相互RSS募集中です

カテゴリ:半導体関連の記事一覧

米政府、中国での半導体工場に年間5%までの増産制限決定、韓国企業・政府の「10%増まで認めてほしい」との要求を受け容れず

カテゴリ:半導体関連 コメント:(36)
タグ: 半導体 CHIPS法
米半導体補助金を受ける企業、中国内増産5%制限確定(東亞日報・朝鮮語)
米政府が自国の半導体法(CHIPS Act)補助金を受ける企業を対象に、中国内の先端半導体生産能力を拡張できる範囲を5%に制限する案を確定し、22日(現地時間)発表した。韓国政府はこのような「補助金ガードレール(安全措置)」条項を緩和し、サムスン電子とSKハイニックスなど韓国企業の中国内半導体生産拡張基準を2倍の10%に増やしてほしいと要請したが受け入れられなかった。

米商務省は自国の半導体補助金を受けた企業が10年間、中国など憂慮国家で半導体生産を「実質的に拡張(material expansion)」する重大取引をする場合、補助金全額を返還するようにする規定を用意した。この日商務部が発表した「実質的拡張」は先端半導体の場合5%以上、前世代の汎用半導体は10%以上だ。

米政府はこれに先立って3月、ガードレール条項草案を発表した後、韓国など関連国家と企業から意見収斂を進めてきた。中国内の生産拡大基準の拡大とともに汎用半導体の基準も緩和してほしいと要請したが、同日の発表に関連内容は含まれなかった。米商務省がロジック半導体は28ナノメートル(nm)、DRAMは18ナノ、NAND型フラッシュは128段以下を汎用半導体に分類している。
商務部はただ、草案で10万ドルの限度を超える中国投資を「重大取引」に分類し、規制対象に含めたが、最終案からは外された。ブルームバーグ通信は「10万ドル投資上限廃止はサムスン電子とインテル、台湾半導体企業を代表する情報技術産業協議会が反対の声を出した結果」と分析した。

同日の発表で、中国内の半導体装備搬入規制猶予関連内容は言及されなかった。
(引用ここまで)


 CHIPS法のガードレール条項による中国における半導体工場での増産制限が発表されました。
 ウエハベースで先端半導体は5%まで、旧式半導体は10%まで。
 CPUなどのロジック半導体では28ナノプロセス以下、DRAMでは18ナノ以下、NANDフラッシュでは128段以上のものが「先端半導体」と規定されています。
 で、これらの先端半導体は年間での生産数を5%までしか増やせない。

 草案では月毎の生産数とされていたものが年ベースの生産数に変更。
 さらに10万ドル以上の投資金額は禁止とされていたものが撤回されました。
 そのあたりは草案に比べてだいぶ緩和された感じですが。

 半導体、それもメモリは生産体制を増強していってなんぼという面が大きいのです。
 特に高騰期はいくら作ってもいい。


 韓国政府は先端半導体についてもウエハベースで10%増にしてほしいと要求していたのですが、これはかなえられませんでした。

韓国政府、アメリカ政府に「韓国半導体企業の中国工場での増産を」とお願いするものの、アメリカ側の要求は無視……そういうとこだぞ?(楽韓Web過去エントリ)

 先端工場で生産数量が年間5%増か10%増かは大きな違いになるので10%増に……としたかったようですけどね。
 5%増だと10年後には1.62倍まで引き上げられますが、10%なら2.69倍。複利の怖さよ。
 でも、アメリカ政府はそれを認めなかった。

 5%増しかできない、というのは致命傷ではありませんが。
 流血しながら操業するのとさほど変わらない。けっこう厳しい措置に感じますね。

 なお、韓国国内では「猶予は延長される」とされていた半導体製造装置の納入猶予措置についてはアナウンスなし。
 一緒にアナウンスされてもなんらおかしくないとは思うのですが。
 まだアメリカの議員筋が反対に回っているのかなぁ……。

Twitterで更新情報をお伝えしています。フォローはこちらから→

ファーウェイのスマホに搭載された7nmプロセッサの隣にSKハイニックスのメモリが……韓国企業の中国半導体工場への1年間の猶予延長が吹き飛ぶか?

