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カテゴリ:半導体関連の記事一覧

韓国メディアが「ラピダスが2nmプロセス試作ライン立ち上げでブロードコムへの試作品チップを供給する」との日経報道に反応……実はラピダスにはけっこうビジネスチャンスがあるのですよ

日本の半導体製造企業ラピダス「2ナノ戦争」に乗り出すか……米ブロードコムに試作品チップ供給へ(朝鮮日報・朝鮮語)
日本の半導体連合企業ラピダスが米国の世界5位の半導体企業ブロードコムに6月までに2ナノ(1ナノは10億分の1m)半導体試作品を供給することにしたと日本経済新聞(日経)が9日報道した。 ラピダスは2022年トヨタ、ソニー、キオクシアなど日本代表8社が出資して設立した半導体企業だ。

日経によると、ラピダスは4月に2ナノ製品の試験生産を行い、2027年から本格的な量産工場の稼動に入るという目標だ。 ラピダスの2ナノ試験生産時点は、ファウンドリー(委託生産)1位の台湾TSMC、三星電子とほぼ同じだ。 相対的に超微細工程で遅れを取っていると知られている日本の半導体業界が急速に技術格差を減らし、先端市場に進入し始めたのだ。

これまで半導体業界では、ラピダスの超微細工程成功の可能性を高く見ない分析が多かった。 技術参入のハードルが高い上、意味のある歩留まり(良品生産比率)を確保するためには莫大な投資費用がかかるからだ。 しかし、今回のブロードコムと試作品供給契約を結んだことを考慮すれば、ラピダスが技術的な面で相当な進展を見せているものと分析される。

何よりもラピダスは超微細半導体生産工場を安定的に稼動するためには顧客会社確保がカギだったが、世界5位の半導体業者であるブロードコムと手を握り、2ナノ市場進入に推進力が生じた。 日経は「ブロードコムはラピダスの2ナノ半導体性能を確認した後、データセンター用半導体などの生産をラピダスに委託する計画」と伝えた。
(引用ここまで)


 ラピダスが27年の量産開始を視野に入れ、2nmプロセスの試作ラインを立ち上げたことが日経に報じられました。
 で、ブロードコムへの試作品生産を行うとの話です。

ラピダス、米ブロードコムと連携 2ナノ半導体を試作(日経新聞)

 これに韓国メディアが異様なほどに反応してまして。
 冒頭記事以外にも10前後の記事があるかな。
 まあ、韓国で半導体製造受託企業といえばサムスン電子ですが、ここのところぱっとしない。
 メモリ製造についてはまだ世界のリーダーのひとつとはいえますが、もはやメモリ製造では脇役に過ぎないことを把握しつつあるのでしょうね。


 まあ、サムスン電子やインテルのように「自社でも製造しているしがらみ」を持たない純粋な受託企業として、ラピダスが2nmプロセスでの量産を成功させることができればさまざまな半導体企業にとって福音となれるのです。
 現状、半導体受託企業って絶妙な環境にあるのです。

・自由主義陣営における半導体製造受託企業の3番手4番手であるUMC、グローバルファウンドリーズは12〜14nmプロセスで開発を停止。
・TSMCの最先端プロセスはまずアップルが独占使用することがお約束。
・それ以外の先端プロセスも競争率が高すぎる状態。
・2番手のサムスン電子は3nmプロセスで「量産できた!」と主張するけども実際には歩留まりが上がっていない。結果、顧客もいない
・サムスン電子は自社での半導体設計・製造をしているので、ライバル企業としては製造委託するのにためらいがある。

 ……といった環境もあって2nmに飛びこんだラピダスにビジネスチャンスあり、とは判断してはいます。
 ビジネスチャンスがあるのと、本当に量産できるかどうかはまた別の話ではあるけども。

 韓国メディアが敏感に反応しているのもそのあたりの事情を鑑みてのことでしょう。
 でもまあ、「敏感すぎない?」とは感じますね。

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韓国メディア「TSMCの2ナノプロセスは供給が少ない。量産で先行しているサムスン電子にQualcommやNVIDIAから引き合いが来そうだ!!」……そりゃ、できるならやってほしいだろうけどさぁ

