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カテゴリ:北朝鮮関連の記事一覧

元在韓米軍司令「2017年に北朝鮮との戦争はあり得ていた」と証言……たまたま起きなかった、というだけだよなぁ……

北朝鮮情勢緊迫の17年「戦争起き得た」 元米軍司令官(朝日新聞)
 北朝鮮情勢が緊迫した2017年、米韓連合軍の指揮もとっていたビンセント・ブルックス前在韓米軍司令官(元陸軍大将)が朝日新聞のインタビューに応じた。「北朝鮮の読み違えによって戦争は起き得た」と、一触即発の危機を振り返りつつ、米朝が今後も対話路線を続けることの重要性を訴えた。

――17年秋は北朝鮮情勢が緊迫した。

 「17年から18年初頭は米韓合同軍事演習時に米軍3万4千人が韓国に集結し、韓国軍62万人も合わせて即応態勢を整えていた。我々は当時、すべての軍事行動の選択肢を検討していた。先制攻撃や単独攻撃が実際に必要かどうかは別として、どちらの選択肢も検討する必要はあった」

 ――戦争の可能性をどうみていたか?

 「18年2月には韓国で平昌冬季五輪があり、多くの国が関心を寄せていた。各国大使らに問われた際は『我々の目的は戦争ではない。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の考え方を変え、外交的な路線を定着させるのが目的だ』と答えつつ、『この現実と深刻さを過小評価してはいけない。意図してではなく、読み違えを通じて戦争は起き得る』と率直に伝えていた」 (中略)

 ――退避行動が戦争の引き金を引くと?

 「我々は(戦争に)非常に近い状況にあった。どちらも望んでいなくても、読み違えによって容易に戦争に至る可能性があり、熟考して行動する必要があった」
(引用ここまで)


 2017年の朝鮮半島事態では戦争になる可能性が充分にあった、との話。
 この記事以外もいろいろとビンセント・ブルックス氏のインタビューが出ているので、興味があれば図書館等でこの日の朝日新聞をチェックするのもよいかと思います。

 以前にマクマスター元特別補佐官、そして自衛隊の前統合幕僚長の河野克俊氏がそれぞれ「2017年に軍事オプションを取る可能性はあった」との話をしていました。
 ついで当時の在韓米軍司令官であったビンセント・ブルックス氏が「戦争は起き得ていた」と証言。

 2017年4月にトランプ大統領が「数千人が死ぬとしたら朝鮮半島でだ」と宣言してましたね。
 10月には朝鮮半島周辺に3隻の空母が集結してました。
 楽韓Webでも12月に「北朝鮮と戦争に向かう4つの理由」というエントリを書きました。

 結果としては戦争は勃発せず、平昌冬季オリンピックでの合同チームや共同入場をきっかけとして対話路線に向かったわけですが。
 当時のアメリカ政府高官、自衛隊トップ、在韓米軍トップがそれぞれ「戦争は起きえていた」という証言を別々にしている以上、当時の機運はそういうものだったのでしょう。
 たまたまサイコロの目が「開戦せず」というほうに転がっただけ。

 当時、楽韓さんは「こりゃ充分に開戦の可能性があるな」と感じていましたし、そういう主旨のエントリも書いていました。
 「アメリカ人は韓国に個人資産があるのであれば、移動させるべきだ」というネルソンリポートを扱ったエントリではその主旨を肯定的に見ています。
 その予想は半ば以上は当たっていた、といえるでしょうね。
 いや、負け惜しみではなく。
 どちらかというと「検算」かなぁ。

 合っていた部分はどこなのか、間違っていたのはどこなのか。そういう部分のチェックですね。
 推論なしで結論が当たったとか当たらないとか言っても、この場合は意味がないので。
 たとえば韓国政府がGSOMIA破棄をすることも、そしてよもやそれを撤回することも楽韓Webでは読めていませんでしたが。
 あれを読めるほうがおかしい。

 同志社大学の浅羽教授が年末のAbemaTVで「それでも破棄することによって生じる利益がなんなのかまで読み切って結論を出すべきだった」と語っていましたが、いやあればっかりは無理。
 もはやそういった合理的とは思えない結論に至る可能性がある政府である、というくらいの前提はあったとしても。
 それでも合理的な思考をすればGSOMIA破棄は読めませんわ。
 で、さらにGSOMIA破棄を撤回するとも読めないでしょう。さすがに前日からの様子はおかしかったのでちらっとそれをにじませる発言はしましたが……。
 ま、そんなわけで2017年当時にどう思っていたのか、そしてその言い訳でした。