カテゴリ:半導体関連 コメント:(62)
「米中半導体制裁、サムスン電子とSKハイニックス被害憂慮」(ニューシス・朝鮮語)
12日、対外経済政策研究院(KIEP)「グローバル半導体サプライチェーン再編:現況と展望」報告書によると、グローバル半導体サプライチェーン再編過程でサムスン電子とSKハイニックスなど韓国企業の大きな被害が予想される。

メモリー半導体は設備アップグレードが必須であるだけに、米国のライセンス決定に振り回されるしかないということだ。

実際、最近中国ファーウェイが発売した最新スマートフォンからSKハイニックスのメモリー半導体が出てきて、米国が対中国半導体輸出規制をさらに強化できるという懸念が提起されている。

米国商務省は昨年10月、米国企業が中国の半導体生産企業に半導体装備を輸出することを事実上禁止する輸出統制を発表したが、中国に工場を置いたサムスン電子とSKハイニックス、TSMCなど韓国と台湾企業は1年間適用を猶予することにした。

10月に再びこれを延長するか否かが決定されるが、この間韓国政府と業界の努力で装備搬入猶予期間延長の可能性が高い。しかし、今回のファーウェイ事態が変数になりかねないという指摘が出ている。

業界関係者は「SKハイニックスが米商務省産業安保局にこの問題を申告し、自主的に経緯把握に入るなど直接取引ではない可能性が高いだけに制裁の可能性は低い」として「しかし今回の事態が米国政府に警戒心を呼び起こした可能性がある」と話した。
(引用ここまで)


 ファーウェイのMate 60 Proに搭載されたKirin 9000プロセッサが7nmプロセスであったことがアメリカに衝撃を与えています。
 まあ、半導体製造にあるていどの知識がある人であれば「ああ、あれやったんだ」って感じですが。
 さすがにそれを数百万台のオーダーで作るっていうのは想定外の部分もあります。
 どこか「汎用機械ですべての部品を作っていた零戦」に通じるものがありますね。

 さて、そのMate 60 ProにSKハイニックスのDRAM、NANDフラッシュメモリが入っていたからさあ大変。


 先端世代の半導体製造装置の対中国輸出を禁じるCHIPS法が施行されてからも韓国、台湾企業(具体的にはSKハイニックス、サムスン電子、TSMC)は中国本土にある工場について新規の装置導入やメンテナンスについても1年間猶予が与えられていました。
 その猶予について「1年の延長くらいはあるかな、どうかな」といった感触でした。
 アメリカの著名議員が「アメリカ企業は中国で操業できないどころか、中国市場から締め出しを食らっているのに、韓国・台湾企業がのうのうと操業できるとはけしからん」との声も上がっていることもあり、半々ってところかやや難しいかなと。
 個人的には延長についてできないほうが6、できるのが4くらいじゃないかと想定していました。
 まあ、ロビー活動で覆されることもあるかなぁ……くらいの想定。

 ところがこのKirin 9000ショックにSKハイニックスが巻きこまれたことでぐっと賭け率が悪くなった感じです。
 来月11日の猶予期限まであと一ヶ月。
 メンツを潰された形のアメリカの動きや如何に、といったところ。
 ……若干のとばっちり感はありますね(笑)。

Twitterで更新情報をお伝えしています。フォローはこちらから→

韓国メディア「また小国の悲哀だ」……中国の最新スマホに輸出を禁じられたはずの韓国製メモリが搭載されていた件について

「韓国半導体」、またエビの背になるのか……ファーウェイのスマートフォンが招いた影響(ハンギョレ・朝鮮語)
中国ファーウェイが高性能チップを搭載したスマートフォンを発売し、米-中間半導体葛藤が加熱している。中国政府は「iPhone禁止令」で対応戦線を広げ、米国では対中国技術制裁をさらに強化しなければならないという声が大きくなっている。国内半導体産業が再び米中葛藤の激しい後遺症に直面するのではないかという憂慮が出ている。 (中略)

