サムスン電子の米テキサス州テイラーファウンドリー(システム半導体の委託生産)工場に派遣された韓国人社員が大勢戻ってきた。建設中のテイラー工場は4ナノ(nm、10億分の1m)と2ナノ工程量産予定だが、2ナノ収率がなかなか上がらないため一部「人材撤収」という決定を下した。 イ・ジェヨン会長のファウンドリドライブが「ひとまず止まった」わけだ。
11日、業界によると、2022年と昨年にかけてテイラー工場の建設現場に派遣された職員のうち、過半数以上が先月末と今月初めに帰国の途についた。 この間、現地建設とインフラ、製造技術関連人材数十人が韓国で駐在員として出てきたが、低調な収率とこれにともなう受注の困難により「1歩後退」を選んだと分析される。 (中略)
匿名を求めた三星電子の関係者は「(韓国からテイラーに派遣された職員が)実質的な装備セットアップなしに2年余りシミュレーションばかりしていた」とし「韓国に帰ってくるのが当然だ」と話した。
2022年に着工したテイラー工場は2019年サムスン電子のイ・ジェヨン会長(当時副会長)が「2030年までにファウンドリーを含むシステム半導体分野で確実な1位をする」と宣言した「システム半導体ビジョン2030」目標達成のための核心基地の一つだ。 サムスン電子が1998年、テキサスオースティンに初の米国ファウンドリー工場を完工して以来、約20年ぶりに決定した超大型米国投資だ。 三星電子は2030年までに米国の半導体だけで450億ドル(約62兆ウォン)をつぎ込む計画だ。
ファウンドリー1位企業である台湾TSMCとの格差を縮める核心先端工程で、サムスン電子が2ナノを予想してテイラー工場で勝負に出たが、AMDやNVIDIAだけでなくクアルコムやアップルなどビックテックの顧客会社がすべてTSMCに集まった。 テイラーファウンドリー工場だけではない。サムスン電子平沢キャンパスの新規ファブであるP4は最近、計4つのラインを全てメモリー半導体に回した。 2022年から建設中の新規ファブP4は、当初DラムとNAND、ファウンドリーラインをすべて備えた複合棟として設計された。 しかし、テイラー工場と同様に、ファウンドリー物量が十分ではなかった。
また別の三星電子の関係者は、「テイラー工場はすでに建設中で、(工場を転がす見返りとして)米政府から半導体支援法(チップス法、CHIPSAct)の補助金も受けることになっており、(受注がなく)韓国工場だけを使っても余るほど、ファウンドリーの受注物量が足りない」と話した。
(引用ここまで)
サムスン電子がアメリカで展開していた半導体ファウンドリビジネスをほぼ畳んで、従業員の多くも韓国に帰国させていることが判明しました。
アメリカのテキサス州に建設していたこのファウンドリ工場は、4ナノで2024年中にも操業を開始するとしていたのですが。
去年末には25年の操業開始を目標にするとされていました。
サムスン電子、米国での半導体量産開始を延期か-TSMCに続き(ブルームバーグ)
それが今度は26年操業に変更になるのではないかとされています。
その大きな原因が、サムスン電子が3ナノプロセスで導入したGAA構造の歩留まり。
現在のところ、GAA構造を導入した3ナノプロセスの歩留まりは10~20%に過ぎないトモされています。
サムスン電子が世界的な人員削減を計画、テキサス州テイラー工場から撤退(データセンターカフェ)
まあ、この歩留まりが本当かどうかはともかく。
TSMCと勝負になるようなものではない、というのは確定した事実のようですわ。
結果として、テイラー工場では稼働できないくらいに委託してくる企業がない。
韓国の平沢でもにもNAND、DRAM、ファウンドリ事業の複数用途に使えるP4工場のラインが全量をメモリ製造に向けているとのことで。
「ビジネスをしたくとも委託してくる企業がない」ので、自社向けのAPUを作るしかない模様です。
すでにTSMCは3ナノプロセスでiPhone 15向け、iPhone 16向けのプロセッサを量産している。
それも億の単位で。
その一方でサムスン電子は独自チップであるExynos2500を次期ハイエンドスマートフォンであるGalaxy S25シリーズに搭載できるかどうか怪しいって状況。
nVidiaもクアルコムもテスラもGoogleまでもサムスン電子のファウンドリ事業から逃避。
最近出たばかりのPixel 9シリーズに搭載されているGoogleのTensor G4は、サムスン電子の4ナノプロセスで製造しているものの、熱の問題が処理し切れていないので競合のプロセッサに劣っているとされています。
日本のAI企業が独自のAIチップをサムスン電子のファウンドリ事業(3ナノ? 2ナノ?)に受託するって話も出ていましたが、まだ実際のビジネスにはなっていない感じでした。
で、今回は大規模なファウンドリビジネスの拠点とするはずだったテイラー工場から社員を大量に引き揚げ。
……ビジネスとしてほぼ破綻してませんかね、これ。
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