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カテゴリ:韓国不動産爆弾の記事一覧

韓国で崩壊の進む「チョンセ保証金制度」、もはや大家に保証金を返せる余裕はなし……不動産価格そのものの崩壊にもつながるか

今年満期のヴィラ10万戸のうち6万戸「逆転現象」緊急事態(東亞日報・朝鮮語)
ソウル江東区のAマンション(専用面積40平方メートル)に住む会社員のファン某氏(35)は、今年9月のチョンセ契約満了を控え、チョンセ保証金を取られるのではないかと心配で夜も眠れない様子だ。近隣のビラ相場が大幅に下落し、2年前の自分の伝貰金(3億6000万ウォン)に合わせて家主が借家人を探すことができるかどうかが心配だ。借家人が出てきても今月から住宅都市保証公社(HUG)の「チョンセ保証金返還保証保険」(チョンセ保険)加入が難しくなり自身の伝貰金より2000万~3000万ウォン安く契約しなければならない。彼は「家主が伝貰保証金差額分の現金を別に用意しなければならないが、余力があるか分からない」と話した。

今年末までに契約満期が到来する全国ビラ10軒のうち6軒の割合で家主が保証金を下げて契約しなければ、既存借家人が伝貰金を取られる恐れが大きいことが分かった。これらビラの現在の保証金だけでも13兆ウォンを超え、このうち2兆4000億ウォンを家主が追加で負担して既存借家人に返さなければならないものと分析された。最近、チョンセ詐欺が続出し、チョンセ保険なしで新規借家人を探すのが難しくなったうえにチョンセ価格下落傾向が激しくなり家主が既存借家人にチョンセ金を返せない「逆チョンセ難」が避けられないという憂慮が出ている。

東亜(トンア)日報が1日、国土交通部の実取引価格公開システムに登録された2年前(2021年5〜12月)のビラ(連立・多世帯)のチョンセ17万815戸を全数分析した結果、チョンセ10万6728戸(公示価格のない住宅は除く)の62.6%にあたる6万6797戸は既存のチョンセ保証金ではチョンセ保険新規加入が不可能であることが分かった。チョンセ保険加入ができないビラはチョンセ金を取られる場合、保証機関でもこれを受けることができず、チョンセ契約が事実上難しい。

これらビラの既存保証金総額は13兆3188億ウォンだ。チョンセ保険に加入するためには、このうち2兆4122億ウォンを家主が既存の借家人に払わなければならない。10軒のうち6軒は、ビラ1軒当たりの保証金を平均3611万ウォン下げてこそ、伝貰保険に加入できるという意味だ。もし家主が現金余力がなく、このお金を用意できなければ、チョンセ保証金を取られる借家人が増えかねない。 (中略)

賃貸事業者が「相次いで破産」し、ビラのチョンセ市場が崩れる恐れがあるという憂慮まで出ている。ビラと小型の一人アパート20軒で賃貸事業を営むA氏は、ビラ売買価格とチョンセ価格が同伴下落し、HUGのチョンセ保険加入基準が強化され進退両難に陥った。借家人に返さなければならない保証金が増え、2021年乳がん判定を受けた後に受け取った保険診断金5000万ウォンと株式、積金など余裕資金まですでに保証金返還に使った状態だ。さらに、今年7月までに戻ってくる再契約が5件であるため、2ヵ月以内に2億6000万ウォンを追加で調達しなければならない。賃貸住宅の義務期間に縛られ売買が事実上不可能なため、現金を用意する道が漠然としている状態だ。彼は「2018年3月、登録賃貸事業者になれば恩恵が多いという政府広報に賃貸事業を始め保証金増額制限規定(毎年5%)も守った」として「直ちに来年にも貸切満期が到来する契約が8件なのにこのような状況になるので困っている」と話した。
(引用ここまで)


 何度か伝えているチョンセ ── 賃貸物件を借りる際に大家に渡す保証金が韓国に大乱をもたらしそうだという話。
 例として出ているソウルにある40平米のヴィラ(ワンルームマンション)では2年前は3億6000万ウォン(約3600万円)を保証金として大家に渡していた。
 チョンセは不動産価格の6〜8割ほどを保証金として渡しておくと、2年間は家賃なしで(あるいは安い家賃で)当該の不動産に住めるという韓国独自の制度です。
 さて2年後の現在、不動産価格自体が右肩下がりになっています。当然、不動産価格の6〜8割であるチョンセ保証金の相場も下落している。