ファーウェイが先月末に発売したスマートフォンにSKハイニックスのメモリーチップが使われた経緯はまだ五里霧中だ。8日、半導体業界と外信などによると、ファーウェイスマートフォン「メイト60プロ」に搭載されたメモリーチップは低電力ダブルデータレート5(LPDDR5)ディーラムとユニバーサルフラッシュストレージ(UFS)NANDフラッシュだ。全世界の関心が集中した「7ナノメートル(nm·1nmは10億分の1m)プロセッサー」チップセットとは全く異なる性格の汎用メモリーだ。SKハイニックスは2020年5月、米国の輸出規制強化以後「ファーウェイと取引した事実はない」という立場だ。 (中略)

アメリカ議会を中心に「対中技術規制が無力化された」として制裁強化を要求する声が大きくなっている。ここに中国が米国の代表企業であるアップルのアイフォンに対する禁止令カードまで取り出したため、両国の葛藤水位はさらに高まる公算が大きい。カン研究員は「結果的に中国が米国の半導体規制の一部を無力化したという点で制裁強度が高くなりうる」と話した。

半導体業界では再び米中間技術覇権競争の後遺症に直面するのではないかという憂慮が出ている。(中略)米国政府は昨年10月、中国に半導体先端装備搬入を禁止する規制を発表したが、サムスン電子とSKハイニックスは1年間猶予措置を受けた。来月11日には猶予期限が終わり、米政府が延長するかどうかを再度決めなければならない。

韓国政府と業界は延長可能性が高いと展望してきたが、猶予可否決定を目前にして突出悪材料に会った状況になった。
(引用ここまで)


 HUAWEI(HUAWEI)が中国の半導体受託企業であるSMICによって作られた7nmプロセスのチップをスマートフォンに搭載したことでアメリカの規制がさらにきつくなるのではないかとの話が出ています。
 まあ、実はこの7nmプロセスで作った……っていうのも「旧式の製造装置でじんわりと作るとやってやれないことはない」みたいな製造方法で、これといって新しい話でもないのです。

 イメージとしては最新プロセスが最新の輪転機で刷っている印刷物なら、SMICの7nmプロセスは活字をひとつひとつ置きながらプレス印刷しているってとこかな。
 そこまで古くはないか。
 でもまあ、イメージとしてはそんな感じ。

 ただ、アメリカが「中国人民解放軍との関係性が高い」としてブラックリストに掲載しているHUAWEIが自社スマホに搭載することでいろいろと物議を醸しているわけです。
 正直、7nmといえども大量生産には向いてない製造方法だし、そこまで目くじら立てることもないんじゃないかなーと思っていたのですが。
 要は米中どちらからもメンツの問題なのですね。

 中国は「アメリカが半導体関連をどうこうしたところでこんなもんよ」ってなっているし。
 アメリカは「よし、だったらさらに制裁だ」ってなってしまう。


 で、そのファーウェイ製のスマートフォン、Mate 60 ProにSKハイニックスのメモリが採用されていることも判明して韓国側が大騒ぎになっていると。
 SKハイニックスは「ファーウェイとの(直接)取引はない」としています。
 ま、実際にそうなのでしょう。
 「大量生産品」でしかないメモリがどこからか紛れこんだってレベルではないかと思われます。

 とはいえ、アメリカ側から見たら「あのファーウェイに韓国製のメモリが搭載された」って事実は重いものになるでしょう。
 以前から「1年間の猶予が終わったら制限を課すべきだ」と主張しているアメリカの議員がいるという話をしていましたが。

より強固になるアメリカ政府の対中半導体規制、韓国企業への「1年間猶予」に反対する有力議員も出てきて詰みか(楽韓Web過去エントリ)

 彼らにとっては福音とも呼べる代物ですよ、これ。

 10月11日がCHIPS法による韓国、台湾企業に認められた1年猶予の期限。あと1ヶ月。
 ここまでなんの公式反応もなし。

 3週間前の日米韓首脳会談でもなにも触れられなかったものがいきなり「猶予延長」ってなるとは考えにくいんですけどね。

 ちなみに記事タイトルの「海老の背」というのは、韓国のことわざ「クジラの喧嘩に海老の背中が割ける」(大国、大企業同士の戦いで小国、中小企業などがとばっちりを受ける様子)の海老に韓国を立場を置いたものです。

