統計の中の数字は客観的だが、「事実」なのかは分からない。 統計の基準を見てこそ「事実かどうか」を計ることができる。 基準によって統計の解釈が完全に変わる可能性があるためだ。 (中略)
基準をどこにするか、どのコードを設定するかによって異なるため、細心の注意を払う必要がある。 時には平均値が統計の誤りとして作用する時もある。 「浸水防止施設を100%設置した」という統計を発表したソウル市の事例が代表的だ。 (中略)
ソウル市は2024年までに、逆止弁(水が溢れないように床から凸状に上がってきた構造物)と水止め板(水が上がっても窓やドアから溢れないように防ぐ施設)などを設置することにした。
それから2年後の今、ソウル市は「(設置に同意した)半地下住宅100%に浸水防止施設を構築した」と明らかにした。 目標値を達成したということだ。 果たしてそうだろうか。 ひとつずつ見てみよう。
2022年当時浸水した総住宅数は1万9705戸。 このうち、ソウル市が浸水防止施設を設置したと明らかにした住宅数は1万7950戸だ。 単純計算で91.9%で「目標値」を達成したと見ても差し支えない。
ところが2022年に最も多くの家が浸水したソウル内の自治区は冠岳区・永登浦区・銅雀区の浸水防止施設設置率は50%を下回る。 22年4813戸の住宅が浸水した冠岳区の設置率は44.4%(2139戸)に過ぎない。
永登浦区と銅雀区の設置率はそれぞれ54.3%(浸水被害住宅4145戸のうち浸水防止施設設置住宅2252戸)、27.0%(浸水被害住宅3939戸のうち1064戸)にとどまった。 その次に浸水住宅が多かった九老区(2007号·53.3%)、衿川区(1187号·100.8%)、江南区(1133号·42.8%)も衿川区を除けば設置率は平均値を大きく下回った。 なぜこのようなことが起きたのか。
2022年に浸水被害が少なかった地域にはるかに多くの浸水防止施設を設置したためだ。 (中略)
理由は何だろうか。 ソウル市は「申請していない半地下住宅や人が住んでいるか確認できなかった半地下住宅まで浸水防止施設を設置するのは難しかった」と話した。 結局「浸水被害施設を設置してほしい」という申請件数が統計の含意を変えたということだ。 逆に言えば、浸水被害住宅数が多かった永登浦区·冠岳区·銅雀区の家主の中には浸水防止施設の設置を希望した人がきわめて少なかったということだ。
このため、浸水被害施設の平均設置率は100%に迫ったが、本当に必要なところに設置したかは疑問だ。
(引用ここまで)
ソウル市が「止水板、逆流防止弁を100%の半地下に設置しました!」ってアピールしていたんですよ。
その一方で「浸水があったこと(もしくは危険地域であること)が分かってしまって不動産価値が下がるから設置していない」ってところがかなりあるとの報道がありまして。
韓国で大雨被害を防止する「止水板の設置が進まない理由」がひどい……(楽韓Web過去エントリ)
どちらが本当なんですかね、って思っていたのですが。
まあ、ソウル市がなんらかの形で統計をいじっているのだろうな、とも確信はしていたのですけどね。
実際、浸水の危険がある地域での設置率は50%以下だったことが判明したと。
2年前に冠水したあたりでの止水板設置率はこんな感じ。
冠岳区 44.4%
永登浦区 54.3%
銅雀区 27.0%
冠岳区は2年前に家族3人が亡くなった浸水事故があった場所。
そこですら50%に満たない。
じゃあ、なにが100%を達成したかというと、「止水板等が必要な半地下家屋」が約2万戸。
で、設置した数が2万戸を超えたので「100%達成!」と。
……必ずしも必要でない半地下にも設置して、達成したんだそうですわ。
うん、まあ……韓国ですね。
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