さて、サムスン電子は横浜に最先端半導体の研究拠点を設置するとしています。
サムスン電子、横浜に先端半導体の研究拠点 400億円超投資(ロイター)
記事にあるように、半導体を積層する「後工程」の研究所とされています。
この「後工程」が今回のキーワードです。
Q1.半導体技術で日本に盗む技術なんてない
サムスン電子が日本に試作ラインを設置するってニュースに「日本の技術が盗まれる」とか言うけど、半導体製造で日本がサムスン電子に勝る部分、盗まれる部分なんてないよね?
A1.え、あるけど
ある。山ほどある。今回のサムスン電子による試作ラインの設置のニュースを読めば、後工程の試作ラインであるとの事実が分かるはず。
この半導体製造の後工程で切削、モールド、テストといった工程で機器が必要になり、かつ材料、素材が必要になるのですが。
日本のディスコ、TOWA、アドバンテスト、新光電気、住友ベークライトといったメーカーがトップシェアを持っています。
あと味の素とかも。ABFの生産工場の稼働具合が世界の半導体の行方を握るくらいにいわれてます。マジで。
Q2.そもそもサムスン電子が日本の装置技術盗んだりする?
A2.前科あるけど?
半導体洗浄装置でトップシェアのスクリーンが、かつて韓国に合弁企業作ってさっくりと企業ごと盗まれています。
現在ではSEMESというサムスン系企業がサムスン電子の洗浄装置のほとんどを担当していますが、これの大元はスクリーンとの合弁企業。
相当にやったことが悪辣で、製造装置メーカーの持っている懐中時計の蓋の裏には「Don't forget DNS!」って刻んであるそうですよ(DNS=大日本スクリーン、スクリーンの当時の社名)。
Q3.じゃあやっぱり盗みにきたんじゃないの?
A3.盗むんだったら日本にわざわざ試作ライン作る意味なくない?
今回の試作ラインについていうなら、日本の最先端装置を韓国に持っていくタイムラグすら惜しんで設置するってことでしょう。メンテ等でも現場でのやりとりをしたほうが早いっていう。
すでにTSMCは去年のうちに後工程のラインを日本に設置しています。さらにTSMCについては日本にデザインセンターもある。
TSMCに遅れを取りたくない、というサムスン電子の意向が働いたのだとみています。
さらにいうとインテルも同様に日本に後工程のライン設置を予定しています。世界の三大半導体製造企業が日本にこうしてライン設置をせざるを得ない状況なのですね。
Q4.サムスン電子に200億円もの公金が使われるのがいやだ。
A4.後工程の製造装置メーカーへの装置とメンテナンス、あと素材への支払いで全部使い果たすと思います。
サムスン電子側の予算加えてもさくっとなくなるんじゃないかなぁ。
全額までは行かないにしてもそれに近いレベルで日本企業に還ってくるかと。
ざっくりとうちの知識の範囲内で解説してみました。
ま、最悪でも当たらずといえども遠からずくらいにはなっているはずで、X(Twitter)上で書かれているような間抜けな話にはなっていないでしょう。
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