Twitterで更新情報をお伝えしています。フォローはこちらから→

韓国の非メモリ半導体のシェア、日本の1/3レベルだった……韓国メディア「韓国は半導体強国ではなかったのか?」

カテゴリ:半導体関連 コメント:(95)
タグ: 半導体
半導体強国だというのに、この分野は凄惨…···中国の半分にとどまる(毎日経済・朝鮮語)
昨年、世界非メモリー半導体市場で韓国のシェアが中国の半分に過ぎない3.3%で、主要国のうち最下位に止まったことが分かった。サムスン電子、SKハイニックスなどがメモリー半導体で善戦しているが、政府と国内企業がこれまで新成長動力として非メモリー半導体育成に集中してきたことを勘案すれば、みすぼらしい成績表だ。政府がシステム半導体などを国家戦略技術に指定して支援に乗り出したが、国家レベルの戦略を強化し、競争力を一日も早く引き上げるべきだという指摘が出ている。

韓国産業研究院が3日発表した「世界非メモリー半導体市場地形と政策示唆点」報告書によると、昨年の世界半導体市場規模は計780兆ウォンだった。このうちメモリー半導体の割合は23.88%であるのに対し、非メモリーの割合は76.12%だった。

昨年、世界の非メモリー半導体市場規模は593兆ウォンだった。シェア1位に上がった国は米国だった。米国の非メモリー半導体市場規模は323兆ウォンで、世界市場の54.5%を占めた。続いて欧州(70兆ウォン·11.8%)、台湾(61兆ウォン·10.3%)、日本(55兆ウォン·9.2%)、中国(39兆ウォン·6.5%)の順だった。

韓国の市場規模は20兆ウォンで、シェア3.3%にとどまった。グローバル半導体サプライチェーンに参加する主要国のうち、日本はもちろん中国にも遅れを取って最下位を記録した。メモリー分野のDラムとNAND市場で韓国のシェアがそれぞれ70%、50%に達するのとは対照的だ。
(引用ここまで)


 えーっと。韓国は自分たちのことを「半導体強国である」としているのですね。
 いわく「DRAMでは70%、NANDフラッシュメモリでは50%のシェアを持っている」ので、半導体強国であると。
 でも実際には半導体の大半を占めているのは非メモリ分野なんですね。
 メモリ:非メモリの割合は23.88:76.12。

 しかも、これは去年の割合なのでメモリ価格が下落しまくっている昨今ではさらに非メモリの割合が上昇しているでしょうね。
 アメリカが圧倒していて54.5%、ヨーロッパ、台湾、日本がそれぞれ10%前後。
 中国が6.5%。そして韓国が3.3%。

スクリーンショット 2023-09-04 7.58.25.png
(画像引用元・聯合ニュースから画面キャプチャ)

 この数字はどこが製造しているかではなく、設計している企業基準ですね。


 インテル、アップルのあるアメリカが最大のシェアを握っているのは当然として。
 日本も意外と健闘しているのはパワー半導体とソニーの画像センサがあるからでしょうね。

 んで、韓国のシェアが3.3%。
 サムスン電子が自社のスマートフォンで細々と採用しているSoCと、サムスンの画像センサってところかな。

 で、この結果をもって「もっと韓国も非メモリ半導体に注力しなければならない」となっているのですが。
 これ、以前からずっと話していることです。
 ちょっと前にも「急上昇と急降下を繰り返すメモリ半導体だけではなく、非メモリ半導体にも注力すべきだ」って話が出ています。

 今年になってからの輸出額が前年比で2/3になるようなメモリだけじゃなくて、システム半導体や画像センサをもっとやらないと厳しいことになるぞ、と。
 ……できるならもうやってるんだよな。
 できるのなら。

