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カテゴリ:韓国不動産爆弾の記事一覧

ソウルの不動産に積み上がる売り物、その間にも市中金利は上昇基調……あれ、これやばいヤツなのでは

カテゴリ:韓国不動産爆弾 コメント:(30)
ソウルの売り物が8万件増えた……買う人と売る人の間の「同床異夢」(JTBC・朝鮮語)
最近、家を売ると出しても買うという人が多くなく、ソウルのマンションの物件が8万件以上積もったそうです。高い金利に貸出負担が大きくなり不動産取引も大きく減ったのですが、住宅価格にも影響を及ぼすものと見られます。 (中略)

新築の大団地が集まっているソウル江東区です。
新都市ブームに一時人気地域でしたが、今は取引が途絶えています。

公認仲介士「秋夕(訳注:韓国のお盆休み)が過ぎてから、 こうやって取引が途切れてしまっています。お客さんはいなくて、物は少し溜まる今のような状況です。金利がかなり上がって需要者たちが少し心理的に負担感も感じているようです」

この地域のマンションの物件は1ヵ月間で1300軒余りの売り物件が重なり、前月比で20%急増しました。
ソウルの他の地域も状況は同じです。
先月、ソウルで売れなかった物件は8万件を超えましたが、3年前に統計集計が始まって以来、最大値です。

売ろうとする人は増えたのに買うという人はあまり現れないので売り物だけが積もっているのです。
特に政府の貸出引き締めの流れに合わせて、銀行が住宅担保貸出金利を引き上げ続け、住宅を買おうとする需要はさらに減っています。
(引用ここまで)


 ソウルにプチバブルが来ていたのですがぽしゃりました。
 プチバブル発生したって状況からすぐに市中金利を上げるように指令が出た模様。
 市中金利が上がると、当然ですが変動金利も上昇します。

 下のKBSの記事によると銀行圏(都市銀行等のいわゆる第1金融圏。貸出対象は公務員や大企業の社員などで比較的金利が低い)の不動産ローンはすでに7%を突破しているとのこと。
 これが固定金利でのこれからの貸出なのか、変動金利の変動なのかはちょっと不明。

米国の基準金利凍結にも「金利上昇深化の可能性」···なぜ?(KBS・朝鮮語)

 固定金利であるとしても、これはかなりお得な金利である都市銀行の金利。
 多くの人が利用している第2金融圏(地方銀行、貯蓄銀行など、貸出対象は広いが金利は高い)での住宅ローンはもうちょっと厳しい状況になっているはずです。
 いまちらっととある貯蓄銀行の不動産ローンを見てみたら8〜15%になっていましたわ。
 他の貯蓄銀行では4.5〜9.7%とかもあるんですけどね。


 んで、冒頭のJTBCの記事ですが、ソウルの不動産市場でも売り物が積み上がりつつあるとのニュースなのです。
 これ、高金利に耐えかねて手放したものである可能性が高いですね。
 この場合はしばらくは売り物が積み上がるだけで、不動産価格は下がらない時期が続きます。なんなら成約したもの自体はわずかに上昇したりもします。

 株なんかもそうなんですが、とりあえず売りが続いても価格が下がらないことがあるんですよ。誰も買わなければ。
 で、均衡がしばらく続いた後に本当に絶えられなくなった人がディスカウントをはじめて雪崩が起きるのです。

 さて、ここで不動産価格を押し留めることができるのか。
 プチバブルの崩壊が本チャンのバブル崩壊を招くなんて事態はけっこうあることですからね。
 蟻の一穴ってヤツです。

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韓国の政府与党が「家計負債の増加のペースがやばい。このままなら97年の通貨危機以上の経済危機が韓国を襲う」と警鐘を鳴らす……実際にはどのくらいに危機なのかというと……

カテゴリ:韓国不動産爆弾 コメント:(66)
「家計負債危機時には通貨危機の数十倍の威力」…韓国経済の新たな信管懸念(中央日報)
金大棋(キム・デギ)大統領秘書室長はこの日のあいさつで「過去の政権で流行したなりふり構わない借入や投資のスタイルは本当に危険だ。家計負債危機が発生すれば1997年の通貨危機の数十倍の威力があるだろう」と話した。 (中略)

政府与党が声をそろえて強力な家計負債管理に言及したことは最近家計負債増加幅が再び拡大する兆しを見せているためだ。韓国銀行が集計した家計信用(金融会社から借りた家計負債総額)は昨年7-9月期に1871兆1080億ウォンで過去最高を更新した。その後金利引き上げの余波で今年1-3月期には家計信用が1853兆2563億ウォンまで減ったが、今年4-6月期には1862兆7809億ウォンと再び増えた。

