2005年にソウル大学物理学部のミン・ドンピル元教授をはじめとする科学、芸術、人文学の教授らが集い、「ランコントゥル(出会い)」という集まりをつくった。彼らは、世界一流の科学者が集まって自由に討論し、研究する「銀河都市」をつくるべきだ、と提案した。世界中の物理学者らを呼び込める加速器(超大型施設)の建設も進めるべきだと主張した。
この構想は、当時大統領選の候補だった李明博(イ・ミョンバク)元ソウル市長に「銀河プロジェクト」という名で報告され、公約として採択された。こうして2011年11月、基礎科学研究院(IBS)が発足した。一つの研究団に年間100億ウォン(約9億6000万円)の研究費を支援し、最低10年間の研究期間も保障する、という前例のない破格のシステムだった。韓国の念願とも言えるノーベル科学賞を受賞させ、研究成果を上げる、というのが目標だった。 (中略)
10年以上にわたって、IBSは数多くの成果を上げてきた。30以上の研究団が毎月数多くの論文を著名な学術誌に掲載した。しかし、内部をのぞくと、IBSの奇形とも言える構造が如実に垣間見える。昨年IBSは三つの研究団に対する支援を打ち切り、今年も一部の研究団が消える。研究団が解体されれば、構成員らは皆、新しい職場を探さなければならない。10年間蓄積してきたノウハウが空中分解するわけだ。評価内容としては「団長と副団長間の協力不足」「独自性不足による競争力低下」「次期研究団長に適当な候補者不在」といった辛辣(しんらつ)な内容が盛り込まれている。今年の評価については「落第寸前だったある研究団が団長の政治力で生き残った」という言葉まで聞かれる。KAIST(韓国科学技術院)のある教授は「最初から予想されていた惨事」という。学者として最盛期を過ぎた科学界の人々が、名声を掲げて研究団長に就任したため、ノーベル賞を受賞するだけの研究成果は最初から期待し難かったのだ。 (中略)
内部からの雑音も絶えない。ある研究団長は、特許を流出した疑いで有罪判決を受けたほか、商品券の不法現金化、虚偽の見積書作成などで懲戒処分となった研究員もいる。IBSを代表する施設である重イオン加速器「ラオン」は、2017年の稼働が目標だったものの、工期の遅れなどが重なり、完成は27年にまでずれ込む見通しだ。この加速器に少しでも関係した人々は「触れたくもない」と口を閉じる。表面的には技術的な問題を理由にしているが、実際は内部構成員間のあつれきが絶えないため、との話も聞かれる。
(引用ここまで)
ここで取り上げられているIBS(基礎科学研究院)という団体は、イ・ミョンバクの公約のひとつとして掲げられたもので。
「ひとつの研究団に100億ウォンの研究費を最低10年間支出する」という、韓国では珍しい基礎科学を扱う団体として設立されたものでした。
モットーは「世の中を変える巨大な基礎科学研究」だったそうです。
それなりには成果を出していたとのことですが。
ムン・ジェインの仇敵であるイ・ミョンバクの公約によって成立した団体なので、ムン・ジェイン政権や与党から「積弊勢力」であるとして縮小の一途を辿っていました。
代表的なプロジェクトとしては重イオン加速器のラオン(RAON)があるのですが、プロジェクトスタートから10年が経過してもまだ未完成。
世界初のスペックを盛りすぎてにっちもさっちも行かなくなったという。
10年かけてなにか形にできたのか、というと。
なんかこう、韓国国内では物理の賞をいっぱい取っているようなのですが。
国際的な実績を積んだかと言われると……見つかんないですね。
もしかしたらなんかものすごいプロジェクトが秘密裏に進行しているかもしれませんし、30年後くらいに「実はすごい基礎技術だった」ってことでノーベル賞を取ったりするのかもしれませんけど。
それにしても記事中の「商品券の不法現金化」とか悲しくなりますね。
貧すれば鈍する。
保守政権が打ち立てたプロジェクトは革新政権によって破棄され、またゼロからやり直し。もちろん、その逆もやるでしょうね。
賽の河原で石を積むがごとし。
いつか例の台座の上に銅像が飾られる日が来たりするんでしょうかね?
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