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カテゴリ:米韓関係の記事一覧

APECの席で「中国とアメリカの板挟み」になった韓国、選択肢はどちらを選ぶ?

中国「協力要求」-米「圧迫」···合わせられない「半導体強国」韓国(ハンギョレ・朝鮮語)
25〜26日(現地時間)、米デトロイトで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会議を契機に集まった韓国と米国、中国の通商責任者たちが韓中、米中会談をそれぞれ開き相互関心事について話し合った。彼らは半導体と国際サプライチェーン、原材料などを主要テーマに挙げたが、協力よりはお互いの立場の違いを確認するのに止まった。

25日に開かれた米中商務長官会談で、ジーナ・レモンド米商務長官は「中国で営業中の米企業を狙って最近頻発している中国の措置に対して憂慮を提起した」と米商務省が明らかにした。21日、中国当局が米国半導体企業マイクロン製品で深刻な保安問題が発見されたとし販売制限措置を取ったが、これに対する不満を示したものと見られる。 (中略)

韓国と中国通商責任者の会談では「半導体」問題に対する両国の異なる態度が現れた。26日、産業通商資源部のアン・ドクグン通商交渉本部長とワン部長の出会い以後、中国商務部は資料を出し「両側が半導体産業網とサプライチェーン領域での対話と協力を強化することに同意した」と明らかにした。半導体に関連して両国が「協力に同意した」と明らかにしたものだが、これは韓国側の発表には含まれていない内容だ。中国が韓国側との会談で半導体分野の協力を要求し、韓国は原論的な水準の答弁をした可能性が高い。

反面、韓国産業部は(中略)半導体問題の代わりに、中国から輸入する原材料と部品の安定的な需給などを前面に掲げた。

最近、中国当局が米国の半導体メーカーであるマイクロンを制裁し、米中葛藤が高まった状況で、中国は韓国側の協力を望んでおり、米国は中国の制裁そのものを批判しながら韓国側に「中国に協力するな」というメッセージを送っている状況だ。韓国政府は最近、この問題についてまだ明示的な立場を示していない。 (中略)

政府は10月まで米国から先端半導体技術・装備の対中輸出禁止について例外を認めらている一方、中国半導体工場に対する生産能力制限措置を緩和しなければならない課題を抱えている。サムスン電子とSKハイニックスが70兆ウォン程度を投資した中国半導体工場の存廃がかかった問題だが、政府は1年余り近く「緊密に協議している」という言葉だけを繰り返している。国内半導体業界では「政府がメモリー半導体強国のレバレッジをまともに活用できず顔色ばかり伺っている」という指摘が出ている
(引用ここまで)


 APECの貿易相会合が行われまして。
 日本からは西村経産相が出席して12もの会談を行ったそうです。なかなかに精力的。

西村経済産業大臣が米国デトロイトへ出張しました(経済産業省)

 ただ、共同声明は出すことができずに主催国であるアメリカの議長声明が出たのみ。
 中国とロシアが反対したことで議長声明のみ。

 さて、そんな中で中国は韓国に対して「アメリカはああ言っているけど、韓国企業は中国へのメモリ半導体出荷を減らしたりはしないよね?」って話をして。
 アメリカは「中国がマイクロンのメモリを禁輸したけど、まさかそこをカバーして商売伸ばそうとは思ってないよね?」と釘を刺してくる。

 あー、これはあれですね。
 韓国がいうところの「韓国モテモテ状態」。



 パク・クネ政権時代に当時のユン・ビョンセ外交部長官が「韓国の外交手腕はハイレベル」「米中双方からラブコールを受ける韓国は祝福されている」とサンドイッチ状態の韓国の外交力を自画自賛してましたっけ。

 さすがに今回はそんなマヌケなコメントは出ていません。
 実際問題としてサムスン電子とSKハイニックスの中国工場への圧力を強めるアメリカと、もっとも弱い環である韓国に「アメリカを裏切れ」と圧力をかけてくる中国。
 パク・クネ政権当時よりもさらに「現実の問題」感が強くなっていますからね。

