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カテゴリ:FTAの記事一覧

韓国産業通商資源部高官「日本の輸出規制は『RCEP協定文に違反』である」と指摘……韓国の世界線ではRCEPが妥結している模様

カテゴリ:FTA コメント:(103)
日本の輸出規制は「RCEP協定文に違反」=韓国高官
 韓国産業通商資源部の兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長(次官級)は7日、韓国や日本、中国、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国など計16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は「世界貿易機関(WTO)と同様に輸出制限ができないようにする規定を設けている」とし、日本の対韓輸出規制強化は「(RCEPの)協定文にも違反する」と指摘した。その上で、RCEPを通じて日本の輸出規制に効果的に対応できるとの認識を示した。出演したラジオ番組で語った。 (中略)

 また、日本の輸出規制による韓国の業界への被害については、「生産への支障など直接的な被害はない」としながらも、「長期化に備えて綿密にモニタリングし、必要に応じて速やかに支援する」と説明した。
(引用ここまで)


 えーっと、この人バカなのかな(直球)。
 妥結も発行もしていない協約のルールを掲げて「違反している」とかもうね。

 RCEPは今回の会議で年内妥結が絶望的になったし、インドの離脱がほぼ決定したことで来年以降もいつになったら妥結するのか不明という状況。
 CPTPPに参加しなかった(できなかった)韓国は中国とインドが参加するRCEPに全力投球していた部分があるので、こういった考えかたにもなるのでしょうが。
 RCEPは去年も「年内妥結を」→「ダメでした」ってやってて、今年も同様のぐだぐださでした。

 なにやら韓国では「15カ国で妥結した」というような報道がされているのですけどね。

世宗大学キム・デジョン教授「米中・韓日の通商戦争、RCEP登録で危機克服を」論文発表(中央日報)
文大統領「韓半島の平和は、多くの節目残っているが、必ずしも進むべき道」(聯合ニュース・朝鮮語)
[今日のキーワード]韓国のマスコミだけ「RCEP妥結」報道……実際は偽ニュースだった?(SBS・朝鮮語)
キム教授は「4日、タイでRCEP(東アジア地域包括的経済連携)が妥結された。米国は保護貿易と自国中心主義に進んでいる。韓国は世界5位の製造業中心国であり、世界10位の貿易大国だ。韓国はRCEPに積極的に参加して交易を拡大し、貿易を活性化するきっかけを作らなければならない」と主張した。
(引用ここまで)

ムン大統領は最近、世界最大規模の自由貿易協定(FTA)の域内包括的経済連携協定(RCEP)が妥結したことについても「域内自由貿易の拡大と共同繁栄のために非常に重要な契機」と評価した。

ムン大統領は「今回、世界最大のメガFTAのRCEP協定文を妥結し、来年に最終的な署名をすることにした」とし「互恵的・開放的貿易システム、格差のない経済発展と経済共同体に進む非常に重要な足がかりになることの側面でも、非常に大きな成果」と説明した。
(引用ここまで)

 韓国でだけRCEPが妥結されたという世界線で次元が進んでいるようですね。
  ムン・ジェイン自ら「妥結した」と宣言してしまっているので、その下にいる官僚も妥結した前提で話を進めている……というオチか。
 実際にはインドを除いた15カ国でも進めよう、という意思の確認があっただけ。
 また来年6月だったかにある第4回会合で「年内妥結を」って言い出すんじゃないですかね。

中国・李克強首相「日中韓FTAは3カ国のいずれにとってもプラスで推進していく」……日本のメリットがなさすぎるでしょ

カテゴリ:FTA コメント:(136)
タグ: 日中韓FTA
中国首相、対米関係改善に意欲=日中韓FTA合意に前向き(時事通信)
中国の李克強首相は15日、北京の人民大会堂で記者会見し、貿易摩擦により悪化する米国との関係について「曲折はあるが、前進する流れは変わらない。共通の利益は立場の違いよりもはるかに大きい」と述べ、関係改善に意欲を示した。李首相は「(貿易)協議で互いの利益となる成果の実現を望んでいる」と強調した。 (中略)

 また、締結交渉中の日中韓自由貿易協定(FTA)に関して「世界で保護貿易主義が台頭する中、高い水準の協定ができれば3カ国のいずれにとってもプラスだ」と語った。今年の日中韓首脳会談は李首相が議長を務めるが、日程など交渉の詳細については言及を避けた。また、日中関係の現状についても発言しなかった。
(引用ここまで)