その後家計向け貸付は増加傾向が止まらずにいる。国民銀行、新韓銀行、ハナ銀行、ウリィ銀行、NH農協銀行の5大都市銀行によると、26日までの家計貸付残高は先月末と比較して2兆4723億ウォン増えた。今月の全貸付額を集計したものではないが、現在の傾向なら1カ月の増加幅としては2021年10月の3兆4380億ウォンから2年ぶりの規模で増えることになりそうだ。5大銀行の先月の家計向け貸付増加幅1兆5174億ウォンと比較しても62.9%増加した金額だ。 (中略)

家計負債が再び増え始めたのは最近の住宅市場の雰囲気と関連がある。韓国不動産院が26日に明らかにしたところによると、10月第4週のマンション売買価格は前週と比べ全国で0.05%、ソウルで0.07%上がり、全国では15週、ソウルでは23週連続の上昇を維持した。住宅価格がすでに底を打ったという心理に秋の引っ越しシーズンまで重なり住宅担保貸付の増加傾向が続いた。 (中略)

専門家は増える家計負債を防ぐためには一貫的な政策シグナルが重要だと指摘する。実際に昨年末まで減っていた家計向け貸付は、韓国政府が不動産景気の沈滞を防ぐために転売制限など各種不動産規制を緩和し、伝貰保証金返済貸付と特例ローンなどにDSRの例外を認め再び増え始めた。金融当局が家計向け貸付増加の主犯に挙げた50年満期住宅担保貸付も政府が特例ローンを通じて初めて導入した商品だった。 (中略)

延世(ヨンセ)大学経済学部の成太胤(ソン・テユン)教授は「返済できる能力の分だけ貸すという基本原則の例外を政府が作り家計負債増加を容認した側面がある。韓国銀行も家計負債が増え続ければ金利を上げることができるというシグナルを与えなければならない」とした。
(引用ここまで)


 以前のエントリやTwitterでちらと紹介しましたが、韓国ではプチバブルが生じています。
 韓国政府が不動産下落を終わらせようと不動産ローンの規制緩和に向かい、かつ不動産価格が底打ちになったのではないかと考える韓国人が多数になっています。
 また、一時期は消費者物価指数の上昇率が2%台になったこともあって「金利下げもあるのでは」との思惑が入ったのも大きな理由として挙げられるでしょうね。
 またぞろ韓国人が不動産に希望を持ってしまったのです。

 というわけで不動産ローンの総額、それにともない家計負債の総額が大きく上がっています。
 楽韓Webでも何度か「次は通貨危機等の外に原因のあるものではなく、韓国国内で生じる経済問題が原因となるだろう」って話をしていますね。
 不動産時限爆弾はいつか破裂せざるを得ないものだ、とも。

 まあ……韓国にとって家計負債をどう扱うかは二律背反なのですよ。
 韓国の財産は圧倒的に不動産に偏重しているのは何度か伝えてきています。
 その財産価値が下がれば景気が悪くなる。
 政権への風当たりも強くなる。


 かといって政府が金融緩和方向に向かえばあっという間にバブルが育ってしまう。
 本当に不動産投機が大好きなのですね……。
 まあ、これまではそれだけでうまくいっていたのですから、その成功体験から離れることができないのでしょうけども。

 その偏重具合は個人資産の75%とも9割とも言われています。
 これがもうちょっと他に向かっていればなんとかなったのかもしれませんけどね。
 ちなみに2015年時点で個人資産の75%が不動産とされていた際の日本とアメリカにおける個人資産の不動産比率は32%と41%だったそうです。

 韓国では人口ボーナスが2015年に終了してからけっこう経ちますが、これといった対策を打ち出せないままじわりと衰退期を迎えようとしています。
 少子高齢化があまりにも早く、かつ家計負債が抱えきれないほどの大きさになりつつある。
 そして風船の中味のほとんどが不動産。

 着地点が見えないんだよなぁ。バラエティ番組でよくやっている風船ゲームで、風船に空気がパンパンに入っている状態。
 まだ空気を入れるのか、それとも抜いていくのか。


 空気を抜いていけば多少の延命はできるでしょうが、景気不振と不動産価格の下落を招く。
 かといってもうちょっと空気を入れたら不動産価格が上昇に転じて金利高と合わせてローンを払っている層を直撃する。
 ……どうしろと。
 ムン・ジェイン政権下で不動産価格が上がりすぎた余波なんですよね、これ。

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韓国メディア「中国の大手不動産が破綻したか……でもま、韓国国内の不動産には影響はないっしょ」……え、マジで言ってる?

