値上げできない韓国電力、債券発行72%増やす…韓国金融市場に暗雲(中央日報)
資金調達に行き詰まる韓国電力が債券(韓電債)の発行を増やせば金融市場が不安になりかねないとの懸念が出ている。政界で電気料金引き上げを防いだのに伴う否定的効果だ。
(中略)
今年も上半期だけで10兆ウォン以上の赤字を予想する。韓国電力は1カ月に4回にわたり発電会社から電力を購入しその代金を支払わなければならない。
資金確保が厳しい韓国電力が代金を調達する方法は2種類だ。債券を発行するか銀行から借り入れることだ。通常銀行の貸出金利が社債発行金利より高く、韓国電力が必要な資金をすべて銀行からの借入で充当するのは負担だ。結局残るのは韓電債の発行だ。
韓国電力によると、3月末基準で韓電債の発行残高は68兆300億ウォン。1年前の39兆6200億ウォンから72%増えた。1-3月期の発行額8兆100億ウォンは1年前の6兆8700億ウォンから17%増えた。1月の発行額は過去最大規模だった昨年11月の4兆300億ウォン、12月の3兆8700億ウォンに次いで3番目だ。
ちょうど道も開かれた。国会は昨年末に韓国電力法を改正し韓電債発行限度を資本金と積立金を加えた規模の2倍から5倍に引き上げた。経営危機を解消するための緊急状況では産業通商資源部長官の承認により限度を6倍まで増やせるようにした。ハナ証券のキム・サンマン債券チーム長は「電気料金を追加で引き上げず、毎月3兆ウォンずつ韓電債を発行するならば、(一部債券の満期が来る点を考慮しても)今年韓電債残高は90兆ウォンを突破するかもしれない」と予想する。
問題は韓電債が金融市場に及ぼす影響が少なくない点だ。韓電債は一般社債と違い政府が支払いを保証する。格付けは最優良等級であるトリプルAだ。韓電債が「国民債」と呼ばれる理由だ。昨年韓国で発行した債券の4.8%、社債発行量の45.6%が韓電債だった。
優良株だが最近では金利まで高い。金融投資協会によると5日基準で韓電債3年物金利は3.803%だ。金利がピークに達した昨年11月の5.99%よりは下がったが、2021年まで長期にわたり1%台を維持していた点を考慮すれば依然として高い。
金利が高く格付けも最上位である韓電債に投資需要が集まれば一般企業が発行するA級以下の社債はさらに高い金利を提示しなければならない。それらの企業は資金調達が厳しくなるほかない。特に最近の世界的な銀行危機で債券市場が冷え込んだ状況で、韓電債に資金移動が起きれば一般社債が忌避される駆逐効果が深まりかねない。
(中略)
実際に昨年10月のレゴランド事態直後に社債投資心理が急激に冷え込むと、信用度が高い韓電債・銀行債に需要が急激に集まった。一般企業は社債で資金を調達できず資金難に陥った。
(引用ここまで)
韓国電力が赤字に苦しんでいる、という話は何度かしていますが。
それを社債市場から見た記事。
去年、韓国で発行された債券(国債等も含めたすべての債券)のうち、4.8%が韓国電力のもの。
そして社債市場では45.6%が韓国電力の社債だったっていう。
2022年だけで赤字は32兆6000億ウォンっていう冗談みたいな額で、その赤字を埋めるために30兆ウォンもの社債を発行。
政府保証つきなので誰しも危険性の少ないと思われる韓電の社債を好みますわな。
それでも
一時期は2年債、3年債でそれぞれ5.75%、5.9%の高利回りを提示したのに売れ残ったそうです。
年間30兆ウォンじゃ消化しきれんか。
その余波でSKハイニックスは1年債で5.34%の高利息を提示しなければなりませんでした。
社債市場の流動性を韓国電力がブラックホールのように飲み込んでいる、とまでされていました。
まあ、当時は
レゴランドの手形の保証を江原道が拒絶したという「レゴランド事態」で社債市場そのものがきついことになっていたことが高利息の原因だったこともありますけどね。
いまではさすがにここまでの高利回りではないそうですが。
とはいえ今年も上半期だけで10兆ウォンの赤字が見込まれており、損失を埋めるためにはほぼ同額の社債発行を「しなければならない」わけで。
一応、上限キャップは設定されていて最大で残高100兆ウォン(緊急時には120兆ウォン)までしか発行できないことにされているのですが。
記事中にあるように今年中に90兆ウォンを突破するだろうと予想されており、いまのところ安定局面に転じた燃料が高騰するようなことがあればそれ以上の可能性もある。
社債発行の上限キャップに貼りついたら設備のメンテナンスすらできなくなるのですよ。
……いや、「大げさな」って思うかもしれませんが、公社であろうと法人である以上はどこかからお金を持ってこなければ設備の更新もメンテナンスもできませんからね。
実際に韓国メディアからも「これ以上の社債発行は危険ではないか」とする声が聞こえてきています。
ただ、韓国国民からは「(公共料金値上げが凍結されていた)ムン・ジェイン政権時代の方が暮らしゆきが楽だった」といった声も出ており、それを気にしているユン政権も「値上げする」としていたはずなのに、凍結したままになっているのです。
問題は「次の政権に丸投げすりゃいいや」くらいの気分でいたムン政権とは異なり、ユン政権の任期はまだ4年以上残されていることですかね。
ま、
10年ちょっと前のような大停電を起こさないよう、祈ってはおきます。
現代では電気は生命ですからね。
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