TSMC to Lose 2nm Orders? NVIDIA and Qualcomm Reportedly Mull to Team up with Samsung(TrendForce・英語)
TSMCの最も重要な顧客であるAppleが、このファウンドリ大手の2nmプロセスの採用を2026年まで延期する可能性があるとの噂がある中、朝鮮日報とSamMobileを引用したCommercial Timesの報道によると、NVIDIAとQualcommもこれに追随し、最先端のチップにSamsungの2nmを採用することを検討していると報じられている。

報道によれば、コストの高さと生産能力の限界により、米国の半導体大手2社は考え直す可能性があるという。

TSMCのほか、日本のラピダス、韓国のサムスンファウンドリも2nmクラスのノードの量産化を目指している。その中でもトップを走っているのがTSMCだ。同社の2nmの歩留まりは60%に達したと報じられており、同ノードは2025年に量産化される予定で、4月には試作が開始されると噂されている。

一方、朝鮮日報によると、サムスンは2025年第1四半期に2nmのテスト生産を開始すると報じられている。マネーDJによると、ラピダスは北海道千歳市に工場を建設しており、2027年に2nmウエハーの量産を目指している。

TSMCの2nmはコストが高く、生産能力が限られているため、朝鮮日報の報道では、サムスンは日本のAIスタートアップ企業であるPreferred Networks(PFN)などの既存顧客に加えて、国内のファブレス企業の関心も集めていると指摘している。さらに、ファウンドリパートナーを多様化しているNVIDIAやQualcommなどの大手テクノロジー企業と2nmプロセスのテストを行っていると報じられている。

TSMCとサムスンがクアルコムの注文をめぐって熾烈な戦いを繰り広げるのは今回が初めてではない。韓国の半導体大手は2020年以降、クアルコムからのSnapdragon主力製品の注文の一部を失ったと報じられており、5nmの歩留まりも懸念を引き起こしていた。
(引用ここまで)


 韓国国内で「TSMCの2nmプロセスは高価で供給量も限られている」との報道が出ています。
 NVIDIAやQualcommといったビッグテック企業が2nmプロセスを求めてサムスン電子やラピダスを選択するかもしれないといった記事がぽつぽつとあります。

「高すぎる」…三星電子、「2ナノを使うビッグテック」に目を向ける(ニューシス・朝鮮語)

 TSMCによる最新プロセスの供給量が少ないので「反射利益」をサムスン電子が得る、としているのですね。
 ただまあ……どうなんでしょう。
 クアルコムもNVIDIAもサムスン電子をちょっと前まで委託先としていたのですが、かなり痛い目にあっています。

サムスン電子のファウンドリ、あまりにも歩留まりが上がらずにnVidia、クアルコムともにTSMCに逃げてしまう……(楽韓Web過去エントリ)

 あまりにも歩留まりが上がらない上に熱問題もいつまで経っても解消されず、SnapdragonのハイエンドシリーズはTSMCへと委託先を移行。
 クアルコムはサムスン電子の工場に技術者を常駐させるまでして問題解決を図ったのですが、最後まで解決はしなかったようです。

 NVIDIAもRTX3000シリーズで当時の最新プロセスに問題が生じて使うことができず、一世代前のプロセスを使用することになりました。
 そこまでして製造の安定を図ったのですが。
 当初から供給数がショートしていたことが語られていましたね。


 現在でもGoogleのPIXELシリーズに採用されているTensor Gシリーズは「性能がいまひとつ」とされていて、PIXELシリーズがハイエンドスマホと見なされない大きな理由になっています。
 じゃあ、2ナノでの歩留まりやら熱処理がそんなによくなるのか……って話なんですが。

 どうなんでしょうね?
 なにしろ、2nmプロセスはおろか、3nmプロセスでも「本当に顧客いる?」「量産できるって嘘じゃない?」って噂されるレベルですから。

サムスン電子「3ナノプロセスでの量産を実現した」→半導体業界「えっと、顧客どこにもいないよね?」(楽韓Web過去エントリ)

 アメリカの半導体受託工場として建設していた工場から、大量の自社社員を引き上げさせているとのニュースもありました。

サムスン電子、アメリカで操業開始を予定していた半導体受託工場から大量の社員を引き揚げへ、操業開始も今年から26年に変更……というかそもそもファウンドリ工場として操業開始できる?(楽韓Web過去エントリ)