 んで、どっちにしても韓国の主体的な答えは出ていない。
 アメリカのCHIPS法に従えば数十兆ウォンを費やしてきた中国工場で新規投資はほぼできなくなり、ウエハベースで5%の増産が認められるだけ。
 従わなければASMLや日本からの最新設備導入が韓国国内、アメリカ国内の工場ですら難しくなる可能性がある。

 とはいえ、サプライチェーンをしっかりと握られている中国に悪い顔はできない。
 前政権では主権を一部譲り渡す(三不の誓い)までやってきましたからね。

 まあ、「Show your flag!」って言われているわけです。
 さて、とりあえずここまでは「アメリカに偏っている」とまで非難されているユン政権ですが。
 2年目にしてもっとも難しい選択肢を迫られています。
 得意の外交力とやらでなんとかしてみればよいんじゃないかなー。

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韓国メディア「米韓首脳会談で『経済外交』はなんの成果も得られなかった!」……そこまで事実を突きつけなくても……

ユン長官「経済外交」事実上無為···IRA・半導体法「期待」だけを繰り返す(亜洲経済・朝鮮語)
「大韓民国1号営業社員」を自任して訪米中だった尹錫悦大統領の「経済外交」が事実上無為に終わり、韓国企業の負担を減らすことに失敗した。

特に経済分野最大の話題だったインフレーション削減法(IRA)と半導体支援法(チップス法)は「特別な支援と配慮」に言及した米国側の善意だけを望む立場だ。

ここに米国企業が約束した投資額より韓国企業の対米投資規模がはるかに大きく、再選挑戦を宣言したバイデン大統領に贈り物の包みだけを抱かせて帰ってきたという自嘲まで出ている。 (中略)

一部では韓米通貨スワップ締結など不十分な訪米成果を覆うほどの「サプライズプレゼント」を期待したりもしたが現実化しなかった。

ウォン安が続くなど外国為替市場の不安が続き、一部の専門家らは今回の首脳会談で通貨スワップを交渉テーブルに乗せなければならないという声を出したりもした。
(引用ここまで)


 ユン・ソンニョル大統領が国賓訪米を終え、昨日韓国に帰国しました。
 いつものように韓国大統領室は「とてつもない成果があった」とアナウンスしていますが、少なくとも経済界はしらけた雰囲気です。
 経済界が望んでいたことはおおまかに3つ。

・IRA、CHIPS法での韓国企業に対する優遇措置
・通貨スワップなどのウォンを防御する金融措置
・アメリカ企業の韓国への投資

 どれもすべてなにもなかった、というわけではありませんが。
 ……いや、なにもなかったと言うべきか。

 「IRA、CHIPS法で韓国企業が被る投資不確実性について協議する」としていますが。
 協議した結果でなにかが出るのか。
 たとえばCHIPS法で禁止されている中国工場への先端半導体製造装置の搬入について、韓国企業への1年間猶予が延長される等の具体的な成果ですね。
 相当に期待薄。

 というか、猶予が延長されるなら10月からなのでいまから判断がないと意味がない。製造装置の導入には優に1年以上はかかりますからね。
 まあ……アメリカにそのつもりがない、というのが実際でしょう。
 以前、商務省のエステベス産業安保次官が「今年の10月からは生産についても制限を課す可能性が高い」と述べていました。


 生産に制限が課されるかどうかはともかく。
 1年間の猶予が延長されないのはもはや既定路線。

 金融面でもウォンが弱りに弱っていまして。
 「円安で日本旅行はめちゃくちゃお得!」って言われていたのですが、あれよあれよという間に100円=1000ウォンのいつものレートに逆戻り。
 そんな中で通貨スワップ協定を結べないか、少なくともそのとっかかりになるものが得られないかと期待されていたのですね。

 で、結果はゼロ。
 金融関連でなにか成果があったかと探したのですが、なにも見つからなかったくらいにゼロ。
 無駄に期待をかけてぽしゃるくらいなら最初から議題としてテーブルに上げなければいいというくらいの潔さ。
 ま、去年に散々「アメリカは通貨スワップ協定を協議するって言ったのに!」って韓国メディアが騒ぎまくったことに懲りたのかもしれませんね。

 ちなみに去年の米韓首脳会談でも「金融面で緊密に協議する」との共同声明は出てました。これを受けて韓国メディアは「常設スワップもできるはず」と大喜びでしたね。
 きっと、今回、共同声明に出てたIRAやCHIPS法についても緊密に協議するんでしょう。きっとそう。

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韓国メディア「今回のユン大統領の訪米で韓国はアメリカに寄り添ったために、新冷戦の中心地に飛びこんでしまった!」……いや、自己評価高いね?

