2023年10月26日、最高裁で歴史的な判決が下された。高麗時代の1330年、徐州(忠清南道瑞山)の浮石寺で作られ、1527年に日本対馬の観音寺に祀られ、2012年10月に再び韓国に入ってきた金銅観世音菩薩坐像(以下仏像)が果たして誰の所有なのかという問題に対する判決だった。略奪文化財の所有権が略奪された側にあるのか、それとも略奪した側にあるのかに対する判決という点で歴史的と言える。 (中略)
この事件の初期訴訟代理人だったキム·ヒョンナム弁護士は「国際司法に従うならばこのように結論が出るのが自然だ。国内に入ってきた過程が窃盗によるものなので、裁判よりは調停で問題を解いていたらどうだっただろうかという残念な気持ちが残る。政府が乗り出して略奪文化財であり窃盗品だという点をすべて考慮した仲裁をしていたら、もっと良かったのではないかと思う」と話した。 (中略)
今回の判決は単なる歴史的·法律的問題を越え、国内政治、韓日外交問題まで盛り込んでいる。なぜなら2017年1月、ろうそく革命の渦中に浮石寺が勝訴した判決が、ユン・ソンニョル政府が執権した後の2023年間、論旨の勝訴で覆されたためだ。2022年の政権交代とユン・ソクヨル政府の韓日関係改善努力が2審と3審判決に影響を与えた可能性があるという疑いが出ている。ウォンウ住職は「政権が変わった後、裁判所の態度が変わったような感じを受けた。ムン・ジェイン政府時代にも外交部は韓日関係の悪化を憂慮してこの仏像を返さなければならないという意見を出したと聞いた」と話した。
同じ脈絡で、今回の最高裁判決が観音寺の自発的な返還につながりかねないという希望混じりの予想も出ている。裁判過程で観音寺側も、韓国が先に仏像を返還する場合、その後の再返還問題を議論することもできるという立場を明らかにしたことがあると、ウォンウ住職は伝えた。また、強制動員問題の拙速解決で国内で困難に直面したユン大統領を支援するため、日本政府や政治家らがこの仏像の返還を推進するだろうという予想も出ている。 (中略)
国際協約は略奪されたり不法搬出された文化財に対して原則的に元の所有者や出所国に返還するよう規定している。
1995年に結んだユニドロワ(UNIDROIT)条約は、盗難された文化財の返還に関する請求権条約だ。これによると、盗難文化財の占有者はその文化財を元の所有者と出所国に返還しなければならない。返還しない場合、限り当事国は他の当事国の裁判所などに盗難文化財の返還を命令することを要求することができる。また、1970年ユネスコ条約は、出処国が要請する場合、両関係国は文化財の回収と返還に関する適切な措置を取ることを規定した。
(引用ここまで)
ちょっと前にもお伝えしましたが、観世音菩薩坐像についての裁判で日本の観音寺の所有権が認められた判決が出たことに対しての韓国国内からの反応は芳しくありません。
「大法院は日本の裁判所なのか」といったコメントが多数。
まあ、法曹界からは「まともな判決でよかった」との反応が多いのですけどね。
浮石寺に所有権を認め、かつ即時返却を画策した一審判決が「画期的」過ぎたとはされています。
浮石寺の地元である端山市からは「反歴史的である」との声明が出ています。
韓国瑞山市議会「『浮石寺の仏像は日本所有』の判決は反歴史的」(中央日報)
「反歴史的」の意味がさっぱり分からないのですが、まあそれは置いておくとしても韓国の草の根的な反応が理解できる一件といえるのではないでしょうか。
さて、今回はハンギョレ21が「判決はこれでよかったのか」とする記事を出しています。
ハンギョレ21は左派紙ハンギョレが発行している週刊誌。まだ紙の本も出している模様。
韓国軍のベトナム戦争における蛮行をはじめて報じたメディアとしても知られています。
ま、論調はいつものもので。
韓国も日本も批准すらしていない盗難文化財に関するUNIROIT条約を誤読して「元の場所に返さなければならない」って言っているパターン。
ユネスコ条約にしてもユニドロワ条約にしても言っていることは「条約批准後に盗まれたものは元の国に返さなければならない」って話。
むしろユネスコ条約は1970年、ユニドロワ条約については1995年よりも以前の話はなしにしようってことなのですが、遡及法が当たり前の韓国ではこの話が通用していないのですね。
これが「元の所有国に返還」って話ならエジプトもアフリカも大歓喜ですわ。
わざとやっているだけなのか、間抜けなだけなのかは不明ですが。
んで、なぜ左派紙であるハンギョレの関連紙であるハンギョレ21がこんなことを書くのか。
「この判決はユン政権から圧力があったものだ」とするためです。
文中にもかなり強めにそうした文脈が入っているのが分かると思います。
要は政権批判です。
「ユン政権は親日派なので打倒しなければならない」っていう彼らの主張を補助線として引くと、この主張がどこを目指しているのかよく理解できるんじゃないでしょうかね。
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