中国発の不動産危機、国内市場は?…「大きな被害はない」vs「景気下落の時は影響」(ニュース1・朝鮮語)
恒大集団に続き売上基準で中国最大不動産開発企業の一つである碧桂園(カントリーガーデン)まで「ドミノ債務不履行(デフォルト)」危機が高まり、韓国不動産市場に及ぼす影響に関心が集中している。

専門家らは、「国内不動産市場には直接的な影響を及ぼさない」としながらも、「事態が深刻化して国内景気が悪化すれば、不動産市場もその流れを避けることはできないだろう」と見込んだ。 (中略)

不動産市場に直接的な影響は大きくないかもしれないが、他の対外変数と複合的に作用し、国内不動産価格に影響を与えかねないという意見も提示された。
(引用ここまで)


 中国の不動産ディベロッパー恒大集団がアメリカで破産申請を行いました。
 これまでの2年間、どうにかこうにか軌道修正を図ってきたようですがついに破綻。
 先月明らかになった2年間の赤字は5800億元。約11兆円。

中国恒大の最終赤字、2年で計11兆円 不動産の評価下げ(日経新聞)

 国家予算レベルの赤字を出していて、かつ再建もおぼつかない状態。

 恒大集団以外にも大手の碧桂園(カントリーガーデン)もほぼデフォルト状態。
 こちらの債務総額は1兆4348億元。えーっと、28兆6000億円くらいかな。
 今年の上半期の赤字が550億元。1兆10000億くらい。

 中国発の世界不況が充分にありえる事態になってきました。


 で、それに対する韓国の反応が「韓国国内の不動産には影響はない」、あるいは「不況になれば不動産にも影響があるかもしれない」とするものに分かれている……のですが。
 いや、なんでそんな生ぬるくいられるのやら。

 韓国にとって中国は長年輸出先として1位を占めてきた国。
 去年の輸出額はアメリカに1位を譲って2位になり、かつ21年ぶりの対中貿易赤字を記録したものの、それでも重要な貿易相手であるのは間違いないところ。

 その中国が不況の沼に沈みつつある中、貿易依存率が約70%と5000万人以上の国としては異様に高い韓国が影響を受けないわけがないんですよね。
 なんかこう、その割にのほほんとしているというか。
 当事者意識が欠如しているというか。

 中国が不況になったらスマホだってテレビだって中国国内で売れなくなるわけですからね。
 念願のメモリの値上がりがまた遠くなるわけですよ。それだけ考えても韓国に及ぼす影響は小さくないのが分かりそうなものですけどね。

 韓国国内の景気が悪くなったら不動産なんて売れるわけないんですが。
 韓国の不動産向けのお金は別のところから湧いてくるのかな?

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韓国の信用金庫の取りつけ騒ぎから不動産企業へ飛び火しかねない「プロジェクトファイナンス雷管」の危険性とは?

セマウル金庫事態「PF雷管」に触れる···建設·第2金融圏の緊張が高まる(聯合ニュース・朝鮮語)
セマウル金庫事態の触発地点の一つとして不動産プロジェクトファイナンス(PF)貸出不良が挙げられ、建設·金融界に潜在したPFリスクに注目が集まっている。 (中略)

9日、サムスン証券によると、国内主要建設会社7社のPF支給保証規模は計14兆4147億ウォンと集計された。
現代建設とGS建設・DLE&C・HDC現代産業開発・ロッテ建設は昨年末、大宇建設とテヨン建設は昨年第3四半期末を基準にしたものだ。
このうち、未着工PF支給保証額が8兆8464億ウォンで全体の61.4%を占めた。

分譲景気が萎縮しているだけに着工と分譲、本PF転換などの遅延で収益性低下を起こしかねない未着工PF支給保証は相対的に危険性が大きい。
最近崩壊事故で危機に陥ったGS建設のPF支給保証規模は1兆4749億ウォンで、ロッテ建設(5兆7千億ウォン)、テヨン建設(3兆16億ウォン)、現代建設(1兆5800億ウォン)などに比べて少なかった。
しかし、GS建設のPF支給保証額で未着工PF支給保証が占める割合は88.1%(1兆3000億ウォン)に達した。
これはPF支給保証全額(1820億ウォン)が未着工物量であるDLE&Cを除けば7ヶ所の中で最も高い数値だ。

大宇建設(79.4%)とロッテ建設(75.0%)、現代建設(51.0%)、テヨン建設(41.0%)の割合も少なくない水準だった。HDC現代産業開発だけで7.0%で、一桁台だった。
最近、信用評価会社がGS建設に対して崩壊事故の余波で投資心理が弱まりPF借り換えに困難が生じかねないと評価した中で、このような現象が建設業界全般に拡大しかねないという憂慮も出ている。 (中略)