カテゴリ:米韓関係 コメント:(87)
タグ: 米韓関係
米国との密着進む…尹政権、新冷戦の中心部に飛び込んだ(ハンギョレ)
 韓米同盟70周年を迎え、26日(現地時間)に米ワシントンで開かれた尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領とジョー・バイデン米大統領の韓米首脳会談は、価値観同盟の強化に基づいた米国との結束力強化が主な内容だ。「ワシントン宣言」から導き出した「韓米核協議グループ(NCG)」の新設など安保同盟の画期的な強化はもちろん、経済・技術・文化・情報など協力分野を全面的に拡大し、韓米密着をさらに進めたことで、尹錫悦政権が韓日協力と新冷戦構図への編入を強固にした外交政策の分岐点として記録されるものとみられる。 (中略)

 韓米はさらに、米国の核作戦に韓国の通常兵器支援の共同実行と計画の協力▽朝鮮半島への核抑止の適用に関する合同教育・訓練活動の強化▽新たな汎政府レベルの図上シミュレーションの導入▽核戦力運用を担当する米戦略司令部との新図上訓練などを通じて連合防衛態勢を再整備することで合意した。

 その代わり、米国はワシントン宣言に韓国の非核化維持と核拡散防止条約(NPT)の義務順守を含め、一部で浮上していた「朝鮮半島核武装論」を排斥し、韓国政府から米国のインド太平洋戦略と台湾海峡問題に対する絶対的な支持の約束を取りつけた。同時に韓米は、北朝鮮に対する強硬基調で歩調を合わせた。バイデン大統領は首脳会談後の共同記者会見で「北朝鮮が米国や同盟、パートナー国に核攻撃を加えることは容認できず、そのような行動をするいかなる政権も終焉を迎えるだろう」と警告した。両首脳は「ウクライナへの支援協力」も約束し、ウクライナに対する韓国の軍事支援の可能性について含みを残した。 (中略)

 経済安保分野ではこれといった進展がなかったものとみられている。韓国企業に及ぼす影響力が大きいインフレ抑制法(IRA)と半導体科学法(CHIPS法)に関しても、共同声明で「韓米両国が傾けてきた努力を評価」し「緊密な協議を継続していくことを約束する」という言及に止まった。
(引用ここまで)


 左派紙ハンギョレが「今回のワシントン宣言で韓国は新冷戦の中心部に飛びこんでしまった」と論評しています。
 ……そう?
 これまでバランス外交を標榜していた頃に比べれば、アメリカ側についたというのは間違いないところでしょうが。

 それでもいまアメリカ側についたところで「中心部」はないわな。
 この「中心部に飛びこんだ」って言いかたがまた韓国人の世界観につながっているところが苦笑ポイントでもありますかね。  彼らの世界観、すなわち「韓国は世界に認められているし、韓国が世界を変えることができる地位にある」というもの。


 だって「新冷戦の中心地」よ?
 どんだけ韓国の地位を高く見積もったらこんな話が出てくるんだって話ですよ。

 「自由で開かれたインド太平洋戦略」を提唱し、クアッドの旗振り役となった日本であればまあ「中心地にいる」って言えるとは思いますよ。
 イギリス、オーストラリアとも準同盟といえる状況になっているわけですし。
 最大の懸念だった防衛費も増強が決まっている。

 台湾は当事者ですし、アメリカもCHIPS法で中国と対峙している。
 でも、韓国が「中心地に飛びこんだ」ですからね。

 韓国はこれまでそうした取り組みに一切関わってこなかったし、今回の訪米もアメリカとの同盟を再確認したていどでしかない。
 いやもう、どんだけ自己評価高いのよ。笑っちゃいますね。

 あと「ユン大統領のインド太平洋戦略」ってのも以前に発表されているのですが、これがもう空虚。無。虚無。
 発表されたときからピックアップしたくてしょうがなかったんだけど、無を解説するのってすんごい難しくて……。
 今回、ついでにちらっと取り上げてみました。これだけでエントリを立てるにしてもうまく伝えられるかな、あの空虚さ。

