[キル・ユンヒョンの新冷戦韓日戦16]朝米実務交渉の“反転カード”、空しく不発に(ハンギョレ)
[キル・ユンヒョンの新冷戦韓日戦17]韓国、「冷戦秩序」に再び飲み込まれる(ハンギョレ)
キム・ユグン大統領府国家安保室第1次長が無表情で春秋館2階のブリーフィング会場の演壇に立ったのは、2019年8月22日午後6時20分だった。キム次長は「日本政府が8月2日、ホワイト国(グループA)から韓国を除外したことで、両国間の安保協力環境に重大な変化をもたらしたものと評価する。こうした状況で、政府は敏感な軍事情報交流を目的に締結した協定を持続させることは韓国の国益に合致しないと判断した」と述べた。韓国が、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を「維持」あるいは「条件付き維持」という見通しを破って「終了」という衝撃的な決定を下したのだ。
(中略)
米国も激しい拒否反応を見せた。マイク・ポンペオ国務長官は22日、カナダ外相との会談後の記者会見で、「私は今朝、韓国のカウンターパート(カン・ギョンファ外相)と話した。我々は情報共有協定について韓国人が下した決定に失望した」と述べた。米国防総省も同日、2回の声明を通じて「強い憂慮と失望を表明する」と発表した。米国が東アジアの主要同盟に「失望した」という感情を表したのは、日本の安倍晋三首相の2013年12月の靖国神社参拝以来初めてだった。これと対照的に、中国外交部報道官は「国家協力の実施や終了は国家の権利」だとし、韓国を擁護した。
米国の「失望した」という反応に当惑したキム・ヒョンジョン国家安保室第2次長は23日、記者会見を自ら開き「GSOMIA問題の検討過程で米国と随時疎通」していると釈明した。しかし、韓米日3カ国の安保協力に対する米国の基本的立場をキム次長があまりにも安易に判断したのではないかと批判せざるを得ない。
(引用ここまで)
最後の期待をかけた2019年10月5日のスウェーデン・ストックホルムでの朝米実務交渉が決裂したという知らせに、大統領府はしばらく沈黙を守った。
(中略)
米国は悪化した韓日関係を改善し、放置してきた韓米日3国同盟を正常化することを心に決める。この作業は韓国が8月22日に下した韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の終了決定を覆すことから始めるしかなかった。
(中略)
絶体絶命の最後の瞬間で、キム・ヒョンジョン第2次長は18日から2泊3日の日程で米国を極秘訪問し、最後の説得に乗り出した。しかし、マシュー・ポッティンジャー大統領副補佐官(国家安全保障担当)はキム次長に「GSOMIAは維持すべきだ」と冷ややかに反応した。
(中略)
翌日の22日午後6時。キム・ユグン国家安保室第1次長が再び春秋館2階のブリーフィング室の演壇に上がった。2カ月前、自身が発表したGSOMIA終了決定を覆す内容だった。1分あまりのブリーフィングは終わったが、キム次長は妙な表情のまま、なかなか演壇から降りることができなかった。重い沈黙がブリーフィング室を押さえつけていた。国家のすべての威信をかけて繰り広げた韓日外交戦で、韓国が白旗を掲げたのだ。
(引用ここまで)
「10回ていど」だったはずのキル・ユンヒョンの新冷戦韓日戦、17回を経てまだ絶好調状態。
16、17回は2019年の韓国政府によるGSOMIA終了宣言とその撤回。
ちょっと前に楽韓WebでGSOMIA破棄の撤回について
カノッサの屈辱風に「GSOMIAの屈辱」と表現しましたが、キル・ユンヒョン記者も「国家のすべての威信をかけて繰り広げた韓日外交戦で、韓国が白旗を掲げたのだ」って書かざるを得なかったほどの完敗でした。
韓国側の視点というものが見れて非常に面白いです。
うちを含めて韓国を知るもののほぼすべてが「韓国はGSOMIAを破棄しない」と予想していました。
なぜなら現状の韓国でアメリカの守りというのはどうしたって必要なものです。
アメリカとの原子力協定によって独自の核兵器を持つことができない韓国は、中国・北朝鮮に対してアメリカの核の傘に入らざるを得ない。
その状況下でアメリカが極端に嫌うGSOMIA破棄をできるものではない、と予測するのは当然ともいえるでしょうね。
同志社大学の浅羽祐樹教授は「韓国政府がどう考えるのかという視点が欠けていたかもしれない」と述べていましたが、破棄宣言を予測するのはまともな人間では無理。
実際、アメリカは韓国のGSOMIA破棄宣言に激昂したといっても過言ではありませんでした。
ほぼすべての政府高官が「韓国に失望した」とのコメントを語り、韓国政府からは
「もう失望したって言うな!」って要請が出たほど。
その結果、韓国は屈辱的ともいえる「GSOMIA破棄の撤回宣言」をしなければならなかった……というわけです。
けっきょく、「破棄はできない」とする予測が正解だったわけです。
んでもって、今回の記事で確認できたことですが。
以前からぼんやりと考えていた「砲火を交えない戦争」である、ということがきっちり確認できました。
今回は彼我の戦力、手持ちのカードの評価を韓国が思い違いをし、戦いを挑んできた結果による惨敗でした。
当時、
「GSOMIAをより必要としているのは日本なのだから、この外交カードを外交カードとして扱え」という話が幾度となく韓国側から発せられていました。
GSOMIA破棄で日本を動揺させ、アメリカを動かし、自分たちのやりたいように外交をするつもりだったようですが。
日本が完全なまでにスルーしたことが意外だったようです。
楽韓Webではその様子を「
ビリヤードで手玉を複数回クッションさせてポケットさせようとしているようですね」と記しています。
今回は砲火を交えない外交戦で終わりましたが。
また、なんらかの形でこうして「彼我の戦力差」を勘違いして出てくる国が出てこないともかぎりません。
おそらくその場合は日本と韓国の間で行われるものではないと思いますけどね。