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カテゴリ:経済の記事一覧

韓国経済:業績回復も株価の伸びないサムスン電子、AIの波に乗りきれず。そして韓国の国内経済は生産・消費・投資でトリプルマイナスを記録……

カテゴリ:経済 コメント:(29)
HBM納品、セキュリティ事故···「内憂外患」三星電子の第2四半期の業績は(京郷新聞・朝鮮語)
サムスン電子の第2四半期の業績が近く公開される。 昨年「最悪の冬」を送った半導体事業はメモリー市場に薫風が吹き、兆単位の利益を出すものと予想される。 だが、高帯域幅メモリー(HBM)NVIDIA納品イシューが解決されていないうえに、最近一連のセキュリティ流出など騒々しい雰囲気まで重なり、サムスン電子が内外の宿題を下半期どんな方向に解いていくか関心が集まっている。 (中略)

サムスン電子の前に置かれた課題も侮れない。 HBM納品問題が代表的だ。 HBMは一般Dラムより少なくとも5倍以上高い高付加価値商品だ。 しかし、三星電子は業界の「大手」エヌビディアのHBMクォーテスト(品質認証)をなかなか通過できずにいる。 ハンファ投資証券のキム·グァンジン研究員は「これに対しサムスン電子はAI発メモリーアップサイクルから過度に疎外された状態」と明らかにした。 後発走者の米マイクロンでさえ、エヌビディアに第5世代HBM3Eの納品を開始した。 三星電子は、第3四半期のHBM3Eテスト通過を目標にしている。

ファウンドリー(半導体委託生産)事業もカギを握っている。 三星電子の最新3ナノメートル第2世代工程収率(良品比率)は50%を下回るという。 1位事業者である台湾TSMCの60~70%に比べて劣る。 これはサムスン電子がこれといった大型ファブレス(半導体設計)顧客会社を確保できない状況ともつながる。 (中略)

慌ただしい雰囲気を静めることも課題だ。 最近、三星電子は一連の情報流出事件を経験した。 26日、証券街で金「ウェハー数十万枚の欠陥が発生し、1兆ウォン程度の被害を受けた」というデマが代表的だ。 会社は「事実無根」という立場だ。 サムスン電子関係者は「会社内外であまりにも『難しい、危機だ』という話が出回ったため、日常的な水準の事件もチラシ形態に変質、拡大解釈されている」と話した。
(引用ここまで)


 ふたつほど韓国経済の話題を。
 韓国を代表する、というかもはや韓国そのものとまで言われているサムスン電子の株価が奮いません。
 ひとつ前の証券市場の話題で「外国人投資家は韓国市場を忌避している」としましたが、その大きな原因のひとつとしてサムスン電子がいまひとつ元気がない。
 株価はメモリ価格の底入れが見えた1年半前くらいから見たら右肩上がりではあるのですが、5万ウォン台半ばから8万ウォン台になんとかたどり着いたていど。

 まあ、それもそのはずで現在のAI狂騒にまったく加われていないのです。
 nVidiaから不合格をつきつけられて、まったく採用が進んでいないHBMに代表されるように、です。
 ちなみにこの「合格できていない」とする報道の後、nVidiaのCEOから「サムスン電子のHBMはテストを続けている」とのコメントがあり、やはりテストに合格できていなかったのだなと答え合わせになっていました。

エヌビディア、サムスン製AIメモリー認証作業進行中-フアンCEO(Bloomberg)

 AIについてどうにかいっちょ噛みできたのは「Galaxy S24がAIプロセッサを搭載した」といったくらいのものですかね。
 アップルどころでなく「AIの波に乗れていない」状況が続いています。
 ただ、メモリ価格は上向いているので業績そのものはまあなんとかなるんじゃないでしょうかね。

 もうひとつの懸念は半導体受託事業ですが、相変わらずTSMCからは圧倒的な差をつけられて、3位集団に吸収されるのも間近かなってところ。

AI Demand Stands Strong Amidst Seasonal Downturn and Slower Recovery for Global Foundry Industry in Q1 2024(Counterpoint・英語)

 24年1Qの世界シェアではTSMC62%、サムスン電子13%、SMIC6%、UMC6%、GF5%。
 ま、正直なところだいぶ苦しい。
 かつてのスマホで世界シェア圧倒的1位になっていたころは「垂直統合が効いている」はずだったのですが、むしろ垂直統合が枷になっている観すらありますね。