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アメリカ政府高官、韓国の「ワシントン宣言は事実上の核共有」発言を即座に否定。「我々の定義では『核共有』ではない」

米高位当局者「ワシントン宣言、事実上核共有ではない」(聯合ニュース・朝鮮語)
米国が韓国に提供する拡大抑止力を強化するため、韓米首脳会談で採択した「ワシントン宣言」について、米国政府高位当局者が「核共有ではない」という立場を明らかにした。

これは宣言に盛り込まれた措置が「事実上米国との核共有」という韓国政府の説明と温度差があり、議論が予想される。

エドガード・ケーガン・ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)東アジア・オセアニア担当選任局長は27日(現地時間)、ワシントンDC国務省で開かれた韓国特派員団とブリーフィングで、「韓国政府はワシントン宣言を事実上核共有と説明するが、この説明に同意するか」との質問を受けた。

これにケイガン局長は「ただ非常にストレートに言います。我々はこの宣言を『事実上の核共有』とは考えていない」と答えた。

彼は韓国政府と立場が違うのかという質問に「それは(立場が違うという主張は)反論したい。私たちは韓国の同僚らと幅広い議論をした。我々の立場において『核共有』と述べる場合は重大な意味を内包する」( has significant implications )と明らかにした。 (中略)

「韓国大統領室が核共有をどのように定義するかについては私が言うことはできないが、私たちの定義では核共有ではない」と付け加えた。 (中略)

クリテンブリンク米国国務次官補(東アジア・太平洋担当)は「核共有ではない」という発言が議論される可能性を懸念しているように、「今回の国賓訪問における非常に明確なメッセージは、米国と韓国がこれまで以上に歩調を合わせて団結したということだ。そのような部分(訳注・核共有議論)に焦点を合わせようとすると、間違いになるだろう」と話した。
(引用ここまで)


 今回のユン・ソンニョル大統領訪米において出されたワシントン宣言について、韓国大統領室は「事実上の核共有」としていましたが。
 アメリカ当局からは即日で「少なくとも我々の認識している『核共有』ではない」と断言されました。
 まあ、そりゃそうで。

 NATOとやっている核共有と同一視されたくない、というのがアメリカの本音でしょう。
 NATOとの核共有もNPTの拡散について違反ぎりぎりのところをついている裏技みたいなものですし。
 アメリカとしても痛くもない腹を探られたくない。
 特にロシアがウクライナと戦争を起こしている最中に「アメリカが新たに核共有を」なんて話を出されるのは迷惑でしかない。


 というわけで韓国大統領室がいうところの「事実上の核共有」は幻として消えたのでした。
 まだ「修辞上の話だ」って言ってますが。

「事実上の核共有」 韓米間で早くも食い違い=韓国は「立場は違わない」(聯合ニュース)
 韓国大統領室は核弾頭を搭載した弾道ミサイルを発射できる米戦略原子力潜水艦の定期的な展開などワシントン宣言に盛り込まれた実質的な措置により安保不安を拭い去るとともに、核配備のような効果を期待できると判断している。大統領室関係者は「『事実上の核共有』は一種の修辞的な表現」と述べた。

 米側が尹大統領の訪米期間中に論争を呼ぶ可能性があるにもかかわらず明確な立場を表明したのは、韓国側に対し「核共有」について慎重さを求める狙いがあるとみられる。米国は核兵器使用について、独占的かつ排他的で、最終的な権限は米大統領だけが持つとの立場を堅持している。ワシントン宣言を通じ、韓国に対する拡大抑止の強化は確認したが、核使用の「単一権限」を韓国と共有する意思はないことを明確にしたものとみられる。「核共有」が韓国への核兵器の配備を容認するものとして解釈されることを避けたい考えもあるようだ。
(引用ここまで)

 ワシントン宣言は「核関連についてアメリカに永続的に依存する」という部分以外は、米韓の協力体制について再確認を行えたものとして充分な訪米のお土産といえるでしょう。
 こんな「事実上の核共有なのか否か」なんて些末な話で左右されたくはない、というのもまた本音でしょう。
 ユン大統領も「米韓同盟をアップグレードできた」としています。

米大学で「ワシントン宣言」説明 対日関係の重要性にも言及=尹大統領(聯合ニュース)

 ま、「アップグレード」だけでは我慢できずにオマケをつけようとして、アメリカの不興を買っているところはいつもの韓国だな、といったところ。

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韓国政府「半導体補助金を巡る不透明感を提言すると米韓で約束した!」……実際のアメリカと韓国のリリースを読んでみると?