ただ、これに先立って長期間好況を享受したおかげで上位建設会社の財務条件はまだ堅調で、政府も各種支援策を打ち出しているという点でPF危機が直ちに現実化する可能性は低いという分析もある。
(中略)

今回の悪材料で、ノンバンクの不動産金融関連リスクも浮上している。
先立って低金利基調の時、不動産金融に積極的に参入したため、金融界全般の不動産関連エクスポージャー(危険露出額)が高いが、特に第2金融圏に対する憂慮が大きい。
銀行と保険などは先順位だったり施工会社が相対的に良好な事業場を中心にPF事業を展開してきたが、証券·キャピタル·貯蓄銀行などは後順位およびブリッジローンのように収益率は高いもののリスクが大きい物量中心に消化したためだ。
(引用ここまで)


 建設大手7社によるプロジェクトファイナンス残高が14兆4147億ウォン。
 うち、未着工が8兆8464億ウォンで6割超。
 不動産不況もあって危険な雷管となるのではないか、とのニュース。

 というか、こうした大手建設企業はまだそこまで問題ないと思うのですよ。
 ムン政権下の不動産狂騒曲で踊りまくって稼いでいたっていうのもありますし。
 GS建設みたいに「一部崩壊したので全部建て直します」ってなるのでもないかぎり。

 問題は大手よりも中小からのドミノ倒しが予想される部分。
 プロジェクトファイナンスとは不動産開発計画そのものを担保として、建設会社等が金融機関から建設費を借り入れるタイプの金融商品。
 IMFからも「これやばいから縮小したほうがいいよ」といわれるくらいには危険性が高いものとなっています。
 その危険性がある、とされている額が115兆ウォン。桁違いじゃん。

 以前から第1金融圏とされる都市銀行等はプロジェクトファイナンスを取り扱わなくなって久しいと指摘されています。
 相対的にリスクの高い案件であるプロジェクトファイナンスは第2金融圏等の中小が融資しているのですね。
 つまり、それだけ体力のない金融機関が行っている……というわけです。
 その第2金融圏まっただ中なのが取りつけ騒ぎの起こったセマウル金庫、であると。


 さらには冒頭のニュースでは「7大建設企業」が扱っているプロジェクトファイナンスを取り扱っていて、その額が14兆ウォンだとしているのですが。
 もっと中小の建設企業もありますし、なんならあまり建設に関係していない海のものとも山のものともつかない企業が不動産開発に手を出していたりしますからね。
 なぜって……そりゃ韓国では「不動産に携わることができるのは『成功の証』だから」です。

 さらにいえばプロジェクトファイナンスが問題になるのはこれから。
 満期が来て借り換えになったときに、信用不安から一気に金利が上がるはずです。
 結果、返せなくなって倒産というパターンがこれから増えざるを得ない。
 建設し終わって分譲がはじまってもよほどの優良物件でないかぎりは即日完売も望めなくなっています。

 正直、どこから新たな導火線が出てきて「実はもう残り10cmです」なんて事態になるか分からない。
 先日のセマウル金庫の取りつけ騒ぎなんかも、あとちょっと政府対応が遅れていたらどうなったもんだか分かりません。
 これが韓国経済の現在地ってことです。

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韓国で進む不動産価格下落が経済不安を呼びかねない理由、その最大のリスク「逆チョンセ難」とは?

カテゴリ:韓国不動産爆弾 コメント:(89)
「今すぐ10億をどうやって手に入れるのか」···大峙洞の家主が焦げる(韓国経済新聞・朝鮮語)
ソウルで下半期のチョンセ契約が満了する10件のうち6件はチョンセ価格が下落し、家主が貸出などを受けて借家人にチョンセ保証金を返さなければならない逆チョンセ契約であることが分かった。果川水原など京畿の一部地域は逆貸切比重が90%に達し「保証金返還事故」対策が至急だという指摘が出ている。

韓国経済新聞が26日、不動産R114を通じて、2021年下半期に首都圏で取り引きされたマンションの純チョンセ20万2932件(ソウル7万2316件、京畿道11万486件、仁川2万130件)をシミュレーションした結果、61.3%が逆チョンセの危険にさらされていると分析された。ソウル57.5%、京畿61.2%、仁川77.2%などだ。同一団地·面積·階を基準に今年上半期の取引が1件以上あるマンションが対象だ。