韓国政府・与党がハリス駐韓米国大使を袋だたき……「内政干渉だ」「南北関係進展が制裁対象になるとはなにごとだ」「朝鮮総督のつもりか」……米韓関係は新年から全開です

青瓦台・統一部・与党が駐韓米国大使たたき…「内政干渉」「朝鮮総督」(中央日報)
制裁違反話し合う韓米作業部会に韓国高官「それを作ったことが最大の敗着」(朝鮮日報)
与党・共に民主党の宋永吉(ソン・ヨンギル)議員はこの日朝のラジオ番組のインタビューでハリス大使を「朝鮮総督」に例えた。「意見の表明はよいが、我々が大使の言葉に従うのなら大使は朝鮮総督なのか」と述べながらだ。宋議員は「大使としての位置にふさわしくない過激な発言」とし「大使の職分に合わせて言葉に慎重になるべきではと思う」と話した。ソル・フン最高委員も拡大幹部会議で「ハリス大使がわが政府の南北関係進展構想に制裁の基準を突きつけたことに深い遺憾の意を表す」とし「内政干渉のような発言は同盟関係にもプラスにならない」と指摘した。

統一部のイ・サンミン報道官は午前の記者会見で「対北政策は大韓民国の主権に該当するという点をもう一度強調しておく」とし「個別観光は対北制裁に抵触しないだけに、南北協力と民間交流拡大レベルでさまざまな案を検討している」と述べた。

終止符は青瓦台が打った。青瓦台関係者はこの日午後、「ハリス大使の発言に対する青瓦台の立場は何か」という質問に対し、「大使が駐在国の大統領の発言に対してメディアに公開的に言及したのは非常に不適切だ」とし「南北協力に関する部分はわが政府が決める事案」と答えた。この関係者は「米国とは常に緊密に協調、協議している」とし「政府は南北関係の実質的な進展と速やかな米朝対話のために持続的に努力していく」と述べた。
(引用ここまで)

 南北協力事業をめぐる韓米政府の確執の中心には、2018年11月に発足した「韓米ワーキング・グループ」があると17日、伝えられた。青瓦台や統一部などはワーキング・グループ会議を開かず、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が新年の辞で言及した南北協力事業を推進したがっているが、米政府はワーキング・グループを通じて米国と協議しなければならないと明言しているものだ。ハリー・ハリス駐韓米国大使が前日、個別の観光推進などについて「制裁を触発する誤解を避けるため、ワーキング・グループを通した方がいい」と発言したのは、その延長線上にある。 (中略)

 それにもかかわらず、韓米ワーキング・グループで南北協力事業の制裁違反有無を議論することについて、青瓦台などの反感はより強まっていったという。文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一・外交・安保特別補佐官は昨年9月、「北が私たちを信じていなから、まったく会話にならない状況だ。昨年作った韓米ワーキング・グループは南北が推進することを米国に告げ口し、事実上米国で承認を受けることなので、北朝鮮は理解できない」と語った。韓国政府当局者も先日、私的な場で、「ワーキング・グループがあるから何もできない」と言った。「青瓦台が考える最大の敗着はワーキング・グループを作ったことだ」という声さえ上がっている。

 しかし、韓国政府が一方的に突っ走ることを懸念している米国は「スピードの出し過ぎを食い止める装置」にあたるワーキング・グループの存続を強く要求しているとのことだ。
(引用ここまで)


 14日にあったムン・ジェインの記者会見で「南北関係は我々の問題だ」「経済協力をやっていく」と発言がありました。
 具体的には開城工業団地の再開、金剛山への個人による観光といったものが挙げられています。
 で、それに対して16日ハリス駐韓アメリカ大使が「南北経済協力をするのであれば、米韓のワーキンググループを通じて制裁違反になるかどうかを協議すべきだ」と発言。

 このワーキンググループは2018年の11月にアメリカからの要請で発足したものです。
 当初から「米韓のお互いが(対外的に)異なることを言わないようにするための機関」と定義されていたものでして。
 ポンペオ国務長官は「韓国の暴走を防ぐために作った」とまでは言わないものの、それを強く匂わせる言いかたをしていました。
 ワーキンググループ設立の「真の意味」を隠そうともしていませんでしたね。
 もうこの頃からすでに韓国の単独行動を監視する必要があると認識されていたということです。

 で、今回のハリス大使の言葉に対して与党の共に民主党、統一部、大統領府がそれぞれ不満を述べていると。
 与党の共に民主党所属の議員からは「ハリス大使の発言は内政干渉」「まるで朝鮮総督」といった発言が続いています。
 特に大統領府からは「ハリス大使の発言は不適切」「南北関係は我々の問題」と発言があり、反発の大きさが伺えますね。

