ソウル~釜山が20分… 時速1000キロの「夢の列車」がさらに近くなった(朝鮮日報)
「夢の列車」と呼ばれる超高速列車ハイパーループが次第に現実に近づいている。 これまでイーロン·マスクとリチャード·ブランソン·バージン·グループ会長のような世界IT富豪が未来の交通手段として考え、開発に乗り出したが、商用化が容易ではなかった。 しかし最近、世界各国がハイパーループ開発戦争を繰り広げ、技術障壁を一つ二つ突破している。
(中略)
技術的限界にもかかわらず、世界各国の大学と企業は真空状態を維持する案に没頭し、最近成果が少しずつ出ている。 中国航空宇宙科学工業グループ(CASIC)が開発したハイパーループ「T-フライト(Flight)」は最近、試験運行で時速623kmの新記録を立てた。 今回の試験は2㎞走行したもので、比較的短距離である。 CASICは次は60キロの距離を時速1000キロで走る実験を実施する予定だ。 CASIC関係者は「究極的に超高速旅客機であるコンコードに準ずる時速2000キロを作る計画」と話した。
カナダのスタートアップであるトランスフォードも時速1000㎞で走れる「フラックスジェット(FluxJet)」を開発している。 乗客54人または貨物10トンを積んでチューブの中で飛行するように高速で走る。 磁石が押して引く力で空中に浮いたまま動く。 同社は2035年までに180億ドル(約23兆6000億ウォン)を投じてカナダの主要都市エドモントンとカルガリーを結ぶ300キロの路線を作るという構想だ。 トランスフォードは「飛行機より40%安く、二酸化炭素の排出量を63万6000トン減らすことができる」と述べた。
ドイツのミュンヘン技術大学は直径4m、長さ24mのコンクリートチューブを開発し、試験中だ。 これまで耐久性の良い鉄のような素材を使ったが、相対的に費用が多くかかった。 ドイツのミュンヘン技術大学は、大きな圧力差に耐えるコンクリートを利用して費用を減らせば、ハイパーループインフラの拡張に役立つと見ている。 韓国では韓国建設技術研究院がコンクリート素材のハイパーループチューブを開発中だ。
(引用ここまで)
韓国ではいまだにハイパーループにかなりの期待をしている模様です。
ちょっと現状を書いておきましょうかね。
「ハイパーループ」として真空チューブ鉄道を再提唱したのがイーロン・マスク。
ただし、スペースX社で行っていたハイパーループ実験施設はすでに撤去されて、敷地はスペースX社員のための駐車場になっています。
同様にヴァージングループもハイパーループ・ワンを設立して、有人テスト走行を行うところまで計画を進めました。
しかし、その後に「有人運行は無理」と判断されます。
高速貨物運搬施設として使えないかと模索していたものの、最終的に「事業性がない」としてすべての計画を破棄しています。
それでもまだ何カ国かはハイパーループに希望をかけているそうですわ。
ちなみにハイパーループ的なシステムの構想としては19世紀前半からありまして。
この時はまだ真空ではなく圧縮空気による移動でしたが、20世紀初頭には「アメリカロケット界の父」として知られている、ロバート・ゴダードが「磁気で動く列車を真空チューブで走らせれば超高速鉄道となる」とする構想を唱えていたりもします。
ただ、それから現在に至るまで実現できていないのは「真空チューブ」にコスト的な問題が大きすぎるから。
地上に作れば気温差で素材が伸縮しますし、地下に作れば万一の事故の際の救出活動は不可能なレベルになってしまう。
ドイツのやっているコンクリートでチューブを作ろうというのは、そのあたりの対策かな。
亜真空下での廃熱処理も大きな問題のひとつですね。空冷も水冷もできませんから。
それでもまだ中国、カナダ、ドイツ、そして韓国がテストを行っているそうです。
・中国
Tフライトと呼ばれるシステムのテストを行った。低真空下でフルスケールのポッドの実験を行い、2kmの試験用チューブを走った際の最大時速は623kmだったとのこと(なお、その速度での動画は見つからず)。
・カナダ
Transpod社のFluxjetが事業化予定。あくまでも予定。
・ドイツ
ミュンヘン大学がコンクリート製のチューブで試験中。
・韓国
韓国建設技術研究院がドイツと同様にコンクリート素材で開発中とのこと。
ただまあ、前述したようにシステムそのものが抱えている問題があるので、それを解決する手段がないと容易に詰むでしょうね。
実験を行ったヴァージンのハイパーループワン、イーロン・マスクのハイパーループテクノロジーがそれぞれ「ダメだこりゃ」と匙を投げたのは現実の壁に突き当たったから。
まだ残っているほうの実験はどうなるんでしょうかね。
あくまでも夢を追い続けるのか。
Twitterで更新情報をお伝えしています。フォローはこちらから→
エントリでのハイパーループの歴史については以下の書籍から引用しています。
マット・リドレー
ニューズピックス
2021-03-03