ソウルでは銅雀区(トンジャクク、72%)、恩平区(ウンピョング、67%)、江南区(カンナムグ、65%)の順で逆チョンセの危険比重が高かった。京畿道では果川(クァチョン、93%)、楊州(ヤンジュ、86%)、東豆川(トンドゥチョン、82%)、水原長安(スウォン·チャンアン、クォンソング、71%)などでチョンセ保証金を払わなければならない家主が多いことが分かった。ソウル基準の逆貸切危険世帯が払わなければならない平均差額は世帯当り1億3075万ウォンと推定された。

不動産R114リサーチチームのヨ·ギョンヒ首席研究員は「今年の入居物量と家主資金余力などを勘案した時、水原城南華城などギャップ投資(チョンセを挟んで買収)が多かった京畿・仁川外郭地域で未返還危険が大きくなりかねない」と話した。
(引用ここまで)


 韓国独自の不動産賃貸方式である「チョンセ」というものがありまして。
 不動産価格の6〜8割となる保証金を先に支払えば、2年間は家賃なしで住めるというもの。
 家主はその他額の保証金を定期預金にして利子収入で暮らすなどしてきました。
 そして2年が経過したら借りていた側にその保証金が戻ってくる、という制度。
 引っ越してもいいし、不動産価格が変動していればそれを基準に新たに保証金を渡して住み続けてもよいといったところ。

 「チョンセのため」であれば金融機関からの借り入れのハードルも低くなり、それなりに金利も優遇されます。つまり、金利だけで賃貸ができていたわけです。
 韓国の経済成長率が高かった21世紀初頭くらいまではうまくいっていた制度でした。
 実際には完全チョンセは少なくなりつつあり、不動産価格の半分の保証金+少なめの月額家賃からすべて月額家賃までいろいろとパターンはあるのですが。
 ま、かつてはうまくいっていた制度であるのは間違いないところ。


 ですが、いいとこ2%ていどの経済成長率でかつ低金利が続くと、そうしたシステムが歪になってきまして。
 預かった保証金で次の不動産を物色するなどする大家が増えてきたのですね。
 この「ギャップ投資」という手法で数件から、場合によっては数千件(数棟)の不動産を所有しているなんて人物もいるほどです。
 ただこれは「不動産価格が上がり続ける」「不動産需要が増え続ける」という前提がないと成り立たない投資手法です。

 んで、現実的に不動産価格が下落することで歯車が逆回転をはじめ、「逆チョンセ難」と呼ばれる事態になりつつある、と。
 これまでは2年前の保証金を、次の保証金で返すという手法が使えたのですが。
 チョンセ保証金は前述のように不動産価格によって変化します。



 下落した不動産価格を基準に保証金が決まるため、2年前の保証金が返せない事態、「逆チョンセ」になっているわけです。
 これが大問題。
 一般的なマンションでも1億ウォン、2億ウォンの下落は当たり前。
 江南などの高級住宅街では10億ウォン下落なんて状況にもなっている。
 この「逆チョンセ」状態になっているのが場所によっては90%以上。
 平均では61%が「逆チョンセ」。

 その下落した分の保証金を得たとしても、2年前の保証金には届かない。
 つまり、家主が銀行から借り入れるなどして、耳を揃えて返還しなければならないのですが。
 そもそも不動産価格が下落して困窮しかけている大家にどこの金融機関が金を貸すのかっていう。

 かといって、返還されなければ保証金のために借金した賃借人側が信用毀損となってしまう。
 信用ランクが下落してしまうのですね。
 借り入れが不利になる信用ランク下落を避けたい賃借側がチョンセの返還を求めると、最終的にはオーナーが不動産売却する以外に手がなくなり、さらに不動産の需給バランスが崩れて価格の下落に拍車がかかる。

 それでなくても下落していたチョンセ金額もさらに下落する。
 不良債権化も一気に進むことでしょう。
 この逆チョンセ難で逆回転をはじめている歯車がすべて噛みあってしまうと、一気に金融不安になりかねないのですね。

 日韓通貨スワップ協定の時に「いま韓国で必要なのはドルじゃない」「問題は国内の金融」って話をしましたね。
 これが韓国国内でいまもっとも恐れられているシナリオなのです。
 どこかでブレーキをかけることができれば連鎖を避ける可能性はないではないのですが……。
 ……どこで?

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韓国で「人口減がはじまっても不動産価格が落ちなかった」のはまだ世帯減に至っていなかったから……本格的な危機は数年後ってこと?

