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カテゴリ:大統領選挙2017の記事一覧

韓国人若者の「ムン・ジェイン当選が当選すれば韓国はすべてうまく行く!」という叫びに見るデジャ・ヴュ感

ダージリンで出会った韓国若者から見えてきた奇怪な思考方法(Wedge)
 4月17日に安倍首相が北朝鮮有事に備えて関係閣僚に対応策を指示したことに韓国政府が「北朝鮮を徒に刺激して朝鮮半島情勢を悪化させる無思慮な態度」と非難したことがニュースとなった。日本のメディアでは北朝鮮問題に鈍感な韓国国民に疑問を呈するコメントがなされていた。

 数日後夕食のあとで韓国若者男女3人と雑談中に「アベはなぜ軽率な発言ばかりするのか理解できません」とチェリ君が小生に疑問を投げてきた。チェリ君はキャンドル革命での集会に5回参加したという政治意識が高い青年だ。他の2人も全く同感と小生の反応に興味津々。

 「北朝鮮が戦争を挑発する危険な行動に出ていることに韓国民は危機感を抱いていないの」と逆に尋ねると「北朝鮮危機はクレージーなトランプとアメリカ軍部が煽っているのが原因。韓国次期大統領候補は太陽政策を掲げて北朝鮮との話し合いを表明しているのでアメリカが静観していれば平和的に事態は収拾します。日本はいつも米国に追従して事態を混乱させる行動を採るので韓国国民は不愉快に感じています」と逆に米国と日本を批判。

 話し合いで解決できると妄信しているようだ。 (中略)

「米ソ冷戦のなかでソ連が画策して中国が後押しして朝鮮戦争となった。米国は絶好の機会とばかりに参戦。日本も米国に追従した。すなわち韓国国民も朝鮮国民も関係ない大国の利害が原因だ」とキューちゃんは強調。

 「韓国人は被害者なので積極的に北朝鮮危機に関与する必要も義務も一切ないわ」とプリアは顔を紅潮させた。キューちゃんは「そもそも日本が朝鮮半島を不法軍事占領して収奪して国力を疲弊したことが原因で独立後も十分な国家体制を確立できなかったことが朝鮮戦争の本当の原因ですよ。」と止まらない。 (中略)

 3人が口を揃えたのがキャンドル革命への称賛である。チェリ君は朴槿恵大統領の弾劾(impeachment)が決定したときに感激のあまり泣いたと感情を高揚させる。チェリ君とキューちゃんによると「歴史上最高の指導者は金大中と廬武鉉です。彼らは北朝鮮との関係を改善して国民に民主主義を与えた。朴正熙・全斗煥は国民を弾圧した独裁政治家であり韓国民にとっては暗黒の歴史時代。そして李明博・朴槿恵の二人は全くの無能力者で国家を大混乱に陥れた。」と滔滔と語る。そして2人の見解は10代、20代の若者の意見を代表していると胸を張った。 (中略)

 3人とも現在支持率トップの文在寅氏を支持するという。理由を聞くと単純で「すべて朴槿恵と反対の政策を掲げているからです。彼は弁護士で廬武鉉政権でも活躍した政治家なので信頼できます。朴槿恵を支持していたような保守系候補だけは絶対にダメです」とのこと。具体的政策論ではなく感情論・善悪論で判断するのが韓国民主主義らしい。
(引用ここまで)
 選挙当日ですが、なかなか面白いレポートだったのでピックアップしてみました。
 定年バックパッカーを自称する筆者がインドのダージリンに赴いたときに出会った3人の韓国人バックパッカーとの話で気づいたこと、ですかね。
 20歳前後の男性ふたりと30歳の女性ひとり。彼らいわく……

 ・「朝鮮戦争では韓国は被害者」
 ・「悪いのは日本、アメリカ、そしてパク・クネをはじめとする保守派勢力」
 ・「だから北朝鮮危機に対して直接関与する必要はない」
 ・「キャンドル革命は素晴らしい。歴代最高の指導者は金大中とノ・ムヒョン」
 ・「高齢者は保守的で、日本の教育に影響を受けてきたからダメ」

 これらの話は多かれ少なかれ、現在の韓国の若者層が持つ考えを代表していると感じます。
 北朝鮮の核問題に対しても自分たちは当事者ではないので直接関与しない。もちろん、責任は毫ほどもない。
 アメリカと日本が騒いでいるだけで、実際には大したことのない話だっていう認識。

 そしてムン・ジェインが大統領に選ばれて、間違いなく本来の素晴らしい韓国となることができるだろうと。
 ま、ざっくりとそんな感じですかね。NAVERのニュースにおけるコメントを見ていても、ざっくりとですがこれらと同じ意見を目にします。
 稀に「韓国はとんでもない立場に追い込まれているのではないか」とする考えもありますが、まるっきり相手にされていませんね。

