最低賃金について、韓国が2018年に16.4%、19年に10.9%も急激に上げたことが話題になった。この2年続きの最低賃金の引き上げで、韓国の19年1月の失業率は18年の3.8%よりも上がって4.4%になり、韓国の最低賃金の急激な引き上げは、大量の失業者を生み出して大失敗だと言われた。
しかし、時間がたってみると、19年の失業率は3.8%に落ち着き18年と変わらなかった。 (中略)
韓国の失業率は慎重に見なければならない。
Schauer(2018)の研究によると、韓国の雇用市場は、雇用が極めて強く保護された正規雇用者と、雇用が保護されず社会保障制度の恩恵を受けられない非正規雇用者とから構成される二重構造になっている。この点は日本も似ているが、韓国はそれ以上の二重構造である。 (中略)
2018年と19年の最低賃金の大幅引き上げのために失業した人のうちの少なからずの人が、就業意欲を喪失して失業者として登録しなくなったために、一時的に上昇した失業率が低下したと考えるのが妥当であると思われる。
(引用ここまで)
前日銀副総裁の岩田規久男による著作からの抜粋だそうで。
あとでKindle版をチェックしてみますね。
さて、記事にもあるように韓国の最低賃金はムン・ジェイン政権下で1.42倍に膨れ上がりました。
2017年の6470ウォンから今年の9160ウォン。
実はパク・クネ政権時代もそこそこ早いペース(4860ウォン→6470ウォン。4年で1.33倍)で似たような割合で上昇していたのですけどね。
ただ、年ごとの上昇ペースは6〜8%ていどと緩く上昇したためにまだ対応もできていたのですが……。
ムン・ジェイン政権のそれではもはや自営業者から悲鳴も上がらないレベル。
自営業者の「社長」の家族が黙々と無給で働くしかないっていう。
最初の2年で30%、前政権のほぼ4年分を一気に上昇させましたからね。
そこから数字を抑えこんだのは、要するに自分の政策が失敗だったと認めたからに他ならないのですが。
記事中にも出てくるデービッド・アトキンソン氏曰く「失業率は大きく上昇していないから韓国の最低賃金上昇は失敗していない」とのことなのですが。
まあ……牽強付会もここまでくると芸のうちですわ。
実際に韓国社会を見てみると大失敗に終わっているのは自明の理。
というか、実際の社会を見ずに数字だけで語っているところからお察しください。
なにしろ週に15時間未満のアルバイトが激増しているのですから。
週に15時間以上働かせると、韓国では「週休手当」といって1日分の賃金を上乗せしなければならないという決まりがあるのですね。
慣れているアルバイト店員とかにはどんどんシフトに入ってもらえるほうがありがたいはずなのですが。
そうすると店が潰れかねないというのが現状の韓国。
というか、店員のいない「店長(社長)だけのお店」がコロナ禍の前から増え続けているのですから「最低賃金上昇のこうかはばつぐんだ!」ってなもんですわ。
最後のほうに書かれているように「経済学の問題は再現性に乏しい」ことではあるのですが。
それでもまあ、一気に最低賃金を上昇させると社会が壊れるということは分かったのではないでしょうか。
なんだったら本来の目標だった1万ウォンまで上げた風景というのも見たかったのですけどね……。
Twitterで更新情報をお伝えしています。フォローよろしくお願いします。→Follow @rakukan_vortex