 もうひとつは経済全体の回復が遅れているとのニュース。
 5月の経済動向は国内生産、消費、投資のすべてでマイナスを記録しています。

産業・消費・投資「トリプル減少」…半導体の善戦にも回復の勢いが鈍化(ニューシス・朝鮮語)

 何度か「現在の韓国は21世紀に入って以来の不況」との話をしていますが、かつては不況があっても外需が高まることでどうにかなっていたのですよ。
 ただ、今回は世界経済の回復ペースがいまひとつ。だいぶもたついています。
 どのくらいもたついているかというとIMFの世界経済予測で日本の経済成長率は0.9%なのですが、この数字でアメリカ、カナダについで3番目の経済成長率であるとされているほどです。

2024年の経済成長予測(IMFによる)
・アメリカ 2.7%
・カナダ 1.2%
・日本 0.9%
・フランス 0.7%
・イタリア 0.7%
・イギリス 0.5%
・ドイツ 0.2%

世界経済は着実に回復しているが、ペースは遅く、地域によってまちまちである(IMF)

 さらに細い韓国の内需もこうしてペースが上がらない……というか、もはや韓国経済の成長ペースはこのあたりがニューノーマルなのでは、と思えるほどです。

 企業の投資が行われないのは、現在から未来の消費に対して不安があるため。
 投資が行われないとお金の流れが断たれてしまう。銀行からの貸し出しも滞る。
 生産や消費は一時的に落ちこんでもなんとかなるのですが、投資がマイナスはなぁ。

 不動産が伸びないのが特にきつい。
 ムン・ジェイン政権下で不動産関連の景気先取りをされてしまって、もう伸びしろが残されていない感じですけどね。
 こんなところでまで中国の後追いをしなくてもいいようなもんですが。

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外国人投資家、韓国の証券市場について「中国よりも透明性が低い」「謎な部分が多い」「公正な競争市場ではない」とぼっこぼこに叩きまくってしまう……まあ、確かにその通りではある

「韓国、中国より遅れ」…海外投資家らが口を揃えて言った理由(韓国経済新聞・朝鮮語)
モルガンスタンレーキャピタルインターナショナル(MSCI)先進国(DM)指数編入が再び不発に終わった中で、今後再評価のためには資本市場全般に対する手続きと慣行再検討が必要だという説明だ。

30日、資本市場研究院が韓国市場への接近性と関連経験に関するインタビューを土台に作成した「韓国資本市場の市場接近性:海外金融機関の見解」報告書には「韓国市場は謎のような部分が多く、公正な競争市場ではないという感じがする」、「取引指針の透明性が中国に比べても劣る」という指摘が出た。 (中略)

ある市場造成者はインタビューで「先進市場の共通的な特徴が開放された競争と同等で公正に適用される規則と規制」として「韓国市場は競争が制限されており、海外金融会社に対する市場参加機会や規則の適用が同等ではないように感じられる部分がある」と話した。

また別のインタビュー対象は「韓国市場は取引規定や指針が香港、シンガポールなど先進市場に比べて透明ではなく、さらに中国に比べても透明性が劣ると評価される」として「韓国市場は謎のような部分が多く、特にシステムトレーダーには公正な競争市場ではないという感じがする」と指摘した。

当局が外国人投資家登録制を廃止するなど高い進入障壁を低くするために努力しているが、政策の効果が体感されないという反応も出てきた。

海外証券会社の関係者は「外国人投資家登録は廃止されたが、口座開設以後のプロセスは依然として変わっていない。 ところが、韓国ではあたかもこのような問題が大部分解決されたと見なすようだ」と述べた。 (中略)

多くのインタビュー対象者は、空売り禁止についても問題を提起した。 特に空売り禁止の理由と目的自体に対する説明が足りなかったという指摘が出て、疎通の問題も目立つ。

あるグローバル銀行関係者は「どの銘柄を空売りできるのか、どのように空売りができるのかに対する指針が不明確で非効率性が発生する」として「私たちは空売り禁止指針が出てきた原因が何であり、達成しようとする目的が何なのか知りたがっている」と明らかにした。

