどうか、純粋に韓国の意向を尊重する=来ないのなら別にそれでもいい、という態度になりつつある。
GSOMIA破棄宣言について彼我の戦力差を見誤った上での戦いだったという話を先日しましたが。
アメリカがいつまでも韓国を重く見てくれるかどうか。
太平洋戦争終結から76年、朝鮮戦争休戦から68年。
国家の大戦略が変更されるには充分な時間です。