 例に出ているAさんの住んでいるヴィラでは2000〜3000万ウォンほど値下がりしている。
 つまり、新しい賃借人を得られたとしても大家は2000〜3000万ウォンをどこからか調達して現在の賃借人であるAさんに返さなければならない。
 果たして、彼の保証金は無事帰ってくるのかどうか。乞うご期待。

 といった構造がひとつの不動産で行われているのであればまだ掬われるのですが。
 これが10万件以上で同じようなことが起きている。


 そもそも次の賃借人が見つかればいいのですが。
 ヴィラを舞台にした「チョンセ詐欺」事件がいくつも出ていることから、賃借人がヴィラそのものを忌避しているのですね。
 かつ、不動産価格が下落してきたのでワンルームマンションであるヴィラではなく、普通の間取りのマンションも視野に入りつつある。

 次の賃借人が入らないと、おそらく使い込んでしまったチョンセ保証金を揃えるには物件を売らないと無理。
 とはいえ、ムン・ジェイン政権下で賃貸物件は買ったあとに売買不能な期間が設けられているため自由な売買もできない。
 結果、不良債権と化して競売に出されるしかない。
 賃借人はチョンセを取り戻すことができず、大家は不動産を失う……ということが連発する可能性が出ているのです。

 ちなみにこのチョンセのやりとりですが「個人同士の取引」であるとして、家計債務には含まれていません(→韓国の家計債務(1800兆ウォン規模)、伝貰保証金(1000兆ウォン規模)はカウントせず・・理由は『個人の間の取り引きだから』)。
 さらにいうと不良債権となって競売に出されてもチョンセ保証金は「個人間取引」なので優先順位が低く帰ってくるともかぎりません。
 ……着地点、どこになるんですかね。

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韓国で大量発生している「保証金返還ができない案件」を「チョンセ詐欺」としているものの、その実態は大規模な不動産の不良債権化なのでは……

仁川チョンセ詐欺競売物件、半分以上が貸金業者所有(イーデイリー・朝鮮語)
金融当局が競売猶予を要請した仁川チョンセ詐欺被害住宅の半分以上は、貸金業者である不良債権(NPL)買入業者が競売法廷に渡した物件であることが確認された。今後も競売手続きが進められる物件の相当数がNPL業者が売ろうとする住宅である可能性が高い。

23日イーデイリー取材の結果、金融監督院が20日と21日、仁川弥鄒忽区チョンセ詐欺被害者住宅の債権競売猶予を申請した59件の内、約60%はNPL業者が保有している債権だった。24日に予定された競売でも半分以上がNPL業者が渡した物件であることが把握された。25日以後に行われる競売でもNPL業者所有物件が相当数であると観測される。

これらの物件は信用協同組合やセマウル金庫など第2金融圏がチョンセ詐欺行為を行ったA氏一味に担保融資をしたが、3ヵ月以上延滞して不良債権になったのだ。先順位債権者である金融会社は不良債権になった担保物件を普通NPLを扱う貸金業者などに元金の50~70%価格で売却する。これを買い入れたNPL企業は債務者から金を返してもらえない場合、競売にかけてしまう。

問題は資金力が落ちる零細NPL業者の場合、当局の競売猶予要請を受け入れない可能性があるという点だ。該当業者が競売を強行したからといって当局がこれを防ぐ方法もない。先立って20日競売期日が到来した32件の内、28件が延期、4件は流札されたが流札された物件は全て零細業者が保有している債権だった。落札されたとすれば、チョンセ詐欺被害者が居住中の家から追い出される状況だったわけだ。流札はされたが、次の競売の時にまた渡されれば価格が削られる可能性が高く、被害者は落札されるのではないかと住居不安に震えている状況だ。

NPL業者競売猶予のために19日稼動した汎省庁タスクフォース(TF)に貸付金融協会が含まれたが、地域の零細NPL業者まで協力を求めるには限界があるという指摘が出ている理由だ。 (中略)

金融監督院の関係者はこれと関連して「今まで要請したNPL企業等は全て状況を理解し競売猶予協力をすることにした」として「今後NPL企業等が上げる追加物件に対しても最大限協力を求める計画」と話した。

ただ、根本的な解決策が必要だという意見が出ている。尚明大学のソ·ジヨン教授(金融監督院オンブズマン)は「競売を一定期間猶予するのは弥縫策に過ぎないが、このような『時間稼ぎ対策』だけでは救済できない被害者が生じかねないという点が問題」として「死角地帯を最小化するための方案を汎省庁が早期に出さなければならない」と話した。
(引用ここまで)