米韓、半導体補助金巡る企業の不透明感低減で合意(ロイター)
韓国産業通商資源省は28日、李昌洋・産業相とレモンド米商務長官が米政府の新たな半導体補助金を巡り、企業の投資を取り巻く不透明感を低減することで合意したと発表した。

米半導体補助金法を巡っては、韓国の尹錫悦大統領が補助金の条件について、サムスン電子やSKハイニックスにとり懸念要因だと述べている。

発表によると、李氏は「過剰」とする企業情報の提供や米政府との超過利益共有など補助金要件に関する半導体メーカーの不明点を解消するようレモンド氏に求めた。
(引用ここまで)


 CHIPS法のガードレール条項について、韓国の産業通商資源部が「企業の投資不確実性と経営負担を最小限に抑えることで合意し、そのために持続協議」について合意した、と発表したとのこと。
 うむ、微妙。
 要するにサムスン電子とSKハイニックスの中国にある工場についてどうするのか、あるいはアメリカへ投資する際の条件の明確化を求めたということなのでしょうが。
 ……微妙。

 韓国産業通商資源部のリリースはこちら。

韓米、「企業投資不確実性の最小化」合意(産業通商資源部・朝鮮語)

 上の「企業の投資不確実性〜」はここから引用した一文。
 韓国のリリースですらこのくらいの曖昧な文言でしかない。
 アメリカ商務省のリリースはさらに微妙でして。


United States - Korea Supply Chain and Commercial Dialogue Ministerial Joint Statement(商務省・英語)
当事者(訳注・韓国とアメリカの当局)は両国の半導体産業の成長を支援するための政府のインセンティブ及び政策の実施について、緊密な協議を継続する意向である。両当事者は企業の投資及び事業負担の不確実性を最小化するために、CHIPS法の要件及び機会並びに関心のある民間企業に対する韓国のインセンティブに関する協議を継続する予定である。参加者は韓国と米国の半導体エコシステムにおいて、韓国と米国の企業による投資に有利な条件を作り出すという要望を共同で共有する。
(引用ここまで)

 ……微妙がすぎる。
 要するに「協議はするよ。ワーキンググループも設立するよ」とは言っているけど、それが韓国の望む方向性になるかどうかはまったく書かれていない。
 というか韓国ですら「不確実性について持続的に協議する」としか言っていない。

 同様にIRA、CHIPS法について米韓首脳会談の共同宣言でも言及があるのですが。

Leaders’ Joint Statement in Commemoration of the 70th Anniversary of the Alliance between the United States of America and the Republic of Korea(ホワイトハウス・英語)
両首脳はインフレ抑制法(IRA)とCHIPS法に関する韓国企業の懸念を緩和するために韓国と米国が行った最近の努力を評価した。両大統領は、事業活動のための予測可能な条件を作成することにより、これらの法律が米国における相互に有益な企業投資を促進することを確実にする目的で、緊密な協議を継続することを約束した。
(引用ここまで)

 こちらも協議する、との原則的な言及だけ。
 このパターンはこれまでだと「協議する(協議するとは言っていない)」ってことが多いですね。

 というか……韓国が特別扱いされるなら日本もオランダも台湾も「じゃあ、うちらもそうなるよな」ってなってCHIPS法が破綻して終了ですから。
 韓国人にとっては「法を飛び越える特別扱い」ことは当たり前のことなのでしょうが、アメリカにとってはそうではない。
 その意識の違いが面倒くささを生んでいるのでしょうね。

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韓国ユン大統領「核共有してくれないなら独自の核開発とかしちゃうかも」→アメリカ「は?」

