韓国憲法裁判官の一人「6人での決定は不可能」…このままでは弾劾審判終わらない(中央日報)
6人体制で運営されている憲法裁判所が尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に続いて韓悳洙(ハン・ドクス)大統領権限代行首相の弾劾審判まで全10件の弾劾審判を同時に進める事態に直面した。こうした中、6人の裁判官のうち一人は「6人全員一致議決は不可能」という立場であることが確認され、崔相穆(チェ・サンモク)「代行の代行」経済副首相が3人の裁判官を任命しない場合、尹大統領弾劾審判の結論を出せないまま「憲法裁の時間」がひたすら長くなるという見方が出ている。さらに来年4月18日に文炯培(ムン・ヒョンベ)裁判官、李美善(イ・ミソン)裁判官までが任期満了で退任すれば、憲法裁には4人の裁判官だけが残り、憲政史上初めて「植物憲法裁」に転落する。
(中略)
あ事件は山積しているが、憲法裁は非常事態を迎えている。国会が選出すべき憲法裁判官3人を国会が長期間放置し、憲法裁は機能まひ直前の10月14日、「裁判官7人以上で事件を審理する」(23条1項)という憲裁法規定効力を自ら停止しながら審理機能はかろうじて維持した。「便宜主義方式」(ハン・サンヒ建国大ロースクール教授)という批判もあったが、「苦肉の策」(裁判所関係者)という評価が多かった。
しかしこれは審理定足数に関する決定にすぎず、「終局審理(議決定足数)は6人以上の賛成がなければならない」(憲裁法23条2項)という規定まで適用されるかは不明だった。理論的には現6人の裁判官全員一致で罷免・違憲など主要決定が可能という解釈も出たが、憲法裁はその間6人で終局審理が可能かについて「議論中」とだけ明らかにした。
ところが最近、憲法裁内部で「裁判官のうち一人は『6人だけで事件を終結させるのは不可能』という立場」という話が出てきた。この裁判官は「憲法は裁判官9人を大統領・大法院(最高裁)長・国会が各3人ずつ指名するが、国会指名の3人が満たせていない状況で残りの6人が最終決定を出せば民主的正当性がない」という趣旨を他の裁判官に明らかにしたという。
仮に裁判官が現在のような立場を維持する場合、現6人の体制では尹大統領弾劾審判をはじめとするすべての事件の結論を出せなくなる。ソウル市立大ロースクールのキム・テファン教授は「6人体制だから決定できないという規定はない」としながらも「ただ、6人が審理して6人が賛成するのと9人全員合議体で6人以上が賛成することに対する規範力は異なって受け入れられるという懸念もある」と話した。
(中略)
与野党が裁判官任命膠着状態を来年4月18日まで継続する場合、憲法裁ではすべての機能が停止する最悪の状況を迎える。文炯培憲法裁判所長権限代行と李美善裁判官が退任して4人体制になるからだ。この場合、尹大統領弾劾審判を含むすべての事件の審理がオールストップする。
文・李裁判官の後任は大統領が推薦するが、大統領の職務停止状態で大統領権限代行が推薦できるかも不透明だ。憲法裁憲法研究部長だったキム・スンデ元釜山大ロースクール教授は「4人体制になれば憲法裁では対応できない瞬間を迎える」とし「国会が譲歩しようと憲法裁が決断を下そうと、最悪の事態が訪れる前に憲法裁のまひを防がなければいけない」と話した。
(引用ここまで)
ユン大統領、並びにハン・ドクス国務総理の弾劾について、憲法裁判所の問題がクローズアップされるようになってきました。
本来、憲法裁判所は9人で構成されます。
大統領からの推薦で3人。
国会からの推薦で3人。
大法院(最高裁に相当)からの推薦で3人と規定されています。
このうち、国会からの推薦分3人が延々と与野党間の政争によって指名されていません。
本来であれば与野党がひとりずつ推薦し、もうひとりは協議の結果で推薦する者が決まるという方式でこれまで決定されてきました。
ところが野党・共に民主党は「我々がふたり分を決定する」と言い出して、延々と空席が続いてきました。
さらにユン大統領への弾劾案が成立してからは「我々が圧倒的多数なのだから、3人分を決めさせろ」とごり押ししているのですね。
それに対してハン・ドクス国務総理(前大統領代理)が「与野党の協議を通してほしい」としたところ弾劾されたわけです。
いろいろと理由をつけていますが、「早急に(与野党協議抜きで)憲法裁判官を決定して、ユン大統領弾劾成立に向けて憲法裁判所を正常化したい」からハン・ドクスは弾劾されたと考えて間違いありません。
このままでは6人で大統領弾劾を審理せざるを得ず、パク・クネ大統領(当時)の弾劾審理の時の8人だった時以上に「審理に公平性を欠くのでは」との危惧が拡がっていました。
そこに今回、憲法裁判官のひとりから「6人では審理を終了させることはできない」と言い出した……と。
さすがに6人での審理は原則を損ないすぎている、と判断しましたか。
弾劾審理に際しての原則は「7人以上で審理し、6人以上が賛成した場合に成立する」と規定されています。
ところが現状では6人全員の賛成でなければ弾劾成立が見込めない。
まあ、実際に審理すれば全員が賛成せざるを得ないくらいにユン・ソンニョル大統領の戒厳令発令は違憲の疑いが濃いものですが。
それ以前の問題が存在している、と指摘していると。
さらに4月には定年でふたりの憲法裁判官が退任予定。
このふたりは大統領による推薦だったので、大統領代理の代理であるチェ・サンモク副首相兼企画財政部長官が推薦して補充する必要があるのですが。
そもそも「大統領代理の代理」にそんな権限を任せていいのか、との疑念がありまして。
こうした状況下での規程をなにも憲法に定めていないので「あわわわわわ」となっているのが現状。
韓国人はよく「日本はマニュアルにがんじがらめだ。我々韓国人は柔軟に物事を進めるのでマニュアルなどに縛られない」とか言い出すことがあるのですけどね。
「国家運営のマニュアル」である憲法が欠陥を抱えたままだったってのは大笑いです。
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