 ムン・ジェインが大統領になればすべて解決。
 北朝鮮とも対話の回路が通じて、すべて話し合いで解決できる。
 アメリカも日本も強大な力を持った韓国に対してものが言えなくなる。
 ……くらいの妄想で国が動いている感じです。

 さらに進むと「北朝鮮と通じ合える政権ができるだろうから、これで統一への道筋はついた。人口7000万の大国として世界にデビューできる」くらいまでの大妄想が出てきますが、ここまで言っている韓国人は少ないですね。ただ、どうも腹の中にはそういう妄想を抱えている数というのは少なくないようですけども。

 ま、その夢のムン・ジェイン当選まであと数時間。
 夢から現実に覚めるまでは数週間から数ヶ月ってところですかね。ノ・ムヒョンの当選時も「見たか日本人、これが民主主義だ!」と大騒ぎだったのをよーく覚えていますよ。

私は韓国を変える
盧 武鉉
朝日新聞社
2003/03

ムン・ジェイン「私は政治報復などしない」→数時間後→「圧倒的な政権交代で積弊精算を行うのだ!」……韓国メディア「大統領になったらなにをするつもりなの?」

【社説】文在寅候補は当選すれば政治報復するのか、しないのか(朝鮮日報)
 第19代韓国大統領選挙に立候補している進歩(革新)系・共に民主党の文在寅(ムン・ジェイン)候補は一昨日「文在寅の辞書に政治報復という言葉はない」「次の政府はそんな悪いことなどやらない」と述べた。(中略)

 ところが文氏は同じ日に行った街頭演説で「清算はまだ始まってもいない。圧倒的な政権交代を実現してこそ可能だ」などと述べた。ここで文氏が「清算」という言葉をどのような意味で使ったのかは分からないが、一般的に考えれば「相手との交渉や妥協なしに問答無用でなき物にする」といった意味になるはずだ。つまりこの言葉を「政治報復のような意味合いではない」といくら否定しても、どうしてもそのように聞こえてしまうのだ。(中略)

 文氏は昨年12月、自らが大統領になれば開城工業団地と金剛山観光を即時再開すると約束した。ところが最近は「核実験が行われればやらない」と微妙に変え、今ではこれらについて語ることさえなくなった。この問題だけではない。文氏が大統領になったら何をやるのか実は有権者には全く伝わっていないのだ。
(引用ここまで)

 ムン・ジェインの公約をいろいろと探したというか、見てみたのですけども。
 けっきょく選挙前日である今日になってもよく分からないというのが実際のところなのでした。
 ざっくりと聞こえてくるのは──

81万人(+50万人?)の公務員増員
慰安婦合意の再交渉
・THAAD配備の次政権での決定(すでに配備されてしまいましたが
積弊精算(具体的になにを言っているのかは不明)

 とまあ、こんな感じです。
 北朝鮮関連に関しては「最初の外遊先はアメリカじゃない。北朝鮮だ」だの「開城工業団地を即座に再開する」だの言ってましたが、ここ1ヶ月ほどなにも言ってません。
 経済政策についていうと「大きな政府に仕立て直して韓国経済を牽引する」というような大まかな話はしているのですが、具体的な手法についてはまったくのだんまり。
 THAADについては「すべてを満足させる腹案があるのだ」という話はしていましたが、強硬配備されてほぼ終了。あれを撤収させたら米韓関係が終わる……終わってもいいという考えの下ならそれもありでしょうけども。

 一応、10大公約みたいなものは出しているのですが。
 読んでいても「……なんだそりゃ」みたいな感想しか出てこないものばかりだったりします。

ムン・ジェイン氏の「国民10大公約」(シンシアリーのブログ)

 最後の「地下商店街の空気質の改善、澄んだ水を作る」とか、確かに必要なことだとは思うのですが。
 韓国の地下商店街というのはシェルターも兼ねているのでそこかしこにあるのですが、とにかく古いものが多くて空気が淀んでいる。
 ついでにいえばタイルとかも古ぼけてて、日本でいうなら「昭和の香りがする」というアレなのです。
 確かに改善が必要だとは思いますが。
 でも、大統領公約じゃねえだろっていう。

 大統領公約っていったら、もうちょっと大まかに「こういう韓国にするのだ」という絵を描いて、「そのためには……」という話をするもんじゃないんですかね。
 まあ、イ・ミョンバクの747公約とか、パク・クネの創造経済とかけっきょくは意味不明だったので、適当なこと言ってりゃ大統領になれるというのは慣習なのかもしれませんが。
 まあ、あやふやにしておいたほうが得だから、ってことですかね。
 どちらにせよ明日には決定。あさってには新大統領誕生ですよ。

計画された混沌
ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス
きぬこ書店
2015/5/19

ムン・ジェインの超反日ブレーン、ホサカ・ユウジ教授は政権入りへ? その際に日韓関係はどうなる?