チェ首席研究委員は「今回のインタビューで海外金融機関は韓国市場接近性の多くの問題が制度や規制自体であるのではなく、制度と規制が適用される透明性、一貫性および予測可能性から始まると強調した」として「MSCI、FTSEラッセルの市場接近性評価は単純に制度や規制の評価にとどまらず、外国人投資家にどのように影響を及ぼすかを評価するだけに、韓国資本市場の手続き、慣行および文化改善に向けた措置も含まれなければならない」と強調した。
(引用ここまで)


 韓国の証券市場に対して、外国人投資家から──

「謎な部分が多すぎる」
「空売り禁止の理由が判然としない」
「空売りできる銘柄とそうでない銘柄の明白な指針が不明」
「中国より透明性が低い」
「競争原則が守られていない」

 ……といった散々な指摘がされた、とのニュース。

 どれもこれもまっとうな指摘ですね。
 一個人投資家としてもSBI証券に口座を持っているので、韓国株について投資しようと思えばできるのですが。
 一度たりともやったことがありません。


 政権の思惑が市場に過度に入ってくることと、どうも「個人投資家なんてどうでもいい」って感じが拭えないのですね。
 韓国社会全体的にいえることなのですが、大手でないかぎりはないがしろにされる。
 個人も中小企業も。

 株についていうのなら個人は大手の食い物にならないようにじたばたするしかないのですが、韓国市場について言うならじたばたのしようがないというか。
 好き勝手やられるだけの市場だって印象です。

 同じようなことをかつてBloombergが指摘しています。
 「透明性に欠ける」「 サムスン物産と第一毛織の強引な企業合併で現在のサムスン電子会長に無罪判決が出たのは驚きだ」といったもの。
 韓国では法の支配ですら自由自在に曲がるのです。
 リスクを背負うに値しないんですよね。

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韓国の不動産開発ローン、企業の延滞率が「尋常でない」レベルに……すくすくと育ってきたなぁ

韓銀「不動産PF・自営業者の延滞率、尋常でない」警告(ハンギョレ)
 韓国銀行が不動産プロジェクトファイナンス(PF)と自営業者への融資に対して「不良リスク」の警告灯をともした。第二金融圏(ノンバンク)と脆弱借主を中心に、ここのところ延滞率が大きく高まっているという診断からだ。

 韓銀が26日に発表した「2024年上半期金融安定報告書」によると、金融会社の不動産PF融資の残高は今年第1四半期末基準で134兆2000億ウォン(約15.4兆円)で、昨年(135兆6000億ウォン)より小幅に減少した。不動産景気の低迷とテヨン建設の不渡り危機で新規融資の取り扱いを自制したためだ。

 しかし、融資の健全性を示す延滞率は上昇傾向が続いている。今年第1四半期末基準で3.6%で、昨年末(2.7%)より1%ほど上昇した。2022年(1.2%)と比べると3倍水準だ。特に、不動産のPF・エクスポージャー(危険露出額)が多い証券会社(17.6%)と貯蓄銀行(11.3%)の延滞率上昇が激しい。

 韓銀は、ブリッジローン(着工前の融資)と本PFは両方とも融資の質が悪くなったと評価した。ブリッジローンが本PFの融資に転換できず満期を延長するケースが多く、これによって貸付期間が延び、金利も上がったということだ。特に、PF融資を基盤に作った流動化証券の支払いを保証した中小証券会社と不動産信託会社の不良が急速に増えていると診断した。流動化証券のエクスポージャーは、証券会社18兆2000億ウォン、信託会社5兆4000億ウォンほど。報告書は「不動産PFの金融圏全体のエクスポージャーは依然として230兆ウォン(約26.5兆円)規模と大きいうえに、不動産景気の不振が続き、建設原価の上昇でPFの事業性もまた低くなり、不良リスクが増大した状況」だとし「一部のノンバンク圏では延滞率が急速に上昇しており、不良資産に対する競売・公売を通じて積極的にリスクを管理しなければならない」と強調した。

 最近の自営業者への融資の延滞率も尋常ではないというのが韓銀の診断だ。報告書によれば、自営業者の延滞率は2022年第2四半期末の0.50%から、今年第1四半期末には1.52%へと3倍ほど上昇した。特に自営業者のうち多重債務者でありながら低所得だったり、低信用者である脆弱借主の延滞率は10.21%に急上昇した。自営業者向け融資のうち、脆弱借主の割合(12.7%)も一般家計向け融資の脆弱借主の割合(6.4%)の2倍だ。家計向け融資の1人当たり平均延滞額は2700万ウォン(約310万円)、自営業者は1億2200万ウォン(約1400万円)に上る。自営業者向け融資の延滞持続率は74.6%で、4人に3人は延滞の連鎖から抜け出せずにいる。自営業者向け融資規模は第1四半期末基準で1056兆ウォン(約121兆円)だ。
(引用ここまで)