Twitterで更新情報をお伝えしています。フォローはこちらから→

ただいま半額セール中

アメリカの対中半導体規制、台湾・韓国企業への1年間の猶予は延長されるのか否か

カテゴリ:半導体関連 コメント:(64)
7年ぶりに中国を訪れた米商務長官、「もつれた半導体の糸」の糸口を探るか(マネートゥデイ・朝鮮語)
ジーナ・ロモンド米商務長官が中国を訪れ、韓国半導体市場にも変化が予告される。来月終了する予定の先端半導体装備の中国搬入制限猶予とレアアース輸出など主要議論結果が国内半導体市場に影響を及ぼしかねないためだ。ただ、米国高官が今年だけで4回目の中国を訪問したが、半導体産業ではこれといった所得をおさめられずにいるという指摘もある。

28日、ウォールストリートジャーナル(WSJ)など外信によると、ロモンド長官は27日(現地時間)、中国北京に到着した。ロモンド長官は3泊4日間、中国と経済と貿易関連の議題を話し合う見通しだ。米国商務長官が中国を訪問したのは2017年9月、ウィルバー·ロス前長官以後7年ぶりだ。 (中略)

韓国半導体業界がロモンド長官の中国訪問に注目する理由は2つだ。米中の技術覇権戦争が激化している中で来月終了する予定の「先端半導体装備の中国搬入制限」と、ガリウム·ゲルマニウムなど中国の「レアアース輸出」が議論されると予想されるためだ。大企業半導体業界関係者は「議論結果が国内市場にも相当な影響を及ぼしかねない」と話した。

米商務省は昨年10月、中国への半導体装備搬入を制限する行政命令を出し、1年猶予することにした。先端半導体製造装備が主要対象で△ピンペット(FinFET)技術などを使ったロジックチップ(16nm~14nm以下)△18nm以下Dラム△128段以上NANDフラッシュ(以下NAND)を生産できる装備·技術を中国企業に販売する場合、許可を受けるようにした。ただし、既存のレガシー機器の搬入は許可した。

米国が先端半導体装備の中国搬入を制限し、現地に工場を運営しているサムスン電子·SKハイニックスは困難に陥っている。レガシー(成熟工程)装備の搬入だけが可能で、新規投資が難しく、追加技術開発にも支障が生じているためだ。 (中略)

ロモンド長官が中国で関連議論を進め、中国の半導体装備搬入を「無期限延長」できるという期待もある。最近、一部の外信でも1年単位ではなく別途の期限を設けない案も考慮しているという観測が出たりもした。ただ、米国が中国に対する圧迫の水位を高めているだけに、今回無期限延長に乗り出すのは難しいだろうという見通しだ。
(引用ここまで)


 さて、日経新聞が「対中半導体規制における韓国・台湾の猶予を延長する」との記事を出しています。

米国の対中半導体規制、韓国・台湾企業の猶予延長へ(日経新聞)

 対中半導体規制で最先端機器を中国に持ちこむことを禁止したのですが、TSMCの中国ファブ、およびサムスン電子、SKハイニックスのメモリ工場に対しては1年間の猶予を与えることにしています。
 何度か語っていますが、1年で注文から設置を行うことは不可能なので基本的にできることはすでにオーダーしていた機器を納入することだけ。

 それではあまりにも今後の工場運営における問題が大きくなる、とのことでこの猶予の延長を求めていたのですね。
 で、その猶予を延長する方向ではないか、というのが日経のスクープ。
 単純に1年延長するか、無期限に延長するかが議論されていると。

 この中でも特に韓国企業の中国工場依存は大きいものとなっています。
 サムスン電子は同社のNANDフラッシュメモリの40%を、SKハイニックスはNANDフラッシュメモリの30%、DRAMの50%を中国工場で生産しているとされています。


 今年の2月にはエステベス商務省産業安保次官は「(猶予の切れる)10月からは機器納入だけではなく、生産にも制限をかけていく」との発言があり、サムスン電子、SKハイニックスに衝撃を与えました。
 とはいえ、実際には両者の工場に納入されている機器はアメリカが神経を尖らせている「最先端」のものではなく「先端」レベルのもの。
 逃げ道があるとしたらそこなんですが。

 まあ、実際の情勢は微妙なところ。
 実際、「アメリカのマイクロンが中国市場から閉め出されているのに、同業のサムスン電子、SKハイニックスを優遇する措置をしているのは公平性の観点から見てどうなのか」とアメリカの有力議員からも疑問が出ている中、猶予延長ができるのか。

