アラブ首長国連邦(UAE)が、李明博(イ・ミョンバク)政権当時に韓国と締結した非公開の軍事了解覚書(MOU)を正式な軍事協定に切り替え、国会での批准同意もしてほしいと韓国政府に要求していることが27日までに分かった。しかし韓国政府は、国内の政治状況や外交的に微妙な問題であることを考慮すると、国会での批准同意は困難という立場を取っている。韓国大統領府(青瓦台)および外交チャンネルを通して、交渉で解決しようと説得しているが、UAE側が受け入れるかどうかは未知数だ。
文在寅(ムン・ジェイン)政権は昨年末、この軍事MOUを修正しようと要求したが、UAEとの外交摩擦に突き当たった。大統領まで乗り出してどうにか取り繕ったが、わずか8カ月で再び問題が膨れ上がっているのだ。外交関係者の間からは「李明博政権時代の軍事MOUに触れたことがやぶ蛇になった」という声が上がっている。
2009年、当時の李明博政権はUAEの原発を受注するとともに、アーク部隊(UAE軍事訓練協力団。Akh Unit)の派遣を含め、有事の際に韓国軍がUAEを支援するという内容の軍事MOUを締結した。UAEに対する軍事支援は中東諸国の反発を買いかねないデリケートな内容だということで、MOU形式にされた。当時、軍事協力を推進していた金泰栄(キム・テヨン)元国防長官は「国益のため最善を選んだ」と語った。
ところが文在寅政権は「MOUに問題がある」として、UAE側に修正を求めた。UAEが強く反発すると、大統領府はイム・ジョンソク秘書室長を特使として派遣し、文在寅大統領もUAEを訪問して問題を取り繕った。
しかしUAE政府はその後、両国間の協議の過程で、MOUを具体的な軍事協定に転換して国会で批准同意を受けるよう要求してきた。韓国政府の関係者は「有事の際におけるUAEへの韓国の軍事支援や介入の問題が表面化した場合、ほかの中東諸国が問題を提起する可能性がある」「国民的同意を得るのも困難だろう」と語った。
複数の韓国政府関係者が伝えたところによると、イム・ジョンソク大統領秘書室長は近々UAEナンバー2のハルドゥーン・アブダビ執行関係庁長官と電話会談を行い、問題について話し合うという。ハルドゥーン長官がイム秘書室長との電話会談でも国会批准同意を要求し続けた場合、韓国政府としては外交上難関に突き当たりかねない。UAEの国会批准要求を拒否した場合、韓国型原発はもちろん、UAEに進出した韓国企業にも悪影響が及びかねないのだ。野党では「国益が懸かったデリケートな外交問題を『積弊清算』として追い立て、それがブーメランになって返ってきた」と指摘している。
(引用ここまで)
なるほどねー。
去年の年末から今年にかけてUAEとやたら行き来がありまして。
皇太子の甥は訪韓するわ、大統領府の秘書室長がUAEに向かうわで。
最終的には「どうやら原発売り込みの時の軍事関連の約束を反故にしようとしたらしい」との結論づけられていました。
ムン・ジェイン政権によってローラー作戦的に過去9年の保守政権によって行われた政権の見直しが図られていまして。
ひとつでも齟齬があればそれを追求して保守派の根絶に役立てようという意向があったのです。
その調査チームによってUAEの原発建設についても「合法とは言い切れない手法」で受注を得たことが判明していたというわけですね。
2009年当時、日本やフランスといった原発建設に経験のある国、企業を押しのけて韓国がUAEの原発を受注したのですよ。
そりゃもうえらい騒ぎでしたわ。「韓国の技術が日仏を上回った!」「日仏露で占められてた原発受注を韓国が崩した!」といった新聞記事が山ほど出ていました。イ・ミョンバクについても「さすが経済大統領」と絶賛でしたね。
笑っちゃうのはこの受注に成功した日を「原子力発電の日」に制定しちゃったことです。
このUAEでの受注について当時から「眉唾だなー」とは思っていたのですが、その後に60年稼働保証や9000億円クラスの借款、さらには軍事協力といったオプションが山ほどついていたことが判明して「受注実績を重ねるためのなりふり構わないオマケ商法だった」というオチに終わっています。
その後、トルコからも原発受注を狙っていたのですが「じゃあUAEと同条件で頼むわ」という依頼を韓国側が拒絶したところ、最終的な受注を日本企業に持っていかれたという結果でしたね。
なりふり構わない受注はどうしたって歪みを生むのさ……。
で、ムン・ジェイン政権としてはこのUAEにおける原発受注に伴う軍事協力を「政権が変わったのでもはや無効だ」とばかりに反故にしようとしていたのですが。
UAEからは強烈な反発を喰らって大騒ぎになった……というのが年末から年明けの騒ぎだったようです。
さて、この騒動をUAE側の視点から見てみましょうか。
UAEとしては韓国側(当時のイ・ミョンバク政権)と結んだ軍事に関するMOUを、ムン・ジェイン政権が反故にしようとしてきたわけですね。
これでは拘束力が弱いと考えて当然。
韓国は年末の交渉時に「この軍事協力をまともに行使するには国会での同意、批准が必要」というような言い訳をしたのだそうです。
というわけで、UAEから「じゃあ国会で批准しろ」と依頼があったと。
なんという藪蛇。
これについて反故にした場合の罰則事項があるのかないのかなんとも言いかねる部分ですが。
心証がよくないのは間違いないところでしょう。
まあ、自分の国では「原発は汚い電気」とばかりに原発ゼロ政策を推し進めておきながら、他国で原発建設をするなんて矛盾が通用するわけもないでしょうにね。
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門田 隆将
PHP研究所
2012/11/22