サムスン電子の第2四半期の業績が近く公開される。 昨年「最悪の冬」を送った半導体事業はメモリー市場に薫風が吹き、兆単位の利益を出すものと予想される。 だが、高帯域幅メモリー(HBM)NVIDIA納品イシューが解決されていないうえに、最近一連のセキュリティ流出など騒々しい雰囲気まで重なり、サムスン電子が内外の宿題を下半期どんな方向に解いていくか関心が集まっている。 (中略)
サムスン電子の前に置かれた課題も侮れない。 HBM納品問題が代表的だ。 HBMは一般Dラムより少なくとも5倍以上高い高付加価値商品だ。 しかし、三星電子は業界の「大手」エヌビディアのHBMクォーテスト(品質認証)をなかなか通過できずにいる。 ハンファ投資証券のキム·グァンジン研究員は「これに対しサムスン電子はAI発メモリーアップサイクルから過度に疎外された状態」と明らかにした。 後発走者の米マイクロンでさえ、エヌビディアに第5世代HBM3Eの納品を開始した。 三星電子は、第3四半期のHBM3Eテスト通過を目標にしている。
ファウンドリー(半導体委託生産)事業もカギを握っている。 三星電子の最新3ナノメートル第2世代工程収率(良品比率)は50%を下回るという。 1位事業者である台湾TSMCの60~70%に比べて劣る。 これはサムスン電子がこれといった大型ファブレス(半導体設計)顧客会社を確保できない状況ともつながる。 (中略)
慌ただしい雰囲気を静めることも課題だ。 最近、三星電子は一連の情報流出事件を経験した。 26日、証券街で金「ウェハー数十万枚の欠陥が発生し、1兆ウォン程度の被害を受けた」というデマが代表的だ。 会社は「事実無根」という立場だ。 サムスン電子関係者は「会社内外であまりにも『難しい、危機だ』という話が出回ったため、日常的な水準の事件もチラシ形態に変質、拡大解釈されている」と話した。
(引用ここまで)
ふたつほど韓国経済の話題を。
韓国を代表する、というかもはや韓国そのものとまで言われているサムスン電子の株価が奮いません。
ひとつ前の証券市場の話題で「外国人投資家は韓国市場を忌避している」としましたが、その大きな原因のひとつとしてサムスン電子がいまひとつ元気がない。
株価はメモリ価格の底入れが見えた1年半前くらいから見たら右肩上がりではあるのですが、5万ウォン台半ばから8万ウォン台になんとかたどり着いたていど。
まあ、それもそのはずで現在のAI狂騒にまったく加われていないのです。
nVidiaから不合格をつきつけられて、まったく採用が進んでいないHBMに代表されるように、です。
ちなみにこの「合格できていない」とする報道の後、nVidiaのCEOから「サムスン電子のHBMはテストを続けている」とのコメントがあり、やはりテストに合格できていなかったのだなと答え合わせになっていました。
エヌビディア、サムスン製AIメモリー認証作業進行中-フアンCEO(Bloomberg)
AIについてどうにかいっちょ噛みできたのは「Galaxy S24がAIプロセッサを搭載した」といったくらいのものですかね。
アップルどころでなく「AIの波に乗れていない」状況が続いています。
ただ、メモリ価格は上向いているので業績そのものはまあなんとかなるんじゃないでしょうかね。
もうひとつの懸念は半導体受託事業ですが、相変わらずTSMCからは圧倒的な差をつけられて、3位集団に吸収されるのも間近かなってところ。
AI Demand Stands Strong Amidst Seasonal Downturn and Slower Recovery for Global Foundry Industry in Q1 2024(Counterpoint・英語)
24年1Qの世界シェアではTSMC62%、サムスン電子13%、SMIC6%、UMC6%、GF5%。
ま、正直なところだいぶ苦しい。
かつてのスマホで世界シェア圧倒的1位になっていたころは「垂直統合が効いている」はずだったのですが、むしろ垂直統合が枷になっている観すらありますね。
もうひとつは経済全体の回復が遅れているとのニュース。
5月の経済動向は国内生産、消費、投資のすべてでマイナスを記録しています。
産業・消費・投資「トリプル減少」…半導体の善戦にも回復の勢いが鈍化(ニューシス・朝鮮語)
何度か「現在の韓国は21世紀に入って以来の不況」との話をしていますが、かつては不況があっても外需が高まることでどうにかなっていたのですよ。
ただ、今回は世界経済の回復ペースがいまひとつ。だいぶもたついています。
どのくらいもたついているかというとIMFの世界経済予測で日本の経済成長率は0.9%なのですが、この数字でアメリカ、カナダについで3番目の経済成長率であるとされているほどです。
2024年の経済成長予測(IMFによる)
・アメリカ 2.7%
・カナダ 1.2%
・日本 0.9%
・フランス 0.7%
・イタリア 0.7%
・イギリス 0.5%
・ドイツ 0.2%
世界経済は着実に回復しているが、ペースは遅く、地域によってまちまちである(IMF)
さらに細い韓国の内需もこうしてペースが上がらない……というか、もはや韓国経済の成長ペースはこのあたりがニューノーマルなのでは、と思えるほどです。
企業の投資が行われないのは、現在から未来の消費に対して不安があるため。
投資が行われないとお金の流れが断たれてしまう。銀行からの貸し出しも滞る。
生産や消費は一時的に落ちこんでもなんとかなるのですが、投資がマイナスはなぁ。
不動産が伸びないのが特にきつい。
ムン・ジェイン政権下で不動産関連の景気先取りをされてしまって、もう伸びしろが残されていない感じですけどね。
こんなところでまで中国の後追いをしなくてもいいようなもんですが。
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