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カテゴリ:半導体関連の記事一覧

韓国メディア「TSMCもインテルもサムスンも日本に投資……なぜ韓国に来ないのか」

サムスンも、TSMCも、インテルも日本に行く… 韓国にはこないのだろうか(マネートゥデイ・朝鮮語)
グローバル半導体企業が日本行きの飛行機に乗り込んでいる。G7(主要7ヵ国)首脳会談を契機に、日本の首相が直接主要企業のトップらと手を組んだ。数兆ウォン台の生産設備はもちろん、研究・開発施設まで「日本ラッシュ」が相次ぐ。三星電子も最新半導体開発拠点を新たに建設するため、日本政府の補助金を活用する計画だ。業界では、韓国もしばらく低迷している投資誘致のために膝を突き合わせる時だと指摘する。

22日、現地業界と各社によれば台湾TSMCとサムスン電子、米国マイクロン、アプライドマテリアルズなど主要半導体企業が相次いで日本投資を発表した。現在まで投資総額だけでも2兆円(約19兆ウォン)に迫る。すでにTSMCは生産施設と開発拠点を、マイクロンはDRAM生産ラインを建設中だ。サムスン電子も先端半導体試作品の生産ラインを建設する。インテル・IMEC(ベルギー)も研究センター、パッケージング(後工程)工場の建設を推進する。

日本政府の全面的な支援が最大の理由だ。 (中略)

TSMCはウェイザーCEOは日本政府の支援に公開的に満足感を示した後、第2工場進出を発表した。サムスン電子も横浜研究開発施設とは別に、東京周辺に先端半導体拠点を作る。業界関係者は「日本政府の投資補助金は知らされたことだけで7兆ウォンを越える」として「半導体ファブ(生産施設)は莫大な資金が投入されるため、当然のように資金的な恩恵がある側に行くしかない」と話した。

国内は事情が違う。政府が先月投資金額の最大50%範囲まで現金支援比率を高め、外国人投資企業に支援可否と規模を予測できるようにする制度を導入したが、まだこれといったニュースは聞こえない。昨年、アプライドマテリアルズ、ラムリサーチなど世界4大半導体装備業者の国内投資を誘致した後、これといったニュースがない。
(引用ここまで)


 先日、SEMS以外の半導体製造装置で韓国勢はまったく振るわない、という話をしました。
 また、材料等でも同様に日本企業は対韓国でのシェア自体は落としても、落とした部分は汎用品で最先端半導体のラインに使うようなものではシェアは揺るがなかったともされています。
 製造装置や材料において日本企業のシェアは無視できるようなものではないのですよ。

 で、そこに日本政府の積極的な支援策があるのですから鬼に金棒。
 そりゃ、サムスン電子ですら後工程の試作ラインを作るでしょっていうね。
 インテルも同様に後工程で投資するかもなんて話が出てます。
 それ以外にもマイクロンは広島工場にさらに投資。
 アプライド・マテリアルズはラピダスとの連携を強めることを表明。
 TSMCは第2工場についてまだ正式表明はしていませんが「建設したらまた支援してください」と熊本県知事が言っているっていう。


 岸田総理はサミット開催前日に各企業のトップと意見交換会をしてましたね。
 半導体について日本政府の覚悟はけっこうなものがあることが感じられました。
 さて、振り返って韓国なのですが。

 サムスン電子が傘下企業から20兆ウォンの借り入れをしてまで投資を継続している状況。SKハイニックスは赤字で設備投資を削減している。
 地産地消って意味で素材メーカーが韓国に幾ばくかの投資をすることはあるとは思いますが。

 微妙に韓国政府に焦りがないのを感じます。
 「メモリ大国である我が国の地位は揺るがない」「アメリカも無視できない」くらいの気分なんでしょうかね。
 正直、場況はそれほどいいとは思えないのですが。

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韓国政府、アメリカ政府に「韓国半導体企業の中国工場での増産を」とお願いするものの、アメリカ側の要求は無視……そういうとこだぞ?

