今年満期のヴィラ10万戸のうち6万戸「逆転現象」緊急事態(東亞日報・朝鮮語)
ソウル江東区のAマンション(専用面積40平方メートル)に住む会社員のファン某氏(35)は、今年9月のチョンセ契約満了を控え、チョンセ保証金を取られるのではないかと心配で夜も眠れない様子だ。近隣のビラ相場が大幅に下落し、2年前の自分の伝貰金(3億6000万ウォン)に合わせて家主が借家人を探すことができるかどうかが心配だ。借家人が出てきても今月から住宅都市保証公社(HUG)の「チョンセ保証金返還保証保険」(チョンセ保険)加入が難しくなり自身の伝貰金より2000万~3000万ウォン安く契約しなければならない。彼は「家主が伝貰保証金差額分の現金を別に用意しなければならないが、余力があるか分からない」と話した。
今年末までに契約満期が到来する全国ビラ10軒のうち6軒の割合で家主が保証金を下げて契約しなければ、既存借家人が伝貰金を取られる恐れが大きいことが分かった。これらビラの現在の保証金だけでも13兆ウォンを超え、このうち2兆4000億ウォンを家主が追加で負担して既存借家人に返さなければならないものと分析された。最近、チョンセ詐欺が続出し、チョンセ保険なしで新規借家人を探すのが難しくなったうえにチョンセ価格下落傾向が激しくなり家主が既存借家人にチョンセ金を返せない「逆チョンセ難」が避けられないという憂慮が出ている。
東亜(トンア)日報が1日、国土交通部の実取引価格公開システムに登録された2年前(2021年5〜12月)のビラ(連立・多世帯)のチョンセ17万815戸を全数分析した結果、チョンセ10万6728戸(公示価格のない住宅は除く)の62.6%にあたる6万6797戸は既存のチョンセ保証金ではチョンセ保険新規加入が不可能であることが分かった。チョンセ保険加入ができないビラはチョンセ金を取られる場合、保証機関でもこれを受けることができず、チョンセ契約が事実上難しい。
これらビラの既存保証金総額は13兆3188億ウォンだ。チョンセ保険に加入するためには、このうち2兆4122億ウォンを家主が既存の借家人に払わなければならない。10軒のうち6軒は、ビラ1軒当たりの保証金を平均3611万ウォン下げてこそ、伝貰保険に加入できるという意味だ。もし家主が現金余力がなく、このお金を用意できなければ、チョンセ保証金を取られる借家人が増えかねない。
(中略)
賃貸事業者が「相次いで破産」し、ビラのチョンセ市場が崩れる恐れがあるという憂慮まで出ている。ビラと小型の一人アパート20軒で賃貸事業を営むA氏は、ビラ売買価格とチョンセ価格が同伴下落し、HUGのチョンセ保険加入基準が強化され進退両難に陥った。借家人に返さなければならない保証金が増え、2021年乳がん判定を受けた後に受け取った保険診断金5000万ウォンと株式、積金など余裕資金まですでに保証金返還に使った状態だ。さらに、今年7月までに戻ってくる再契約が5件であるため、2ヵ月以内に2億6000万ウォンを追加で調達しなければならない。賃貸住宅の義務期間に縛られ売買が事実上不可能なため、現金を用意する道が漠然としている状態だ。彼は「2018年3月、登録賃貸事業者になれば恩恵が多いという政府広報に賃貸事業を始め保証金増額制限規定(毎年5%)も守った」として「直ちに来年にも貸切満期が到来する契約が8件なのにこのような状況になるので困っている」と話した。
(引用ここまで)
何度か伝えているチョンセ ── 賃貸物件を借りる際に大家に渡す保証金が韓国に大乱をもたらしそうだという話。
例として出ているソウルにある40平米のヴィラ(ワンルームマンション)では2年前は3億6000万ウォン(約3600万円)を保証金として大家に渡していた。
チョンセは不動産価格の6〜8割ほどを保証金として渡しておくと、2年間は家賃なしで(あるいは安い家賃で)当該の不動産に住めるという韓国独自の制度です。
さて2年後の現在、不動産価格自体が右肩下がりになっています。当然、不動産価格の6〜8割であるチョンセ保証金の相場も下落している。
例に出ているAさんの住んでいるヴィラでは2000〜3000万ウォンほど値下がりしている。
つまり、新しい賃借人を得られたとしても大家は2000〜3000万ウォンをどこからか調達して現在の賃借人であるAさんに返さなければならない。
果たして、彼の保証金は無事帰ってくるのかどうか。乞うご期待。
といった構造がひとつの不動産で行われているのであればまだ掬われるのですが。
これが10万件以上で同じようなことが起きている。
そもそも次の賃借人が見つかればいいのですが。
ヴィラを舞台にした「チョンセ詐欺」事件がいくつも出ていることから、賃借人がヴィラそのものを忌避しているのですね。
かつ、不動産価格が下落してきたのでワンルームマンションであるヴィラではなく、普通の間取りのマンションも視野に入りつつある。
次の賃借人が入らないと、おそらく使い込んでしまったチョンセ保証金を揃えるには物件を売らないと無理。
とはいえ、ムン・ジェイン政権下で賃貸物件は買ったあとに売買不能な期間が設けられているため自由な売買もできない。
結果、不良債権と化して競売に出されるしかない。
賃借人はチョンセを取り戻すことができず、大家は不動産を失う……ということが連発する可能性が出ているのです。
ちなみにこのチョンセのやりとりですが「個人同士の取引」であるとして、家計債務には含まれていません(→
韓国の家計債務(1800兆ウォン規模)、伝貰保証金(1000兆ウォン規模)はカウントせず・・理由は『個人の間の取り引きだから』)。
さらにいうと不良債権となって競売に出されてもチョンセ保証金は「個人間取引」なので優先順位が低く帰ってくるともかぎりません。
……着地点、どこになるんですかね。
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