日本の電機産業を苦境に陥れた韓国サムスン電子。トップの決断力と猛烈に働く組織力でエレクトロニクス産業の巨人となったものの、足元で米アップルや台湾積体電路製造(TSMC)の背中は遠のくばかり。中興の祖の先代会長が育てた事業の収益は細り、事業刷新は進まない。停滞は韓国経済の映し鏡でもある。
サムスンで働く30代の研究開発職の社員は、昨秋に直属の上司に告げられた言葉が忘れられない。
「その改善案に前例はあるのか、そうでなければGoサインは出せない」 この社員は製造工程での歩留まり(良品率)改善のアイデアを「前例がないからこそ挑戦したい」と訴えたものの、役員の耳には届かなかった。
(引用ここまで)
一昨日書いたサムスン電子が抱える問題について、日経でも取り上げられていました。
AI向けとして採用が続いている高帯域メモリ(HBM)については「採算性がない」としてサムスン電子ではかなり前に開発がペンディングされていました。
それが現在のSKハイニックス、マイクロンに先行を許す結果になっているわけですね。
サムスン電子はHBM3、HBM3eといった最新の高帯域メモリでの開発に遅れてているとされています。
「前例がないと改善案が通らない」なんてのは典型的な大企業病。
俯瞰してみるとディスプレイ、メモリ、半導体ファウンドリ、スマホ製造といった現在のサムスン電子を支えている事業はイ・ゴンヒ時代に作られたものばかり。
「アップルのスマートフォンに似せて作れ!」って方針もイ・ゴンヒが出したとされています。
「妻と子供以外はすべて変えるつもりで事業を行え」って号令を出したのも遙か昔の話、かな。
現在のサムスン電子会長であるイ・ジェヨンはそれら事業を発展させてはいるものの、なんらかの新規事業に打って出たかと考えてみると……これといってなにもない。
……本当になにもないな。中小型ディスプレイについては液晶から有機ELに舵を切ったことがあるか。これも材料の違いで事業そのものはディスプレイですし。
2022年に会長になってからまだ2年しか経ってないじゃないかとはいえるでしょうけども。
実際には2014年にイ・ゴンヒ前会長が倒れてから実質的な総帥だったわけです。つまり、すでに10年近く総帥として手腕を振るってきたことになるのですが。
まあ……これといって実績がない。
パク・クネの弾劾にともなうとばっちり等々で司法リスクが少なからずあったとはいえども、その手腕に疑問符がつくのもやむを得ないところ。
「売り家と唐様で書く三代目」を地で行く結果になるのか。
いまのところはその線の細さだけが前に出ている感じ、ですよね。
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だいぶいろいろな部門で高いサイロがにょきにょきと生えている感じがありますね。