2013年、いわゆる「甲乙関係」(社会的な強者と弱者の関係)をめぐって論議を呼んだ「イチゴ大福事件」の当事者の青年を相手取り、日本人の義父が自分の名前で広告を出すのを禁止するよう求めた仮処分申請が却下された。裁判所は、名前を書き間違えた広告が、義父の氏名権(氏名を他人に使用させず、排他的に占有し得る権利)の侵害には当たらないと判断した。
ソウル中央地裁民事50部(キム・ヨンデ裁判長)は4日、日本人のタカダクニオ氏が韓国の会社社長K氏を相手取って起こした、氏名使用禁止の仮処分申請を却下したと発表した。
地裁は「広告の動画には『日本の大阪で暮らす在日韓国人3世のタナカクニオ先生を義父とするK社長が直接受け継いだ100年の技術』という文言が含まれているだけで、高田氏の名前を広告に使用していると見なせる資料がない。高田氏の氏名権を侵害する行為と見なすことはできない」と判断した。
だが地裁は「K氏は高田氏の名前を使用する意思を持っていたにもかかわらず、誤って『タナカクニオ』と記述したものと考えられる」と説明した。
さらに「だが、『タナカクニオ』は『タカダクニオ』と異なる名前だ。韓国での高い認知度、名前が異なっていても高田氏を指すことが分かるような特別な事情がない限り、社会通念上、名前を使用されたと見なすのは難しい」と述べた。 (中略)
K氏は「日本の大阪で暮らす在日韓国人3世のタナカクニオ先生を義父とするK社長が直接受け継いだ100年の技術」という文言を用いて広告を出し、韓国でイチゴ大福を販売した。
これに対し、日本で餅菓子を販売している高田氏は、K氏が自分の名前を用いて広告を出していると主張し「大福の製造技術を教えた事実はなく、名前を営利目的に使用することを許可したこともない」として仮処分を申請した。
一方、K氏は2013年7月、MBCの番組『時事マガジン2580』で「イチゴ大福の涙」というタイトルによって話題になった。当時、K氏が2009年、大阪の餅菓子店でイチゴ大福の製造技術を教わり、同業者と共に創業して成功を収めたものの、同業者から契約を解除され、「一人デモ」を行っている場面が放送された。
だがその後、K氏は同業者の名誉を毀損(きそん)したとして、罰金100万ウォン(約11万円)の略式命令を受けた。検察の捜査によると、K氏は高田氏と数回あいさつを交わしただけで、技術を伝授されたことはなく、さらに同業者から出資金を全額返還されているなど、放送内容が事実と異なっていることが分かり、論議を呼んだ。
(引用ここまで)
うーん、この話を扱ったような気がするのですがエントリが見当たらない。
まあ、いいか。いい機会なので整理して書いておこう。
ざっくりと経緯を語るとこんな感じです。
キム・ミンスという青年が「日本の職人からいちご大福の秘伝のレシピを教わった」と主張。
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アン某氏とキム・ミンスが51:49で出資金を出して、いちご大福の店を出す。
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しかし、アン某氏がキムの持つ「秘伝のレシピ」を学ぶと店から追い出した。
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キム、国会前で「日本の師匠に成功すると約束したのに……」と涙ながらのひとりデモ。
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韓国でちょうど「甲乙横暴」が大きく扱われていたこともあってテレビで大きく取り上げられる。
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悲劇の主人公になったキム、小さな店を出してそれが大流行。フランチャイズ展開へ。
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フランチャイズは10店舗を超えて中国進出も!
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しかし、フランチャイズ店から「納入される原材料が高すぎる!」「日本で修行したのは嘘だろ!」と訴え。
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キム、元の店から追い出されたわけでもなく、「奪われた」と主張していた出資金も返却されていたことが判明。
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「修行して養子にまでなった」と主張していた日本の店には何度か行っただけ。あいさつはかわしたことがあるていど。そもそも和菓子のお店だけどもメインはわらび餅のお店でいちご大福は季節限定。
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日本の和菓子店店主、「宣伝動画で勝手に名前を使うのはやめてくれ」と仮処分申請。
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韓国裁判所「宣伝動画の名前が微妙に間違ってるので仮処分却下」←イマココ
その後、キム・ミンスのお店やアン某氏の店がどうなったかは不明なのですが、とりあえず仮処分は却下になりましたよと。
「甲乙葛藤」の時代の被害者がメディアをうまく操って寵児となり、同情を買ってフランチャイズ展開のお店まで持ったのだけども、その場では自分が「甲の横暴」を振るった。
しかも、同情を買った事情のすべてが嘘だったと。
まあ、韓国でもっとも強いのは被害者であるというところに目をつけたまではよかった。
でも、ディテールがダメだったので崩壊してしまったわけですね。
この件のお店がどうなったのか知りたいところですが。