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2020年12月

「バイデン政権は日韓関係の仲裁に入り、被害者第一主義でケアすべきだ」との願望を込めた記事がニューズウィークに掲載されるものの……

日韓関係の修復に意欲を見せるバイデン その仲介に必要な4つの心得(ニューズウィーク)
北東アジアでの同盟の立て直しは、バイデン次期米大統領にとって困難な課題になりそうだ。なにしろ、根深い歴史問題をめぐって日韓関係が悪化している。

バイデンは、同盟国である日韓の関係修復に貢献する気満々のようだ。だが従前の賠償条約・協定が抱える根本的な欠陥、すなわち被害者ではなく国益を優先する道は回避しなければならない。 (中略)

最後に、被害者中心の解決策は強い日米韓同盟の構築に向けた長期的投資だと、バイデンは日韓双方に強調しなければならない。両国の指導者を納得させるには個人外交が不可欠だ。

従来の仲介は長期的視野に欠け、被害者を置き去りにした結果が日米韓の取り組みにもたらすダメージを過小評価していた。同じ過ちを繰り返していては和解の試みに成功はない。
(引用ここまで)


 ディプロマット誌に掲載されたオピニオンがニューズウィーク日本版に掲載されています。
 著者のスアン・ズン・ファン氏なる人物は聞き覚えがありません。名前からするとベトナム人っぽい語感ですが。
 Twitterアカウントもあったので見てみたのですが、いまひとつプロフィールがはっきりしない人物ですね。

 記事の内容はざっくり「バイデン政権が日韓間の仲裁を引き受けたとしても、被害者中心主義でケアしていかないと韓国に通用しないだろう」というもの。
 要は韓国の言っていることを丸呑みしてそのまま書いているだけ。
 ムン・ジェイン政権によるロビー活動の一環かもしれませんね。

 ま、それはともかく。
 こういった形で「被害者第一主義でないと韓国が受け入れないだろう」と書いている、ということは条約・法治を前面に押し出していかれると韓国が困るということでもあるのです。
 日本政府はこのあたりをしっかりと認識して日韓基本条約、そしてそのベースとなっているサンフランシスコ平和条約にまで言及していくといった態度が必要になる……というところまで書いてて、ちょっと面白いニュースが飛びこんできました。

「米国務副長官に韓半島専門家シャーマン氏指名」(中央日報)

 ウェンディ・シャーマン氏が国務副長官に指名された、というもの。

 少なくない楽韓Webの読者が覚えていると思われますが、このシャーマン氏は2015年の国務次官時代に「指導者にとって、かつての敵を悪し様に言うことで国民の歓心を買うことは容易だが、こうした挑発は機能停止を招くだけで進歩がない」という発言をした人物。
 当時のパク・クネ政権に対して「歴史認識ガーと叫ぶのをやめろ」と言い出した人物、というわけです。この9ヶ月後、慰安婦合意が発表されたことを見ても合意形成に向けてなんらかの役割があったのではないかと思われます。
 クリントン時代から東アジアに関わってきた専門家といっていい人ですね。

 当時、韓国メディアは保革問わずにこのシャーマン発言に対して大発火状態となり、アメリカ側は「別に主語を韓国ってしたわけでもないのに、なんでそんなに騒いでんの」みたいな追撃をしていましたっけ。
 この人事からもバイデン政権が東アジアに対してどのように携わろうとしているのか、シルエットがうっすらと見えてきていますね。
 韓国メディアは「人権を重視するバイデン政権は韓国側につくだろう」「韓国の言い分を理解してくれるはずだ」と主張し続けているのですが。
 バイデン氏は副大統領時代に慰安婦合意に携わった人物でもあります。
 韓国の性悪さというものを8年間に渡って実感してきたということでもあるわけで。
 韓国メディアの思惑にははまってくれるとも思えないのですけどね?

英誌、インドネシアがKF-X、Su-35を放棄し、ラファールを導入するのはアメリカの制裁が原因だと指摘

​Will scars from US sanctions drive Indonesia to buy Rafale?(Flight Global・英語)

 イギリスの著名な航空専門紙であるFlight Global(フライトインターナショナル)にインドネシアのKF-X(ラファール)ネタが掲載されていたのでピックアップ。
 ラフにまとめると──

・インドネシアは購入予定だったSu-35を導入した場合、アメリカに制裁されるのでこの契約を放棄したと見られている。
・インドネシア空軍は中国に対抗するために可及的速やかに最新の戦闘機が必要である。
・F-16があるが、かつてアメリカに東ティモールに対する人権侵害について制裁され、武器禁輸措置が執られたことがある。
・それ以外にもインドネシアの空軍はさまざまな機種を導入していた混沌の極み。
・ラファール48機の導入はそうしたゴタゴタに対して効果的な選択である。
・プラボウォ・スビアント防衛相は再度の大統領選出馬を目論んでおり、その箔づけのためにも戦闘機導入を成功させたい。