総人口の縮小にも耐えてきた不動産……今度は「世帯減少」、新たな試験台に上がる(韓国日報・朝鮮語)
「人口が減れば生産可能人口が減り、自然に住宅需要も減少するだろう。結局、人口絶壁は必然的に不動産価格の下落につながる」

一時、このような悲観論が説得力を得たことがある。グローバル金融危機の余波で不動産に未来がなさそうだった2010年代初め~半ば、特にそうだった。「人口減少→購買力減少→需要縮小→価格下落」は非常に強固な論理構造のようだった。

ところが実状は異なり、市場は違った動きを見せた。「借金して家を買いなさい」というキャッチフレーズ(標語)に代表される低金利規制緩和政策以後、不動産市場には活況が始まった。 (中略)

不動産市場では人口と不動産景気の相関関係を論じようとする試み自体を「市場に対する無理解」に追い込む傾向もある。単身世帯増加傾向が依然として残っているうえに、「安定資産」に分類される不動産の特殊性を反映しなければならないということだ。人口よりは政府政策、金利、所得増加、供給量などの変数が不動産景気にさらに影響を与えるということだ。

しかし「総人口減少」という試練を乗り越えた不動産市場は近い将来、それよりさらに悪い悪材料である「世帯数減少」に耐えられるか証明しなければならない。人口学者たちは「不動産価格下落に有意義な影響を与えかねない人口構造変化がまだ起きていないだけ」と指摘する。住宅市場は世帯単位で動くだけに、重要なのは総人口・生産人口の減少や高齢人口増加ではなく「総世帯数」の減少ということだ。

統計庁の推計によると、世帯数は総人口が減少する状況でも増加し続け、ついに2039年に2,387万世帯で頂点に達し、下がり始める。最初は下落幅が緩やかだが、ますます世帯数減少の傾きが大きくなり、2050年には2,285万世帯まで減少することになる。地域別に頂点に到達する時期も異なるが、ソウルは2029年、釜山·大邱は2028年を基点に世帯数が減少に転じる。
(引用ここまで)


 ああ、これはちょっと面白い視点。
 以前から楽韓Webでは「人口減に突入する韓国は不動産市場を支えきれない」との話をしてきましたが。
 人口減の予兆が強かったムン政権下であってですらソウルの不動産価格が2倍に膨れ上がったことは記憶に新しいところ。
 すなわち、「人口減ははじまっていても、世帯の増加は止まっていないのでまだ不動産価格は支えられ続ける」とのことで。

 なるほど。
 4人家族を想定した84平米のマンションが好まれていた以前に比べて、1〜2人の59平米の部屋が好まれるようになる。
 あるいはオフィステル(ワンルームマンションのようなもの)が好況になるといった側面は「1〜2人世帯が増えている」という背景があったからなのですね。


 ただ、当然のように人口減が続くのならそのうち世帯数も減少に転じるのは当然なので。
 この記事ではソウルは2029年には減少に転じるだろう、とされています。

 であるとするなら、もしかしたら今回はぎりぎりソフトランディングもできる可能性はなくもない……といえるかな。
 わずかに時間は残されている、わけですから。
 すでに不動産価格そのものは充分に下落していて、金融側に火がつくかどうかって部分だけが残されているだけなのですけどね。

 これまで通用してきた「マンションを取り壊して再開発して、3〜5割ほど入居世帯を増やして販売する」って手法ができなくなるのは間違いないかな。

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韓国で崩壊の進む「チョンセ保証金制度」、もはや大家に保証金を返せる余裕はなし……不動産価格そのものの崩壊にもつながるか

今年満期のヴィラ10万戸のうち6万戸「逆転現象」緊急事態(東亞日報・朝鮮語)
ソウル江東区のAマンション(専用面積40平方メートル)に住む会社員のファン某氏(35)は、今年9月のチョンセ契約満了を控え、チョンセ保証金を取られるのではないかと心配で夜も眠れない様子だ。近隣のビラ相場が大幅に下落し、2年前の自分の伝貰金(3億6000万ウォン)に合わせて家主が借家人を探すことができるかどうかが心配だ。借家人が出てきても今月から住宅都市保証公社(HUG)の「チョンセ保証金返還保証保険」(チョンセ保険)加入が難しくなり自身の伝貰金より2000万~3000万ウォン安く契約しなければならない。彼は「家主が伝貰保証金差額分の現金を別に用意しなければならないが、余力があるか分からない」と話した。

今年末までに契約満期が到来する全国ビラ10軒のうち6軒の割合で家主が保証金を下げて契約しなければ、既存借家人が伝貰金を取られる恐れが大きいことが分かった。これらビラの現在の保証金だけでも13兆ウォンを超え、このうち2兆4000億ウォンを家主が追加で負担して既存借家人に返さなければならないものと分析された。最近、チョンセ詐欺が続出し、チョンセ保険なしで新規借家人を探すのが難しくなったうえにチョンセ価格下落傾向が激しくなり家主が既存借家人にチョンセ金を返せない「逆チョンセ難」が避けられないという憂慮が出ている。