 「チョンセ詐欺」、という名称の大規模な不動産、および保証金での信用不良案件続出問題ですが。
 ユン・ソンニョル大統領はとりあえずの対策として「まず物件を競売にかけるのをやめてくれ」と要請しています。
 ただ、なんの法的根拠も拘束力もないので、金融機関からそうした不良債権をかき集めている業者はほいほいと競売にかけてしまっている、とのこと。
 一部業者は「要請」を聞き入れているそうですが。

 現在、韓国の不動産価格は右肩下がりです。ピーク時比であれば5割、6割安は当たり前。
 そんな中、ローンの支払いが行われずに不良債権化した物件は、こうした業者にさらなる安値で買い叩かれます。
 今時のオフィステルやヴィラ(どちらもワンルームマンション)なんて金融機関としたらわざわざ手間をかけて回収するよりもとっとと縁を切りたいような物件でしかないですからね。
 とっとと清算してしまいたいのでしょう。


 で、そうした不良債権を二束三文で買いあさった業者は競売にかけて日銭を稼がないと干上がるだけ。
 さて、「競売にかけるのをやめてくれ」と言っている大統領府にはなにができるのか、と。
 まあ、現在の規模で「チョンセ詐欺」が収拾のつくものであればそうした要請も効くのでしょうが。  危険水域にある物件は23万件ともされている中、それらを支えきれるのか。

 というか、明日にも住まいを失い、かつ数千万ウォン単位(数百万円)単位の保証金返還を受けられずに路頭に迷いかねない人々がいまも続出しているわけで。
 そうした構造を止めることが法的根拠を伴わずにできないのであれば、さらに歪みがたまるだけなんですけどね……。
 金融機関だって不良債権処理を止めるわけにもいかないんですから。

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韓国のチョンセ(賃貸住宅保証金)詐欺地獄、危険な物件はなんと20万件以上……詰んでるのでは

韓国各地でチョンセ詐欺多発で悲鳴…「社会的災害レベル」(中央日報)
「賃貸人に不動産があるにもかかわらず個人ではなく法人名義なのでチョンセ保証金被害者は権利を行使できないと言われました。保証金を返してもらえるのか、先が真っ暗です」

新社会人の20代AさんがBさん所有の釜山市釜山鎮区(プサンシ・プサンジング)のオフィステル(住居兼オフィス物件)に入居したのは2021年8月のこと。広さ26平方メートル(8坪)のワンルームをチョンセ保証金9000万ウォン(約912万円)(内8000万ウォン銀行借入)で2年間契約した。(チョンセとは、入居の際に入居者が一括で保証金を預けて住宅を借りる賃貸方式のこと)ところが同年10月オフィステルの建物(69世帯)が競売にかけられるという話を耳にした。所有主Bさんの債務のためだった。

建物は60億ウォンを越える根抵当が設定されている。

Bさん側は「数カ月だけ待ってほしい」と言った。だが、Bさんの料金未納で昨年末は水道と電気までとめられそうになった。最近では裁判所から競売開始通知書が届いた。

Aさんは「契約前は根抵当が不安だったが、『建物の相場が90億ウォン以上あり大丈夫』という公認仲介士の言葉で契約した」とし「60余世帯が保証金も返してもらえないまま信用不良者になるのではないかと思って夜も眠れない」と話した。AさんらはBさんに法人所有不動産があるという事実を把握して弁護士に問い合わせしたが「チョンセ契約がBさん個人と行われているため法人に対して責任を問うことはできない」という回答を受けた。オフィステルに入居している賃借人の被害総額は50億ウォンほどになると推算される。 (中略)

専門家は2020~2021年にいわゆる「無資本ギャップ投資」にともなう「カントン住宅」(不動産価格の下落によって賃貸人が賃借人に保証金を返せなくなった住宅)が大きく増えたが、これら住宅のチョンセ契約満了時点が最近集中していて事件が続出しているとみている。正義党の沈相ジョン(シム・サンジョン)議員室が国土交通部から提出させた住宅資金調達計画書(2020年~2022年8月)161万件を分析した結果、住宅価格に対する賃借人の賃貸保証金比重(チョンセ価率)が80%を超えていて「ギャップ投機」、すなわちいわゆる「カントン住宅」高危険群に分類できる場合が12万1553件、チョンセ価率が60~80%の潜在的「カントン住宅」危険群が11万1481件だった。つまり全国に隠れ「カントン住宅」危険群が少なくとも23万戸あるということだ。

また別の危険信号も感知されている。警察庁が大統領室に報告した2022年チョンセ詐欺検挙件数は622件で、2021年(187件)の3倍を超える。住宅都市保証公社(HUG)の年度別保証事故額現況を見ても、2022年住宅保証金未返還金額が1兆1726億ウォンで、2021年5799億ウォンの2倍となっている。
(引用ここまで)