文在寅候補の「反日ブレーン」は韓国に帰化した日本人(NEWSポストセブン)
 今年2月中旬、ある日系韓国人が文在寅陣営の政策顧問に就任したことを、韓国メディアが一斉に報じた。

 保坂祐二氏(61)。世宗大学教養学部教授で、同大学「独島総合研究所」所長を務める、韓国での竹島(独島)研究の第一人者だ。 (中略)

 1998年、世宗大学の教員となった保坂氏は竹島研究に没頭し、歴史的考察から「独島は韓国領」との主張を展開。メディアにも頻繁に登場し、祖国・日本への辛口トークが韓国で話題となり知名度を上げた。在韓歴はおよそ30年。2003年に韓国に帰化した。 (中略)

 教鞭をとる世宗大学の申求・総長からも、保坂氏は「日本出身でありながら独島が韓国領であることを国内と日本、そして全世界に知らしめる非常に重要な人物。世宗大学は保坂教授の率いる独島総合研究所を惜しみなく支援する」(2016年8月29日付『イーデイリー』)と絶賛されている。近年は竹島問題だけでなく、慰安婦問題でも日本批判を展開している。

 文在寅陣営の政策顧問に就任した直後の2月27日には、自身のフェイスブックで慰安婦問題に関する持論を披瀝。

〈1930年代から第二次世界大戦が終わるまで、慰安所を自ら設置して慰安婦を連れまわした軍隊は日本とナチス・ドイツだけ〉 〈日本は『戦場の兵士が現地の女性を強姦しないように作った素晴らしい制度だった』と主張するが、それ自体が根本的に誤り〉

〈慰安婦制度が国家の決定で、それがすなわち強制だったところに問題の本質がある〉

 と訴えた。さらに文在寅氏の公式ブログにも保坂氏は登場し、

〈当事者抜きの慰安婦合意なんてありえない。慰安所なんてものを作ったこと自体が戦争犯罪だ〉

 と、慰安婦合意の破棄・再交渉を提唱する文在寅氏を援護射撃している。 (中略)

 産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏は、「文在寅氏は、このように韓国人の“ツボ”を心得た保坂氏の“利用価値”が高いと踏み、自陣営に取り込んだのではないか」と見る。

「保坂氏が帰化していることは、実は韓国社会ではあまり知られていません。本人は隠しているわけではないのですが、今でも“日本人”としてメディアで紹介されることが多い。だから『日本人でさえも独島や慰安婦問題で日本を批判している』と国内外に印象付けることができるのです」

 保坂氏はあと2年で定年を迎える。韓国では引退した大学教授はほぼ例外なく隠居生活を強いられるため、今回の起用は彼にとっても千載一遇のチャンスなのだという。はたして保坂氏は、文在寅氏の右腕として政権入りを果たすことができるのか。

「本人だってまんざらではないはず。文在寅陣営に合流してからは、積極的に自己アピールに励んでいます。

 ただし、政権に組み込まれるかは疑わしい。日韓関係を担当するには日本での知名度、人脈がモノを言います。彼にはそれがありません」(前出・黒田氏)
(引用ここまで)
 現在のムン・ジェイン選挙陣営で反日ブレーンとして合流しているホサカ・ユウジ教授の紹介記事。
 以前から「日本は日韓友好を求めるなら大韓民国臨時政府の存在を認めなければならない」というような感じで極度にヒダリがかった言説が多い人だなとは思っていたのです。
 そもそもそこまでして日韓友好なんて求めねーよって話なのですが。
 この話は日韓基本条約のにまでかかってくる話なので、当該エントリを読んでもらうのもよいと思います。

 さて、当のホサカ教授ですがムン・ジェイン陣営することで馬脚を現したというか、割れ鍋に綴じ蓋というべきか。
 こんなのを対日政策のブレーンとして雇うという時点で、日本としては対応が事前からやりやすいということではありますね。
 さらに政権成立後に組み入れられたらもう言うことなし。 

 ムン・ジェインがなにを言ってくるのか、なにをやってくるのか。
 通常であれば想定されるパターンを複数用意してそれに対するシミュレーション等も必要になってくるものです。
 しかし、もしもホサカ教授が政策ブレーンとして対日外交を行ってくるのであれば、こんな簡単なことはありませんね。 

 ま、どっちにしても空前絶後の反日政権になることは間違いありませんが。
 その政権誕生まであと5日、ですか。

なお、ユン・ビョンセと同じ眷属である模様。
重要会議ではヅラをかぶろう 超・実践クリエイティブ経営
青井博幸
講談社
2009/10/10

 

ムン・ジェインが勝利したあとの韓国に残るものとは……?