 中国はアメリカとの貿易紛争を見据えて、日本を巻きこんで経済ブロック化を進めたいのでしょうね。
 一路一帯構想でもヨーロッパ諸国が不安視している部分を、日本を巻きこんで信頼を得ようとしています。
 また、天安門事件後の天皇陛下訪中で欧米からの経済制裁が緩んだことの再現を狙っている部分もあるのでしょう。
 あれを主導したのが外務省であったのか宮内庁であったのかは知りませんが、戦後の皇室外交の汚点ともいえるのではないかと個人的には感じています。
 言うなれば中国が日本をレバレッジとしてアメリカを動かそうとしている部分もあるわけで、まだまだ「日本」という存在、ブランドが通用するという話でもあるのですけどね。

 すでに中韓FTAは発効しているので、そこに日本を加えてNAFTA(USMCA)的な存在にしたいという構想といえるかな。
 ただまあ、ブロック化というのであれば日本はCPTPPで間に合っているし、CPTPP自体が対中国包囲網という性格を持つ貿易協定。
 その旗振り役であった日本が中韓FTAに参加するとなったら、信頼度は圧倒的に下がることでしょう。
 CPTPPも拡大志向は持っていますが、それはあくまでも「ルールを守った貿易をする同士が利益を共有する」という枠組みにおいてのみ。
 さすがに日本が中韓FTAに参加する意味がないなぁ……。
 鳩山政権時代だったら東アジア共同体構想もあって、嬉々として参加していたのかもしれませんが。
 ホントに鳩山政権っていうのは危険なものだったのですよ。

週刊エコノミスト 2019年03月19日号 [雑誌]
週刊エコノミスト編集部
毎日新聞出版
2019/3/11

韓国政府「アメリカに米韓FTA改定で後頭部を殴られた! 為替問題とFTAは別の問題だ!!」

カテゴリ:FTA コメント:(65)
「妥結した」という韓米FTA…米国側から次々と「違う声」(中央日報)
事実上妥結したと考えられていた韓米自由貿易協定(FTA)改定交渉に異常気流が流れている。米国が韓米FTA改定に関連し、繰り返し「違う声」を出している。

先月26日、金鉉宗(キム・ヒョンジョン)産業通商資源部通商交渉本部長は交渉妥結を発表し、「農業分野の『レッドライン』を守った」と述べた。農業市場を追加で開放しなかったと強調した。しかし米通商代表部(USTR)は先月30日(現地時間)、「国別貿易障壁報告書」を通じて「現在輸入が禁止された(米国産の)リンゴとナシについて(韓国)市場接近を要請した」とし「これら果物の輸入許可のために韓国に圧力を加え続ける」と明らかにした。これに先立ちサンダース米大統領報道官は「(韓米FTA改定交渉で)農業分野でも進展があった」と述べた。米国政府が韓国農業市場の開放に関心を持っていることを表している。

これだけではない。トランプ米大統領は先月29日(現地時間)、オハイオ州で演説し、韓米FTA改定交渉について「北朝鮮との交渉が妥結した後に先送りする可能性もある」と述べた。韓国政府はこの発言の真意を把握している。チョン・インギョ仁荷大対外副総長は「韓米FTA改定問題を朝米対話と連係し、『韓国政府が一定の役割を果たしてほしい』というメッセージを与えた」という見方を示した。 (中略)

米国が北朝鮮問題や為替レートを韓米FTAと結びつけようとする姿と関連し、韓国政府が「シャンパンをあまりにも早く開けた」という指摘が出ている。米国の「連係戦略」は十分に予測可能だったが、これに対応せず交渉の結果を自画自賛したということだ。 (中略)

チェ・ビョンイル梨花女子大国際大学院教授は「(政府が)交渉を終えて武勇談を語った」とし「最悪を避けた次悪を選択したのであり、次善ではなく最初から最後まで主導権を握られた交渉」と評価した。双方が韓米FTA関連の原則的な妥結を宣言しただけで最終署名はしていないだけに、最後まで緊張を緩めてはいけないというのが専門家の声だ。

両国通商長官の共同宣言文は出たが、改定協定文の作成と最終署名、両国国会の同意など韓米FTA改定が終わるまでの過程がまだ残っているからだ。
(引用ここまで)

 この記事の韓国版のタイトルが奮っていまして。

妥結したはずの韓米FTA……米、相次いだ後頭部(中央日報・朝鮮語)

