【取材ファイル】務安空港惨事、なぜ皆沈黙するのか…「核心は隠したまま、密かに責任回避」(SBS・朝鮮語)
「事故調査の理論的観点から見ると、事故は突破され、突破され、さらに突破された結果として発生するものです。ところが、今回の惨事では、すべてが突破されてしまいました。
鳥類警報システムは人員に依存するしかなく、駆除要員は圧倒的に不足していました。国際線の本格運用を始めてわずか3週間の空港で、適切に対応する余力もなかったでしょう。さらに、最大の問題であるコンクリートの突起まで――
最初から最後まで防御策がことごとく突破され、ついに事故が起きてしまったのです」
ある航空学科の教授は、昨年12月29日に務安空港で起きた惨事をこのように規定した。 「最初から最後まですべてが破れてしまった惨事」ということだ。 惨事の顛末はまだ完全に究明されていないが、今回の惨事を招いた根本的な原因は自明である。
(中略)
昨年12月29日に務安空港で発生した惨事に関する取材ファイルを書くことを決めたのは、事故後に国土交通部(国土部)が航空会社に送った一通の公文を目にしたときだった。
「緊急安全運航対策」 というタイトルで航空会社や操縦士に通達されたその公文には、次のような内容が含まれていた。
・「該当空港では可能な限り経験豊富な操縦士を優先的に運航に投入」
・「ローカライザー(着陸誘導装置)の詳細データを即時公開し、徹底的に教育」
・「離着陸時のブリーフィングでローカライザーに関する内容を必ず告知」
この公文が伝わると、操縦士たちのコミュニティでは怒りを込めた反応が噴出した。
「経験豊富な操縦士が運航すれば、コンクリートの突起がスポンジにでもなるのか?」
「経験があれば突起物を避けられるとでも思っているのか?」
「これは故人への冒涜であり、責任逃れだ」
核心を外した公文が、事故機の機長と副操縦士の名誉を傷つけ、最終的には現場の操縦士や航空会社に責任を押しつけようとしている――そうした怒りの声が広がったのだ。
(中略)
今回の惨事を取材する中で、現場の操縦士たちが口をそろえて語ったことがある。それは、事故機の機長と副操縦士が胴体着陸に成功した瞬間、きっと 「助かった」 と安堵の息をついたはずだ、ということだった。
土砂に衝突したとしても速度は落ちると信じ、最後まで操縦桿を手放さなかったはず。それが最も痛ましい――これが現役操縦士たちの共通した反応だった。
(中略)
彼らは、生き残るために最善を尽くした。だが、着陸後に待っていたのは、命を救うはずの滑走路ではなく、コンクリートの突起だった。
(中略)
務安空港で惨事10日前に開かれた鳥衝突予防委員会では人材、車両などが不足し、鳥の分散、捕獲実績が前年比14.4%減少したという懸念が出た。 それでも事故当時、現場には鳥退治の人材1人だけが勤めていた。 勤務者1人が2.5キロの長さの滑走路、最大150メートルの高度までを責任を負わなければならないのだ。 爆音器と職員1人が猟銃1本で巨大な鳥の群れを退治することが常識的に可能なはずがない。 鳥類探知に必要な鳥類感知装備、鳥類探知専用レーダー、熱画像カメラもなかった。
(引用ここまで)
去年12月に起きた務安国際空港での済州航空機着陸事故。
まだ事故調査中ですが、けっこうよい記事が出てきていたのでピックアップします。
機械翻訳でもよいので読んでもよい記事じゃないでしょうか。
だいぶ長めに引用しましたが、大元の記事がめちゃくちゃ長いのです。
記者の感じた憤りがその長さに感じられます。
事故原因はバードストライクによる両エンジンの停止。
電源を喪失し、補助電源を搭載していない型だったためにランディングギアが出せないまま再着陸を試みるしかなかった。
フラップも出せず、スラストリバーサーも動作できなかった。
ほとんど減速できない中、胴体着陸を成功させたのですが。
(事故時の衝突炎上映像が含まれます)
滑走路の奥(本来の着陸態勢から逆に進入する結果になったため、実際には手前側)にあったコンクリートの壁に激突して爆発炎上。
最初にこの映像を見た時は衝撃的でしたね。
「あ、このまま滑っていけばなんとかなるか。いや、それでもだいぶ速度あるな……ってなんで爆発したの?」って。
記事はその事故に至った理由をまんべんなく伝えています。
冒頭の「最初から最後まですべての安全策が破られてしまった」との言葉はだいぶ重いですね。
まあ、実際には安全策がまともに設置されていなかった部分も大きいのですが。
バードストライクが世界的に見ても多い空港なのに、バードレーダーもなし。というか、バードレーダーが設置されている韓国の空港は皆無。仁川国際空港にすらない。
務安国際空港では鳥を追い払う警備員もひとりだけ。
そもそも「国際空港」として必要だったのかどうかも怪しい立地。ぱっと見た感じですが、胴体着陸の映像に消防車がなかったので用意もされていなかったのでしょうね。
それでもなんとか立て直して胴体着陸を成功させたのに、その行く手にはコンクリートの壁が立ち塞がっていてすべてが終わったわけです。
ちなみにサムネイルの画像は麗水空港のもの。ベトン陣地かな?
これ以外にも複数の空港で同じようなコンクリートで固められたローカライザーが確認されています。
済州航空機事故、アメリカの専門家は「やはりあそこに頑丈な構造物があったことはおかしい」「アメリカでは構造物を頑丈にしてはいけないとの規定がある」→ただし、韓国の規定では完全に問題なし。他の空港にも同じような構造物がある模様(楽韓Web過去エントリ)
なんというかね。
「ああ、韓国だなぁ……」ってところです。
構造はほとんどセウォル号と同じですね。
安全策をまともにやっていればそもそも事故自体を防げた可能性が高い。
最後の砦もあっさり突破される。
今回であればコンクリートで強化されたローカライザーがそれ。
セウォル号の場合であれば、脱出を優先させなかったこと。
それくらいに起きた原因が明白な事故なのに、政局が混乱していることもあってなんとなーく見過ごされている。
事故後の国土交通部(省に相当)から「(コンクリート壁のある空港には)ベテラン機長をあてがえ」って通達もなんというかね。
とても韓国的。
「機長の腕が悪かったので事故が起きた」といわんばかりの通達ですわ。
起こるべくして起きた事故、って感じます。
当初は「韓国的な要因がなければただの航空機事故としてスルーします」とか言ってたんだよなぁ……。
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マシュー・サイド
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016-12-23