【社説】文在寅氏は復讐するために韓国大統領の座を狙うのか(朝鮮日報)
【社説】国を分裂させて執権すれば後遺症に耐えられるだろうか=韓国(中央日報)
 進歩(革新)系政党・共に民主党から大統領選挙に立候補している文在寅(ムン・ジェイン)候補は30日にソウル市内で遊説を行い「崔順実(チェ・スンシル)などが国家権力を利用して不正に蓄財した財産は全て国家が環収する。李明博(イ・ミョンバク)政権による4大河川をめぐる不正、防衛産業をめぐる不正、資源外交における不正も全て改めて調査し、不正に蓄財された財産があれば環収する」などとした上で「大統領になれば積弊清算特別調査委員会を立ち上げる」と述べた。同党が28日に公表した公約集の中でも文氏は「李明博・朴槿恵(パク・クンヘ)両政権の9年間における積弊清算」をいわゆる「12大公約」の最初に明記し、これと関連した調査委員会の立ち上げにも直接言及している。

 選挙戦序盤で文氏は当初「積弊大掃除」という言葉を使っていたが、その後は一時「統合」に言及するなど、その主張にはどこか一貫性がみられなかったが、最近は当選を確信したのか、自らの本音を少しずつ出し始めた。さらに自らの当選を阻止する行為を「腐敗した既得権の延長でありキャンドル民心への裏切り」などと一方的に批判している。(中略)

 盧元大統領への捜査とその自殺後、韓国社会では「大統領経験者に対してここまで追及すべきか」という自省、さらには「政治的報復はもう終わりにしよう」といった声が高まった。しかしそれでも朴槿恵政権では李明博政権に対する報復が再び始まり、今も次に政権の座につきそうな勢力が再び報復をちらつかせはじめた。そうなると当然その次は彼ら自身が間違いなく報復を受けるだろう。韓国政治におけるこの報復の連鎖はやはりいつまで経っても終わらないのだろうか。

 「積弊清算特別調査委員会」の立ち上げを公言している文氏の言葉を聞いていると、2017年から大韓民国は再び過去に戻ろうとしているようだ。盧武鉉政権の「過去史委員会」のような過去への追求がまたも繰り返されるとなれば、この国は本当に前に進むのか、あるいは後ろに後退してしまうのではないか懸念ばかりが深まってしまう。 (中略)

今後どこまで激しい嵐が吹き荒れるだろうか。ただその嵐は当然、後にその強さに応じた逆風を受けるだろう。選挙によって社会が統合から分裂、協治から対決へと向かい、その結果、国全体がこれまで以上に混乱する様子が今から目に見えるようだ。
(引用ここまで)
選挙の最終段階に主要候補陣営の極端的な言動が度を越している。最近、問題になったのは文在寅(ムン・ジェイン)共に民主党候補側の李海チャン(イ・ヘチャン)議員の発言だ。彼は忠清南道公州(チュンチョンナムド・コンジュ)での演説で「極右保守勢力を完全に壊滅させなければならない。二度とこの国を壟断できないように徹底して壊滅させなければならない」と強調した。「壊滅」は軍事用語だ。敵を再起不可能に押し倒して滅ぼすことを意味する。 (中略)

普段丁寧な話し方の文候補も遊説場で「またも『理念』をめぐる論争・従北攻勢が騒々しいが、もう国民もだまされない。こいつらよ」と叫んだ。執権に自信があふれていつのまにか傍若無人になったのだろうか。 (中略)

実際に、文候補側は選挙の初期には大統合を叫んだが、最近公約パンフレットに「積弊清算特別調査委の設置」を1番公約としてこっそりと載せている。

このような形で選挙戦が流れれば、大統領になっていくら舵を切ろうとしても、怨恨や憎しみ、分裂にとらわれた国民をリードすることが難しいだろう。国を分裂させて執権すればその後遺症はそのまま新たな大統領が体験することになる。候補らは、あまり残っていない選挙過程を統合する方へ舵を切ってほしい。
(引用ここまで)

 この場合の「復讐」は弁護士事務所で共同代表であり、政治的にも盟友であったノ・ムヒョンの自殺に対してのものだけではなく、2012年の選挙戦で勝利したパク・クネに対してのことでもありますかね。
 ずーっと以前から「韓国の政権交代は易姓革命そのものであり、同じ政党からの候補であったとしても前政権は全否定される」という話をしてきました。
 たとえばパク・クネはイ・ミョンバク政権に対して選挙中からすでに「政党は同じで人物はまったく違うのです」というアピールをしてきました。
 イ・ミョンバク政権は「経済政権」とされていましたが、国民が望むような結果を出せなかったのですね。
 そこでパク・クネは「イ・ミョンバクではない我々であれば成果を出すことができる」というようにして政権についたわけです。
 薄氷の勝利ではありましたが。
 その後、イ・ミョンバク政権の資源外交4大河川事業を片っ端から精査していきましたね。魚ロボットの芸術的なまでのダメさはその中で暴かれたものでした。

