控訴審でも19の容疑全て無罪 サムスン会長を10年苦しめて国は何を得たのか(朝鮮日報)
会計不正などの容疑で起訴されたサムスングループの李在鎔(イ・ジェヨン)会長が一審に続き二審の控訴審でも無罪が宣告された。李在鎔会長は「経営権承継目的の株価操作(2015年)」や「不正会計への関与」など19の容疑で20年に起訴された。昨年2月の一審では19の容疑全てで無罪が宣告されたため、検察は控訴審で新たな証拠を提出するなど訴状を修正した。しかし二審でも一審と同じく無罪が宣告された。
この事案は参与連帯などが最初に問題とし、検察はその主張に基づいて起訴したが、これは最初から無理な事案だった。当時の検事総長が尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領で、捜査と起訴で中心的な役割を果たしたソウル中央地検経済犯罪刑事部の部長検事は李卜鉉(イ・ボクヒョン)現金融監督院長だった。二人は罪状ではなく特定の人物を標的とするいわゆる「韓国式特殊捜査」の手口で李在鎔会長の捜査を進めた。2020年6月に外部の専門家で構成された検察捜査審議会は「犯罪容疑は成立しない」として李在鎔会長の不起訴と捜査の中止を勧告したが、検察は起訴に踏み切った。一人の人物が一度に19の罪を犯したという主張も常識外れだ。最終的にこの無理な起訴は強行されたが、その結果は19の容疑全てが無罪だった。しかし検察から謝罪の言葉は一切発表されていない。
第4次産業革命やAI(人工知能)革命が現実となり、世界の超一流企業による激しい競争が続く世界的にも非常に重要な今の激変の時代に、韓国を代表するサムスングループとその総帥の李在鎔会長は10年近くにわたり司法リスクに苦しんだ。2017年の崔順実(チェ・スンシル)国政壟断(ろうだん、利益を独占すること)事件に関与したとして起訴された李在鎔会長は懲役2年6カ月の実刑が宣告され、21年8月に赦免で仮釈放されるまで合計560日にわたり刑務所に服役した。国政壟断についても「大統領に『黙視的請託』を行った」という理解し難い理由だった。この抽象的な容疑で大韓民国国民を刑務所に収監したのだ。この捜査もやはり当時の尹錫悦特別検事捜査チーム長と韓東勲(ハン・ドンフン)検事が行っていた。
この捜査は文在寅(ムン・ジェイン)前政権による積弊清算の一環として強行されたが、文在寅前政権は李在鎔会長を2018年の訪朝に同行させるなど、自らのショーにも利用した。赦免後も李在鎔会長はサムスンバイオロジクス事件の被告として100回以上も裁判に出頭した。海外の事業現場を視察した時間よりも法定に立った時間の方が長かったという。
(引用ここまで)
社会人類学者であるジェームズ・フレイザーによってさまざまな民族が持つ神話や信仰等が描かれた「金枝篇」にモックキングなる役割が記されています。
祝祭の日に最下層の人民から選ばれたモックキングは王冠をかぶり、豪奢な食事をし、蕩尽のかぎりを尽くして最後に生け贄として捧げられる。
偽の王(モックキング)として打倒されるわけです。
民俗学的に「穢れの浄化装置」ともいえる役割ですね。
この視点を持つと、現代の韓国政治がよく紐解けるのです。
ムン・ジェイン前大統領にとってのモックキングはチェ・スンシルでした。
なにしろ、最終的には「F-35AとTHAADミサイルの導入にはチェ・スンシルの影響力が存在した」「不正蓄財は300兆ウォンにも及ぶ」みたいな益体もない話になっていましたからね。
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THAAD配備もF-35導入もチェ・スンシルの仕業だった? ロッキード・マーチンが韓国で暗躍!?(楽韓Web過去エントリ)
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「チェ・スンシルは300兆ウォン不正蓄財した」と糾弾した韓国国会議員、名誉毀損で敗訴→「特別法で覆してやる!」と復讐を誓う……これがK三権分立か(楽韓Web過去エントリ)
あと
「AESAレーダーのメーカー決定に介入」とか「芸能界の闇のドン」とかいう設定もありました。
いや、ホントに。
これらを本気で語っていた当時の与党・共に民主党からは
「チェ・スンシル予算の廃止で年金アップと子供手当は充当できる」とか言ってたものです。
年6兆ウォンの予算がチェ・スンシルによって使われていた、なんて荒唐無稽なストーリーすら本気で語られていたのです。
その一方でムン・ジェインは財界にもモックキングを設定してまして。
それこそがサムスン電子のイ・ジェヨン副会長(当時)。
政界におけるモックキングたるチェ・スンシルと関係があったとして、贈賄で実刑判決を受けて収監されています。
具体的にはチェ・スンシルの娘が馬術で使う馬(43億ウォン)などを送ったことが容疑とされました。
当時から「正式な契約を交わしてのスポーツ振興なのに贈賄は無理があるのでは」とされていたのですが。
「物証はないが心証では有罪。懲役5年」と地裁判決。
韓国裁判所「物証はないが心証では有罪。なのでサムスン電子副会長は懲役5年」 → こんな無茶苦茶が通る理由はパク・クネの裁判への影響?(楽韓Web過去エントリ)
控訴審では一部が無罪になったものの懲役2年6ヶ月。
副会長(実質的には会長)が収監され、サムスン電子の経営はM&Aもろくにできなくなる超保守的なものにならざるを得ませんでした。
それ以外にもさまざまな容疑でムン・ジェイン政権時代に裁判にかけられていたのですけども、そのすべてが無罪判決。
控訴審までムン・ジェイン政権時代に終わっていたら、あるいは次政権の共に民主党政権時代になっていたら分からなかったと思いますが。
というかむしろ第一毛織とサムスン物産の強引な企業合併こそが有罪なんじゃねって感じだったのですけどね。
実際、株主であったエリオット社は「強引な合併で被害を被った」と訴え出て賠償を認められています。
前述の実刑があったことが割り引かれたかな。
といった感じで、韓国では政権が移ろうごとに裁判所の判断も大きく入れ替わるのです。
「物証はないけど心証で有罪」でOKなんですよ。
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