 ちなみに日経新聞の記事はスクープなのですが、これにどこも追随していません。韓国メディアも「日経によると」という孫引きの記事を出すだけ。
 このマネートゥデイの記事が唯一、「(日経に書かれていたような)無期限延長は無理だろう」としているくらい。
 猶予が残り1ヶ月となった中、まだ壮絶な綱引きは続いていると見たほうがよさげですね。

Twitterで更新情報をお伝えしています。フォローはこちらから→

アメリカの対中半導体規制強化に見る「あ、韓国終わったわ」感

カテゴリ:半導体関連 コメント:(81)
米国、対中投資を厳しく制限 半導体・AIで大統領令(日経新聞)
米政府は9日、米国の企業・個人による中国への投資を規制する新制度を導入すると発表した。先端半導体や人工知能(AI)、量子技術を対象にする。政府に届け出を義務付け、中国の軍事開発などに結びつく案件は禁じる。米国の対中規制がモノだけでなく、カネの流れにまで発展した。

M&A(合併・買収)やプライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、合弁事業などによる中国への新規投資を対象にする。米国内だけでなく、全世界の米国人に適用する。

市場への混乱を抑えるため、上場投資信託(ETF)や公募証券、米国の親会社から子会社への資金移動などは除外する方向で検討している。

半導体はスーパーコンピューターなどの高度技術の開発につながる先端分野は投資を禁じる。比較的、先端ではない分野でも届け出を義務付ける。先端半導体は2022年10月に人材も含めて輸出禁止措置を導入した。モノやヒトに加えて、カネの流れも制限する。
(引用ここまで)


 そうそう、楽韓Webでは伝え忘れていたのですがアメリカが新たな中国への投資規制を行うことを決定していまして。
 量子コンピュータ、AI、先端半導体について投資を禁止。
 先端半導体以外の半導体についても届け出制。

 これ見た時に「あ、韓国死んだわ」って思いましたね。
 SKハイニックスとサムスン電子は大規模工場を中国にも持っています。
 最先端プロセスではないですが、先端プロセスと言っていい工場です。

 そこでSKハイニックスは同社全体のNANDフラッシュメモリの30%、DRAMの50%を生産しています。
 サムスン電子はNANDフラッシュメモリの40%を中国工場で生産しています。
 本来であれば去年10月のCHIPS法施行で一切の新規投資ができなくなるはずだったのですが。
 今年10月頭まで、1年間の猶予が与えられています。


 とはいえ、1年間で製造装置メーカーに注文して納入、設置といった作業まで終えるのは無理。というわけで、すでに注文済で「措置期間の1年で設置までできる装置」であれば納入を許されるといった、本当に「猶予措置」でしかないのです。
 なにしろ各装置メーカーのメンテナンス要員まで排除しなければ制裁対象になりかねないので。

 この猶予措置を韓国側は「外交で延長、なんとかなるだろう」くらいの認識でいたようですが。
 残り40日になってもアメリカ側からの動きはゼロ。

 それどころか冒頭記事の投資についてのさらなる規制まで行うと発表したわけです。
 アメリカによる「中国を最先端半導体製造から除外する」決意は揺るがないものと見るべきでしょう。
 猶予延長……あったらいいね。
 生産への制限、ではなく。

 あ、それとメモリについては年内まで下落はゆるく続くとの見通しも出てきました。

半導体メモリー「年内は下落、大手減産も供給過剰続く」(日経新聞)

 うーん、無理ゲー。

Twitterで更新情報をお伝えしています。フォローはこちらから→

サムスン電子、SKハイニックスのメモリ在庫、ついに50兆ウォンを超える……中国工場への猶予延長がその命運を握る模様

半導体の減産にも在庫50兆ウォンを超えた……サムスン、半年間で4.6兆ウォン増(東亞日報・朝鮮語)
今年6月末までに蓄積された三星電子半導体(DS)部門とSKハイニックスの在庫資産合計が初めて50兆ウォンを超えたことが分かった。2021年末の2倍水準だ。ただ、メモリー半導体の減産の影響で在庫増加速度は鈍化した。