 最先端プロセスでの需要は確実にあるんですよ。
 もう、どこの半導体企業も喉から手が出るほどに製造キャパがほしいのです。
 でも、結果としてTSMC以外に頼れるところがないからTSMCのシェアが60%以上、3ナノでは100%シェアにまできてしまっているわけで。

 サムスン電子でもラピダスでも使えるのなら使いたいってのは本音でしょう。
 需要はとてつもないものがあるのです。
 各企業でそれが製造できるかどうかは別として。

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韓国メディア「中国企業が最新のメモリ製造に追いついてきた。もはや技術力の差は数年分しかない」

中国、「メモリー製造」の限界に直面「先端分野で格差15年」(ソウル経済・朝鮮語)
グローバル半導体市場で中国産メモリーの攻勢が激しくなり、中国企業の技術水準を巡る議論が大きくなっている。 特に、中国1位のメモリーメーカーであるチャンシンメモリー(CXMT)が先端メモリーであるダブルデータレート(DDR)5の量産に成功したことが分かり、危機感が高まっている。 サムスン電子がDDR5を量産時期が2021年であったことを勘案すれば、中国の技術力が3年以内まで狭まったと見られるためだ。

ただ、半導体業界では中国が本格的な「半導体業」を成し遂げるまでまだ時間が残っているという評価が支配的だ。 米国の規制で半導体工程に必ず必要な極紫外線(EUV)露光機のような先端装備を導入できずにいるうえに、トランプ2期行政府で大衆半導体規制がさらに厳しくなるという分析のためだ。 半導体業界のある高位関係者は「米中葛藤が私たちとしてはそれこそ千載一遇の機会」として「旧型半導体ラインを先端製品に転換し先端研究開発(R&D)に効率的な投資を通じて中国と確実な格差を広げておかなければならない」と指摘した。 24日、業界によると、半導体露光装備会社ASMLは最近、米国で開かれた「IEDM 2024」で、EUV装備の次世代バージョンであるハイ(High)-NA機器のDラム適用可能性を紹介した。 同社は、Dラム工程に同機器を導入した場合、原価を30%まで減らすことができると主張した。 CXMTなど中国企業が2019年からEUV装備を搬入できずにいるという点を勘案すれば、ますます原価差がさらに広がるという意味だ。

CXMTが生産するDDR5もこのような限界のために収率が10~20%水準に過ぎない可能性が高いというのが半導体業界の診断だ。 ASML経営を総括するクリストファー·フーケCEOは中国の半導体技術力について「先端分野では10-15年ほど遅れている」と説明した。 もちろん中国内部では積極的な素材·部品·装備開発で規制で多様な装備を現地化したと知られた。

ただ、生産性と収率の問題で原価節減、価格競争力で大きく遅れているというのが業界の衆論だ。 業界のある関係者は「中国の半導体工場に設置された装備は殻だけ米国産であり、維持・補修用に取り替えた部品は大部分現地でコピーした複製品」と話した。
(引用ここまで)


 中国のCXMTがメモリのDDR4に続いて、現在PCでメインになっているDDR5も量産できるようになったとのニュースを受けた韓国の反応。
 現状、CXMTのDDR5は20%ほどの歩留まりである、とのこと。
 かつ、アメリカの輸入規制措置でEUV露光装置が入手できないことから、これ以上の微細化は難しいのではないか……としているのですが。

 問題はそこじゃないんですよね。
 中国が自国産のDRAMを製造できるようになったってことで、韓国はだいぶ追いこまれることになったわけです。
 韓国企業であるサムスン電子やSKハイニクスはこれまで中国に建てた工場でメモリの地産地消をしてきたのですが。
 それが必要なくなってくるわけですよ。


 それでなくても中国は「自国産の製品には自国産の部品を使うべき」って政府方針を打ち出しています。
 ファーウェイのスマホに搭載されているSoCが中国製になったのも同様の理由。
 中国市場でファーウェイが大復活しているのも、そうした施策が中国人の愛国心をくすぐっているからなのでしょう。
 ちなみに1位はVivo、2位がアップル、ファーウェイは僅差の3位。相変わらずサムスン電子はその他の1%前後。もう中国市場諦めたら?

