「これほどだとは…」
企業改善作業(ワークアウト)が進められているテヨン建設の大規模な不動産プロジェクトファイナンス(PF)の不良が現実化し、韓国の業界が緊張している。主要建設会社を中心に最大10兆ウォン(約1.1兆円)台に及ぶ損失「爆弾」が爆発しかねないという憂慮が出ている。
14日、韓国金融監督院の電子公示システムによると、テヨン建設は前日、会社の自己資本がマイナス5626億ウォン(約620億円)を記録し、完全な資本蚕食状態に陥ったと公示した。累積損失で資本金の全てを失ったという意味だ。
テヨン建設が完全な資本蚕食に陥った主要原因は「充当負債」が急増したためだ。同社の財務状態表を見ると、昨年末基準の流動充当負債は1兆3889億ウォンで、1年前に比べて1058.5%(1兆2690億ウォン)急増した。会社が1年以内に返済しなければならないと予想される負債が1兆ウォン以上増えたという話だ。
充当負債は将来に支出発生の可能性が高く、具体的な金額推定が可能な負債だ。(中略)テヨン建設の場合、充当負債増加の余波で「営業外費用」が2022年の1571億ウォンから昨年は1兆5028億ウォンへと10倍急増し、完全な資本蚕食および株式取引停止の主要原因になった。 (中略)
問題は、テヨン建設のPF事業場の不良現実化の規模が極めて大きいという点だ。通常、建設会社はまだ費用発生の可能性が低く、金額測定も難しいPF事業場の潜在負債を「偶発負債」という名前で財務諸表の「注釈」に書いておく。充当負債とは異なり、直接会社の負債や費用として反映することはないが、投資家のために潜在リスクを公開するわけだ。
ナイス信用評価(NICE信用評価)によると、テヨン建設の昨年11月末基準のPF偶発負債は3兆6000億ウォン(別途の財務諸表基準、社会間接資本事業を除く)だった。このような潜在負債のうち、3分の1余りが実際の会社の負債負担と大規模損失として返ってきた。
韓国企業評価は、信用等級を付ける主要20建設会社の民間住宅事業PFの偶発負債を、昨年下半期基準で約30兆ウォン(約3.3兆円)と推算した。テヨン建設の事例をそのまま適用すれば、最大10兆ウォン(約1.1兆円)ほどの負債が発生する可能性があるわけだ。主要建設会社のうち、PFの偶発負債の規模が5兆4千億ウォンで最も大きいロッテ建設が最近、新韓銀行など4大市中銀行をはじめとする産業銀行・証券会社などと流動性支援のための2兆3千億ウォン規模のファンド造成を確定したのも、こうした火急の問題を消すためだ。
(引用ここまで)
テヨン建設は韓国の建設業界で規模ランキング16位になっていた中堅企業でした。
去年末に破綻して民事再生にあたるワークアウトを申請したことで知られています。
で、実際にどれほどの財務状況なのかを調査したところ、プロジェクトファイナンスの中でも「負債に転じる可能性がある」とされていた3兆6000億ウォンのうち、1兆3000億ウォン弱が「実際に負債に転じるだろう」とされて計上されました。
結果、完全に資本蚕食の状況に陥ったと。
プロジェクトファイナンスは「不動産開発そのものを担保にして、当該不動産開発の資金を融資してもらう」という実質無担保融資。
つまり、不動産開発が破綻してもなんにも戻ってくることはない。
あえて戻ってくるとしたら土地ですが、これすらも中途半端に建設が進んでいることが多いので撤去費用を考えたらむしろマイナスになりかねない。
さて、建設企業のランキング上位20社が抱えている「偶発負債」が30兆ウォン。
テヨン建設はその「偶発負債」のうち、30%強が「実際、将来に負債になり得るもの」として計上された。
その計算式がそのまま適用されるのであれば、上位20社が10兆ウォンの負債を抱えることになる。均等に分散していたとして1社あたり500億円。
上位にいる企業はなんとかなるかもしれないけど、そうじゃないところは難しいなぁ。
ただ単に「はい、負債」って渡されるだけではなく、不動産不況で息継ぎもできないところに重荷を背負わされるわけですから。
この不良債権はそのまま金融機関に引き渡される可能性が高いです。
なぜってプロジェクトファイナンスは融資ですからね。
建設企業が不動産開発用に買収した土地(おそらく中途半端な建物つき)を手に入れることはできても、それをどこかに売ることは相当にむつかしい。
とりあえず、テヨン建設という最初のドミノ牌は倒れたわけです。
単独で倒れたのか。
それとも次のドミノに向かって倒れたのか。まだ分からないってところ。
引用部分最後にある(そして楽韓Webでも扱った)ロッテ建設への2兆3000億ウォン規模の緊急融資は、おそらく次のドミノがロッテ建設であったことの傍証となるでしょう。
韓国の大手ゼネコンに破綻の危機→金融機関から大規模融資で一息つく……ただし、「プロジェクトファイナンス危機」はまだ消えていない(楽韓Web過去エントリ)
でも、なんとかして融資で支えているだけ。「ここは俺が食い止める!」って金融機関が懸命になってやっているんですが。
……支え切れればいいですね。
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