香港サウスチャイナモーニングポスト(SCMP)は、武漢の本社を置くYMTCがNANDフラッシュメモリチップ市場改革のための中国の希望だったが、米国の制裁以後サプライチェーン問題で第2ウエハ生産工場を建設する計画を延期できると26日(現地時間)消息筋を引用して報道した。ウエハは半導体製作の核心原材料だ。
ウエハ工場を運営するには先端半導体機器が必要だが、米国が昨年10月、中国企業に半導体機器を輸出することを事実上禁止する輸出統制措置を実施したためだ。米国は続いて先月はYMTCなど中国企業36社を輸出統制名簿(entity list)に上げて制裁を強化した。
専門家らはこのような措置がすぐにYMTCの生存には影響を与えないだろうが、技術高度化と生産能力拡大に大きな打撃を与えると見ている。代表的にYMTCは3D NANDフラッシュ部分で頭角を現せる技術力を備えていることが知られているが、米国のラムリサーチなどのエッチング装置装備がなければ生産自体が難しい。 (中略)
一部では、YMTCが突破口を探すために新しい技術開発ではなく、既存の生産製品の競争力を強化することに集中しなければならないというアドバイスも出ている。市場調査会社トレンドフォースは「YMTCは技術的渋滞により価格競争力を徐々に失うことになり、市場シェアの浸食も続くだろう」とし「これを避けるためには2D NANDフラッシュ製造に戻るなど方法を模索しなければならない」とした。
(引用ここまで)
中国のメモリ製造企業であるYMTC(長江存儲科技)に対してアメリカ商務省がCHIPSプラス法によってブラックリストに掲載した、とのニュースは楽韓Webでも既報ですが。
YMTCは世界に先駆けて232層のNANDフラッシュメモリの量産に成功したことで知られています。
「中国YTMC、3DNANDフラッシュ分野でサムスン・SKハイニックスに先んじた」(朝鮮BIZ・朝鮮語)
ただし、ブラックリストに掲載されたことから製造装置の導入ができなくなり、技術的には頭打ちするだろうと見られています。
冒頭記事では3Dの積層技術は諦めるしかない、とまでされていますね。
特に今回のリスト掲載によって厳しいのが、これらのリストに掲載された企業からアメリカ人の技術者がすべて撤退しなければならないという部分。
メンテナンスが一切受けられなくなります。
さらに日本、オランダが同調していることからこれらの国からのメンテナンス作業も受けられなくなるわけですね。
半導体製造装置で企業側から定期メンテナンスが受けられなくなるってことはもう製造を終了するしかない。
というわけで将来的な問題が生じたYTMCは第2生産工場の建設を延期するのではないか……との見立てが出てきたわけです。
さらにすでに10%ほどの職員が解雇されたとのニュースもあります。
「中国YTMC、アメリカのブラックリスト記載から1カ月で職員の10%を解雇」(聯合ニュース・朝鮮語)
っていうかですね。
なんでそんな話をのほほんと韓国メディアが伝えているのか、という問題がありまして。
以前から書いているのですがSKハイニックス、サムスン電子ともにDRAM、NANDフラッシュの工場が中国にあります。
SKハイニックスに至ってはインテルが売りに出した大連のNAND工場を買収してしまっている。
SKハイニックスは自社で生産するNANDフラッシュ、DRAM全体の4割が中国産。
サムスン電子もNANDフラッシュの2割が中国産。
これらの中国工場に最新設備は入れられない可能性が高い。
一応、1年間の猶予はあるとされています。
米国、韓国半導体企業への対中輸出規制を1年猶予(日経新聞)
延長される可能性はほぼゼロ。
YMTCへの措置を見ても、アメリカ政府の本気度が見えてくるはずです。
「YMTCが工場建設中止で、職員を10%解雇したってさー」とか呑気に見ている場合じゃないと思うんですけどね。
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