 EUV露光装置が入手できなくてもArF露光装置でDRAMはそこそこ競争力のある製品が作れるので、なんとかなるんじゃないかなぁ。
 結果としてメモリ価格が下落して、韓国企業の収益力が損なわれるわけですけどね。
 ちなみにHBMについても独自で製造をはじめているとしています。

アングル:中国2社、AI用メモリーの生産開始 外国依存低下の取り組み前進(ロイター)

 2世代遅れくらいで追いついてくるんだろうなぁ……って感じです。

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サムスン電子、自社製のExynos 2500をTSMCに製造委託か……戦えないほどに歩留まり悪いんだ

Samsung Reportedly Considering Partnership with TSMC to Jointly Produce Exynos 2500(Trend Force・英語)
Wccftechのレポートによると、サムスン電子は初めて、Exynos 2500 プロセッサの製造にあたり、外部のファウンドリとの提携を検討する可能性があるという。Wccftech のレポートは、韓国のメディアThe Bellを引用し、TSMC については明示的に言及されていないものの、Exynos チップを大量生産する唯一の選択肢であることに変わりはない、と指摘している。

Wccftechによると、サムスンの3nm GAAプロセスは歩留まりの低さに苦しんでいる。その結果、Exynos 2500は来年のGalaxy S25スマートフォンに搭載される可能性は低い。代わりに、Galaxy S25はQualcommのSnapdragon 8 Eliteプロセッサに完全に依存することになる。 (中略)

Wccftechは、TSMCがすでにフル稼働しており、追加注文を受け入れるかどうか疑問視していると指摘している。さらに、TSMCは最近、2nmの試作で60%の歩留まりを達成し、重要なマイルストーンを達成したとレポートは指摘している。これは、量産がそう遠くないことを示唆している。2nmウエハーの需要は3nmよりも高いと言われているため、TSMCがサムスンと協力するインセンティブはさらに低下している。
(引用ここまで)


 サムスン電子が自社設計のExynos 2500をTSMCに製造してもらうのではないか、とのニュース。
 先日、ベンチマークスコアがリークされて、ハイエンドSoCであるSnapdragon 8 Eliteとの圧倒的な性能差があることが開かされたサムスン電子製のExynos 2500。

サムスン電子の次期ハイエンドスマホ、このままでは他社から3割落ちの性能になる可能性も……Exynos 2500の性能は奮わない模様(楽韓Web過去エントリ)

 自社のハイエンドスマートフォンであるGalaxy S25には搭載されないことがほぼ決定。
 ですが、まだそれ以外のスマートフォンへの搭載は諦めていないとされていました。
 その逆転の一手がTSMCへの製造委託。
 ……(笑)。


 まあ、自社製のSoCですから製造委託に出したとしても、コストははるかに抑えられるのでしょう。
 ……それにしても、そこまで歩留まりで苦しめられていたんですね。

 4ナノプロセスで歩留まりが上がらず、Qualcommに逃げられてからはnVidiaもテスラもGoogleまでもサムスン電子から離脱。
 3ナノ、2ナノではろくに顧客を獲得することもできずに、世界中がTSMCに委託……というか依存。
 TSMCのシェアは約65%、サムスン電子はついに10%を割っています。

韓国半導体、DRAM・NANDは下落、受託製造はシェア縮小……それでも国会は半導体支援法など見向きもせずに「弾劾だ、弾劾!」と叫ぶ(楽韓Web過去エントリ)

 なんなら「顧客がいないのでアメリカの製造受託工場建設から撤退します」くらいの状況。
 ……さすがに受託事業そのものからの撤退はないでしょうけども。
 ここまで差がつけられているとなぁ。

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韓国半導体、DRAM・NANDは下落、受託製造はシェア縮小……それでも国会は半導体支援法など見向きもせずに「弾劾だ、弾劾!」と叫ぶ

トランプ2期も大変なのに…「韓国半導体、ゴールデンタイムを逃す」(韓国経済新聞・朝鮮語)
非常戒厳宣言と弾劾政局で経済活力を高めるための法案処理と政策決定が相次いで支障を来たしている。 与野党が合意処理することにした半導体·人工知能(AI)産業支援法案は相次いで遅延したり「中途半端」で通過している。 大統領室の機能が事実上マヒした状況で、消費促進対策など省庁間の協議が必要な政府政策は事実上全面的にストップした。 政治的不確実性に景気回復のゴールデンタイムを逃す恐れがあるという憂慮が大きい。

