韓国政府が日本による植民地時代の強制動員被害者に対する賠償問題の解決策を模索する中、基金を設立して日本企業の賠償金支払いを肩代わりする、いわゆる「代位返済」が取り沙汰されていることを巡って被害者側は強く反発した。
強制動員被害者の支援団体「日帝強制動員市民の集まり」は30日、南西部の光州市で記者会見を開き、「政府がこの問題の原因と解決法を日本企業と日本政府に見いだすのではなく、的外れなところから見いだそうとしている」として懸念を示した。
この団体は、自発的な募金や拠出によって被害者に賠償金を支給する方策に対し、被害者は人権を侵害された人であって、善意の手を借りる恵まれない境遇の人ではないと強調。責任は加害者が負うものであり、日本企業が負うべき賠償の義務を的外れなところから見いだすのは加害者に免罪符を与えるのと同じだと説明した。
また、韓日関係を改善しなければならないことには全面的に同意するが、韓国政府が韓日関係の悪化を避けるという名分で日本企業の韓国内資産の現金化(売却)手続きを阻止すれば取り返しのつかない歴史的愚を犯すことになると述べ、日本政府と加害企業に被害者への心からの謝罪と速やかな賠償の履行を求めた。
(引用ここまで)
韓国政府が「財団方式による補償」を取るのではないか、との報道が韓国側から出ています。
大元のソースはソウル新聞らしく、どうも現在の大統領府と太いコネがある記者がいるっぽい。
韓国企業が参加する財団を作り、日本企業は自由参加という形にするのではないかというもの。
「被告企業は含まれない」というのがいまひとつ理解できないなぁ……という感じです。
元徴用工、基金案検討か 日本側は自発的参加―韓国(時事通信)
で、それに対して勝訴した原告側がさっそく不満の声を上げている、というニュース。
動画でもあったのでそちらもピックアップしておきますか。
「被害者への冒涜」なんですって。
さっそく最大の難関である「当事者の同意」が出てきましたね。
ムン・ジェイン政権によって設置されたハードル、すなわち「当事者の同意がなければいかなる日韓間の合意も覆される」との前例があるわけで。
そりゃ原告側も建前としては「金だけがほしい」とは言わんわな。
ま、韓国側がどんな手段や方法を使おうとも、日本には関係ないというのが実際のところ。
日本側は「日韓基本条約、日韓請求権協定ですべて解決した」という以外の立場を取ることはできない。
韓国側の措置を見守ることくらいしかやることはないのです。
あと変な解決方法持ってきたら「帰れ!」っていうくらい(当時の河野外相のように)。
なのでユン・ソンニョルのリーダーシップによってどのような対応が行われるのか見るしかないのですが。
どうもそのリーダーシップには期待できそうもない、という話をしましょうか。
ひとつ、面白さというか「ユン・ソンニョルの神髄に触れた」と思われる記事があるのでこちらをごらんください。
尹大統領 BTSの兵役特例「世論に従う」(聯合ニュース)
BTSの兵役問題については他のいろいろな側面や思惑が入り乱れていて、どうなるかはさっぱり分からないのですけどね。
ムン・ジェイン政権は彼らを国連に随伴させるなどして政治的に利用しつつも、兵役特定問題については決定を避けて棚上げし続けるというやりかたを続けてきました。
まあ、ムン・ジェインのやりそうなことで分かりやすい。
そして、このユン・ソンニョル大統領による「世論に従う」という言葉も政治家としてのユン・ソンニョルの限界を示すものとして大変に興味深いのです。
兵役問題は韓国では本当に大きなものでして。
現状では「やりたくないけど、やらないと世間に舐められる」「まともな大人として扱われない」というものとなります。
上流階級であれば兵役に出なかったこと自体が自慢話にもなるようですが。
かつてはそこそこ緩かった徴兵ですが、現在では男子の9割近くがなんらかの形で兵役をこなしています。
少子化も手伝って定数を揃えるのに苦労している状況でもあり、新たな特例を出したくないというのが当局である兵務庁の考え。むしろ、「売れっ子芸能人ですら兵役に向かった」というストーリーを描きたい模様。
大げさでなく「国論を二分する」という表現がぴったりです。
そんな中、BTSの兵役問題に韓国の大統領として「世論に従う」とか言ってしまう、政治家としての弱さがこの記事からあふれ出しています。
兵役問題という韓国人にとって大きな問題にリーダーシップを持って自分が解決しようとするのではなく、「世論に従う」ですからね?
けっきょく対日外交でも同じようにふらふらと世論に翻弄される可能性は低くないと見ています。
ただ、日本企業の現金化によって日韓関係を断絶させるという選択肢はアメリカの手前取ることができない。
どちらにも動きを取ることができないジレンマに晒されているわけですね。
かといって国内を見てみれば野党が圧倒的な議席数を握っている現状では立法措置も不可能。
結果として「司法側に圧力を加える」なんていうやりかた(問題の棚上げ狙い)をするのではないか、とも予想しています。
とりあえずは予定されている「有識者による協議」がどのような結果になるのかを見たいところではあります。
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