東亜(トンア)日報が1日、国土交通部の実取引価格公開システムに登録された2年前(2021年5〜12月)のビラ(連立・多世帯)のチョンセ17万815戸を全数分析した結果、チョンセ10万6728戸(公示価格のない住宅は除く)の62.6%にあたる6万6797戸は既存のチョンセ保証金ではチョンセ保険新規加入が不可能であることが分かった。チョンセ保険加入ができないビラはチョンセ金を取られる場合、保証機関でもこれを受けることができず、チョンセ契約が事実上難しい。

これらビラの既存保証金総額は13兆3188億ウォンだ。チョンセ保険に加入するためには、このうち2兆4122億ウォンを家主が既存の借家人に払わなければならない。10軒のうち6軒は、ビラ1軒当たりの保証金を平均3611万ウォン下げてこそ、伝貰保険に加入できるという意味だ。もし家主が現金余力がなく、このお金を用意できなければ、チョンセ保証金を取られる借家人が増えかねない。 (中略)

賃貸事業者が「相次いで破産」し、ビラのチョンセ市場が崩れる恐れがあるという憂慮まで出ている。ビラと小型の一人アパート20軒で賃貸事業を営むA氏は、ビラ売買価格とチョンセ価格が同伴下落し、HUGのチョンセ保険加入基準が強化され進退両難に陥った。借家人に返さなければならない保証金が増え、2021年乳がん判定を受けた後に受け取った保険診断金5000万ウォンと株式、積金など余裕資金まですでに保証金返還に使った状態だ。さらに、今年7月までに戻ってくる再契約が5件であるため、2ヵ月以内に2億6000万ウォンを追加で調達しなければならない。賃貸住宅の義務期間に縛られ売買が事実上不可能なため、現金を用意する道が漠然としている状態だ。彼は「2018年3月、登録賃貸事業者になれば恩恵が多いという政府広報に賃貸事業を始め保証金増額制限規定(毎年5%)も守った」として「直ちに来年にも貸切満期が到来する契約が8件なのにこのような状況になるので困っている」と話した。
(引用ここまで)


 何度か伝えているチョンセ ── 賃貸物件を借りる際に大家に渡す保証金が韓国に大乱をもたらしそうだという話。
 例として出ているソウルにある40平米のヴィラ(ワンルームマンション)では2年前は3億6000万ウォン(約3600万円)を保証金として大家に渡していた。
 チョンセは不動産価格の6〜8割ほどを保証金として渡しておくと、2年間は家賃なしで(あるいは安い家賃で)当該の不動産に住めるという韓国独自の制度です。
 さて2年後の現在、不動産価格自体が右肩下がりになっています。当然、不動産価格の6〜8割であるチョンセ保証金の相場も下落している。

 例に出ているAさんの住んでいるヴィラでは2000〜3000万ウォンほど値下がりしている。
 つまり、新しい賃借人を得られたとしても大家は2000〜3000万ウォンをどこからか調達して現在の賃借人であるAさんに返さなければならない。
 果たして、彼の保証金は無事帰ってくるのかどうか。乞うご期待。

 といった構造がひとつの不動産で行われているのであればまだ掬われるのですが。
 これが10万件以上で同じようなことが起きている。


 そもそも次の賃借人が見つかればいいのですが。
 ヴィラを舞台にした「チョンセ詐欺」事件がいくつも出ていることから、賃借人がヴィラそのものを忌避しているのですね。
 かつ、不動産価格が下落してきたのでワンルームマンションであるヴィラではなく、普通の間取りのマンションも視野に入りつつある。

 次の賃借人が入らないと、おそらく使い込んでしまったチョンセ保証金を揃えるには物件を売らないと無理。
 とはいえ、ムン・ジェイン政権下で賃貸物件は買ったあとに売買不能な期間が設けられているため自由な売買もできない。
 結果、不良債権と化して競売に出されるしかない。
 賃借人はチョンセを取り戻すことができず、大家は不動産を失う……ということが連発する可能性が出ているのです。

 ちなみにこのチョンセのやりとりですが「個人同士の取引」であるとして、家計債務には含まれていません(→韓国の家計債務(1800兆ウォン規模)、伝貰保証金(1000兆ウォン規模)はカウントせず・・理由は『個人の間の取り引きだから』)。
 さらにいうと不良債権となって競売に出されてもチョンセ保証金は「個人間取引」なので優先順位が低く帰ってくるともかぎりません。
 ……着地点、どこになるんですかね。