 韓国不動産業界の苦境はいまだに続いています。
 去年からこっちの韓国における今世紀最大の不況となった原因の対外要因はメモリ価格の下落でした。
 そして、内需における最大の要因は不動産不況。
 ウォン安もあって資材高騰は続いているのに、不動産そのものが売れない。

 結果、不動産ディベロッパーがPFを返済できずに詰んでいると。
 PFはプロジェクトファイナンスの略で、不動産開発そのものを担保にして金融機関からお金を借りるというシステム。
 まあ、ちょっと考えればわかるのですが不動産価格が右肩上がりで上がり続ける前提じゃないと成り立たない金融商品ですね。

 といったわけで危機を察知していた第1金融圏と呼ばれる都市銀行等はほとんどのPFから撤退済。
 第2金融圏と呼ばれるノンバンクがメインでPF融資を行っています。


 で、その第2金融圏が行っているPFの延滞率がやばいことになっているよ、とのニュース。
 まあ、当然というか。
 去年の今ごろは16%だったのですが、17.6%まですくすくと成長してきました。

 あるていど不動産景気が戻るにはふたつの要素が必要です。
 ひとつはアメリカの政策金利が下がって、韓国のそれも追随すること。
 要するに貸出金利が低くならないと、大きな買い物である不動産景況がよくなるわけがない。

 そしてもうひとつは「あるていど未来が明るい」と信じられること。
 これがないと個人が不動産を購入するのは難しい。
 ただ……合計特殊出生率が0.72の国に明るい未来はあるのか、って話でもあるんですが。
 というか、明るい未来が待ち構えているのであれば、もうちょっと子供を産もうって気分になるよね、そもそも。

 でもまあ、個人の欲望で不動産価格はなんとかなるかもしれない。
 実際、ソウルの新築不動産価格はかなり戻りつつあります。金利が少しでも下がったらちょっとしたバブルが生まれたりするかもしれませんね。

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韓国の最低賃金制度、現実に即した「業種別賃金制度」が導入される方向へ……ただし、「世界最悪の労働組合」はあくまでも反対を貫く模様

37年ぶりに「異なる最低賃金」…早ければ今日結論が出る(ソウル経済・朝鮮語)
来年度の最低賃金の業種区分可否が早ければ27日に決定される。 もし業種区分がなされれば最低賃金制度導入37年ぶりに最低賃金が二元化される最も大きな賃金体系変化だ。

最低賃金委員会は27日、政府世宗庁舎で第6次全員会議を開き、来年度の最低賃金業種区分審議に突入した。

最低賃金業種の区分は法的に可能だ。 だが、最低賃金制度が施行された1988年初年度のみ業種区分がなされた。 今年まで36年間、最低賃金委員会が定めた単一最低賃金が維持された。 これは労働界と経営界の賛否が克明だからだ。 労働界は最低賃金が低賃金勤労者の最低生計水準賃金であると同時に法上平等に支給されなければならないと主張してきた。 経営界は現在の最低賃金水準に耐えられない零細事業場を考慮して最低賃金が二元化されなければならないと対抗する。

同日の会議でも、労働界のイ・ミソン労働者委員(全国民主労働組合総連盟副委員長)は、「差等適用(業種区分)は、いかなる労働者の生活安定を保障しないということだ」とし、「今年の最低賃金労働者は、手取り額が月185万ウォンだが、(この月給で)家庭を作り、生計の責任を負う労働者の賃金をさらに削ろうということではないか」と述べた。 経営界のイ・ミョンロ使用者委員(中小企業中央会人材政策部長)は「限界脆弱事業場勤労者の生計費は全面的に該当事業主が責任を負うことは正しくない」とし、「政府が乗り出さなければならない、今年6兆1000億ウォンと予想される勤労·子供奨励金のような方式で解決される問題」と反論した。 (中略)

カギは業種区分を望む経営界がどんな業種を提案し、どのようにこの業種の必要性を最任委委員に説明するかだ。 昨年の最低賃金審議でも経営界は3業種に対して業種区分を提案したが、表決の末に業種区分をしないことに結論が出た。 最低賃金委員会は勤労者·使用者・公益委員9人ずつ27人で構成された審議機構だ。
(引用ここまで)