拡大抑止に特化した韓米ワシントン宣言 「事実上の核共有」=韓国大統領室(聯合ニュース)
韓国と米国は26日(米東部時間)の首脳会談後に発表した「ワシントン宣言」に、より実質的な「韓国型」拡大抑止策を盛り込んだ。北朝鮮の核脅威が高まるなか、韓米首脳は韓国に対する米国の拡大抑止公約を具体化・制度化するとともに、拡大抑止への韓国の関与を高めることで一致した。

 韓国大統領室は、宣言は韓国に対する米国の拡大抑止の実行力を画期的に高め、「事実上の米国との核共有」を実現するものだと評価している。

 ワシントン宣言は韓米の拡大抑止問題を集中的に取り扱う首脳レベルの初の共同合意文となる。同問題を巡る韓米の1年近くにわたる協議の成果でもある。韓米同盟70周年を迎え、北朝鮮の核脅威に対する両国の協力が揺るぎないことを示す意味合いが大きい。
(引用ここまで)


 ここのところ、韓国政府は延々と「北朝鮮が核兵器を使用した際に、アメリカは本当に報復を行うのか」として、いわゆる「核の傘」に対する不信論を述べてまして。
 というか、ユン・ソンニョル大統領が大統領候補であった時代からすでに「在韓米軍基地に戦術核を配備してもらってもいい」くらいのことを言ってまして。
 それに対して中国が反発するなどしていました。
 言ってみればユン・ソンニョル大統領の公約、あるいは信念的なものといえるわけですね。

 今年の念頭には朝鮮日報とのインタビューで「核兵器に関して米韓で情報共有を積極的に進めたい。訓練も共同で行えればなおいい」と発言するなどしていました。
 戦術核配備(とその共同訓練)がなければ独自の核兵器開発、装備も辞さないくらいの勢い。
 んで、今回の訪米でその回答がアメリカから出てきた、というわけです。


 大統領府は「事実上の核共有」とまで述べていますが。
 その実態はまったく異なっています。

 ホワイトハウスから発表された「ワシントン宣言(Washington Declaration)を見てみましょう。

Washington Declaration(ホワイトハウス・英語)
韓国は、米国による核拡大抑止のコミットメントを全面的に信頼し、米国の核抑止力に永続的に依存することの重要性、必要性及び利益を認識している。米国は、朝鮮半島において米国の「核態勢見直し」の宣言的な方針に基づき、あらゆる核兵器使用の可能性について韓国と協議するためにあらゆる努力をすることを約束し、同盟はこれらの協議を促進するために強固な通信インフラを維持する。 ユン大統領は、世界的な核不拡散体制の基礎となる核不拡散条約と、原子力平和利用に関する米韓協力協定に基づく韓国の義務を再確認した上で、韓国が長年にわたってコミットしていることを明らかにした。
(引用ここまで)

 「 its enduring reliance on the U.S. nuclear deterrent.」かぁ。enduring reliance、をなんと訳すかですが、とりあえずDeepl.comでは「永続的な依存」と訳しています。
 まあ、だよなぁ。
 この文言、外交用語としてはかなり強めです。
 総じて「韓国はアメリカの『核の傘』を信頼していることを再認識し、独自の核兵器開発など行わないことをアメリカと約束した」という基調の宣言となっていますね。
 アメリカの逆鱗に触れた感じ。

 アメリカ側は「韓国への核の傘保証を与え続ける証拠として戦略原潜を韓国に派遣する」としています。

韓国への戦略原潜派遣、北朝鮮の攻撃から守る米国の決意示す(ロイター)

 SSBNに搭載されているトライデントIIは地球の裏側からでも北朝鮮に届く核ミサイルを装備しているので、韓国派遣になんの意味もないのですが。
 「姿を見せる」こと自体が狙いともいえるかな。

 これを「事実上の核共有」っていえるのもなかなかのトンチというか。
 そう言う以外にはメンツを保つ方法がないというか……。
 プルトニウムの精製やウラン濃縮みたいな「いたずら」はもう二度と許さないぞ、という強いメッセージなってるなぁ。

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韓国大統領、国賓として訪米も「通貨スワップ協定の話は出ない」と諦め気味。日韓財務相会談でも「日本は通貨スワップ協定を政治的取引としているから」議題とはしないと決定するものの……