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韓国で大量発生している「保証金返還ができない案件」を「チョンセ詐欺」としているものの、その実態は大規模な不動産の不良債権化なのでは……

仁川チョンセ詐欺競売物件、半分以上が貸金業者所有(イーデイリー・朝鮮語)
金融当局が競売猶予を要請した仁川チョンセ詐欺被害住宅の半分以上は、貸金業者である不良債権(NPL)買入業者が競売法廷に渡した物件であることが確認された。今後も競売手続きが進められる物件の相当数がNPL業者が売ろうとする住宅である可能性が高い。

23日イーデイリー取材の結果、金融監督院が20日と21日、仁川弥鄒忽区チョンセ詐欺被害者住宅の債権競売猶予を申請した59件の内、約60%はNPL業者が保有している債権だった。24日に予定された競売でも半分以上がNPL業者が渡した物件であることが把握された。25日以後に行われる競売でもNPL業者所有物件が相当数であると観測される。

これらの物件は信用協同組合やセマウル金庫など第2金融圏がチョンセ詐欺行為を行ったA氏一味に担保融資をしたが、3ヵ月以上延滞して不良債権になったのだ。先順位債権者である金融会社は不良債権になった担保物件を普通NPLを扱う貸金業者などに元金の50~70%価格で売却する。これを買い入れたNPL企業は債務者から金を返してもらえない場合、競売にかけてしまう。

問題は資金力が落ちる零細NPL業者の場合、当局の競売猶予要請を受け入れない可能性があるという点だ。該当業者が競売を強行したからといって当局がこれを防ぐ方法もない。先立って20日競売期日が到来した32件の内、28件が延期、4件は流札されたが流札された物件は全て零細業者が保有している債権だった。落札されたとすれば、チョンセ詐欺被害者が居住中の家から追い出される状況だったわけだ。流札はされたが、次の競売の時にまた渡されれば価格が削られる可能性が高く、被害者は落札されるのではないかと住居不安に震えている状況だ。

NPL業者競売猶予のために19日稼動した汎省庁タスクフォース(TF)に貸付金融協会が含まれたが、地域の零細NPL業者まで協力を求めるには限界があるという指摘が出ている理由だ。 (中略)

金融監督院の関係者はこれと関連して「今まで要請したNPL企業等は全て状況を理解し競売猶予協力をすることにした」として「今後NPL企業等が上げる追加物件に対しても最大限協力を求める計画」と話した。

ただ、根本的な解決策が必要だという意見が出ている。尚明大学のソ·ジヨン教授(金融監督院オンブズマン)は「競売を一定期間猶予するのは弥縫策に過ぎないが、このような『時間稼ぎ対策』だけでは救済できない被害者が生じかねないという点が問題」として「死角地帯を最小化するための方案を汎省庁が早期に出さなければならない」と話した。
(引用ここまで)


 「チョンセ詐欺」、という名称の大規模な不動産、および保証金での信用不良案件続出問題ですが。
 ユン・ソンニョル大統領はとりあえずの対策として「まず物件を競売にかけるのをやめてくれ」と要請しています。
 ただ、なんの法的根拠も拘束力もないので、金融機関からそうした不良債権をかき集めている業者はほいほいと競売にかけてしまっている、とのこと。
 一部業者は「要請」を聞き入れているそうですが。

 現在、韓国の不動産価格は右肩下がりです。ピーク時比であれば5割、6割安は当たり前。
 そんな中、ローンの支払いが行われずに不良債権化した物件は、こうした業者にさらなる安値で買い叩かれます。
 今時のオフィステルやヴィラ(どちらもワンルームマンション)なんて金融機関としたらわざわざ手間をかけて回収するよりもとっとと縁を切りたいような物件でしかないですからね。
 とっとと清算してしまいたいのでしょう。


 で、そうした不良債権を二束三文で買いあさった業者は競売にかけて日銭を稼がないと干上がるだけ。
 さて、「競売にかけるのをやめてくれ」と言っている大統領府にはなにができるのか、と。
 まあ、現在の規模で「チョンセ詐欺」が収拾のつくものであればそうした要請も効くのでしょうが。  危険水域にある物件は23万件ともされている中、それらを支えきれるのか。

 というか、明日にも住まいを失い、かつ数千万ウォン単位(数百万円)単位の保証金返還を受けられずに路頭に迷いかねない人々がいまも続出しているわけで。
 そうした構造を止めることが法的根拠を伴わずにできないのであれば、さらに歪みがたまるだけなんですけどね……。
 金融機関だって不良債権処理を止めるわけにもいかないんですから。

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