 韓国としては引きこもり国家に戻ってしまった北朝鮮をなんとかして振り向かせたい。そのためには貢ぎ物が必要だということがよく分かっているのでしょう。
 それに対してアメリカとしては明白に効いている制裁を継続したい。
 特に同盟国である韓国に制裁破りをさせるわけにはいかないということで、ワーキンググループを活用したいと宣言している。

 韓国は「北朝鮮への個人観光であれば制裁に引っかからない」としていますが、それは安保理制裁決議に違反しないというだけ。
 ワームビア法でさらに柔軟に制裁をできるようになっているアメリカにとってはそうかもしれないし、そうでないかもしれない。
 こういった「伝家の宝刀」は抜くかも知れないし抜かないかも知れないという状況が一番怖い。
 こうなったら抜く、というのが分かればそこを避ける努力をされてしまいますからね。

 最近になってからよく楽韓さんは「ムン・ジェインは愚かだ」という話をしていますが、実は愚か者の突破力というのは侮れないのです。
 明らかに地雷が見えているのに、まっすぐに突っ走る可能性がありますからね……。
 アメリカとしてはそういった事態を避けるためにこそワーキンググループを作ったのだから、せいぜい活用させてもらおうというのが本音。

 ハリス大使の言葉が強くなっていっているのも当然で。
 それだけのことを韓国がやろうとしているということです。
 韓国人によるハリス大使個人への攻撃についてはまたもうひとつエントリを書くと思うので、そちらで。

国連特別報告者「韓国政府が脱北者を北朝鮮に送還した件を調査しようとしたらすべて拒絶された」……韓国政府の異常さをご覧ください

「韓国政府による北船員送還、国連で調査しようとしたが白紙に」(朝鮮日報)
 昨年11月初めに韓国政府が、亡命意思を表明した北朝鮮の船員2人をわずか三日で北朝鮮へ強制送還した件に関連し、国連のトーマス・オヘア・キンタナ北朝鮮人権特別報告官(写真)は「韓国政府が行ったことは明確に国際法と国際規範に背く」と語った。キンタナ報告官は9日、本紙の電話インタビューに応じ、「独立的調査(investigate)がなされて責任者が問責されるべき」だとしてこのように語った。

 またキンタナ報告官は、昨年11月末から12月初めに訪韓しての現場調査を行おうとしたが、韓国政府が「関連する当局者は全員ほかの日程がある」と難色を示した-と明かした。「韓国政府が調査の妨害のため協力しなかったとみているのか」という質問に対し、キンタナ報告官は「推測したくはない」と述べつつも「提起したい問題が多かったので、(非協力的態度は)遺憾だった」と答えた。さらにキンタナ報告官は「2016年に北朝鮮人権特別報告官になった後、毎年末に韓国を定期的に訪問していたが、こうしたこと(訪韓の白紙化)は初めて」と語った。

 韓国政府は、北朝鮮の船員は同僚16人を殺害した「凶悪犯」だという理由で強制送還決定を正当化した。しかしキンタナ報告官は「全ての人は、犯罪の嫌疑や犯罪行為とは関係なしに、虐待・不法拘禁されかねない国へ送還されてはならないという強制送還禁止原則(non-refoulement)が適用される」として、「(事件後)韓国政府に送った書簡でこの点を強く提起した」と語った。 (中略)

 その上で、キンタナ報告官は「韓国政府に送った書簡で、(船員らを)送還した理由、法的手続きなどを尋ねたが、韓国政府の回答は全く不十分だった」として、「どんな出来事があったのか韓国政府は明らかにせず、送還の理由や考慮したという事項も混乱していた」「(今年上半期に計画している)韓国訪問で、この事件を調査する司法府を訪問する」と語った。

 このほかにも、キンタナ報告官は「韓国政府は国連と相談せず、私とも相談しなかった」として、「基本権について何らの尊重もなく、わずか数日でそのままあの人々を(北朝鮮へ)送ってしまった」「人間の基本権が係ることであれば、秘密に付したり、(南北)両政府の間でのみ行われたりしてはならない」「透明に、一般の人々に公開されなければならず、責任者は問責されるべき」と語った。さらに「(今回の送還は)韓国政府の単なるミスや誤った手続きであってほしい」「将来再び起きてはならない」と語った。
(引用ここまで)