 いわゆる「後頭部を殴られた=裏切りがあった」というヤツであると認識しているようなのですが。
 まあ、韓国が独り相撲をとっていただけですよね。

 米韓FTAが改定されたけども、鉄鋼輸出関税も免除されて実をとったのは韓国側であると「まるで我々の交渉手腕は古代の将軍そのものだ」くらいの勢いで自画自賛していたのですが。
 その後、アメリカからは……

韓国の為替介入への透明性を確保したと付帯文書を締結した
・農業分野でも圧力を加えていく
・正式な改定は米朝首脳会談後に先送り

 正式な改定は米朝首脳会談後に先送りというか、これ米朝首脳会談が成功しなかったら韓国にも詰め腹切らせる気満々ですよね。
 という感じで対韓国での通商政策を一気呵成に発表している状況。
 楽韓Webでは現状の米韓関係を見て「鉄鋼輸出関税が免除されるわけがない」というように語りました。その予想は外れましたが、それ以上の枷をはめられようとしているのが現状。
 当たり外れで言うなら、想定以上に正解したとでも言うべきか。
 韓国にとってはこれだったら鉄鋼への関税25%くらいのほうがよかったんじゃないかっていうレベル。
 そう考えると確かに「後頭部を殴られた」感はあるかもしれませんけどね。

 まあ、せいぜい「為替問題と米韓FTAは別」って言っていればいいんじゃないでしょうか。
 それを言うんだったら鉄鋼関税と米韓FTAも別ですし。
 すべての通商関連の出来事はばらばらに成立しているという言いかたもできるとは思いますよ。実際はどうであれ。

韓国政府「為替介入の透明化の約束と米韓FTAは一切関連がない! アメリカに抗議する!!!」……関連性がなくても約束したことに変わりはないなら意味ないじゃん

カテゴリ:FTA コメント:(87)
韓米間で主張の食い違いが続く「為替合意」(朝鮮日報)
韓米FTA:凱旋から一転、苦しいの言い訳を並べる韓国政府(朝鮮日報)
 米国の鉄鋼関税免除と関連づけられる形で韓米自由貿易協定(FTA)の改定が原則合意に至ったが、韓米両国の為替問題を巡る発言が食い違っている。米ホワイトハウス、通商代表部(USTR)は、鉄鋼と韓米FTA、為替問題が「パッケージ」で議論されたとの立場だ。しかし、韓国政府は韓米FTA改定と為替関連の協議は全く別個であり、米国が不必要な誤解を呼び起こしていると主張している。 (中略)

USTRのライトハイザー代表は同日、CNBCに出演し、「鉄鋼、為替、韓米FTAの3分野でそれぞれ合意した。3つの合意は独立した問題のように見えるが、全体として韓米の通商関係を規定するものだ」と発言した。

 一方、韓国政府は韓米FTA改定交渉と為替関連の協議は別個だとする立場を繰り返した。企画財政部関係者は29日、「米国が今年初めから韓米FTA改定交渉と為替をリンクさせようとしたが、強く拒否した」とし、「米国が韓米FTAの交渉結果発表過程で不必要な誤解を呼び起こしたことに強く抗議する」と表明した。同関係者は「為替は多国間の問題であり、米国との二国間交渉で扱う問題ではない。USTRが米国内でFTA交渉の成果を誇示しようとしたのではないか」との見方を示した。
(引用ここまで)
 韓米自由貿易協定(FTA)改正交渉後、「米国には見た目はいいが使えないものしか与えなかった」「祝い酒を飲もう」と自画自賛していた韓国政府が、米国と為替問題で合意したという事実が明らかになると、言い訳を始めた。

 金鉉宗(キム・ヒョンジョン)通商交渉本部長は29日、大統領府のインターネット放送に出演し、「26日(の交渉の結果)記者会見で為替レートに言及しなかったのは事実だ。しかし、サッカーをしに来た選手に『なぜ野球について話さないのか』と尋ねる質問のようだ」と言った。金鉉宗本部長はこれより前、今回の交渉を、契丹(きったん)と渡り合って高麗の領土を広げた賢臣・徐熙(ソ・ヒ)の交渉になぞらえていた。 (中略)

 企画財政部は28日と29日の二日間弁明し、米国に不必要な誤解を招いたことについて強く抗議したしたという。大統領府関係者も30日、「鉄鋼とFTA改正交渉はサッカーの試合をしたもので、為替レートの問題は全く別の時期に別の競技場で野球の試合をしたものだ」と言った。