 韓国の最低賃金精度がどうやら「A・B区分」のような形でまとまりそうだ、とのニュース。
 まあ、「300万人以上が最低賃金を受け取ることができていない現状」を追認した形ではあるのでしょうね。
 韓国では労働者の7.3人にひとりの割合で最低賃金を受け取れていません。

韓国で最低賃金を受け取れていない労働者、7.3人にひとりで300万人規模だった……もはや「最低賃金とは」ってなる世界ですね(楽韓Web過去エントリ)

 特に地方では最初から「最低賃金は出せない、ボーナスにあたる週休手当も出せない」と労使双方が納得してからバイトするなんて事態にもなっています。

韓国経済:地方のコンビニから「最低賃金なんて守ってられない!」と悲鳴、人を雇えずに店主は1日16時間労働も(楽韓Web過去エントリ)

 実際にこの「業種別最低賃金」が導入されたら、どうにか一息つけるってところでしょう。


 ただ、「世界最悪の労働組合」である民主労総は、この制度導入に対して反対の姿勢を貫いています。

「最低賃金引き上げ」奇襲デモした民主労総組合員23人、全員釈放(ニューシス・朝鮮語)

 ソウルにある労働庁の建物を不法占拠して逮捕されたものの、全員釈放済とのこと。
 同じようなことを何度でもやるでしょうね。

 彼らの世界線では「我々が主張して最低賃金を大幅に上げたのに、それを守らないとはなにごとだ!」ってことになっているのです。
 「守らないほうが悪い」のです。法律的には確かにそうですけどね。
 まあ、そうした理不尽さがまんま韓国社会といわれれば確かにその通りではある。

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韓国メディア「サムスン電子だけが研究開発費を増やしている」「世界で見たら韓国企業のR&Dは弱小だ。アメリカ、中国、日本はもちろん、台湾よりも弱い」

カテゴリ:経済 コメント:(50)
[社説] R&Dも「サムスン電子錯視」…将来の競争力が低下する可能性があるという警告(韓国経済新聞・朝鮮語)
昨年、国内の大企業が売上減少の渦中にも研究開発(R&D)投資は8.7%増やしたことが分かった。 産業通商資源部と韓国産業技術振興院によると、昨年、R&D上位1000大企業の投資額は72兆5000億ウォンで、歴代最大規模に達した。 全体的に売上高が2.8%減少した中でも、研究と開発投資は惜しまなかったという点が鼓舞的だ。

しかし、内容を見れば、安心できる状況ではない。 何よりもここでも「サムスン電子への偏り」による錯視が憂慮される。 サムスン電子1社の投資額が23兆9000億ウォンで、1000大企業全体投資額の33%を占めた。 2〜10位の大企業のR&D費用を合わせたもの(21兆6000億ウォン)より多いため、R&Dでも三星電子による錯視現象を警戒しなければならない状況だ。 10位圏以外では、大企業の投資金も1兆ウォンに及ばない。 韓国でも公正取引委員会の規制基準によって大企業と規定されているに過ぎず、投資規模で見ればまだグローバル大企業は数えるほどであるのが韓国産業界の現実だ。
(引用ここまで)


 R&Dでサムスン電子が突出していることで、韓国全体の研究開発費が増えているかのように勘違いされてしまっている、とのニュース。
 ハンギョレの日本版でも同じようなニュースがありますね。

世界の研究開発投資上位2500社のうち、韓国はわずか47社(ハンギョレ)
2022年基準で世界の研究開発投資の上位2500企業のうち、韓国企業は47社のみ。米国(827社)、中国(679社)、日本(229社)、ドイツ(113社)はもちろん、台湾(77社)よりも少ない。総投資額も韓国とは大きな差があった。昨年の韓国の上位1000社の研究開発投資額は、2022年基準での中国679社の投資額の約20%、米国827社の投資額の約10%の水準だと産業部は説明した。
(引用ここまで)

 世界的に見ると韓国の研究開発費はかなり少ない。
 それも研究ではなく、工場の新規投資等に偏っているのです。
 これまでは「日本、アメリカの動きをトレースすればいい」くらいのことをやっていたのですが、世界に冠たる大企業になってしまったために「えっと……どうすれば」みたいな動きになっているっていう。