11日、企画財政部などによると、半導体産業支援のための「Kチップス法」(租税特例制限法改正案)は10日の本会議で日没期限を今年末から3年延長する内容だけが通過した。 当初、与野党は半導体投資税額控除率を5%ポイント高め、研究開発(R&D)施設投資税額控除率を1%から20~30%に高めることで合意したが、弾劾政局を迎え野党が態度を変え失敗に終わった。 半導体R&D従事者の週52時間勤労規制緩和方案が含まれた半導体特別法議論は上程すらされなかった。 (中略)

未来の食べ物に挙げられるファウンドリーの状況はさらに深刻だ。 市場調査会社のトレンドフォースによると、三星電子のシェアは今年第2四半期の11.5%から第3四半期は9.3%へと墜落した。 同期間、世界トップのTSMCのシェアは62.3%から64.9%へと上昇し、3位の中国SMICは5.7%から6.0%へと跳ね上がった。 TSMCが3ナノメートル(nm)など先端工程で独走し、SMICは「40%爆弾セール」を前面に出して10nm以上成熟工程で「韓国占有率奪い」に乗り出した結果だ。
(引用ここまで)


 韓国で臨時国会が召集されました。
 ユン大統領に対する弾劾決議案は明日12日にも提出され、14日に採決の予定となっています。
 与党からの造反議員はかなり増えるのではないかとされています。
 まあ、さすがに圧倒的ともいえる民意をこのままにして、議会からの退場を繰り返すことはできないってことですかね。

ユン氏の弾劾表決に参加、10人前後まで増える…賛成票は5名(ニューシス・朝鮮語)

 もうすでにメディアの中には「ユン大統領」ではなく、「ユン氏」と呼んでいるところもあるほどです。
 「弾劾決議案に対して投票する」としている議員が10人、うち賛成票は5人ていどではないかとされています。
 弾劾が成立する200票まであとほんの少し。

 ちなみにタマネギ男ことチョ・グクの大法院判決は明日午前予定。
 有罪判決が出て議員失職の場合は祖国革新党の繰り上げ当選が認められるまで野党側は192議席→191議席となるので、わずかにハードルが上がります。


 さて、そんな中で経済にも明確な影響が出はじめているとのニュースが冒頭記事。
 半導体のうち、汎用DRAMは明白に下落基調。
 NANDフラッシュはどうにか下げ止まり感がでてきましたかね。

 そして半導体受託企業のマーケットシェア(第3四半期)が出てまして。

Advanced Processes and Chinese Policies Drive 3Q24 Global Top 10 Foundry Revenue to Record Highs, Says TrendForce(TrendForce・英語)

 TSMCが64.9%で1位。サムスン電子はついに10%の大台を割りこんで9.3%。
 市場自体は9.1%の伸長なのに、サムスン電子は-12.4%と大幅なシェア下落。
 これはきつい。

 こうした状況に対して韓国政府は半導体企業に現状よりは厚めの支援を行う予定だった「新Kチップス法」を上程していたのですが、今回の弾劾騒ぎでぽしゃってます。
 半導体研究者は週52時間労働の枷を外してもいいとする法案も上程予定だったのですが、こちらは上程すらできませんでした。

 まあ、この状況下で野党側が与党やユン政権にまともな政策をやらせて得点を稼がせるわけがないですが。
 もう完全に自縄自縛。

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アメリカが韓国製HBMや半導体製造装置に対して対中規制をかける……「日本は例外なのに! ホグにされた!!」……あ、このホグにされたってのは……

米国、韓国製HBM·半導体装備に対中輸出統制…日本製装備は例外(聯合ニュース・朝鮮語)
米政府が中国が人工知能(AI)を開発するのに必要な核心部品である高帯域幅メモリー(HBM)を確保することを防ぐため、韓国など他国の対中輸出を統制した。

米商務省産業安全保障局(BIS)は2日(現地時間)、輸出統制対象品目に特定HBM製品を追加すると官報を通じて明らかにした。

HBMは、複数のDRAMを垂直に積み上げて作った高性能メモリーで、AI加速器を稼動するのに必要だ。 (中略)