 梨花女子大学の崔炳鎰(チェ・ビョンイル)教授は「FTA交渉と為替交渉が、産業部と企画財政部がそれぞれ米通商代表部と財務省を相手に行った『サッカーの試合』と『野球の試合』だったとしても、結局は韓国代表チーム対米国代表チームの総合競技だ。凱旋(がいせん)将軍のように成果を吹聴した政府の説明は苦しい言い訳に過ぎない」と批判した。
(引用ここまで)

 韓国政府は鉄鋼関税を避けるために、アメリカから求められていた米韓FTAを改定したわけですが。
 FTA改定自体は自動車輸入規制緩和と韓国国内の保険での国内製薬企業優遇の取りやめくらいで終わっていて、交渉担当者は「これで鉄鋼関税を回避できた。韓国の大勝利だ」といった物言いだったのですね。
 下の記事にあるように自らを「徐熙のように交渉をしてやった」と自画自賛。

 徐熙は契丹(遼)が攻めこんできたときに単騎で敵陣に向かい交渉した将軍で「契丹に対して服従するように見せかけ領土を広げた」という交渉のやり手であるとされています。
 「恭順したいのだが我らの国境付近には蛮族が多く、皇帝にお会いするにも危険が多い。その蛮族を掃討する資格をもらえるなら恭順いたしましょう」という建前で契丹側から領土を割譲してもらった……だったかな。
 契丹としても宋と高麗という両面作戦を避けたかったことから、そのていどの割譲であればということで合意ができたという歴史的な事実があります。

 交渉結果がFTA改定だけであれば、まさに徐熙の交渉手腕のごときと謳われてもおかしくないと思いますが。
 実際には鉄鋼について過去3年間の輸出実績の平均70%までしか輸出を認めないクォータ制導入がありました。
 さらに韓国政府の為替介入について透明性を確保するというアメリカがかねてから求めていた結果を差し出してしまった。
 アメリカからしてみれば海老で鯛を釣るどころではない大成果といえるでしょう。

 楽韓Webでは米韓関係の状況から見ても関税免除にはいかないと予想していましたが、それ以上の成果を上げることになったわけです。
 外需依存が高い韓国において、為替介入は通商の命綱ともいえる存在です。
 これまで「やっていない」と建前上は表明していましたが、数字の動きを解析しているところから見れば一目瞭然
 アメリカから見れば120点の出来といえるでしょう。

 韓国政府は「米韓FTAと為替合意については別個のものであって、FTAの付帯文章であるというように発表したアメリカには正式に抗議をした」という声明を出しているのですが。
 別個だからなんだってんでしょうね。
 それが今回、米韓FTAに付随して発表しなかった理由になったとしても、為替介入の透明化についてなんらアナウンスがなかった理由にはならないと思いますが。
 本質は米韓FTAにパッケージングされているかどうかではなく、為替介入に対する透明化を約束したか否か、ですよね。
 だんまりを決め込んでいたのも、韓国にとってとてつもなく不利になるからだという自覚があったからに他ならないのですが。
 ……もしかすると、今回の為替介入へ透明化の約束で将来的には米韓通貨スワップができるようになるかもしれません。
 であれば災い転じて福となるともなり得ますが……それであったとしても、韓国経済にとっては害が多すぎませんかね。

室谷さんの新刊が出たようですねー
なぜ日本人は韓国に嫌悪感を覚えるのか
室谷克実
飛鳥新社
2018/3/29

アメリカが韓国への鉄鋼関税免除を行った理由……これはえげつない……

カテゴリ:FTA コメント:(100)
米韓FTA再交渉が妥結、韓国の通貨安誘導阻止へ付属文書も=米政府(ロイター)
韓国、米向け鉄鋼輸出抑制で合意 FTA見直しも (日経新聞)
米国政府は27日、韓国との自由貿易協定(KORUS)の再交渉が妥結したと発表した。韓国政府による競争的通貨切り下げを阻止する付属文書を追加するほか、韓国が自動車や製薬分野で譲歩することでも合意した。(中略)