 去年の11月に韓国政府がイカ釣り漁船に乗って脱北をしようとしていた2人の北朝鮮住民を追放した、という件があったのですよ。
 どうもこの件が見えないというか。
 当時はなんと扱っていいのか分からなくてスルーしたのですね。
 わけがわからないことが起こっている、ということだけは感触としてあるのですが。つかみどころがなくて扱いに苦慮したニュースです。

 まず、韓国政府が2人を板門店経由で北朝鮮に追放したというアナウンスをしました。

韓国政府 北朝鮮住民2人を追放=漁船乗組員16人を殺害か(聯合ニュース)

 これがまず異例。
 脱北者の送還とかこれまで見たことがないです。
 異例というか、憲法違反。
 韓国は朝鮮半島における唯一の合法政府であり、朝鮮半島全土が領土であると憲法で規定されています。
 北朝鮮は一時的に統治しているだけに過ぎない、という設定。
 つまり、北朝鮮の国民も韓国国民であると認定しているのですね。脱北者の受け入れは政府の義務となっています。

文在寅政権の破滅を呼ぶ「憲法違反」疑惑──北朝鮮の漁船員2人を強制送還(デイリーNKジャパン)

 この記事でも同じ指摘がされています。「16人殺害」についてもなんら捜査が行われた形跡がなく、調査機関はわずかに5日。証拠となるイカ釣り漁船も北朝鮮に返還してしまったとのこと。
 大統領府は「重大な犯罪者であるために韓国社会に入れるわけにはいかない」と送還を決定したとしていますが、そもそも北朝鮮に脱北者を送還するという規定もなければ法律もない。
 根拠もなしに「はい、送還」ってやっているのですね。

 さらに送還の決定も担当官庁であるはずの統一部や国情院ではなく、大統領府に属する国家安保室が行ったとする記事も出ています。
 一応、大統領府からは「協議を行った」と否定声明が出てはいますが……。

北朝鮮住民の追放 「大統領府が決定」報道を否定=韓国政府(聯合ニュース)

 その後に「この2人は16人を殺害したのではなく、脱北させようと試みていただけだったという報道も出てきています。

「殺害追放北船員2人……実際には16人の脱北せようといた青年たち」(朝鮮日報・朝鮮語)

 この件についても大統領府は否定してます。まあ、たとえそうであっても認めるわけがないのですが。

 異例というか……異常。
 北朝鮮を刺激したくないというムン・ジェイン政権の原則はあったとしても、正直なところ「なにが起きてるの、これ」という感じ。

 とにかくなにもなかったことにしたい、というのは見えてきています。
 いざこざを持ちこまれたくない。北朝鮮と論争になるようなことを避けたい。面倒を避けたい。
 終わったこととして封印されている。
 将来、南北統一があったときには分かること……かもしれません。
 それにしても国連特別報告者なぁ。デビッド・ケイが意味不明な話を延々としていることもあって、日本では信頼度ゼロの役職ですね。

コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―
高英起
新潮社
2012/10/31

韓国政府「アメリカが! トランプ大統領が! 北朝鮮へのメッセージを韓国経由で送ったぞ!!!!」→北朝鮮「韓国くんさぁ……そういうとこだぞ?」

トランプ氏が金委員長に誕生日祝うメッセージ 韓国が伝達(聯合ニュース)
トランプが金正恩に親書を送った事実も知らずに仲裁者を自認する青瓦台(朝鮮日報)
韓国青瓦台(大統領府)の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長(閣僚級)は10日、訪米日程を終えて仁川空港に帰国した。鄭氏は空港で記者団に対し、米国でのトランプ大統領との面会の様子を伝えながらトランプ氏が1月8日の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党委員長)の誕生日を祝うメッセージを北朝鮮側に伝えることを自身に要請したと明らかにした。トランプ氏は金委員長の誕生日を覚えていたという。鄭氏は、「昨日、適切な方法で北にメッセージが伝達されたものと承知している」と説明した。
(引用ここまで)

 韓国大統領府は12日、北朝鮮の金桂寛(キム・ゲグァン)外務省顧問から「愚か」「ばか」などと侮辱され、「南朝鮮は(米国との交渉に)しゃしゃり出ず自重せよ」と激しく非難されたことについて、公式のコメントは一切出さなかった。大統領府のある幹部は「これについて言うべきことはない」としか語らなかった。

 しかし大統領府と安保部処(省庁)は困惑する雰囲気を隠せなかった。米朝の間で親書がやり取りされていることをめぐって韓国大統領府が勝手に「誕生日を祝うメッセージを伝達する役割を果たした」などと自慢したため、直後に大恥をかいたからだ。 (中略)