韓国政府、米国に「補助金受けても中国で半導体増産10%まで許容を」(中央日報)
韓国政府が米国に半導体法(CHIPS法)補助金を受ける企業が中国国内の半導体生産能力を拡張できる範囲を倍に増やしてほしいと米政府に要請した。

23日(現地時間)の米政府官報によると、韓国政府は米商務省が3月に公開した半導体法ガードレール(安全装置)条項細部規定案に対する意見書で「半導体法ガードレール条項が米国に投資する企業に不合理な負担を賦課する方式で施行されてはいけないと考える」と明らかにした。続いて「こうした脈絡で韓国は米政府の規定案にある『実質的な拡張(material espansion)』と『汎用半導体』(legacy semiconductor)、その他の主要用語の定義を再検討することを要請する」とした。また韓国政府は中国など「懸念企業」と共同研究や技術ライセンシング(特許使用契約)をすれば補助金を払い戻さなければいけない「技術返還」(technology clawback)条項に基づき制限される活動の範囲も明確にしてほしいと伝えた。

これに先立ち米商務省は3月21日、米国に投資する半導体企業が米政府補助金を受ける場合、その後10年間、中国など懸念国家で半導体生産能力を「実質的に拡張」すれば補助金全額を返還するという内容のガードレール条項を公開した。「先端半導体」は10年間に5%以上、「(過去世代)汎用半導体」は10%以上増やす場合、補助金を返還しなければいけない。

(中略)

韓国政府が中国で生産能力拡張の道がふさがった国内半導体業界の立場を考慮し、増産許容を米国に要請したという分析が出ている。
(引用ここまで)


 今月頭の米韓首脳会談の後に、CHIPS法で韓国企業の中国工場への措置として行われていた1年猶予が延長されたとの報道がありまして。
 詳しくはシンシアリーさんのところでご覧ください。

日本効果(?)か、マイクロン効果か・・FT、「米国がサムスン電子とSKハイニックスへの猶予措置を1年延長」と報道(シンシアリーのブログ)

 「1年間の猶予」というのは機材の納入のことで、去年の10月から今年の10月までの猶予。
 とはいえ、1年間の猶予では半導体製造についてはなにもできない。
 製造装置オーダーしても設置まで1年では絶対に無理。

 というわけでかなり早いうちから「猶予の1年延長」を求めてたのですね。
 ただし、いままで叶っていません。


 現状、韓国企業の中国工場に許されているのは先端半導体で5%、過去世代では10%の生産増のみ。
 んで、韓国政府はどうにかしてこれを先端半導体でも10%にしてほしいと言いだしている。

 まあ、先端半導体でのウエハベースでの5%増はけっこう大きいですけどね。
 なので、その要求も分からないでもないですが。

 「日韓関係も米韓関係も良好だ。韓国の立場はかつてないほど高くなっている」って設定なのに、猶予の1年間延長もできない。
 ウエハベースでの増産も認めてもらえていない。

 そんな中、アメリカのマイクロンが中国市場から閉め出しを喰らってまして。
 アメリカ政府は「韓国企業はマイクロンの不足分を補わないように」としていました。

米国、中国がマイクロン制裁の場合、韓国は不足分を補わないよう要求(ハンギョレ)
焦点:マイクロン調達禁止で米中対立激化、半導体企業に試練(ロイター)

 ただ、韓国政府は「民間企業の事業だ」と無視する模様。
 ……じゃあ、韓国側のお願いも受け容れられないわな。
 そういうとこだぞ?