付属文書は、韓国に為替介入の透明性向上を義務付け、競争的目的でのウォン安誘導の回避を約束させる内容となる。

為替に関する合意は、制裁措置の対象とはならず拘束力がない付属文書の扱いとなる。
(引用ここまで)
 韓国政府によると米国が韓国を鉄鋼輸入制限の適用から除外する代わりに、韓国は輸出数量を制限するクオータ制を導入する。2015~17年の平均輸出量(383万トン)の70%を上限とする。
(引用ここまで)

 以前に楽韓Webで「韓国に対して圧力を与えるというのが目的であるから、韓国への関税免除を狙うのは難しいだろう」と書きました。
 ところがあに図らんや、韓国への関税免除が発表されたのですね。
 ですが、それには当然代償がありまして。

 ・韓国からの鉄鋼輸入制限、いわゆるクォータ制度の導入(過去3年平均の70%)。
 ・アメリカ産自動車のさらなる開放措置。
 ・保険制度での韓国製薬企業優遇の廃止。
 ・米韓FTAで為替介入の透明化を求める付帯文書の採用。

 これだけ捧げ物をしたら、そりゃアメリカも「このくらいで負けといてやろ」って言いますわな。
 特に最後の為替介入の透明化はすごい。
 かねてからアメリカからしてみたら韓国政府による為替介入は許しがたいものであったのですよ。
 パク・クネが訪米した際にも、「わたしは為替介入をしています」というプラカードを首から下げさせられかねないくらいの勢いでした。
 アメリカ政府からは何度ともなく、そしてIMFからも「もういい加減為替介入やめろ」くらいに言われていたものです。

 米韓FTAの最大の失敗は対ドルで常に為替介入をしてくる相手に対して、そのあたりの制限を課すことなしにFTAを結んだことであるという話はずーっと出ていたのです。
 今回の改定では罰則もなにもない付帯文書扱いですが。
 韓国が守ってこなかったら当然のように制限も増えていくことでしょう。なにより「為替介入」について明記させたことは大きな成果です。

 アメリカが韓国への圧力を狙って53%の関税賦課の12カ国に含めた、という読みは間違っていなかったといえるでしょう。
 実際にそれが発現したのが鉄鋼関税という形ではなく、米韓FTAの改定という形になったというだけ。
 本丸である為替介入についても手足を縛るまではいかないにしても、制限をつけることに成功しています。
 鉄鋼に関税を課すていどのことよりも、こちらのほうがアメリカにとってははるかに得点が高いものとなるでしょうね。

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トランプ「米韓FTAはひどい協定だ、いますぐ再交渉をはじめる」 → 韓国大統領府「再交渉が決まったという事実はない!」

カテゴリ:FTA コメント:(38)
トランプ大統領「韓米FTA再交渉」…文大統領の面前で公式化(中央日報)
トランプ氏「貿易赤字認められない」 韓米FTA再交渉を正式表明(聯合ニュース)
韓国大統領府「韓米FTA再交渉に合意していない」(聯合ニュース)

トランプ大統領は30日(現地時間)、ホワイトハウスで行われた首脳会談の冒頭発言で「我々は韓国と今すぐ韓米FTAの再交渉をする」とし「再交渉は両国にとって公正(equitable)で公平(fair)な協定(deal)にならなければいけない」と述べた。続いて「韓米FTAは不公正な協定だったが、今後変わることで両国に良い協定になるだろう」と強調した。

トランプ大統領は「我々は(国家)債務が巨大な、20兆ドルという状況で、貿易赤字が続くことを許容できない」とし「韓国と貿易協定を再交渉し、貿易赤字を減らし始める」とも話した。また「米国の労働者に利益になることを望む」と語った。 (中略)

トランプ大統領が韓米間の貿易協定を「米国には不公平な協定(rough deal for the US)」とまで表現し、今回の韓米首脳会談は米国優先主義を標ぼうしてきたトランプ大統領の対韓国貿易圧力を公式化する舞台となった。

トランプ大統領の直接的な表現も異例だが、トランプ大統領がこれを文大統領の面前で述べたという事実に青瓦台(チョンワデ、大統領府)は当惑したという。
(引用ここまで)
米国のトランプ大統領は30日午前(日本時間同日夜)、ワシントンのホワイトハウスで開催された文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領との初の首脳会談後に行った共同記者会見で、「米国は多くの国に対して貿易赤字がある。これ(貿易赤字が続くこと)を認められない」と述べ、貿易不均衡を是正するため、すぐに韓米自由貿易協定(FTA)の再交渉に着手する意向を正式に表明した。
(引用ここまで)
 張夏成(チャン・ハソン)青瓦台政策室長はワシントンで30日(米東部時間)に記者会見を開き「韓国の一部メディアが、韓米首脳会談でFTA再交渉に合意した、または再交渉が正式に表明されたと報じたが事実と異なる」と述べた。