三星電子が14日公示した半期報告書によると、今年6月末基準でDS部門の在庫資産は33兆6896億ウォンだ。今年上半期(1~6月)だけで4兆6293億ウォンの在庫が増えた。半導体産業が下降局面に入る前の2021年末(16兆4551億ウォン)の2倍を超える。三星電子の家電とモバイル事業を担当するデバイス経験(DX)部門の在庫資産は、昨年末20兆1901億ウォンから今年6月末19兆1800億ウォンへと5.0%減少した。ディスプレー(SDC)部門も2兆1661億ウォンから1兆6496億ウォンへと23.8%減少した。しかし、半導体の在庫が大幅に増え、三星電子全体の在庫資産は同期間52兆1878億ウォンから55兆5078億ウォンへと3兆3200億ウォン(6.4%)増加した。

SKハイニックスの6月末の在庫資産は計16兆4202億ウォンだった。ただ、減産効果が本格化し、6ヵ月間の増加幅は昨年下半期(3兆7860億ウォン)より今年上半期(7555億ウォン)に大きく減った。半導体業界関係者は「今年上半期AIサーバー用高容量·高仕様Dラム製品を除いては大部分の需要が回復しなかったため」と説明した。

両社の半導体事業在庫資産の合計は、2021年12月25兆4051億ウォンから昨年末44兆7223億ウォンへと急増した。今年はSKに続きサムスンまで減産に突入したにもかかわらず、6月末基準で50兆1098億ウォンまで増えた。人工知能(AI)サーバー用の高容量・高仕様Dラム製品を除いては大部分の需要が回復しなかったためと分析される。
(引用ここまで)


 半導体……というか、メモリの価格下落はどうにか止まったとされています。
 もともと2023年の下半期には反騰とされていたのですが、現状はまだ「下げ止まった」レベルでしかないですね。
 見事なくらいにL字を描いています。
 メモリ価格を左右するひとつの要因はメーカーがどれほど在庫を抱えているか、なのですが。

 韓国のメモリ半導体メーカーであるサムスン電子、SKハイニックスのメモリ在庫は50兆ウォンを突破しました。
 これは……だいぶ厳しいですね。
 サムスン電子は市況がかなり厳しくても減産をしないことで知られています。
 そのサムスン電子すら今回は渋々ながらも減産をしているのです。

 1〜3月期決算は前年同期比で96%の減益
 その際に「減産も辞さない」と述べたことがニュースになったほどでした。

 ただ、減産に踏み切ったにもかかわらず、在庫はむしろ増加。
 2022年の年末時点で44兆あまりだったものが50兆ウォン超に。
 一応、在庫の増えるペースはだいぶ緩くはなっているのですが、これまで積み上げてきた在庫自体が膨大な量になってますからね……。


 さて、その一方でこの10月に切れる「CHIPS法施行における韓国企業の中国工場に対して施された1年間の猶予」ですが、アメリカからはなんのアクションもありません。
 残された1ヶ月半でなんか動きあるんですかね?

 2月にエステベス商務次官が「10月からは中国における半導体工場については生産そのものについても制限を課すだろう」と述べたことがありました。
 それ以降、猶予に関してなんの動きも発言もありません。
 韓国側は「猶予を永続的なものにしてくれ」との要望をアメリカ政府に出したとのことでしたが。それ以降も動きゼロ。

 アメリカの有力議員が韓国の中国工場への猶予について「これ以上は公平の原則を鑑みても認められない」とする書簡を出すなど、反対運動すら出ている状況です。
 サムスン電子は同社のNANDフラッシュメモリの40%を、SKハイニックスはNANDフラッシュメモリの30%、DRAMの50%を中国工場で生産しているとされています。
 中国工場の生産に制限が課された場合、両社は莫大な損失を抱えかねません。
 それは「アメリカ企業」であるマイクロンへの間接援護にもなるはずですね。