現在、全世界のHBM市場は韓国のSKハイニックスとサムスン電子、米国のマイクロンが掌握している。

半導体産業は米国の源泉技術に大きく依存するため、SKハイニックスと三星電子も今回の輸出統制の適用を受けることになる。 (中略)

業界では中国にHBMの一部を輸出するサムスン電子が今回の統制で影響を受けるという観測がある。

SKハイニックスは現在、HBM全量を米国に供給しており、生産量が米国内の需要に追いついていないため、当面は特に影響がないと判断しているという。 (中略)

また商務部は、米国と同等水準の輸出統制制度を自主的に運営する国に対しては、該当国家企業が半導体装備を中国に輸出する際、商務部の許可を受けなくても済むようにした。

主要半導体装備輸出国である日本とオランダを含む計33ヵ国が該当するが、韓国は名簿にない。

このため、韓国企業が輸出許可免除国に所在する企業と中国市場で競争する際、相対的に不利になりかねないという懸念がある。
(引用ここまで)


 アメリカが新たな対中半導体規制を敷きまして。
 韓国側にもそこそこの影響があるとの話です。

 ここのところ、中国のメモリメーカーであるCXMTがけっこう前に出てきててごりごりにDRAM価格を下げている感があるのですが。
 それは今回も放置。
 まあ、装置関連で苦しくなるのは間違いないところだと思われます。

 主たる規制目的はAI半導体についてとのことで、HBMや関連した装置の輸出規制。
 SKハイニクス、マイクロンはHBMを全量アメリカで使用しているとのことで影響はほぼなし。
 サムスン電子はHBM2とかを中国に輸出していたはずなのでそこそこ影響があるかな。

 実は事前には「さほど大きな規制にはならないようだ」って観測がされていて、特に韓国については「今回は影響を免れるだろう」とする予想が大半だったのです。
 蓋を開けてみたら全然違っていたので驚かれている、ってところですね。


 それに加えて製造装置を中国工場へ輸出する際の障壁がまたできた、といったところでしょうか。
 サムスン電子にしても、SKハイニクスにしてもそのあたりの影響がまだ見えてきていない感じではあります。
 申請すれば許可が出る、ってパターンなのかなぁ。

 それよりもなによりも「日本には規制がかかっていないのに」って記事が多くて苦笑しています。
 冒頭記事の聯合ニュースも記事タイトルでそう書いていますし。
 こちらのMBCニュースの記事も同様。

米国、韓国産半導体大衆輸出統制‥日本を除く(MBCニュース・朝鮮語)

 こちらの記事には900以上のコメントがついてて「日本は許可して韓国には規制……ホグにされた!」ってものがけっこう見受けられます。
 ホグにされる、っていうのは「バカにされる」「お人好しに見られる」「下に見られる」といった感情が綯い交ぜになった言葉でして。
 まあ、そういった気持ちを常に抱いているのが韓国人なのだなぁ……と理解していただければよろしいかと。

 実際には「日本とオランダはすでにアメリカと同等の対中規制を敷いているのでことさら規制する意味がない」わけで。
 韓国はまともに規制ができていないから指定される以外ないんだよね、ってお話なのでした。
 二重の意味で苦笑。

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韓国の半導体業界、サムスンのトップは「危機」が叫ばれても代わり映えせず、大学では関連学科の入学辞退率が150%……「人材が育たない状況こそが本当の危機」とメディアは警鐘を鳴らすが……

「新しい人物がいない」……サムスン電子、半導体刷新にも本体は「オールドサムスン」(朝鮮BIZ・朝鮮語)
サムスン電子が「新しい跳躍のための刷新」をキーワードに2025年定期社長団人事を断行したが、財界の反応は芳しくない。サムスン電子の最高意思決定組織と呼ばれる事業支援TFをはじめとする主要職務には依然としてイ・ジェヨン会長の側近または「過去の人物」が職務を変えて座り、二大事業部門と核心事業部に新しい人物が見当たらないという指摘も出ている。 (中略)

サムスン電子の未来の食べ物の発掘にも、新しい人物よりはベテラン経営者を選んだ。 コ·ハンスン三星電子未来事業企画団長(社長)の場合、2007年にすでに三星戦略企画室新事業チーム担当役員と三星電子の新事業チーム担当役員を歴任している。 サムスン側はコ社長に対して「すでにグループ次元の新樹種事業を成し遂げた経験と蓄積された経営ノウハウ」を強調した。