 張室長は「首脳会談でトランプ大統領は大規模な貿易赤字、自動車・鉄鋼分野の貿易不均衡について問題を提起しながら一定の措置を取るか、あるいは新たな交渉を行うかを判断する必要があると述べた。これに対し文在寅(ムン・ジェイン)大統領はFTAの互恵性を強調しながら、FTA発効後の効果に関する共同調査の実施を提案した」と説明した。
(引用ここまで)

 日本のニュースサイトの他にアメリカ、韓国のニュースサイトをざっくりと見ていますが、米韓首脳会談でこれといった特別なお話はない模様。
 少なくとも表だって流れているかぎりでは。
 あえていうなら、この首脳会談前と首脳会談後の両方でトランプが「米韓FTAはよろしくない。再交渉する」って言明していたくらいです。
 あ、事前に表明されていた通りに記者会見はありましたが、質疑応答はありませんでした。まあ、正解でしょうね。

 で、トランプがこうして何度か「米韓FTAは再交渉する」って宣言しているものだから、韓国マスコミも既成事実であると思って「再交渉公式決定」って報じてしまったと。
 だけども、正式な立場としては「韓国政府は米韓FTAの再交渉に同意してない」のね。とりあえず、まだ。少なくとも同意はしていない。
 多額の貿易黒字を叩き出してきたまさに「ドル箱」の協定が再交渉になるとなれば、経済的な(特に株価への)影響は避けられないところでしょう。
 なので必死に否定しなければならないということかな。

 でも、トランプは選挙期間中から延々と「韓国によって雇用が奪われてきた」と述べてきたし、それ以前からアメリカ人の多くからも「あれは失敗だった」という認識になっている。
 就任後も「あんなひどい協定は再交渉か破棄する」とインタビューで話している
 アメリカファーストを標榜しながら、成果を出すことができていないトランプとしては是が非であろうとも米韓FTA再交渉に向かうでしょうね。

貿易不均衡是正のために山ほどシェールガスを買うことに決めたそうですわ。
シェールガス革命とは何か―エネルギー救世主が未来を変える
伊原 賢
東洋経済新報社
2012/8/14

韓国政府系シンクタンク「米韓FTAを終了させると損が大きいのはアメリカですよ。FTAやめるなんて言わないほうが得ですよ」……問題は損得じゃないことを理解しよう

カテゴリ:FTA コメント:(53)
韓米FTA終了なら米国企業の関税負担が増大(中央日報)
韓米自由貿易協定(FTA)が終了する場合、米国企業の関税負担が韓国企業よりさらに増えるという報告書が出された。国策研究機関の産業研究院が4日、報告書「韓米FTA再交渉と韓国の対応方向」を出した。

これによると、韓米FTAの発効後、韓米両国の相手国に対する製造業の加重平均関税率は計0.1%水準。両国間の関税がほとんど撤廃されたからだ。もし韓米FTAが終了すれば、両国は世界貿易機関(WTO)規定に基づき最恵国待遇(MFN)関税率が適用される。この場合、韓国企業が米国に輸出する際の関税率は平均1.6%、米国企業が韓国に輸出する際の関税率は約4%と分析された。

韓米FTAが終了する場合の輸出減少規模も米国の方が大きいという。(中略)

トランプ米大統領は候補時代から今まで韓米FTA再交渉論を持続的に提起し、実行に移している。トランプ大統領は3月31日、韓国を含む16カ国に対する貿易赤字構造を調査する内容の行政命令に署名した。5月には英エコノミストのインタビューで、「北米自由貿易協定(NAFTA)は悪い交渉だが、韓米FTAはひどい交渉」と主張したりもした。このため韓米FTA再交渉の可能性が高まっている状況だ。
(引用ここまで)

 どうもいまひとつなにを言いたいのか、なにを伝えたいのか分かりにくい記事ですね。
 おそらくは「米韓FTAをやめても損になるのはアメリカのほうだから、やめないほうが得ですよ」というような話に持っていきたいのでしょう。
 「経済的利益から考えたら貿易の全体量を減らすことになるFTA取りやめよりも、アメリカ製品の売り込みがお得です」というような感じなのでしょうけども。

