通貨スワップしないのか、できないのか(韓国経済新聞・朝鮮語)
今の世界の為替市場はまるで巨大な賭博場のようだ。 賭け金(金利を引き上げる余力)があれば生き残って、なかったら死ななければならない非情なゲーム状況だ。 米国が物価高を抑えると述べ、先に金利引き上げのレースを開始した、猫も杓子も「コール」を叫んでいる。 それによって巨大な「マネームーブ」が始まっており、掛け金が落ちた国々から倒れている。
(中略)
韓国も物価急騰と資本流出に対応して金利引き上げにドライブをかけている。一方、経常収支、外国為替保有額などファンダメンタルがよいため、過去のような危機状況を心配する必要はないという主張を忘れない。しかし、状況はそんなに容易ではないようだ。
(中略)
外国為替市場の混乱が危機に転移するのを防ぐ方法は3つある。金利をいくら引き上げても問題のない基礎体力を育てるか、海外資金を吸い上げる投資魅力国にするのが定石だ。しかしこの経路は時間もエネルギーも多くかかる。
即時的には有事に備えた「消防ホース」が必要に見える。そのうちのひとつが韓米通貨スワップだ。(中略)しないのか、できないか分からないが、締結当事者である韓銀側は、「その可能性も、必要もない」と断言する。
また、他の代案として浮上したのが通貨協力体系構築だ。 この5月21日の韓米首脳会談の際、両国は秩序ある外国為替市場に向けてさらに緊密に協議していくと共同声明を発表した。 通貨スワップより少し明確な保険という評価が出た。 しかしどういうことか、その後なしのつぶてだ。
(中略)
韓国と米国は経済・安全保障はもちろん、技術・価値まで共有することにしたグローバル包括的戦略同盟だ。そうした次元で数十兆ウォンの対米投資とインド・太平洋経済フレームワーク(IPEF)参加などを約束したのだ。ちょうどユン・ソクヨル大統領が今回の海外出張時に米国大統領に会う可能性が大きくなっている。外国為替市場などでお互いに聞きたい話をやりとりする席になることを期待したい。
(引用ここまで)
韓国側の焦りが手に取るように分かる記事。
特に2008〜9年にかけてのリーマンショック、グレートリセッション時、一時期1ドル=1600ウォンを超えたほどのウォン安に見舞われたのですが。
アメリカが通貨スワップ協定を結んだこと、日本が通貨スワップ協定の枠を拡大したことでどうにか一息つくことができました。
そうした盾を持つことができずに、韓国が沈んだのが1997年のアジア通貨危機。
IMF管理下に置かれたトラウマはいまの40代以上にはきつく刻まれているのでしょう。
市井から「通貨スワップ協定を一刻も早く」とか「そのために日韓関係改善すべきだ」といった声が上がるのも理解できなくはないですかね。
アメリカの消費者物価が8.3%上昇したこともあって、9月のFOMCではまた0.75%の利上げが確実視されています。
韓国にはもうその利上げに追随する体力的な余裕はありません。
今回、アメリカが0.75%の利上げをするのであれば3.0〜3.25%となり、米韓の政策金利が完全に逆転します。
韓国も上げようと思えば上げられるのですが。
0.75%に追随すれば不動産ローンの変動金利上昇に耐えきれず、売却する選択を選ぶ人が多数出てくることでしょう。
ローン支払いが月300万ウォン以上になることは間違いないですからね。
10年以上、下手をするとそれ以上の長い間に渡って膨らませてきた不動産バブルの崩壊が目の前に迫っているのです。
……できて0.25%かなぁ。
で、韓国人としては通貨スワップ協定をなんとしてでも結びたいという考えかたになるわけです。
通貨スワップ協定が結べないにせよ、米韓首脳会談で「外国為替市場の発展について緊密に協議する必要性を認識する」って言ったじゃないか、と。
あの約束はどうなったんだ、と叫んでいるわけです。
その後、IPEFにも加入したし、サムスン電子やヒュンダイ自動車が多額の投資を約束しているのに……と。
実際には米韓首脳会談後の共同声明を見てみると、
「緊密に協議する」という話はだいぶあやふやな代物です。
どちらかというと韓国の市場介入を監視しているという話ではないか、との感触すら受けます。
韓国の思惑は「常設か、それに準じた通貨スワップ協定がほしい」ということなのですが。
一方的なドル供給のための通貨スワップ協定は、現状のドル回収に邁進するFRBの方針とは相容れないものです。
「アメリカは約束を守れ」みたいな話をしているのですが、自分が約束を守らないからこういう扱いを受けるんだよな。
世界は日本と韓国のやりとりを見てますからね。間違いなく。
だからこそ「約束」と受け取られる確約を避け、あやふやな文言に終始しているというわけでしょう。
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