 充電池あたりでそれが顕著に出ているとされています。
 韓国企業はこれまでリチウムイオン充電池に注力してきて、リチウムの確保にも邁進してきたのですが。
 EVの成長率が一気に下落したことで、韓国の電池メーカーが浮き足立ってるとのこと。
 あと中国系が政府援助を受けてえらいことになっているのもありますね。

EV需要低迷に苦しむ韓国の電池メーカー(朝鮮日報)

 一方で日本の充電池メーカーは全固体に研究を注力させすぎていないかって危惧もあったりします。
 パナソニックにしろ、自動車メーカー勢にしろ、いまひとつ旧来型の電池への研究開発投資が少なかったりしています。
 リチウムイオン充電池の性能が上がってきている(ただし充電時間と安全性を除く)ので、全固体電池のデビューを早くしないと競争力が確保できないのではないかともされているほどなのです。

 これまでは「トレンドを見極めてから一気に乗り込めばいい」ってやってきたのですが、中国の台頭がそれを許さない状況にしつつある。
 逆説的にアメリカの対中国経済規制が韓国にはうまいこと盾として働いている部分もあったりします。
 ま、どちらにせよ研究開発費の少なさは韓国メーカーの弱点とはいえますね。

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韓国で「ただ休んでいる」人口、30~40代では223万人。それ以下の青年層では40万人。少ないように見えるのですが、実は……

カテゴリ:経済 コメント:(59)
「ただ休む」青年40万人、また増加転換…歴代2番目に多い(聯合ニュース・朝鮮語)
仕事も求職活動もしない「休んだ」青年が9ヶ月ぶりに再び増えたことが分かった。

昨年、政府が発表した「休む青年」の労働市場流入対策にも「ただ休む」青年は減らず、依然として40万人台はすぐそこに見えている状態だ。

就職を希望するが、希望する働き口を見つけられなさそうで就職をあきらめた「求職断念」青年も今年に入って再び増加傾向だ。

23日、統計庁の国家統計ポータルと経済活動人口調査マイクロデータなどによると、先月「休んだ」と分類された青年層(15~29歳)は1年前より1万3千人増えた39万8千人と集計された。 (中略)

先月「休んだ」青年は5月基準で関連統計が集計され始めた2003年以後、2020年(46万2千人)に続き2番目に多い。 (中略)

今年1~5月の月平均青年層求職断念者は12万179人で、昨年同期(10万8千525人)より約1万1千人余り増えた。 全体求職断念者(38万7千人)のうち、青年層が占める割合は31.1%だ。(中略)

青年層が望む良質の働き口が十分に増えない状況で、就職支援に焦点を合わせた政策は限界があるしかないというのが専門家たちの意見だ。
(引用ここまで)


 つい先日、30~40代の「ただ休んでいる」人口が233万人を突破したとのニュースがありました。
 で、それよりも若い15~29歳での「ただ休んでいる」人口はどうかと調べてみたら、39万8000人であるとの統計が出てきました。

 韓国の統計庁を見ると15~29歳の世代人口は864万人ほど。
 なので5%弱ほどが「ただ休んでいるだけ」となっています。
 1476万人ほどの30~40代では人口の15%ちょっとほどが「ただ休んでいるだけ」だったので、それに比べるとマシ……なように見えるのですが。
 というか、15%が「ただ休んでいるだけ」ってのもすごいんだけど。


 韓国ではじめて就職する年齢というのはだいたい20代半ば以降となっています。26歳くらい。
 かつ15~29歳なので、10代はほとんどが学校に行っているでしょう。
 男子には兵役もあることを考慮すると、この「ただ休んでいるだけ」の青年層はほとんどが20代半ば以降ではないかと思われるのですよ。

 20代後半(25~29歳)の人口は353万人ほど。
 それらの事情を考慮すると、この年代の10%前後が「ただ休んでいるだけ」ではないかと。
 さらに「求職断念者」の12万人も足すと、20代後半の10%台半ばくらいが「失業率には表れない失業者」なのかな、との感触。

 さらに「ただ休んでいるだけ」が月別統計の5月で最大だったのがコロナ禍の2020年5月が46万2000人。今回はそれに次ぐ数字。
 「コロナ禍の状況に近づきつつある」わけです。
 韓国における5月の青年失業率が6.7%でした。それに10%台半ばの数字を足した22~24%くらいが実際の「青年の失業具合」ではないかと。
 ま、だいぶ推測を重ねている部分はありますが、そんなに遠くない数字じゃないでしょうか。

