京畿道華城市東灘新都市で、チョンセ詐欺の被害に遭ったという通報が多数寄せられた。
華城東灘警察署によると、オフィステル250軒余りを所有している賃貸人が破産し、被害者数十人が伝貰保証金を返してもらえない境遇に置かれたという通報が受け付けられた。
被害者たちがオンラインコミュニティなどに「華城市東灘新都市のオフィステル貸切賃借人で貸切満了後数ヶ月間にわたって保証金を返してもらえなかった」として「賃貸人が最近税金を滞納し貸切保証金を返すのが難しいとして所有権移転を要求した」と知らせた。
しかし、被害者たちは最近、住宅価格の下落で多数のオフィステルの売買価格が伝貰価格以下に下がったと主張している。所有権を移転される場合、各種税金などの問題で借家人が2000万〜5000万ウォン程度の損害が避けられないと指摘している。
賃貸人であるA氏夫婦は東灘・餠店・水原などにオフィステル250軒余りを所有していることが分かった。A氏夫婦は主にB公認仲介士を委託管理代理人として置いて賃借契約を進めたことが分かった。オンライン上では該当公認仲介士の商号と実名が言及され、被害状況を共有している。
(引用ここまで)
韓国には「ギャップ投資」という不動産への投資手法がありまして。
こちらのエントリでも詳細を書いているので参照してほしいのですが。
その解説エントリで2018年頃からすでに「不動産ローンの7割が変動金利なので金利上昇時には恐ろしいことになる」って指摘してますね。
要するに「1.不動産を買う」→「2.貸し出しに回してチョンセ(不動産価格の7〜8割だった高額保証金)を得る」→「3.保証金で不動産を買う」→1に戻る──といった手法。
日本でも複数の不動産を回す方式は不動産投資でありがちですが、韓国のギャップ投資は規模が段違い。
数十件、場合によっては1000件を超えるような物件を個人が所有しています。
一時期、ギャップ投資のセミナーみたいなものもさかんに行われていました。 チョンセは2年で返還しなければならないのですが、その保証金は不動産に化けているので他の不動産のチョンセを返還に回したりもします。
ですが、このギャップ投資、いくつかの経済的状況、条件が組み合わさっていないと実現不可能です。
・国全体がそこそこの経済成長率である(借金額が時間と共に相対的に小さくなる)。
・金利があるていど低い。
・不動産価格が少なくとも下がらない(できれば上がり続ける)。
つまり、不動産市況をはじめとした経済が好況であり続けることを前提にした手法なのです。
ただ、「金利が低い」と「経済成長がそれなり」は相反する要素なのでそもそもが難しい。
株式投資でいうと借金してきたお金を証拠金にして信用取引をはじめているようなものですね。
ムン・ジェイン政権時代は「ソウルのマンション価格が2倍に膨れ上がる」などしたためにあふれた住民が首都圏に逃避し、そうした場所でも不動産価格が上昇しました。
通勤特急が予定されている(着工すらしていない)、というだけでマンション価格が倍になるなどしていたほどです。
小型の不動産であるヴィラ(ワンルームマンション)、オフィステル(オフィス用途とされているものの、実質的にはワンルームマンション)の需要も増えて、ヴィラ王らはムン・ジェイン政権時代にこの世の春を謳歌していたのです。
ただ、上に上げた条件はすでに「高金利」「不動産価格が下落基調」と破綻しているために、ギャップ投資はほぼ終わった手法と化しました。
ギャップ投資で成り上がり、「ヴィラ王」などと呼ばれていた人々が破産を続けています。
今年の初頭には20代で1000件以上のオフィステル、ヴィラを所有していた「ヴィラ王」が亡くなっています。
今度は1139戸保有の27歳「ビラ王」が死亡、入居者被害100億ウォン超か(朝鮮日報)
「今度は」とあるように、この時期を境にして複数の「ヴィラ王」が破綻しているのですね。
で、高額なチョンセが返せなくなって、借りていた側が途方に暮れていると。
今回の破綻は250件なのでまだ少なめ。中規模ていどですね。
当然、これらのオフィステルは売却され、返還されるべきチョンセに充てられる、あるいは貸借人の所有になるのですが。
先日も書いたようにオフィステルの需要と価格は右肩下がり。「こんなものもらっても……」って状況になりつつある。
さらにそうした破綻が不動産の価格下落に拍車をかけているわけです。特に首都圏や地方都市で顕著。
……終わりの構造しか見えないんだけど、いまから入れる保険ってありますかね?
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