 韓国で「チョンセ詐欺」がぐんぐん拡大しているとの話。
 賃貸に出されている161万件中、不動産価格の8割以上の保証金 ── チョンセを取っている物件が12万件以上。
 6〜8割以上のチョンセを取っている物件が11万件以上。
 合わせて23万件以上が危険水域、とされています。

 というのも、チョンセの価格というのはその時々の不動産価格から反映されるものでして。
 すでにオフィステルやヴィラ(どちらも広義のワンルームマンション)はピークだった2年前から半額になっているものも少なくありません。
 つまり、入ってくるチョンセも半分になるわけですよ。
 ですが2年前、つまり保証金として返却しなければならないチョンセは倍。

 でも、多くの人がチョンセを流用して不動産投資をしてしまっているので、半額のチョンセが入ってきたところで、2年前の額には届いていない。
 というか、地方都市のワンルームマンションは借りる側から価格下落で後ろ足で砂をかけられている状態なので、2年前の半額とか取れるわけがない。
 チョンセ価格(割合)は物件の人気度にもよるためです。


 あらやだ、この不動産投機詰んでる。
 まあ、もちろんのことオフィステルやヴィラであっても自分が住むために購入したという層は少なからずいるはずです。
 でも、記事にあるようにオフィステル一棟すべてが同じ持ち主のものなんてことが普通にあります。

 この場合、死ねばもろともとなって、すべての部屋が競売行き。
 ですが、それでなくとも人気のない物件ですから競売価格なんて目も当てられないようなものにしかなりません。
 通勤圏のオフィステル、ヴィラが人気だったのは「ソウルのマンションが高すぎて借りることすら難しい」状況だったからなのですね。
 マンションはまだそこまで安くなっていなくても、ソウル、あるいはソウル近郊のオフィステルやヴィラであればがんばれば借りられるレベルになってきている。

 韓国の就職状況は公務員以外であれば「ソウルかそれ以外か」ですから、ソウルの住居が確保できればこうした首都圏の小型賃貸は最初から選択外。
 結果、記事のようにチョンセの返還が受けられずに借主は路頭に迷い、オーナー側も競売にかけられてすべてを失うわけです。

 このスパイラルの対策としてユン大統領は「とりあえず競売にかけられることを止めろ」と言い出しているのですが。
 それが果たしてまともな対応なのかどうか。
 ナイアガラの大瀑布をひとりで支えるようなことにならなければいいですけどね。

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韓国経済:賃貸不動産所有者が破産、逃亡→巨額の保証金が居住者に返還されず、路頭に迷うケースが続出→大統領「不動産を競売にかけるな!」……法的根拠なしでそんなことできるの?

全国が「嵐前夜」… 釜山もチョンセ詐欺被害報告「続出」(韓国経済TV・朝鮮語)
釜山でも関連被害申告と捜査が相次いでいる。
20日、被害者対策委などによると、釜山でビラとオフィステル90号室ほどを所有している夫婦が最近、チョンセ契約満了を控えて電話番号を変えて消えた。
釜山沙上区、鎮区、東区、釜山鎮区にある4つのビラテナント90人余りは最近、被害対策委員会を設置してチョンセ保証金を返してもらえないなど詐欺被害が疑われるとし対策を訴えた。

対策委によると、被害者は計89世帯で、伝貰保証金は約54億ウォンと推算される。
この夫婦は建物4棟を担保に金融界から46億ウォンの融資を受けたという。
このビラを所有している夫婦の書類上の住所地にはビニールハウスだけがあることが確認される。
(中略)

先立って釜山では本人と法人名義で所有している釜山市釜山鎮区と東莱区一帯のオフィステル100軒余りを賃貸した後、借家人に伝貰金を返さないなど80億ウォンの被害を誘発した疑いで30代が拘束されたりもした。
(引用ここまで)


 韓国第2の都市である釜山でもチョンセ詐欺が多発しており、もう全国に拡がるのは直前だとする記事。
 チョンセは不動産賃貸時にオーナーに渡す保証金。不動産価格の7〜8割ほどになります。2年後に全額返還されるのを前提としていて、これを返さない、あるいは返せないのが「チョンセ詐欺」とされているもの。

 一昨日もちらっと書いた「チョンセ詐欺」ですが、現在のところソウル以外の首都圏、および地方都市で起きています。
 大邱や釜山、仁川あたりが現在の中心地。仁川ではすでに同じ地区だけで1500件を超える事件が起きているとされています。

「1523軒競売」···仁川市弥鄒忽区(インチョンシ·ミチュホルグ)、なぜチョンセ詐欺の温床になったのか(聯合ニュース・朝鮮語)