「韓日通貨スワップ論議しない」···財務長官会談の案件書を除外(韓国経済新聞・朝鮮語)
来月7年ぶりに再開される韓日財務長官会談で通貨スワップ案件が最終除外されたことが確認された。韓日首脳が金融·外国為替分野で協力することにしたが、通貨スワップ締結は全く至急ではないというのが外国為替当局の判断だ。

25日、企画財政部によると、チュ・ギョンホ)副首相兼企画財政部長官は来月2日から4日間、仁川松島で開かれる第56回アジア開発銀行(ADB)年次総会の際、鈴木俊一日本財務長官との二国間会談を開く予定だ。両国の実務陣は、細部会議の日程や案件について最終調整を進めている。

当初、案件として議論されるものと予想されていた韓日通貨スワップは案件から外された模様だ。企画財政部関係者は「実務陣でも通貨スワップ関連議論は一切進行していない」として「二国間会談の時に議論される可能性もないと見てくれていい」と明らかにした。

外国為替当局は、韓日通貨スワップは7年ぶりに再開される財務長官会談で議論するほど急がれる事案ではないと見ている。特に、外貨保有高など対外健全性指標自体が堅調であるため、直ちに韓日通貨スワップが必要な状況でもないというのが政府高官の説明だ。 (中略)

7年ぶりに再開される財務長官会談で韓日通貨スワップを先に提案した場合、主導権を奪われかねないという政治的な考慮も作用したという。日本の場合、通貨スワップ業務の主導権は中央銀行ではなく財務省が握っている。政府関係者は「日本では通貨スワップを金融・外国為替市場安定という側面よりは国家間政治的取引と見る見解が強い」と指摘した。
(引用ここまで)


 ユン・ソンニョル大統領が国賓として訪米していますが、先日も述べたように韓国ウォンが独歩安を記録しています。
 そこで民間や経済評論家からは「これをきっかに米韓通貨スワップ協定を結ぶべきだ」との声が出ています。
 出てます、というか渇望しているっていうレベルになってます。

為替レートまた最安値···韓米通貨スワップの声が高まる(文化日報・朝鮮語)

 ただ、この記事の最後にあるようにアメリカ側にその気はゼロ。
 ドル供給が危機に瀕しているわけでもなく。
 世界的に通貨関連で不安があるというわけでもない。

 コロナ禍ではFRBがマニュアルに従う形で韓国を含む9カ国にほぼ自動的な形で通貨スワップ協定を締結しましたが。
 今回は韓国独自の理由で通貨安に陥っているだけですからね。


 韓銀総裁からも話が出ることすら期待していない、とのコメントが出ています。

韓銀総裁「韓米首脳会談で通話スワップの話を期待しない」(聯合ニュース・朝鮮語)

 韓国国内からの期待感を抑制するのにいっぱいいっぱいって感じ。
 まあ、実際にあり得ない話ではありますね。

 んで、7年ぶりに開催される日韓財務相会談でも「韓国側からは議題として出さない」ことを決定したと。
 なんでも「足元を見られないように韓国側から議題には出さない」「日本は通貨スワップ協定を政治的なものと見ているから」だそうですが。

 通貨スワップ協定が政治的なものでなかったらなんだってんだって話ですわな。
 経済的な側面もあり、かつ政治的側面もあるもの。
 だからこそアメリカは日本、カナダ、EU、イギリス、スイスとだけ常設通貨スワップ協定を結び、それ以外の友好国とは通貨供給の危機にある時だけ自動的に締結するって形になっているのですよ。
 まあ、乞うたところで無理だとは思いますけどね。

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韓国左派メディア「ユン大統領はこれまでの韓国が築き上げたバランス外交を破棄するつもりか!」と「アメリカにオールイン」のユン政権を批判……前政権が異常だっただけなのでは?