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韓国の30〜40代、「ただ休んでいるだけ」の人口が233万人以上となってしまう……なお、求職していないので失業者にはカウントされません

カテゴリ:経済 コメント:(69)
韓国、失業率にカウントされない30・40代の「高齢ニート」急増…コロナ禍以来最大(ハンギョレ)
 韓国経済のミドル層に当たる30~40代の「休んでいる(高齢ニート)」の人口が1年前より10%以上増えたことが分かった。新型コロナの影響で雇用ショックがあった2021年2月以降、最大の増加幅だ。

 12日に韓国統計庁が発表した「5月雇用動向」によれば、先月の高齢ニート人口は233万4千人と1年前より8万7千人(3.9%)増え、3カ月連続で増加傾向を示した。雇用統計で「高齢ニート」に分類される人口は、仕事をする能力はあるが出産・育児や求職活動など具体的理由なく仕事をしていないケースを指す。求職意思がなく非経済活動人口に分類され、失業率統計にも含まれない。

 特に労働市場でミドル層の役割を占める30代と40代で、高齢ニート人口が各々4万8千人と3万5千人増加したと集計された。1年前よりそれぞれ19%、15.2%急増した数値だが、新型コロナで経済状況が急変した2021年2月以降で最大値だ。統計庁のイム・ギョンウン雇用統計課長は「『休んでいる』と回答した理由を毎月別途調査はしていないため、解釈が難しい」としつつも「雇用のミスマッチなどいろいろな要因があるだろう」と話した。
(引用ここまで)


 何度か楽韓Webでは「2023年、韓国では21世紀はじまって以来の不況だった」と語っています。
 今年に関しては薄明かりが見えているような、遠いようなってところ。
 ですが、失業率は上昇していません。

5月就業者8万人↑…青年雇用率0.7%p↓・失業率0.9%p↑(聯合ニュース・朝鮮語)

 5月の失業率は3.0%。
 2023年は1年を通じて2%台だったんじゃないかな。  ぱっと見では完全雇用に近い状態であったといえます。

 その原因が失業率計算外となる、「ただ休んでいるだけ」の人口が多いこと。
 しかも、働き盛りである30〜40代で増えています。
 その数、実に233万4000人。

 いわゆる「非経済活動人口」と呼ばれるものです。
 非経済活動人口は「求職していない」ので、統計上は失業者に含まれません。
 というわけで失業率はかなり低めに抑えられているのですね。

 なお、韓国の就業者数全体は2900万人弱とされています。
 もし、30〜40代の非経済活動人口である233万4000人を失業者に組み入れると……うん、やめよっか、この話。


 それ以外にもハローワークにあたるところで相談者が来ても相談実績を作らないようにしているのではないか、とする話もちらほらあります。
 相談実績がある=相談者は失業者となってしまうためですね。

 レポートをよく参照することのあるニッセイ基礎研究所のキム・ミョンジュン氏も同様のレポートを書いています。

なぜ韓国の統計上の失業率は低いだろうか?(ニッセイ基礎研究所)

 非経済活動人口の多さだけでなく、非正規雇用が多いことと自営業者が多いことを「統計上、失業率が低い原因」として挙げています。
 非正規雇用が多いので見た目の就業率は上昇し、全労働者の20%を超える自営業の家族は無給で働いていたとしても「失業状態」ではないので、失業率は上昇しない。

 デービッド・アトキンソン氏が「韓国の最低賃金制度は破綻していない、なぜなら失業率が上昇していないからだ」って論陣を張っていましたが。
 ま、こんな風にちょっと深掘りするだけでその実態は見えてくるのです。

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韓国メディア「……韓国の最低賃金制度おかしくない? 300万人が最低賃金を受け取れず、中央所得の60%なんてどの国もやってな……」→労組「うぉぉぉぉおおお、最低賃金大幅引き上げ、全業種拡大適用じゃああ!」

カテゴリ:経済 コメント:(71)
中位賃金の60%を越える「最低ではない最低賃金」…「韓国経済、足かせになる」(毎日経済・朝鮮語)
急騰した最低賃金が国内賃金勤労者の中間水準が受け取る賃金の60%を越えることが分かった。 最低賃金に連動する求職給与支給も月1兆ウォンに達すると展望される。 過度に急速に上がる最低賃金が国内雇用市場の歪曲と共に政府財政にも影響を及ぼしている。