 ヴィラ、オフィステルといった小規模住宅が雨後の竹の子のように建てられ、それらの運用が破綻したとされています。
 競売にかかるのを詐欺とするかどうかは微妙なところですが。
 まあ、被害者からしてみたら意図があったかどうかはどうでもいいですかね。
 この仁川市の入居者からはすでに3人が「極端な選択」を選んだそうです。


 前述のようにチョンセは不動産価格の7〜8割と巨額なもの。多くの人が銀行から借りて利息だけを2年間支払い、元本は返還時に支払うといったシステムが普通です。
 返済ができないのですから、一気に不良債権者になってしまう。
 そして多くの不動産が競売にかけられて安値で競り落とされることによって不動産価格はなおのこと下落していく……のですが。

 あまりにも「チョンセ詐欺」の件数が膨れ上がったために、大統領府から「競売にかけることはまかりならん」との通達が出ました。

「チョンセ詐欺住宅」、明日から競売を防ぐ···汎省庁タスクフォース稼動(ニューシス・朝鮮語)

 競売にかけられることを止めてどうなるんですかね……。
 大統領府的には「これが導火線になって不動産爆弾が炸裂するのを阻止したい」との意図なのでしょう。あと入居者救済も見据えてはいるのでしょうが。
 どんな法的根拠を持って止めているのやら。
 ま、とりあえずユン大統領の手腕を見せてもらいたいものですね。

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韓国経済:今度は不動産を250件所有していた夫婦が破綻……恐ろしいことに「これなら中規模の破綻」だったりする

今度は東灘で爆発した···「オフィステル250軒所有の夫婦破産」(韓国経済新聞・朝鮮語)
京畿道華城市東灘新都市で、チョンセ詐欺の被害に遭ったという通報が多数寄せられた。

華城東灘警察署によると、オフィステル250軒余りを所有している賃貸人が破産し、被害者数十人が伝貰保証金を返してもらえない境遇に置かれたという通報が受け付けられた。

被害者たちがオンラインコミュニティなどに「華城市東灘新都市のオフィステル貸切賃借人で貸切満了後数ヶ月間にわたって保証金を返してもらえなかった」として「賃貸人が最近税金を滞納し貸切保証金を返すのが難しいとして所有権移転を要求した」と知らせた。

しかし、被害者たちは最近、住宅価格の下落で多数のオフィステルの売買価格が伝貰価格以下に下がったと主張している。所有権を移転される場合、各種税金などの問題で借家人が2000万〜5000万ウォン程度の損害が避けられないと指摘している。

賃貸人であるA氏夫婦は東灘・餠店・水原などにオフィステル250軒余りを所有していることが分かった。A氏夫婦は主にB公認仲介士を委託管理代理人として置いて賃借契約を進めたことが分かった。オンライン上では該当公認仲介士の商号と実名が言及され、被害状況を共有している。
(引用ここまで)


 韓国には「ギャップ投資」という不動産への投資手法がありまして。
 こちらのエントリでも詳細を書いているので参照してほしいのですが。
 その解説エントリで2018年頃からすでに「不動産ローンの7割が変動金利なので金利上昇時には恐ろしいことになる」って指摘してますね。

 要するに「1.不動産を買う」→「2.貸し出しに回してチョンセ(不動産価格の7〜8割だった高額保証金)を得る」→「3.保証金で不動産を買う」→1に戻る──といった手法。
 日本でも複数の不動産を回す方式は不動産投資でありがちですが、韓国のギャップ投資は規模が段違い。
 数十件、場合によっては1000件を超えるような物件を個人が所有しています。

 一時期、ギャップ投資のセミナーみたいなものもさかんに行われていました。  チョンセは2年で返還しなければならないのですが、その保証金は不動産に化けているので他の不動産のチョンセを返還に回したりもします。
 ですが、このギャップ投資、いくつかの経済的状況、条件が組み合わさっていないと実現不可能です。

・国全体がそこそこの経済成長率である(借金額が時間と共に相対的に小さくなる)。
・金利があるていど低い。
・不動産価格が少なくとも下がらない(できれば上がり続ける)。

 つまり、不動産市況をはじめとした経済が好況であり続けることを前提にした手法なのです。
 ただ、「金利が低い」と「経済成長がそれなり」は相反する要素なのでそもそもが難しい。