 今回の選挙ではすでにパク・クネは存在そのものを全否定されています。
 というわけで易姓革命を成立させるには、さらなる贄が必要になるのです。
 それがムン・ジェインのいうところの「積弊精算特別調査委の設置」なのです。
 ノ・ムヒョンが保守派の巣窟であったチニルパ(日本統治時代に韓国で一定以上の地位にいた人物)認定を血眼になって行ったように。
 あるいはそれ以上の苛烈さで「チニルパ精算」を宣言し、行わなければ政権の正統性が疑われてしまうのですね。
 3月のエントリでは「新しい身分制度を作るくらいの勢いで~」と書きましたが、それに近しいことをやる可能性が大です。
 ……なんだ、北朝鮮の制度に近づくだけですね。

ポル・ポト〈革命〉史 虐殺と破壊の四年間 (講談社選書メチエ)
山田寛
講談社
2004/7/10

韓国大統領選挙:主要候補の外交公約をまとめてみた。慰安婦合意は全員破棄。GSOMIA、THAAD配備は継続へ?

韓国大統領選 洪候補とのインタビュー 発言要旨(毎日新聞)
日韓関係「安保と歴史は分離」 大統領選候補・安哲秀氏(朝日新聞)
日韓関係の悪化は避けられない?韓国大統領候補全員が「慰安婦合意の再協議」を宣言(レコードチャイナ)
大統領候補ら、初めての討論会で朝鮮半島の安保・THAADめぐり攻防(ハンギョレ)


 韓国の大統領選挙まであと2週間ちょっと。
 公約がざっくりとですが見えてきたのでチェックしてみましょう。まずは日本にとって気になる部分、すなわち「慰安婦合意」「日韓GSOMIA」「THAAD配備」といった主たる外交案件について。

ムン・ジェイン(共に民主党・64歳)
 慰安婦合意  ×
 日韓GSOMIA △
 THAAD配備   △

アン・チョルス(国民の党・55歳)
 慰安婦合意  ×
 日韓GSOMIA ○
 THAAD配備   ○

ホン・ジュンピョ(自由韓国党・62歳)
 慰安婦合意  ×
 日韓GSOMIA ○
 THAAD配備   ○

 実際には5人が候補として立っているのですが、有効な候補者というのはこの3人までではないでしょうかね。
 一応、それぞれの立ち位置を書いておきましょうか。

○ムン・ジェイン
 ノ・ムヒョンの盟友。弁護士時代から共同事務所を開くなどしていた。当然、極左と呼べるレベルの左翼。野党第1党である共に民主党前代表。今回の大統領選挙の大本命。

○アン・チョルス
 野党第2党である国民の党前代表。日本では中道とされているが、実際には「新政治民主連合」の共同代表をしていたくらいなのででリベラリスト。大統領選を見据えて新政治民主連合から離党し、国民の党を設立した。中道左派とはいえるかな。というかどちらかというと典型的な風見鶏でポピュリスト。セキュリティソフトのアンラボの創業者。保守系の支持を一部受けている。

○ホン・ジュンピョ
 与党の自由韓国党(旧セヌリ党)からの候補者。保守系候補としては最大の支持を得ているが、そもそも今回の選挙は保守を叩くための選挙なので当選の目はほぼない。
 さらにセヌリ党から離脱した正しい党からも大統領候補は出ているけど、泡沫すぎて話にならないレベル。

●慰安婦合意
 慰安婦合意については全員がなんらかの形で反対。
 ムン・ジェインは「交渉の経緯を明らかにしてから再協議」で×。
 アン・チョルスは「破棄」を主張で×。
 ホン・ジュンピョは再協議もなにもない、一方的破棄で×。

●日韓GSOMIA
 日韓軍事情報包括保護協定については意見が分かれています。
 ムン・ジェインは「軍事情報のやりとりを見て、1年毎の更新時に延長か否かを決める」で△。少しヘタれました。
 アン・チョルスはこのままの維持を主張。
 ホン・ジュンピョも同様に維持。

●THAADミサイル配備
 ムン・ジェインは延々と「次政権で決定する」という話をしてきましたが、最近になって北朝鮮によるミサイル・核問題がクローズアップされるようになって配備容認の発言をするようになりました。
 アン・チョルスは年初あたりから容認に転じています。
 ホン・ジュンピョは当初から容認を党是としている自由韓国党からの候補なので当然容認。