 まあ、ラファール導入が噂されてきたときから楽韓Webでも解説してきた通りの話でもありますかね。
 KF-Xという絵に描いた餅ではなく、すぐに食べられるラファールという餅を導入したいのだという。
 ユーロファイタータイフーンの中古についても同じ文脈で語ることができるでしょう。
 4.5世代機を買うなら「共同開発とは名ばかり」のKF-X/IF-Xではなく、いますぐにでも導入できるラファールがほしいのだと。

 何度か書いているようにインドネシアは地域大国であるという自負があります。
 「我々は東南アジアの雄である」「ASEANの宗主国である」と自認しているのですね。
 ですが軍事的に見たら脆弱そのもの。
 オーストラリアはF-35Aを揃え、中国はEEZへの進入を繰り返している中、呑気にKF-Xの完成を待っている状況ではなくなっている。
 まあ、アメリカからの制裁を避け、かつアメリカの影響を避け、かつ西側から導入した艦船と情報共有ができる……という条件なのだからラファールは最適解ではあります。
 選択肢としてはこれしかない、というものなのですが。
 まあ、韓国のメンツは潰されますわな。

イランはなぜアメリカへの報復として韓国船籍のタンカーを拿捕したのか

イラン政府「韓国政府が70億ドルを人質に取っている(中央日報)
イランの軍隊である革命防衛隊が今月4日、ペルシャ湾(アラビア湾)で韓国船籍の化学運搬船「韓国ケミ」号を拿捕したことに関連し、イラン政府報道官が5日「韓国政府が70億ドル(約7186億円)を人質に取っている」と話し、その意図が注目されている。アリ・ラビエイ報道官はこの日、オンライン記者会見で「韓国船舶拿捕が人質劇に該当する」という主張に反論して「もし人質劇が存在するなら、それはわれわれの資金70億ドルを根拠なく凍結した韓国政府だろう」と話したとロイター通信が報じた。韓国のウリィ銀行とIBK企業銀行は米国の対イラン経済制裁で、イラン産石油の輸入代金約70億ドルを支払うことができず凍結している。

今回の事件に対し、外交界では「イランが米国との衝突の可能性に備え、韓国船舶を事実上『人質』に取った」と分析している。韓国が対立中の米国とイランの間に挟まれた状態だという説明だ。米CNNも韓国が両国対立の「無関係の被害者(neutral victim)」になったと評価した。 (中略)

イランは、昨年11月の核科学者暗殺と今月3日のガセム・ソレイマニ司令官の死亡1周忌を契機に対米報復の意思も固めてきた。4日、ウラン濃縮濃度を20%に高め始めたまさにその日に韓国船舶を突然拿捕したのは、米国を直接挑発するのではなく同盟国の一つを選んで迂迴的な警告を送ったと解釈することができる。
(引用ここまで)


 イラン革命防衛隊による韓国籍タンカー拿捕についての続報。
 なぜ韓国が狙われたのか、ということについて考えてみましょうか。

 アメリカの同盟国から、もっとも弱い環である韓国を叩くことでアメリカに警告しつつも、そこまでの強さではないという意思表示をしている……ということかなというのは当初から考えられていた部分。
 イランの立場で他のアメリカの同盟国を見てみると──

・日本
 中東和平に一定の役割がある。安倍前総理がハメネイ最高指導者と会談するなど良好な関係を保っていたい。

・NATO諸国
 相手として大きすぎてよろしくない。

・オーストラリア
 そもそも中東に船がきていない。

・シンガポール
 小さすぎる。

・イスラエル
 第5次中東戦争はじまるわ。

・サウジアラビア
 中東地域の不安定さを増すだけで効果が薄い。「はいはい、中東中東」で終わりそう。ラクダの上のサソリですね。

 これらの点から見て、韓国あたりがもっとも手頃と思われたということかな。
 米韓関係の薄さというものが評価された、というべきか。
 それであっても「同盟国」という事実は揺るがず、あるていどのダメージを与えることが可能。

 もちろん、記事にあるように原油輸出代金である70億ドルの預金が韓国国内で凍結されていることもあるし、韓国はその預金に対して利息をつけてこなかったという性悪なやりかたをしてきたので、恨みつらみもある。
 先日の第一報で書いたようにソレイマニ司令官殺害から1年、アメリカに対しての報復という意味合いもある。
 それと同時に任期が終わりかけているトランプ大統領に対して、イランが防衛線を張ろうとしている、ということもいえるでしょう。
 それらが複合的にからんで『韓国』という手頃な相手を選択した、というのが実際のところではないかと感じます。