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半導体製造装置でほとんど存在感のない韓国、CHIPS法、CHIP4で影が薄いのも当然か……唯一、韓国企業でシェアが高いのは日本から技術を奪ったもののみ

半導体製造装置で中国包囲網、その威力と反作用を徹底検証(JBPress)
 2022年10月、米国のジョー・バイデン政権は半導体の輸出管理規制を強化し、先端半導体の技術や製造装置、関連人材について、中国との取引を事実上禁じた。

 この規制強化によりスーパーコンピューターやAIに用いられる高性能半導体の輸出に加え、先端半導体を製造するための米国製製造装置の輸出が原則禁止となった。

 米国輸出管理法は、「再輸出規制」を行っている。

 このため、米国産の技術等を使用して製造した製品は、他国へ輸出することができない。しかし、自国の独自の技術で製造した製品は、他国へ輸出することができる。

 そして、米国は半導体製造装置に独自の技術を有する日本とオランダにも輸出規制に同調するよう求めてきた。

 2023年1月27日、日米とオランダの3か国は、先端半導体製造装置の一部の対中輸出制限で合意した。
(引用ここまで)


 アメリカによる対中国半導体規制についての記事。
 けっこう役に立つと思うので一瞥しておいてもらってもよいかな、と思います。
 んで、楽韓Webでは4ページ目の「各種半導体製造装置の企業別シェア」に注目してもらいたいかな、と。

スクリーンショット 2023-05-20 22.43.57.png
(画像引用元・冒頭記事から画面キャプチャ)

 黄色がオランダ、緑がアメリカ、青が日本。
 そして赤が韓国……というかSEMSです。
 このSEMS、元はスクリーンとサムスン電子の合弁会社だったのですね。

 SEMSについて書いたことがなかったので書いておきましょうか。
 当時のスクリーンは大日本スクリーン(DNS)という会社名で、韓国での合弁会社もK-DNSというものでした。1993年に韓国で設立されました。


 ところがその後、K-DNSはサムスンにすべての株が譲渡され、SEMSに改称。
 スクリーンはいまでも半導体製造における洗浄装置部門でトップシェアを誇る企業ではありますが、SEMSにむざむざとサムスン電子分のシェアを受け渡してしまったのですね。

 まあ……最初からそうなるだろうなぁ、と思われていた通りのオチになったわけですが。
 DRAMで東芝や日立がやられてきたことを同じようにやられたので同情の余地もないというか。
 同業他社はどれほど乞われても合弁企業にはしなかったのにね。

 CHIP4、CHIPS法で韓国はほとんど存在感がないのは、こうして世界の半導体製造装置のシェアのほとんどが日米蘭に握られているからというのが大きな理由。
 SEMSくらいしかないのです。

 そして製造面で考えてもDRAM、NANDといったメモリ半導体でしか存在感がない。
 もちろん、無視できるようなものではありませんが。
 ないならないでなんとか……って考えられてしまうのも実際ですよね。
 サムスン電子、SKハイニックスの中国工場がああした扱いになるのもしかたがないかな、といったところではあります。

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韓国政府「5.8兆ウォンを使って日本からの素材依存度を下げたぞ!」→輸入額を見てみると……

カテゴリ:半導体関連 コメント:(38)
「素材・部品・装備独立」に5.8兆ウォンを使っても……日本からの輸入額がかえって増えた(韓国経済新聞・朝鮮語)
2019年に始まった「素材・部品・装備(素部装)産業競争力強化」政策にもかかわらず、素部装品目の対日本輸入額がむしろ増えたことが分かった。中国・台湾など中華圏国家からは輸入額だけでなく依存度までともに高まった。政府が素部装産業競争力を強化し、特定国依存度を下げると毎年数兆ウォンの予算を投入したが、まともな成果を上げることはできなかったとの批判が出ている。

クォン・ミョンホ国民の力議員が5日産業通商資源部から提出された資料によると、素部装100大品目の対日輸入額は2019年113億ドルから2021年134億ドルに21億ドル(18.6%)増加したことが分かった。 (中略)

政府は日本が2019年、半導体・ディスプレイなどの生産に不可欠な品目の韓国輸出規制を強化すると、これに対応するために素部装100大品目を指定して需給多様化と技術自立を推進してきた。2020年には需給管理品目を既存の100個から338個に拡大した。

この過程で投入された政府予算は5兆8000億ウォンに達する。政府は2019年の素部装産業に1兆1000億ウォンを投資したのに続き、2020年には別途の素部装競争力強化特別会計を造成し、2兆1000億ウォンの予算を編成した。昨年には2兆6000億ウォンが特別会計に編成された。今年の予算は2兆5000億ウォンほどだ。 (中略)