 今回の半島有事を受けてムン・ジェインが若干ですがヘタれはじめました。以前からの話では日本に対してはすべて否定、THAADも「次期政権に任せる」と言いながらも実質的には拒否の姿勢だったのですが、容認しつつあります。
 それ以前にアン・チョルスは保守側からの支持を受けるために、保守受けする政策にシフトしていました。パン・ギムンを外交特使として扱うなんていうのもその一環ですね。
 さすがにここからの大きな方針変更はないと思いますが、どの候補が当選しようとも慰安婦合意に関しては破棄、もしくは再交渉となっています。
 ……できたらいいですね。

 次回は経済政策について見てみるとしましょうか。これはアン・チョルス対ムン・ジェインの形にします。このふたり以外の経済公約がほぼ無視されているので。


韓国大統領選:名物のネガティブキャンペーンが開始される。「アン・チョルスは第2のパク・クネだ」「おまえらこそ~」と切りがない様子

ムン陣営「アン候補は第2の朴槿恵」... アン陣営側「ムン候補は第2の李会昌」…神経戦加熱(聯合ニュース・朝鮮語)
大統領選挙を控え、各種世論調査で事実上の二強構図を形成した共に民主党ムン・ジェイン大統領選挙候補側と国民の党アン・チョルス候補側の神経戦がますます加熱される面を見せている。

双方はムン候補の息子の就職優遇疑惑とアン・チョルス候補の娘の財産告知拒否疑惑など、それぞれの候補周辺の人物の身元はもちろん、最近の世論調査で示された結果についても舌戦を続けた。

ムン候補選挙対策委員会のソン・ヨンギル総括本部長は10日、YTNラジオ「伸びの出発新しい朝」に出てきて「アン候補はムン候補が受けてきた検証の半分も受けてみ判断されなければならない」とし「漠然としたイメージだけを見て投票してしまえば『第2のパク・クネ』を産み出すだろう」と述べた。

ソン本部長は「弾劾に反対していた勢力が組織的にアン候補を活用してレンタルして使おうとする「借り物大統領」の動きが露骨になっている」とアン候補が保守陣営の支持を受ける候補であることを非難した。

これに対して国民の党パク・チウォン代表は、Facebookに文を載せて「イ・フェチャン前総裁が大統領になったかのように傲慢に行動して、ノ・ムヒョン候補ではなく金大中を攻撃して落選したことを覚えていないようだ」と「ムン候補は第2のイ・フェチャンとなるだろう」と攻撃した。
(引用ここまで)

 イ・フェチャンは2002年の大統領選挙でノ・ムヒョンに負けた保守派政治家ですね。
 当初は勝利確実と見られていて、敵はノ・ムヒョンではなく前大統領である金大中であるというような態度を取っていたらあれよあれよといううちに終盤でノ・ムヒョンにまくられてしまったという経歴の持ち主です。

 さて、記事はかなりはしょっているのですが、「向こうは公約で○○と言った、まるで××のようだ」みたいな攻撃ばかりをしているという状況。
 たとえば「アン・チョルスは『北京のスモッグフリータワーをベンチマークする』と言ったが、あれはただの芸術作品だ。そんなものを建てればイ・ミョンバクの魚ロボットの二の舞となるだろう」みたいな話を延々と続けているのですよ。
 公約論争というか、相手をやりこめるのが目的のネガティブキャンペーンになっています。

 まあ、韓国の大統領選というのはいつだってそういうものだったのですが。
 いかにして自分は相手よりも上にいるのか。
 あるいは(穢れた)前政権とは自分がいかに異なっているのかというアピールばかり。

 公約の中身とか、どういう政治をするとかどうでもいいのですね。
 もう、ムン陣営は「アン・チョルスは保守陣営と手を組んだ」ばっかりしか言っていないっていう状況。
 それをどう国民が判断するかとかではなくて、「保守は罪」というようなルールを作りたがっている様子。
 で、その様子が保守派層である高齢者に嫌われているのですね。

 ざっくり計算したのですが有権者の中で保守派層とされている50代以降は1500万人ちょっと。
 一方、20~40代は2200万人ほどでした。
 全員が選挙に行って、かつ40代以下がすべて左派であるのなら、ムン・ジェインが勝利するでしょうが……。
 まあ、そういうわけでもないでしょうからね。

 アン・チョルスがパン・ギムンと手を結んだ(ように見える)ことでだいぶ混沌としてきた感じです。

情報参謀 (講談社現代新書)
小口日出彦
講談社
2016/7/20

韓国大統領選挙:「最低賃金1万ウォンだ!」と公約をぶち上げる候補者たち、ため息をつく韓国人

韓経:【社説】「最低賃金1万ウォン」掲げる韓国大統領選候補の無知(中央日報・韓経)
明日から始まる来年度最低賃金の審議が大統領選期間と重なって多いに難航が予想されるという報道があった。2000年以降、年平均8.7%も引き上げられてきた最低賃金を大統領候補が2桁以上に引き上げると約束しているためだ。李在明(イ・ジェミョン)城南(ソンナム)市長、正しい政党の劉承ミン(ユ・スンミン)候補、正義の党の沈相ジョン(シム・サンジョン)代表などは2020年までに最低賃金を時給1万ウォンに引き上げると掲げ、共に民主党の文在寅(ムン・ジェイン)前代表も1万ウォンになるまで引き上げを加速化する必要があると主張している。今年6470ウォン(約643円)である最低賃金を1万ウォンに引き上げるためには、3年間平均15%以上ずつ引き上げなければならない。