 株式投資でいうと借金してきたお金を証拠金にして信用取引をはじめているようなものですね。
 ムン・ジェイン政権時代は「ソウルのマンション価格が2倍に膨れ上がる」などしたためにあふれた住民が首都圏に逃避し、そうした場所でも不動産価格が上昇しました。
 通勤特急が予定されている(着工すらしていない)、というだけでマンション価格が倍になるなどしていたほどです。
 小型の不動産であるヴィラ(ワンルームマンション)、オフィステル(オフィス用途とされているものの、実質的にはワンルームマンション)の需要も増えて、ヴィラ王らはムン・ジェイン政権時代にこの世の春を謳歌していたのです。

 ただ、上に上げた条件はすでに「高金利」「不動産価格が下落基調」と破綻しているために、ギャップ投資はほぼ終わった手法と化しました。
 ギャップ投資で成り上がり、「ヴィラ王」などと呼ばれていた人々が破産を続けています。
 今年の初頭には20代で1000件以上のオフィステル、ヴィラを所有していた「ヴィラ王」が亡くなっています。

今度は1139戸保有の27歳「ビラ王」が死亡、入居者被害100億ウォン超か(朝鮮日報)

 「今度は」とあるように、この時期を境にして複数の「ヴィラ王」が破綻しているのですね。
 で、高額なチョンセが返せなくなって、借りていた側が途方に暮れていると。

 今回の破綻は250件なのでまだ少なめ。中規模ていどですね。
 当然、これらのオフィステルは売却され、返還されるべきチョンセに充てられる、あるいは貸借人の所有になるのですが。
 先日も書いたようにオフィステルの需要と価格は右肩下がり。「こんなものもらっても……」って状況になりつつある。

 さらにそうした破綻が不動産の価格下落に拍車をかけているわけです。特に首都圏や地方都市で顕著。
 ……終わりの構造しか見えないんだけど、いまから入れる保険ってありますかね?

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韓国での「税制上有利なワンルームマンション」への投資が高金利で破綻へ……でもま、序章でしかないよね

「マンションが高くてオフィステルを買ったんだけど…···もう少し待てばよかった」ため息(韓国経済新聞・朝鮮語)
住宅価格が急騰した2021年、マイホーム購入に成功できなかったカン某氏(37)は、マンションの代替材として挙げられるオフィステルでも投資しなければならないと決心した。そこまで思い切ってソウル麻浦区にオフィステルを購入したが、最近は気が楽ではない。購入時よりも価格が下がったうえ、伝貰価格が下落し借家人が保証金を一部返してほしいと催促したためだ。それでも受け取る賃貸料はオフィステルを買収する際に受け取った貸出利子を払えば残るものがほとんどない。カン氏は「家を買えなかったという不安でオフィステルを買ったが、今では『もう少し待てばよかった』という気がする」と話した。

マンションの代替材であるオフィステルの価格が3四半期連続で下落している。売買価格だけでなく貸切保証金、家賃も下落しオフィステル市場が急激に萎縮している。さらに、分譲実績までこの10年間で最も少なかったことが分かった。

17日、韓国不動産院が発表した2023年第1四半期オフィステル価格動向調査によると、全国基準で第1四半期オフィステル売買価格は1.19%下がった。前四半期(-0.82%)より下げ幅がさらに大きくなった。昨年第3四半期以降、3四半期連続で下落している。

首都圏オフィステルの価格下落幅が拡大した。首都圏は0.72%下落から1.15%下落へと1%台に下がった。ソウルは第1四半期に0.81%下落した。不動産景気が萎縮した中で住宅規制が緩和されオフィステルの長所が薄れた。仁川(インチョン、-1.16%)は宅地地区内の新規供給の影響で老朽化した物件を中心に価格が下がり、京畿道(キョンギド)は貸出利子負担が大きくなり需要が萎縮し価格が下落した。 (中略)

実需要のチョンセ·ウォルセ価格も下がっている。オフィステルの伝貰価格は全国基準で1.25%下落した。ソウル(-0.94%)は高い金利にともなう家賃化現象、アパート貸切保証金下落にともなう需要移動などで前四半期より下げ幅が大きくなった。
(引用ここまで)


 マンション価格に続いてオフィステルの価格も下落基調。
 ムン・ジェイン政権の間、オフィステルの価格は下手をするとマンション価格よりも上昇度合いが強かったのですね。
 そこには税制の抜け道という部分がありまして。

 ムン・ジェイン政権では「複数の不動産を持つことは罪」との政策を強く進めました。
 「大統領府の一定以上の役職を持つ者、閣僚は複数の不動産を持ってはならない」「公務員2級以上の高級官僚も同様」とし、さらに共に民主党から国会議員選挙に出馬するなら複数の不動産所持禁止と通達していました。
 出身地とソウルにそれぞれ住居を持っている場合でも売り払えと強要してましたね。  イ・ジェミョンは同時期に京畿道知事だったのですが、「課長以上(地方公務員4級)は複数の不動産所持禁止だ」とより先鋭化してましたね。