 そもそも人間は経済的利益だけで動くもんじゃないし。
 経済的利益だけを見ればイギリスのEU離脱はなかっただろうし、そもそもトランプが大統領に選ばれていない。
 経済的結びつきを強くすれば戦争なんておきないなんて寝言を言っている輩は、人間には感情があることを忘れがちなのですよね。

 普通の人間はなんらかの苦境にあるときには「あなたたちが苦しんでいる原因はこれだ!」って声についていってしまいそうになるものなのです。
 まあ、実際の数字としても米韓FTAはひどいものなのですが。
 FTA締結時の約束も守られていないですしね。

 そもそも、現在の与党である共に民主党の前身である民主統合党はオバマ大統領に対して米韓FTA破棄を要求する書簡を送っていたのだから、願ったり叶ったりのはずなのですけどね?
 ムン・ジェインも2011年の大統領選挙では米韓FTAに反対の立場でしたしね。
 5年越しの願いが叶う瞬間が近づいているのですから、シャンパンの用意でもするべきではないでしょうか。

WTO 貿易自由化を超えて (岩波新書)
中川 淳司
岩波書店
2013/3/19

トランプ「米韓FTAは再交渉か破棄。あんなものは受け入れられない、ひどい協定だ」→韓国政府「え、聞いてないです」

カテゴリ:FTA コメント:(65)
米韓FTAは見直し、韓国がTHAAD費負担を=トランプ氏(ロイター)
朝鮮半島情勢、「制御不能となる」危険性がある=中国外相(ロイター)
トランプ米大統領は27日、ロイターのインタビューに応じ、韓国との自由貿易協定(FTA)を停止あるいは再交渉すると語った。 (中略)

大統領は2012年に発効した米韓FTAについて、米国がカナダ、メキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しを完了した後、再交渉の対象になると指摘。

米韓FTAは「ヒラリー(クリントン前国務長官)が結んだ、受け入れられない、ひどい協定だ」と批判し、米国は同協定を「再交渉もしくは停止する」と語った。

米国税調査局のデータによると、米国の対韓国貿易赤字は、米韓FTA発効前の2011年は132億ドルだったが、2016年には277億ドルまで増えている。(中略)

韓国企画財政省の匿名の高官はロイターに対し「発言と実際の政策は異なる」と述べた。現時点ではトランプ政権から何の要請も来ていないとし、今後の動きを見守っていく必要があるとの考えを示した。また、FTA再交渉について韓国は公式要請をまだ受けていないとする前日の柳一鎬・企画財政相の発言に言及した。
(引用ここまで)
中国の王毅外相は28日、朝鮮半島情勢について、状況が悪化し制御不能となる可能性があるとの認識を示した。ロシアの外交官に語った。

国連の会議に出席した際、ロシアとの会合で述べた。中国外務省が外相の発言を発表した。
(引用ここまで)

 米韓FTAこそがTPPを潰した原因ともいえるのですよ。
 FTAを結んでいるのに韓国政府がばんばん為替市場に介入し、ウォン安を演出してアメリカの雇用と富を奪い去っていったというのがアメリカ側の認識なのです。

 アメリカ国民の視点ではNAFTAがメキシコによる経済的搾取で、米韓FTAがアジアによる搾取の象徴。
 グローバリゼーションの波に乗ったら、中間層が貧しくなっていったという反発が「トランプ大統領」の生みの親といえます。
 生みの親には逆らえませんわな。

 TPPはまさにその延長線上にある多国間FTA。
 まだ発行していなかったことを幸いとして、まず就任と同時にこれを潰した。
 TPPに乗り遅れていた韓国は歓喜の声を上げていたのですが、次の目標はNAFTAと米韓FTAになるに決まっていたのですよ。
 メキシコからの不法移民と工場建設によって職を奪われた。
 米韓FTAによって本来得られるはずだった利益が奪われた。
 まあ、実際はどうなのかは情報の精査が必要ですが、アメリカ国民、そして議会からの視点はそうなっているのです。

 トランプが当選してからこっち、韓国はそれに備えるべきでしたし、そのための時間も充分にあったはずなのですが。
 やっていたことといえば大統領弾劾とそれに伴うぐだぐだ選挙戦。
 ま、しかたがない。

 もうひとつの王毅の発言記事は短いからこそ危険を性を感じます。他に載せられるような場所もなさそうなので、ここでピックアップしておきます。