「最低賃金が1万ウォンはしないと」という同情交じりの話は誰にでもできる。しかし、国家を総体的に率いていく大統領候補が口にする話ではない。最低賃金を引き上げれば、その恩恵が脆弱層に回ると思うこと自体が誤解で無知だといえるからだ。最低賃金を引き上げれば、脆弱層でなく中流層を含めた既存の労働者にもっと利益になる。ソウル大学のイ・ジョンミン教授の研究によると、最低賃金の影響圏にある労働者の中で所得が最も少ない「1分位(下位20%)世帯」に分布している労働者は8%に過ぎない。中流層である4~7分位に44%が集まっている。

むしろ、脆弱層の雇用は減ることになっている。最低賃金を1%引き上げれば、若年層は0.29%、高齢層は0.33%減ることが分かった。女性は0.2%、勤続3年以下の労働者は0.25%減って打撃が大きいことが明らかになった。最低賃金が過度に引き上げられ、賃金を支払えなくなる事業者が職員をやむをえず解雇するためだ。最低賃金法を違反すれば「3年以下の懲役、もしくは2000万ウォン以下の罰金刑」に処される。「現実」を考えて取り締まりを緩めている雇用労働部が本来通りに法を適用すれば、最低賃金に満たない賃金を支払われている労働者が大量に失職する事態が起きるだろう。

大統領候補は何より最低賃金を支給する主体が誰なのかを正確に分かる必要がある。都合が悪い中小企業または、零細事業者だ。いったい誰のお金で恩着せがましい態度を取っているのだろうか。「最低賃金1万ウォン引き上げ」は他の経済公約まで疑わせる非常に危険な発想だ。
(引用ここまで)

 よくできている記事で、全文引用になってしまいました。
 韓国の記事はよけいな装飾文が多くて読みづらいので、ざっくり削っても意味が通じることが多いために半分くらいにはできるのですけどね。

 さて、現在の韓国における最低賃金は時給6470ウォン。今日のレートだとほとんど10ウォン=1円なので、そのまま647円。
 韓国の場合は全土統一での最低時給となっています。
 ま、もっともその額ですら、6人にひとりはその最低賃金を受け取ることができていない

 特に学生のバイトとしてありがちなコンビニでは2人にひとりというレベル。
 未払い賃金は人口比で日本の25倍
 取り締まりもよっぽどひどい状況でないと行われません。
 なぜなら厳格に最低賃金を適用させると職場自体がなくなってしまうから。
 それでなくても自営業者が500兆ウォンの負債を抱えている現状で、その自営業者に雇われているような労働者に韓国で時給10000ウォンを支払わせることになったら……。
 ちょっと想像の埒外です。

 そんな中、大統領候補たちは「時給は10000ウォンだ!」と叫んでいる。これまで最低賃金は記事によると2000年以降で年8.7%という伸び率を示してきました。
 2000年以降で韓国の経済成長率がそんな数字になったことは一度すらないのにです。
 2020年には最低賃金を10000ウォンにするには年に15%の伸び率でも9840ウォンにしかならない。年16%ずつの上昇でようやく10098ウォンですよ。
 今年の韓国の経済成長率が2%台半ばとされている中で、どうやったらこんな時給をたたき出すことができるのやら。

 自営業者「時給10000ウォン? そんなものがもらえるくらいなら、わたしが賃金労働者になりたいわ」
 取締官「貴様、誇り高い革命政府の通達に逆らうつもりか!」
 ……なーんてことにならなければよいですね(はぁと)。

ルポ 賃金差別 (ちくま新書)
竹信三恵子
筑摩書房
2012/4/10

韓国保守派「もう意見が違おうとなんだろうと保守派の統一大統領候補を出せよ!」と悲鳴を上げる

【コラム】韓国大統領選、土壇場で逆転はあるのか(朝鮮日報) 
 日本で徳川幕府打倒のきっかけとなった薩摩と長州による薩長同盟(1886年)は、勢力が弱い2つの陣営が連合し、強者を倒した代表的な事例として挙げられる。薩長同盟は不可能と思われた両勢力の連帯を実現した交渉の結果だ。両陣営の対立は韓国で言うと、嶺南(慶尚道)と湖南(全羅道)の不和を上回る水準だったという。幕府も両藩の連帯は「あり得ない」として、状況を楽観していた。

