米国のトランプ政権が日本を中国けん制のためのインド・太平洋安全保障における軸と考え、そのため韓国に対してより多くの貢献と緊密な韓日関係の維持を望んでいたことを示すホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)の文書が12日(現地時間)に公開された。このような戦略的判断は簡単には見直されないため、バイデン政権においても韓国に対する「中国けん制への貢献」と「穏やかな韓日関係」に期待する米国の考え方は続くと予想される。
この文書において米国政府は「静かに、時には強圧的な影響力の行使を織り交ぜ、相手国の主権の弱体化を目指す中国の活動に対し、米国と世界のパートナーが抵抗力を持つこと」を理想的な状態としている。その上で「日本、韓国、オーストラリアに(中国をけん制する)この戦略の最終目的へ貢献させること」を目指す同盟政策を樹立した。とりわけ「日本の自衛隊に対しては近代化を支援する」「日本がインド・太平洋における安全保障の構造において、地域の統合的かつ技術先進国の軸になるよう後押しする」など、日本の役割を強調する内容も盛り込まれていた。韓国については「韓半島以外の地域における安保問題にもより大きな役割を果たせるよう勧告すること」を政策とした。この地域における米国の主要な同盟国の中で日本を対中けん制の核心軸とし、韓国もこれを補助させる構想を持っていたものと考えられる。
(引用ここまで)
今日の朝日新聞朝刊でスクープされていた文書の中身についての話、ですね。
米内部文書、台湾の防衛明記 中国の統一攻勢に危機感(朝日新聞)
アメリカのNSC、国家安全保障会議によって2018年に策定された機密文書が公開されたとのこと。
文書はトランプ政権下におけるインド太平洋戦略について描かれています。
主眼は台湾防衛、インド太平洋戦略における日本の安全保障における立場の確認といったところ。
日米豪印で構成されるいわゆるクアッド、そしてクアッドにベトナム、韓国などを加えたクアッドプラス構想はこの文書が下敷きになっているようです。
で、機密指定がされていた文書がわずか2年ちょっとで公開されるのは異例中の異例であるとのこと。
背景にはアメリカの政権引き継ぎで混乱をきたしていることがあるようです。
NSCとしても対中国政策を明白にしておき、それをバイデン政権にも引き継がせようという意図があるのでしょうね。
アジアの主役として日本を立てる、ということがインド太平洋戦略の柱のひとつであることが文書から明らかになっています。
そして韓国を日本の補助にできるような体制にすべき、ともあるのですが。
日米韓の三角同盟で中国に対抗するというやりかたは、地政学的には満点のやりかたなんですけどね。
さて、その一方でバイデン新政権は知日派であり、元国務次官補であったカート・キャンベル氏をNSCに新設されるインド太平洋調整官というポストに就かせることを発表しました。
このインド太平洋調整官というポストの名称そのものが「自由で開かれたインド太平洋、FOIPについては戦略として引き継ぐ」という意思表明に見えますね。
知日家・キャンベル氏、アジア政策を統括…新設「インド太平洋調整官」に(読売新聞)
キャンベル氏は第2次オバマ政権下でアジア回帰政策を主導した人物です。
ただまあ、そうなると日韓関係の修復にもオバマ政権下と同じくらいの意欲を見せてくる……ということでもあるのだろうなぁ。
とはいえ、そのようにして日本と韓国に合意させた慰安婦合意がどのような末路を辿ったかは当然知っているでしょうから、やりかたを変えてくるとは思いますけどね。
ようやくバイデン政権のアジア戦略の一端が見えてきた……というところかな。
ちなみにカート・キャンベル氏はLIXILの社外取締役。