 で、さらに個人が所有する2つ以上の不動産については重課税の対象にしていたのです。
 さて、そこでオフィステルの出番です。
 オフィステルは「オフィス+ホテル」の造語で、要するにワンルームマンションのこと。
 ただ、ワンルームマンションとは大きな違いがありまして。


 税制上、オフィステルは「オフィス(業務用に使用する不動産)」なのですでに住居所有者が購入しても「ふたつ以上の不動産」扱いにならなかったのですね。
 まあ、ムン政権の閣僚や大統領府職員は「そんなこた関係ねえ」とばかりにオフィステルも売却させられていたのですが(笑)。

 そんな環境で「お得ですよ」とされていたオフィステル投資は過熱していたのです。
 ところがユン・ソンニョル政権になって、ムン政権時代の不動産規制はほとんど解除され、複数住宅所有者への重税も解消されました。
 というわけで、いろいろと窮屈なワンルームマンションもどきであるオフィステル需要は一気にしぼんでしまった……と。

 で、記事のように「不動産投資できるほどの元手がなかったけどもオフィステル投資ならできた」ような人もその余波を食らって購入価格割れ、チョンセ価格下落、家賃下落のトリプルパンチ状態。高金利で元利払ったら利益もろくに残らない。
 まあ……日本でのワンルームマンション投資と同じ末路っすな。
 でも、これはまだ序章にしか過ぎないんだよなぁ。

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韓国の首都圏で不動産バブル崩壊……人気だったマンション価格が半額、40%減

16億を超えていたマンションが2年ぶりに…義王の家主たち「悲鳴」(韓国経済新聞・朝鮮語)
今年に入って昨年より5%以上急落取引されたアパートが京幾圏に集まったことが分かった。特に首都圏広域急行鉄道(GTX)好在が住宅価格を牽引した地域は住宅価格が急転直下した。

25日、国土交通部の実取引が公開システムによると、京畿道義王市フォイル洞「仁徳院プルジオエルセントロ」占有84平米は1日、8億4000万ウォン取引された。今年1月には10億ウォンで取引されたが、これより1億6000万ウォン下落した水準だ。住宅価格が上がった2021年に記録した最高値が16億3000万ウォンに比べて7億9000万ウォン下がり、「半額」水準に価格が下がった。

ネソン洞にある「義王ネソンeピョナンセサン」占有84平米も去る18日7億ウォンに変更された。直前の取引である昨年11月に7億7000万ウォンより7000万ウォン下がり、2021年に記録した最高が12億5000万ウォンよりは5億5000万ウォン急落した。 (中略)

義王市、華城市はGTX-Aの受益地域として指定された結果、住宅価格が急激に上がった。しかし、住宅価格が急に上がっただけに「泡」が多かったとの評価が多かった。不動産市場が下落すると、価格調整も急速に行われた。

一方、不動産プラットフォームの直方が出した「2月4週目のアパート売買上昇・下落取引統計」によると、19日基準で今年1・2月前年と同じ期間に比べて大幅に下落(5%以上)の取引が最も多いのは京畿道だった。京畿道における今年の下落取引件数は2240件だ。前年(1875件)比20%増えた。全国基準1万1982件の18%を占める。

全体取引比大幅下落取引は今年1月40.5%、2月32.1%で昨年同期間26.8%、27.1%と比べると大幅に拡大した。今年10件のうち3~4件が下落取引であるわけだ。
(引用ここまで)


 GTX(Great Train eXpress)構想というものがありまして。
 京畿道にあるベッドタウンとソウルを結ぶとの構想。
 大深度の地下に時速100km以上の急行鉄道を通して、ソウルへの通勤をしやすくしようという目論見です。

 現状、ソウルの北西から南東に向けて走るGTX-A、ソウルの北東から南西に向けて走るGTX-B、東西にソウルを貫くGTX-Cが基本構想。
 さらにそれぞれに接続するGTX-D、E、Fが構想中。大統領選の公約合戦にもなっていましたね。

スクリーンショット 2023-02-26 10.38.48.png
(画像引用元・聯合ニュースの記事から画面キャプチャ)

 紫がGTX-A、緑がGTX-B、オレンジがGTX-Cです。
 現状ではGTX-Aのみが着工していて来年にも部分開業予定。GTX-Bは来年に着工予定。GTX-Cも来年下半期に着工できればいいな……というところ。