 しかし、両藩は積年のわだかまりを洗い流し、力を合わせた。不可能とされた合意を引き出した人物が日本の近代を切り開いた英雄として慕われる坂本龍馬だ。彼が双方を行き交い語った「まずはもう一度会ってほしい。そして、半歩だけ譲歩してほしい。後は自分が引き受ける」という言葉が印象的だ。 (中略)

 大統領選は果たしてこのまま終わるのか。中道・保守陣営は唯一逆転できるシナリオとして、民主党以外の候補・政党の連帯を描いている。自由韓国党の洪準杓(ホン・ジュンピョ)氏、国民の党の安哲秀(アン・チョルス)氏、正しい政党のユ・スンミン氏が有力となっている3党候補が劇的に手を結び、文氏との一騎打ちの構図を形づくれば、土壇場での逆転もあり得るとの考えだ。各党有力者が水面下で調整に入ったとのうわさもある。

 さまざまな状況からみて、3党の連帯が実現するには険しい峠を越えなければならない。2陣営の連携でさえ難しいのに、考えが異なる3つ以上の陣営をまとめなければならないからだ。時間が足りない上に考慮すべき不確定要素だらけだ。各陣営は利害関係が食い違い、支持層の考えも異なる。 (中略)

 無論そうした悲観的な見通しは劇的な交渉の可能性もはらんでいる。ただ、そのためには「名分」と「譲歩」が求められる。主な政治家は故障した大統領制を修正するため、分権型憲法改正、反覇権の名分を掲げ、各陣営を説得できなければならない。また、連帯なき大統領選以降は共倒れになると説得し、半歩ずつ譲歩を引き出すことができなければ、連帯を期待するはできない。国民の党の朴智元(パク・チウォン)代表が言うように、「政治は生き物」であり、洪準杓(ホン・ジュンピョ)氏が言うように「不可能を可能にするのが政治」でもある。しかし、それが可能となるためには少なくとも「半歩の譲歩」が必要だが、それが可能かどうかは動向を見守るしかない。
(引用ここまで)

 先日のソンウ・ジョンのコラムもそうですが、韓国国内の保守派からは悲鳴にも似た叫びが連日上がっています。
 現状のままでムン・ジェインが大統領となった場合、怖ろしい事態になるのは間違いないですからね。
 シンシアリーさんによると、すでにテレビ朝鮮は停波されるのではないかとされているとのこと。
 こういった有形無形の圧力はこれからも続くでしょう。
 最低で5年。長いと13年。
 さらに長ければ今世紀中はそのままなんて可能性すらあります。その場合の国名は「大韓民国」ではないかもしれませんが。

 パン・ギムンが出馬宣言を撤回し、ファン・ギョアンが不出馬宣言をしてしまった現状では保守派の受け皿そのものが存在しないのです。
 「保守側の気持ちを汲もう」と発言している共に民主党からの候補であるアン・ヒジョンに最後の望みをかけているような状況。

 そのアン・ヒジョンですら支持率調査では20%に達することすらない。
 そして現状ではアン・ヒジョンは共に民主党内の予備選挙で落選すること間違いなし。

 旧セヌリ党の自由韓国党、正しい政党に加えて国民の党を合流させて統一候補を立候補させることで対抗軸にさせようというのが、この記事の目論見なのです。
 この記事の目論見、というか保守派に残された最後の望みとでもいうべきでしょうかね。
 そのために日本の維新前夜の薩長同盟のような「それぞれが半歩だけ譲歩してほしい」という精神を持ち寄れば可能になるのでないかという話ですが。

 無理ですね。
 薩長同盟はどちらにも「このままじゃ日本がダメになる」という認識があって、そのための手段を探していたところに坂本龍馬というカリスマが介在したからこそうまくいったわけで。
 まあ、その他にもいろいろと重なってはいるけども、登場人物の全員に「日本をどうにかする」という意識があったのですよね。
 廃藩置県で中央集権制度になったときも、島津久光が一晩中花火を打ち上げて抗議したくらいなもので、そうせざるを得ないという共通意識があったからこそできた。

 果たして韓国にそんな意識があるのかどうか。
 そもそもこの話をしている保守のほうも「韓国のために」というよりは、自己保身のためなんじゃないのって気がしてならないのですよね。
 そもそも論としてムン・ジェインにならなかったとして、アン・チョルスなり旧セヌリ党の重鎮が統一大統領候補になったところで、韓国のためになるのかってことなのですが……。

 どっちにしても現状では保守派=パク・クネという図式になっていて、かつパク・クネに対してのアレルギーが強すぎて、対抗軸にはなり得ないと思います。

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2016/11/30