12日、雇用労働部によると、2022年の国内賃金労働者の中位賃金対比最低賃金は60.9%だ。 12年の42.9%から急激に上昇したのだ。 中位賃金とは、国内賃金労働者を賃金順に一列に並べた時、下位50%の労働者が受け取る賃金をいう。 その国全体の勤労者が受け取る賃金水準に比べて最低賃金が過度に高いという意味だ。 経済開発協力機構(OECD)によると、ベルギー(40.9%)、日本(45.6%)、アイルランド(47.5%)、ドイツ(52.6%)、オーストラリア(53.6%)など主要国は40~50%台にとどまっている。

実際、国内最低賃金は最近急激に上がった。 2022年基準で韓国の実質最低賃金(9.5ドル)水準は会員国35ヶ国中9位水準だった。 韓国より最低賃金が高い国はルクセンブルク(13.6ドル)、オーストラリア(13.6ドル)、ドイツ(13.6ドル)、ニュージーランド(13.2ドル)などだ。 特に、韓国の最低賃金は日本(8.5ドル)や米国(7.3ドル)よりも高かった。

また、最低賃金に連動する求職給与支給額が来年には平均月1兆ウォンに達すると分析された。 求職者が受け取る求職給与額が増えれば、短い期間だけ勤務した後、求職給与を受け取ることを繰り返すモラルハザードが発生する誘引も大きくなる。 これはただでさえ余力が大きくない雇用保険基金にも負担を与える展望だ。 (中略)

専門家たちは最低賃金を急激に上げるに先立ち、実際の勤労者たちが最低賃金の恩恵を受けられるよう改善が必要だと主張した。 高麗大学のカン·ソンジン経済学科教授は「現在、最低賃金以下を受け取って仕事をする人が300万人」とし、「最低賃金以下を受け取ってまで仕事をするという労働者が多いということは、まだ韓国の経済発展水準が最低賃金に達していないという意味」と指摘した。

続けて「最低賃金を受け取ることができる働き口を見つけられなかった人々は仕事をする機会を剥奪されている」とし、「最低賃金以下を受け取る人をどのように減らすか、最低賃金にどのように柔軟性を導入するか考えなければならない」と助言した。
(引用ここまで)


 最低賃金シリーズ。
 以前語られていた配達の民族(韓国のUber Eatsみたいなもの)の配達員やウェブトゥーン作家への最低賃金適用は最低賃金委員会の議論から外されることが決定しました。

 最大の焦点は業種別最低賃金制度を導入するかどうかになっています。
 ただ、これについては「世界最悪の労組」である民主労総が反対しているので、おそらく導入されないでしょう。
 かなり強硬な感触です。

「最低賃金大幅引き上げ、すべての労働者に拡大適用しろ」(オーマイニュース・朝鮮語)

 韓国国内からも「うちらの最低賃金の構造、おかしくないか?」って話が出はじめています。
 というか、ムン・ジェイン政権の頃からずっと出ているのですが、前出の民主労総があまりにも強かったので対応できなかったのが実際かな。


 この記事では「どの国でも最低賃金は中央所得から40〜50%ほどの水準になっているのに、韓国だけは60%越え」とのレポートがあります。
 そして最低賃金を受け取っていない労働者が全体の13.7%(引用記事の数字は2022年のもの。2023年は13.7%)と7.3人にひとり。
 数にすると300万人以上が最低賃金を受け取っていないわけです。

 コンビニでは半分以上が最低賃金以下で働いている。
 農林漁業では43.1%。
 宿泊・飲食業では37.3%。
 もはや最低賃金が「最低賃金の体」を為していない。

 他にも「分割(割れ)アルバ」という言葉があります。
 週休手当(1週間に15時間以上働くと、1日分の日給がもらえるボーナス)を避けるために1週間の労働時間を15時間未満にして、学生バイトの数を多く雇うって方式が定着しているのですね。
 この場合であれば、なんとか最低賃金は支払うけど週休手当は出さないって方針。
 ここ何年かで短時間労働者が急増しているのはこの割れアルバが多いからとされています。

 まあ、パイ自体の大きさは変わらないのに切り分け分を大きくしたらどうなるのかって社会実験の結果は充分に出ているのですが。
 さすがに「最低賃金を引き下げします」はいえないよなぁ。

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