 金桂寛氏は「南朝鮮当局は朝米首脳の間に特別な連絡ルートがあることをまだ知らないようだ」「南朝鮮当局は興奮し、全身を震わせながら大緊急通知文として米国大統領からの誕生日メッセージを送ったと発表したが、われわれは米国大統領から親書として直接受け取っていた」と明らかにした。金桂寛氏はさらに「南朝鮮の軽はずみな行動」「仲裁者の役割に対する未練」「元も取れないほど愚か」などと非常に侮辱的な言葉で韓国政府を非難した。
(引用ここまで)


 北朝鮮がムン・ジェインの新年の辞をこってこてに叩いたのですよ。
 その中でも一番面白かったのがこれ。
 チョン・ウィヨン大統領府国家安保室長が興奮気味に「トランプ大統領からの誕生祝いのコメントを韓国政府が伝達したのだ!」って言ってたのですよ。
 ムン・ジェイン大統領が言うところの、いわゆる「朝鮮半島における韓国ドライバー論」、もしくは仲裁者論をアメリカにも認めてもらえた、というつもりだったのでしょうね。
 でも、北朝鮮にはトランプ大統領からの親書で直接、誕生祝いのメッセージが渡っていたっていうね。

 韓国としては、なんとかして仲裁者として認めてもらいたいのですよ。
 イニシアチブを握って、開城工業団地・金剛山観光事業の再開等の南北経済交流につなげたいのが念願。もちろん、北朝鮮を利したいというのも希望のひとつでしょうけども。
 開城工業団地の安い人件費で軽工業をなんとかしたいという考えもあるのですね。
 あ、それと開城工業団地を閉鎖したのがパク・クネで、金剛山観光事業を休止したのがイ・ミョンバクであるという部分もありますかね。
 保守派のやってきた政策はすべて積弊として清算するのがムン・ジェインの基本政策ですから。

 ですが、アメリカは「開城工業団地再開の話をするくらいならワシントンにくるな」って言い放つし、北朝鮮は「もう韓国と対座することはない」って断言する。
 実際にE-1選手権やオリンピックの合同チーム結成といったスポーツ外交すら拒絶してますしね。

 そういった状況だったからこそ、チョン・ウィヨン国家安保室長は「アメリカが韓国経由で北朝鮮にメッセージを送った!」ってことが本当に嬉しかったのでしょうけども。
 なにしろ、空港で記者団に嬉々として語ったそうですから。
 ……これ、北朝鮮にバカにされたことばかりがクローズアップされてますけども。
 実際にはアメリカにもバカにされてますよね。「あいつ、自分が仲介者だと思いこんでるわ。プークスクス」って双方からやられている。
 アメリカもやることがえげつないわぁ。
 メッセージ持たせておいて、その実は直接交渉していたとか面目を潰すためだけの行動ですからね。
 少なくとも日本はこんなことをやられない間柄でいないとな……。

キッシンジャー超交渉術
ジェームズ・K・セベニウス / R・ニコラス・バーンズ / ロバート・H・ムヌーキン
日経BP
2019/1/11

アメリカによる「一撃必殺」のソレイマニ氏殺害に怯える北朝鮮……キム・ジョンウン抑えつけの意味合いも?

【社説】米国のイラン軍司令官斬首作戦、北はデッドラインを越えるな(朝鮮日報)
米国の斬首作戦に沈黙する北、金正恩委員長は5日間外出せず(朝鮮日報)
 イラン軍で米国への軍事挑発を指揮していた革命防衛隊のソレイマニ司令官を米軍がドローンによるミサイル攻撃で殺害した。イラク国内の親イラン組織と接触するためソレイマニ氏がバグダッド空港に到着し、移動を始めた瞬間を正確に狙って殺害した。敵司令官の動きをリアルタイムで追跡し、外科手術的に除去するまさに「斬首作戦」そのもので、この作戦はトランプ大統領が直接命令を下したという。

 過去には斬首作戦の成功率は決して高くなかった。標的の移動経路や隠れ家などを正確に把握するのが難しかったからだ。ところが今米軍は人工衛星とドローンによって標的の動きを把握する能力を格段に向上させた。米メディアも「ソレイマニ氏の動きをリアルタイムで追跡し攻撃した」と伝えた。ドローンに搭載された赤外線センサーなどによって収集された情報が人工衛星を通じて米国内の作戦本部に送られ、ドローンの操縦士らが標的を追跡し「忍者爆弾」を発射したと伝えられている。