財界関係者は「今回のサムスン電子社長団人事で新しい人物と若い血がほとんど見えないということは破壊よりは安定を選択した人事と見るのが正しい」として「1960年生まれのチョン・ヨンヒョン副会長と1962年生まれのハン・ジョンヒ副会長が依然として両大部門長に留任されただけでなく役割がさらに拡大し、未来戦略室出身の人事が依然として重責に起用されているということは大きな枠組みの変化であり受け入れ難い」と話した。
(引用ここまで)


 サムスン電子が「人事刷新」を発表したのですが、なんともぱっとしない、と指摘されていいます。
 旧来の人事の延長で、このままでよいのかと。
 んー、いまのイ・ジェヨン会長だったらしょうがないかな、といったところ。

 スマホ、メモ等々で「追い込まれている」とはいえ、7-9月期の営業利益は9兆ウォン超え。莫大な赤字を叩き出していた半導体部門は3四半期連続の黒字を記録しています。
 イ・ジェヨンの気分としては「大きく変化していまの取り分を損ねたらどうするんだ」ってところですかね。
 まあ、「人それを大企業病と呼ぶ」のですが。

 その一方で半導体事業には徹底して下からの希望者が「最優秀」のそれではないことが問題となっています。


 大学では「半導体関連学科」に合格しても「辞退します」を繰り返されて、追加合格率が150%と唖然とするような数字になっています。

韓国半導体を率いる人材が消えていく(中央日報)

 つまり、最初の合格者全体が入学辞退。
 ついで追加合格者の半分が入学辞退。
 ちなみにこれらの半導体関連学科は卒業すればSKハイニクスやサムスン電子への就職が確約されています。
 にも関わらず、「最優秀な学生」からは避けられているのですね。
 これらの「当初の合格者」がどこに行くかというと、医学部や薬学部(いつもの)。

 さらに半導体関連学科を卒業して半導体企業に就職したのは33.1%。
 その33%の卒業生のうち、専門大学(専門学校。ノ・ムヒョン時代に「大学」にさせられた)卒が66%。
 研究職になれる修士、博士は10%ちょいでしかない。

 「最新研究ができ、かつこれまでの成果を見てきている」職歴10年クラスの研究者、これからベテランになる役割の層が少なくて困り果てている状況。
 下からも代わりが育たず、上も変わるつもりがない。

 それでもまだ「就職したい企業1位」はサムスン電子なのですけどね。

韓国・大学生が就職したい企業1位「サムスン電子」…「高年収」3年連続トップ(KOREA WAVE)

 この大学生は「ただし、医学部を除く」ですから。

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「メモリ製造以外に強みがない韓国の半導体製造……素材から機器まで日本に依存し、パッケージング、ファウンドリでは台湾に遅れている。政府が補助金を出さないからだ」……えーっと、それ以外の原因がこちらです

半導体強国コリア、みすぼらしい生態系…素材・部品・装備は日本に依存、パッケージングは台湾に劣勢(中央日報)
韓国は半導体強国だ。サムスン電子とSKハイニックスがメモリー半導体グローバル市場シェア1、2位を走る。このおかげで貿易収支は数十年間にわたり黒字基調を維持している。しかしサムスン電子・SKハイニックスを除けば、半導体の複数の分野のうちグローバル市場で競争力を持つ国内企業は探すのが難しい。依然として主要素材・部品・装備は輸入に依存している。半導体強国として君臨してきたが、その周辺の生態系は整っていないということだ。政府は数年前から「半導体生態系」強化を叫んできたが、なぜこのようになったのか。

先月の韓国の半導体輸出額は125億ドル(1兆9300億円)と、10月基準の輸出額では過去最大となった。実績だけをみると韓国は「半導体強国」の地位をよく守っている。にもかかわらず「半導体危機」と心配する声が聞こえる。業況が悪化すれば、すぐに輸出額が急減するためだ。半導体の需要減少でサムスン電子・SKハイニックスが生産量を減らしたのはわずか2、3年前のことだ。韓国半導体の浮き沈みが特に大きい理由は、生産量が半導体市場全体で30%程度にしかならない「メモリー半導体」(情報保存半導体)に偏っているからだ。