 この構想が開通当該地域の住宅価格高騰を呼んだのです。
 特に高騰したのが記事にある義王市のマンション。
 義王駅にGTX-Cが停車する、しないで揉めた後に「採算が取れる」として停車することが決定されました。

 84平米のマンションがアホほど高騰して、16億ウォンだの12億ウォンだので売買されていました。
 すでに去年の1月時点でそうした価格は崩れはじめていたのですが。
 一気に最高値から見て半額やそれに近い下落を記録している。

 韓国に本格的なバブル崩壊が訪れつつあるのは既報ですが。
 まず、最初にこうしたふわっとした「将来高くなりそう」ということで青田買いされたところから大きく下落しているわけです。

 それでもこうしたマンションを買った人々、ヨンクル族は可処分所得の大半をローン返済に回しているのですね。
 ……どこまで耐えられるんでしょうかね。

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韓国で進む不動産不況、ついに「不動産ローンの延滞率10%を突破」までやってまいりました

カテゴリ:韓国不動産爆弾 コメント:(74)
「食べていくのも大変なのに返済なんてどうすれば」…貸付業の不動産担保融資の延滞率が大幅に上昇(毎日経済・朝鮮語)
相次ぐ基準金利引き上げの影響で、昨年不動産市場が急激に低迷し、貸付業者が扱っていた担保融資延滞率が10%台に急騰したことが分かった。

22日、国会政務委員会所属のオ・ギヒョン共に民主党議員が韓国貸付金融協会から提出された資料によると、昨年12月基準で大型貸付業者25社が扱った担保貸付延滞率は10.2%に上昇した。これは昨年1月(4.8%)比2倍以上急騰した水準だ。

通常、貸金業界が取り扱う担保貸出延滞率は5〜6%水準であることを勘案すると、昨年の健全性悪化程度を計ることができる。

(中略)

貸付業者が取り扱う住宅担保融資は通常、銀行からすでに住宅担保融資を受けた借主に追加で融資を行う劣後担保融資だ。これに伴い、担保物になった住宅価格が下落した時にさらに脆弱であり、先順位権者に押されて主導的に担保物を競売にかける権限もない。

最近数年間、貸付業界は低信用者の延滞リスクが増えると信用貸出の取り扱いを減らし、担保貸出比重を全体貸出の半分以上水準まで増やしてきた。しかし、基準金利上昇の余波で最近調達金利は8%台まで上昇し、不動産景気まで下落すると、今は担保貸出を扱うことそのものの余力さえなくなった状況だ。

実際、昨年12月基準で新規貸し出しを全面中断したり、取り扱い規模を10億ウォン未満に減らした貸金業者は17社に達した。同期間、新規資金の借入額も大幅に減り、上位貸付業者16社の新規資金の借入額は同年1月(3544億ウォン)の半分水準の1720億ウォンに急減した。
(引用ここまで・太字引用者)


 うっわ、これはきつい。
 あまりにも想定したとおりに物事が進みつつある。
 ここでいう「貸付業者」はおそらく第3金融圏とされる合法の登録貸付業者のこと。
 都市銀行等が第1金融圏。優良客(だけ)を相手にする大手。
 貯蓄銀行等が第2金融圏。第1金融圏で相手にされない人が顧客。
 第3金融圏は「登録貸付業者」。まあ……分かるよね?

 いわゆる「魂までかき集めてマンションを買った」人々、ヨンクル族は第1、第2金融圏からの貸し出しだけでは高騰するマンション価格に手が届かなかったので、こうした第3金融圏にも手を出さざるを得なかったのです。
 もちろん、それなりに高い利息で。


 ただ、当時は「政策金利は史上最低を横ばいしたまま」だったので、こうした第3金融圏からの融資でも返せるくらいのものだったのでしょう。
 政策金利は2020年5月に0.5%になり、そこから2021年の7月まで0.5%のまま。
 そこからは右肩上がりで現在の3.5%まで来た、と。

 結果として起きそうなことが順繰りと起きてますね。
 すでに不動産向けの貸し渋り、貸し剥がしがはじまっている。
 不動産価格は下落し、大規模な再開発マンションの新規分譲は成約率すら発表しない。地方では「成約率6%」のマンションも現れる始末。
 脆弱層はヤミ金で借りはじめ、金利の高い登録貸付業者では延滞率が10%を突破。
 まだ抵当権が低いので、不動産がすぐに競売にかけられるようなことはないでしょうけども。

 さて、次は抵当権の高い第2金融圏での延滞率上昇かな。
 すごい勢いでバブル崩壊への階段を登りつつありますが、まあ……うん。
 導火線に火がついたからにはしかたがないんだよね。

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