 トランプ大統領は作戦直後「米国人の安全を守るためには決してためらわない」とコメントした。ソレイマニ氏は先日、イラク駐在の米国大使館や米軍施設を攻撃することで、米国人を殺害した犯人になった。 (中略)

 核を持たないイランと核を持つ北朝鮮を単純に比較することはできない。北核問題と中東問題はその性格も異なる。しかし北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射などで米国に直接「核攻撃を行う」と脅迫し、これがトランプ大統領の選挙運動に悪材料となれば、トランプ大統領がどのような行動にでるか予測がつかなくなる。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長はトランプ大統領を単なるほら吹きと考えているかもしれないが、選挙を控えたトランプ大統領の行動は軽々しく判断すべきでない。「衝撃的な行動」などと口にする金正恩氏による核とICBMを使った脅迫は脅迫で終わらせねばならず、絶対にデッドラインを越えてはならない。
(引用ここまで)

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は昨年12月31日に幕を下ろした朝鮮労働党中央委員会全員会議を最後に今なお公の席に姿を現していない。北朝鮮の複数の国営メディアは今月2日、新年を迎え金正恩氏が錦寿山太陽宮殿を参拝したと報じたが、その具体的な日時や写真、映像などは公開していない。金正恩氏は中央委員会全員会議で核とミサイルのモラトリアム(試験・発射の猶予)破棄をちらつかせ、「対米正面突破戦」を宣言した。しかしその直後に米国がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を「斬首作戦」により殺害したため、これが北朝鮮にとってかなりの心理的圧力として作用しているとの見方もある。 (中略)

 韓国の国立シンクタンクのある関係者は「ソレイマニ氏の殺害は米国の斬首作戦能力を敵性国に誇示したものであり、これでは北朝鮮としても軍事行動を取りにくくなるだろう」とする一方「中長距離ミサイル発射や核実験再開の動きを示唆する程度の軍事挑発に乗り出す可能性は考えられる」と予想した。
(引用ここまで)


 「イラクでイランのソレイマニ氏殺害」という一報を聞いた時は「お、そっちに行ったか」という感じでしたね。
 いくつかの外信は「より穏当な手段を執らせるために、極端な選択肢(斬首作戦)を入れておいたらトランプ大統領がそっちを選択してしまった」という話を伝えています。
 おそらくそれが事実なのでしょう。

 ですが、斬首作戦によって引き起こされるであろう事態についてもアメリカは織りこんだ上で作戦を行っていることでしょう。
 これ以降、中東情勢はかなり混迷を極めることになるでしょうね。

 それよりも驚くべきことは無人攻撃機 MQ-9の一撃必殺で殺害を成功させた、ということ。
 去年9月にトランプ大統領はイランの衛星打ち上げロケットの射場の事故があったことをTwitterに投稿してました。
 高解像度な画像とともに。


 このツイートを「軍事機密の漏洩だ」とする向きもありましたが、実際には「これほどの精度で我々はお前たちを監視している」という脅しであったとするほうが自然であると思われます。
 トランプ大統領が暴走した結果、そうなっただけという面は否めないのですが。

 そして、当然これと同等の精度での監視は北朝鮮にも向かっているとみるべきでしょう。
 これ、実は二面作戦じゃないかなぁ……という感じがしています。
 イランとは対峙することをすでに織り込み済み。
 その間、北朝鮮を完全に放置することもできないので「そっちが核実験するなりICBMなり打つっていうなら、斬首作戦できるよ」という牽制を行う。

 イランはシリア、イラクに影響力を深めつつあり、さらにイラクのアメリカ大使館を攻撃したことで報復された。
 で、あればオットー・ワームビア氏を殺害されている北朝鮮に対しても同じことをできるはずです……という話を2017年6月にしてますね

 キム・ジョンウンはすでに「ICBM打ち上げ試験、核実験を行う」と言ってしまっています。北朝鮮では国家元首の言葉は神のそれと同意義。
 イランと対峙する間を「自由時間」と捉えて核実験等を行うかどうか。
 ちょっと見ものかなぁ。
 ちなみに北朝鮮周辺には米軍の偵察機複数飛び回っている、というのは既報です。

キム・ジョンウンが「核実験、大陸間弾道弾ミサイルの実験を再開する」と宣言。アメリカはどのように対応する?