この問題を解決するために政府と産業界はその間、「システム半導体」(情報解析・処理する半導体)強化を推進してきたが、うまく進まない。韓国のシステム半導体グローバル市場シェアは数年前から3%水準にとどまっている。 (中略)

韓国は製造業で必須の素材・部品・装備の大部分を海外に依存している。フォト(ウェハーに回路を描く工程)・測定・イオン注入など半導体装備13分野のうち半分以上が数十年前から貿易赤字を出している。関税庁によると、昨年もフォト装備の貿易赤字は53億1066万ドルで、測定装備は27億6383万ドル、イオン注入装備は27億3528万ドルの赤字だった。海外企業が製造した装備を輸入して使用するからだ。 (中略)

素材や部品も同じだ。半導体蒸着(金属などを加熱・蒸発させて薄い膜を作る作業)などに使用されるスーパーキャパシタ・亜酸化窒素の輸入依存度は昨年それぞれ97%、95.1%だった。過酸化水素水は100%日本産を使用し、ブレード・塩素も日本から90%以上を輸入する。このほか、ジシラン・現像液・ボンディングワイヤなども輸入依存度が70%以上だ。匿名を求めた業界のある関係者は「サムスン電子・SKハイニックスなどの支援がなければ自立可能な素材・部品・装備企業はほとんどないと見ればよい」と話した。国内素材・部品・装備企業の世界市場シェアは1%にもならない。 (中略)

素材・部品・装備未来フォーラムのキム・ドンソク事務総長は「中国のSMICや台湾TSMCは自国の装備や素材を使用すれば政府から補助金を受ける」とし「しかし韓国にはこうしたインセンティブがないため、サムスン電子・SKハイニックスがリスクを負って検証されていない国産製品を使用する理由がなかった」と伝えた。 (中略)

キム・ドンソク総長は「政府の支援のおかげで中国は半導体装備国産化率が50%を超えるが、韓国は依然として20%程度にとどまっている」
(引用ここまで)


 日本が半導体材料について韓国への輸出管理を強化した際、ムン・ジェイン政権は「日本の横暴に対抗しよう!」としてそうした材料や、日本企業が強みを持つ素材、機材について韓国企業に補助金を出しました。
 結果、たとえばフォトレジストについては日本からの輸入が2018年の93.2%から2021年には79.5%に減りました。
 14%P近い下落です。

ムン・ジェインが「二度と日本には負けない」と素材・部品分野に大々的に韓国企業を参入させたものの……その成果は「海外からの迂回輸入」だけ?(楽韓Web過去エントリ)

 まあ、実際にはJSRからの輸入を、JSRのベルギー支社からの輸入に切り替えて「日本からの輸入を低く見せた」だけでした。

 フッ化水素については低純度のものについて韓国国内企業が製造をはじめてそちらを利用する企業も出てきたようですが、高純度のものについては引き合いが強いまま。
 また、低純度のものについても原料や製造は日本との合弁企業のもので「純韓国企業」かと問われると……うん。


 当時、楽韓さんは「こうした材料については『秘伝のタレ』的な部分が大きいので、どこもリスクを背負ってまで変更するには至らない」との指摘をしていますが、ざっくりその通りになっていますね。


 そもそも韓国国内であっても半導体、および半導体関連事業について優秀な学生は関連学部への入学を避けるなど猫またぎしています。
 特に医学部以外の理系学部で顕著で、ソウル大学であろうと入学して即休学して仮面浪人しながら医学部を目指すなんてのは本当によくあることです。

ソウル大学の入学者、6%が即休学……「最難関大学で仮面浪人」をする彼らの行く先は……?(楽韓Web過去エントリ)

 研究職は短期で結果を出すことを強いられて、かつ45歳までに役員になれなければ肩を叩かれて退職せざるを得ない。
 まあ……それなりの高給をもらっても割に合わないのが実際ですね。
 理系の頂点が医学部になってしまっているのもやむを得ないってところです。
 あと韓国で「○○ができた!」ってプレスリリース出しても、その後はなしのつぶてなんてパターンがよくあるのもこの「短期で結果を出す」ことが原因だと感じています。

 韓国メディアは「政府が補助金を出さないから」ってよく愚痴っているのですが。
 研究職をもうちょっと大事にする風土を作らないと、半導体関連機器とか材料とかノーベル賞は無理なんじゃないでしょうかね?

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