尹大統領のロシア・中国「刺激」と米国への「全賭け」、朝鮮半島の危機煽る(ハンギョレ)
 海外メディアとのインタビューで、ロシアと戦争中のウクライナに条件付きで殺傷力のある兵器を供与する可能性を示唆した尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の発言が、国際社会で波紋を広げている。ロシアの反発と米国の歓迎表明で「韓米日対朝中ロ」の対決構図がいっそう強化される中、米国側に密着する尹大統領の「全賭け」外交に対する懸念が高まっている。条件付きの発言という前提があるとしても、ロシアが北朝鮮といっそう密着する根拠を作り、朝鮮半島で危機感が高まる事態を大統領自ら招いた格好だ。

 大統領室高官は20日、ソウル龍山(ヨンサン)の大統領室で記者団に対し、尹大統領のロイター通信とのインタビュー内容と関連し、「常識的かつ原則的な答え」だとしつつも、「これから韓国政府がどう考えるかは、今後ロシアの行動にかかっている」と述べた。また、「国際社会の憤りを買うほど大量の民間人の犠牲が発生しない限り、これまでの立場を引き続き維持する」と述べ、再びボールをロシア側に渡した。 (中略)

 一方、米国防総省のジョン・サプル報道官は韓国メディアの質問に対し、「米国は北大西洋条約機構(NATO)とウクライナ国防連絡グループに対する韓国の貢献を歓迎する」と述べた。米国務省も「ウクライナに対する追加支援と関連して同盟と緊密に協力する」と明らかにした。 (中略)

 慶南大学極東問題研究所のイ・サンマン教授は、本紙の取材に対し、「米国、中国、ロシアの間でバランスを取り、国益の最大化を目指さなければならないのに、すべて放り投げて米国一辺倒に進むことを受け入れる人はいないだろう」とし、「政策決定のためには、まず与野党の意見も聞いて公論化する必要がある。大統領が一人で決定し、マスコミを通じて公表するような内容ではない」と指摘した。

 政界の反発も続いた。野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表は記者団に「昨日は大統領の一言で大韓民国が、また大韓民国国民が大きな荷を負わされた日」だとし、「軍事支援問題を直接言及したが、対ロ関係を深刻に損ね、北東アジアの平和安定に大きな負担になるのではないか懸念される」と述べた。
(引用ここまで)


 先日、ロイター通信とのインタビューでユン・ソンニョル大統領は「ウクライナに直接的な武器支援も」「台湾海峡の緊張問題は『力による現状変更』を試みる勢力がいるから」といった発言を行いました。
 まあ、自由主義陣営の話としてはごくごく普通のもので、これまでこうした発言がなかったことこそが異様ではあるのですけどね。

 ムン・ジェイン政権時代はトランプ大統領(当時)との米韓首脳会談で「米韓同盟はインド・太平洋ラインである」と共同声明を出した翌日にそれを否定するとか。
 あるいはバイデン大統領との当選後での会談で「インド太平洋」って言葉が出たことを否定するなどしていました。

 ムン・ジェイン政権時代は韓国は根本的に「自由で開かれたインド太平洋戦略」に対抗していた国だったのですね。


 なにしろ駐米大使が「我々はもはや選択を強いられる国ではない」とか言い出して、国務省関係者が「韓国は70年前に(米韓同盟という)選択を済ませたはずだ」って反論するレベルでしたから。
 その後にも「70年前はアメリカを選択したが、次の70年もアメリカを選択するとはかぎらない」「国益がなければ同盟など意味はない」って発言してましたからね。
 駐米大使が、ですよ?

 それに比べれば「アメリカの同盟国の国家元首による発言」としてはまとも。
 ただ、野党やハンギョレのような左派メディアからしてみると「中国やロシアと離れようというのか!」となってしまう。
 ムン・ジェイン政権が築き上げた中国、ロシアとのバランス外交を崩すつもりなのか、と。
 共に民主党からは「台湾問題に不介入の原則を貫け」「中韓関係が悪化する」と糾弾の声が上がっています。

【4月22日付社説】外交マナーを無視して脅迫する中国と、「中国の脅迫に屈服せよ」という韓国野党(朝鮮日報)

 「国賓招待」されたはずなのにメンツをぼっこぼこに叩き潰されたムン・ジェインの二の舞になれってことなんでしょうね。彼ら的には。
 あれで「バランス外交を駆使した」つもりになってたのか。すげえな。

 それらから比べてもユン・ソンニョル大統領の発言は比較的にまとも。
 まあ、これで韓国国内でやっていけるのかって危惧はありますけどね。

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