北朝鮮、核・ICBM実験を再開へ 金正恩氏が宣言(AFPBB)
北朝鮮の国営朝鮮中央通信(KCNA)は1日、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-un)朝鮮労働党委員長が同国による核・大陸間弾道ミサイル(ICBM)実験のモラトリアム(一時停止)を撤回すると宣言したと報じた。

 KCNAは、党中央委員会総会での金氏の発言として、「公約にわれわれがこれ以上一方的に縛られている根拠がなくなった」と報道。金氏が「世界は遠からず、朝鮮民主主義人民共和国が保有することになる新しい戦略兵器を目撃することになるであろう」と述べたと伝えた。

 専門家らは、この宣言について金氏が「ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の頭」にミサイルを撃ち込んだに等しいと評する一方、北朝鮮側の挑発がエスカレートすれば、しっぺ返しを食らうことになると警鐘を鳴らした。
(引用ここまで)


 恒例の「新年の辞」ではなく、党中央委全員会議でのキム・ジョンウンの発言を伝えるという形での報道。
 去年は「我々は核兵器の製造、実験、使用、拡散などをしない」「アメリカはこの非核化の意思に応えるべき」というような話をしていました。
 開城工業団地、金剛山観光事業の無条件再開にも言及していましたね。
 北朝鮮の元首による新年の辞はその年の北朝鮮における大方針ともいえるもので、絶対的なものです。
 北朝鮮の狗であるムン・ジェインがアメリカになにを言われようとも開城工業団地と金剛山観光事業の再開に奔走していたのも当然といえば当然。そしてアメリカからは「その話をするならワシントンに来るな」と言われました

 今年に関しては当中央委全員会議が31日にまで長引いたことから、新年の辞を出す余裕がなくなったということでしょうかね。
 実際にはこのKCNAでの発言紹介はもっと長いグダグダ感にまみれていたものだったのですが、このAFPBBの記事がばしっとまとまっています。
 要は──

「アメリカとの対話の期限だった去年は終了した」
「核・ICBMの一時停止を撤回する」
「世界は戦略兵器(ICBM)を目撃することになるだろう」

 この3点。
 核実験を再開し、ICBMも打ち上げる。
 どちらも明白にアメリカが設定したレッドラインを超えてくるものとなるでしょう。
 半ば以上予想されていたことでは鳴りますが、どうやら2020年はハードモードになることが確定。
 大統領選挙前にやってくれるのであればトランプもほくほくだわな……。

国連が禁じた北朝鮮の出稼ぎ労働者派遣禁止、中国等で抜け穴を使って無効化か……というわけでもないようで

北京の北朝鮮レストラン 一部閉店も労働者送還の「抜け道」で営業か(聯合ニュース)
国連安全保障理事会の制裁決議で義務付けられた北朝鮮労働者の送還期限(22日)を機に出稼ぎ労働者が帰国したことで、中国・北京でも閉店する北朝鮮レストランが出ていることが、25日分かった。

 聯合ニュースの記者が訪れた北京の北朝鮮レストランはドアが固く閉ざされ、中国ネット検索大手、百度(バイドゥ)などの地図アプリにも「閉店」と表示された。

 韓国人が比較的多い地区にある平壌冷麺で有名な同店は23日ごろ店を閉めたとされる。従業員の送還により営業が立ち行かなくなったとみられる。

 中国では、北朝鮮と国境を接し、貿易拠点となっている遼寧省丹東で一部のレストランが送還期限を前に閉店した一方、北京や上海などにある多くの北朝鮮レストランは通常通り営業を続けている。

 北朝鮮労働者が制裁を避けるため昨年から査証(ビザ)を留学、研修、教育など他の目的で取得し、中国もこのような方法を事実上黙認しているためとされる。

 今年、北朝鮮との国交樹立70周年を迎えた中国は、北朝鮮労働者の送還に積極的に乗り出すのに負担を感じているとみられる。

 その上、地方では北朝鮮の安価な労働力に依存していることから、経済的にも労働者を送還することが難しい。
(引用ここまで)


 留学、研修、教育等のビザを使うという抜け穴を使って北朝鮮は労働者派遣を続けている。
 と、いうのは事実。
 それでまったく制裁が無駄かというとそんなことはないわけです。

 国連安保理が行った制裁決議の立場で見れば、100と50どっちがいいのかって話であれば50がよいに決まってます。
 もちろん、ゼロになるのだったらそれが理想ですが。そもそも制裁を決めた時からゼロにできないなんてことは分かりきっていたことですからね。
 まず正規ルートを潰すことには成功している。少なくとも北朝鮮レストランを閉店に追いこむことには成功している。
 地方が必要としている労働力供給でそこまで大きな賃金が生まれるとも思えない。
 そもそも正規ルートが潰れている時点で勝ち、なのです。
 北朝鮮にしろ中国にしろ策を弄し、抜け穴を使わないと労働者派遣が続けられなくなった、という時点で勝ちです。
 そして大っぴらに営業でもしようものなら、このほど可決した国防権限法に含まれているワームビア法でセカンダリーサンクションを叩きつけることができる。