Twitterで更新情報をお伝えしています。フォローはこちらから→

ムン・ジェイン「もう2度と日本に負けない」と半導体素材の国産化、輸入多角化を宣言→結果……

カテゴリ:半導体関連 コメント:(48)
素材・部品・設備の自立宣言から4年、韓国の対日輸入額は大幅に増えていた(朝鮮日報)
 輸出規制対象となった高純度フッ化水素はソルブレイン、ENFテクノロジーなど一部の韓国企業が国産化に成功した。レジストもサムスン電子、東進セミケムがEUV露光工程に使用できるレジストを開発した。しかし、国産化のレベルは依然として微々たるものだ。韓国産業通商資源部は昨年、国産化率は半導体設備で20%、素材で50%にとどまっているとした。2017年のそれぞれ18.2%、50.3%と大差なかった。

 本紙がこのほど、最近4年間の貿易統計を分析した結果、昨年日本から輸入した素材・部品・設備は貿易紛争以前の18年よりもむしろ増加し、貿易収支は悪化している。18年に381億ドルだった日本からの素材・部品・設備の輸入額は、19年に日本が経済報復措置を取った後、329億ドルに停滞したが、翌年には340億ドルに増えた。昨年は395億ドルで過去最大を記録した。このため、素材・部品・設備分野での対日貿易赤字は19年の186億9000万ドルから昨年は249億3000万ドルに拡大した。

 ただ、輸入国の多角化には一部成功し、フッ化水素は輸出規制以前の18年に41.9%に達していた対日輸入割合が昨年7.7%まで低下した。代替輸入先となったのは中国だ。昨年、韓国のフッ化水素の対中輸入割合は80%に達した。

 輸出の多角化でコストも上昇した。レジストの場合、韓国企業は日本製の代わりにベルギーにある日系合弁法人を通じて調達を始めた。しかし、ベルギー製素材の輸入単価は日本製の5.4倍に達した。
(引用ここまで・太字引用者)


 まあ、そうなるでしょうね……とのオチ。
 日本政府が半導体材料の輸出管理強化を行った当時、ムン・ジェイン政権はムン・ジェイン自ら「もう日本に負けない」と語るとか、チョ・グクは「竹槍歌」をSNSで引用するなどしていて大反発したのです。
 で、それら材料の国産化や外国からの導入を画策したわけです。
 当時、レジストに関してはほぼ100%が日本製だったのですが、一気に70%台にまで減らすことに成功して「これが韓国の底力だ!」とかやっていたのです。

 ですが、実際には日本でレジストを製造しているJSRのベルギー支社から輸入をはじめただけで実質的な解決はなにもしていなかった。
 それどころか送料でコストは大幅に上がっていた、というオチでした。

 以前、楽韓Webでは「これら材料は秘伝のタレのようなもので、企業側からしたら絶対に変えたくない」と語ったことがあります。
 材料を変更することは半導体の製造ラインを止めてテストすることにつながり、競争力の低下につながります。


 そんな中、「材料を変えたくない韓国企業」「日本からの輸入を減らしたい韓国政府(ムン・ジェイン政権)」がぶつかりあった妥協点が「日本企業の海外支社からの輸入」だったのでしょうね。
 で、コストがバカ上がりしてしまったのだけども、それは大統領府に対して言い訳をするコストとして受け容れた……と。

 なんでこんなことが起きるかというと、韓国は半専制国家だからなのですね。
 どう考えても「日本からの輸入を減らすために、日本企業の海外支社から迂回輸入をして輸送コストをかける」なんてバカなことを企業がするわけがないのですが。
 韓国ではそれがあり得る。
 なぜなら韓国企業は政府の意向を無視して存続することはできないから。

 韓国が日本から輸入した素材・部品・設備の総額を見ても分かると思います。

2018年 381億ドル
2019年 329億ドル(輸出管理強化開始)
2020年 340億ドル
2022年 395億ドル(過去最大)

 とにかくムン・ジェイン政権の間だけ頭を下げて、嵐が通り過ぎるのを待っていた。ユン政権になって「はあ、やれやれ……」とばかりに対日輸入を再開した、と。
 それでなくとも財閥の総裁であるイ・ジェヨン副会長を人質に取られていた以上、当時のサムスン電子に選択肢はなかったでしょうね。

Twitterで更新情報をお伝えしています。フォローはこちらから→