 気になっていたのはワームビア法に対するトランプ大統領の署名が間に合うかということだったのですが、なんとか間に合いました。
 韓国ウォッチャー的には12月22日の労働者派遣禁止にワームビア法が間に合うかどうかが注目点だったのですよ。
 22日に先んじること2日前の20日に成立したことで、労働者派遣禁止の制裁もより強く活用されるようになったわけです。
 ワームビア法は北朝鮮と取引する個人、企業、金融機関に対してアメリカの金融機関と取引できなくする法案。
 つまり、ドルの入手ができなくなるという怖ろしいものなのですね。
 これ、やたらめったらに振りかざすわけにもいきませんが、振り下ろされたら即死決定ですから。
 無事、大統領による署名があったことで、国連制裁にもそれなりに効果が出るのではないかなと思われます。

 さて、北朝鮮が一方的に通告してきた「対話の年内まで」という期限切れまであと2日ちょい。
 なにが起きることやら。
 2020年はそこそこハードモードになりそうですわ。

古川氏はまた本書いてくれないかなー。かなりの快(怪)作。
北朝鮮 核の資金源―「国連捜査」秘録―
古川勝久
新潮社
2017/12/22

「北朝鮮からのクリスマスプレゼント」がなくとも、警戒態勢を解かない米軍。1月8日のキム・ジョンウンの誕生日までは可能性が高いと判断か

カテゴリ:北朝鮮関連 コメント:(52)
Christmas passes with no 'gift' from North Korea, but US officials are still watching closely(CNN・英語)
北朝鮮政権からの「贈り物」はなにもないままでクリスマス休暇が過ぎた現在、米国政府当局者は、金正恩がこれまで兵器のテストを実施しないという選択肢を選んだ理由に戸惑っている。

トランプ政権は北朝鮮が「クリスマスプレゼント」とした約束を武器テストを意味するであろうと解釈していた。情報が指し示す指標が大きくなったためだ。当局者は、クリスマス休暇の翌日以降も引き続き、注意を払っています。 (中略)

多くのアメリカ当局者は北朝鮮が兵器のテストを行う可能性はキム・ジョンウンの誕生日である1月上旬まで充分にあると考えています。

アメリカ当局によると、北朝鮮がミサイル発射等の兵器のテストを行った場合、実行可能な軍事力示威のさまざまな選択肢をすでに政権が事前承認しているとのことだ。これらの選択肢には朝鮮半島上空への爆撃機の飛行から、即席的な地上兵器の軍事訓練まで、すべてが含まれているといいます。
(引用ここまで)


 北朝鮮がいうところの「クリスマスプレゼント」はありませんでしたが、アメリカ当局は1月8日のキム・ジョンウンの誕生日までなんらかの兵器のテストを行う可能性があると見ているとのこと。
 というか、NHKが今日の深夜に誤報をやらかして眠るに眠れなくなってしまったわけですが。

 あの誤報は危険ですわ。
 勘違いのドミノ倒しでそこから戦争すら起きかねないレベルの危険さ。勘弁してほしい。
 ユーゴスラビア崩壊に至ったきっかけというか、遠因となったあの事件をちらと思い出したほど。
 実際の監視体制を考えてみればNHKのニュース速報のほうがJアラートよりも早いなんてことはあり得ないのですけどね。
 Jアラートだって故障する可能性はあるわけだし……とか延々と逡巡していた結果が誤報。
 いや、まいりましたわ。睡眠時間を削られるのは命を削るのと同じだぞ……。

 で、アメリカ軍はいまだに警戒体制を解いていません。
 世界に3機しかない弾道ミサイル監視機であるRC-135S コブラボールは2機やってきていて、かつ空中給油機のKC-135を伴って2交代で24時間体制で監視活動中。パイロットや解析担当は複数いるのかなぁ。
 ちなみに在韓米軍ではなく嘉手納の在日アメリカ軍基地で交代しているらしく。まあ、在韓米軍は陸軍中心だからかな。
 さらに「北朝鮮が兵器テストを行った場合は、軍事力示威のさまざまな選択肢を事前に許可している」とのCNNの報道。
 やはり、以前に語られていたようにICBMのテストはアメリカにとってレッドラインであり、その場合はやはり一気に2017年10月当時の緊張関係にまき戻るだろう、ということですね。
 さて、どうなりますかね。