政府はこれまで素部装100大品目の日本依存度が2019年30.9%から2021年24.9%に6%ポイント減ったと大々的に広報してきた。だが、同じ期間100大品目の中華圏依存度は23.5%から25.1%に増加した。日本依存度を減らし、中華圏依存度を高めた。

自動車分野の品目でこのような傾向が目立った。2019年11億2800万ドル(依存度15.0%)水準だった対日輸入額は、2021年8億2100万ドル(7.4%)に減った。一方、この期間の大衆輸入額は14億2300万ドル(18.9%)から24億1600万ドル(21.9%)に増加し、台湾からの輸入額も14億400万ドル(18.7%)から30億3400万ドル(27.5%) %)に増やした。中華圏と貿易紛争が生じれば、2019年の日本の韓国輸出規制措置と似ているか、それ以上のレベルで打撃を受けることができるという意味だ。
(引用ここまで)


 今日昼の「サムスン電子が横浜に半導体試作ラインを作る」とのエントリで300億円が投資される、とのニュースを見て「後工程でしょうね」との話をしました。
 後工程とは半導体のシリコン上に回路を焼きつけた後の工程。
 シリコンから半導体を切り出し、検品を行い、パッケージングまで行う部分。
 このあたりは日本企業が強みを持っている部分です。ディスコとかアドバンテストとか。

 今回のサムスン電子による試作ラインは「日本側の素材、製造装置関連ですぐにメンテ、改良ができるような場所にいたかったのだろうな」と考えられます。
 そういえばムン・ジェインが「もう日本には負けない」と大見得を切って、素材や部品を国内で製造できるように政府の予算をアホほど投入していたのですが。
 その結果についてピックアップしていなかったな、と。

 というわけで、去年10月に出た結論がこちらの記事。


 2021年までで5兆8000億ウォンを公的資金として出している。
 にも関わらず、日本からの100大品目の輸入額は2019年の113億ドルから、2021年の134億ドル19%増。
 ちなみに投入額は以下の通り。

2019年 1兆1000億ウォン
2020年 2兆1000億ウォン
2021年 2兆6000億ウォン
2022年 2兆5000億ウォン

 ただ、対日依存率は30.9%から24.9%に低くなったそうですわ。
 その分、中国・台湾への依存率が23.5%から25.1%に上昇。
 日本から中国・台湾へ依存が移っただけという。しかも絶対額でも依存率上がってたってオチ。

 日経の記事でも「汎用素材ではどうにかなっても、先端技術向けの素材・製造装置を使い続けていた」って記述がありました。
 純度がそれほどでもないディスプレイ用のフッ化水素あたりはできたっぽいですけどね。
 まあ、最初から予想されたオチではありました。

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サムスン電子、日本に300億円規模の半導体開発拠点で「試作ライン」の整備も……日本の素材、装置企業と協業を深化へ

サムスン、日本に半導体開発拠点 素材・装置企業と研究(日経新聞)
韓国サムスン電子が日本に半導体開発拠点を新設する。300億円超を投じ、横浜市内に先端半導体デバイスの試作ラインを整備する。日本政府の補助金も活用する方向で調整しており、日本の素材や製造装置メーカーとの共同研究を進める。
(引用ここまで)


 あまり一般には知られていないのですが、横浜周辺にはさまざまな国外企業が開発拠点を構えています。

 サムスン電子のそれがもっとも早く、21世紀になってすぐくらいにはもうあったんじゃないかなぁ。地元民にはそこそこ知られているはず。
 一時はなんとかしてサムスン電子のさまざまな商品を日本に売ろうともしていましたが、現在はスマートフォン関連を除くとほぼ撤退状態。
 それでも開発拠点はそのままになっています。

 アップルも同様に開発拠点を横浜に構えています。2016年だったかな。
 そしてTSMCのデザインセンターも横浜だったりするのですね(研究拠点はつくば)。
 近隣に関連企業が多い等で、横浜周辺には地の利があるのでしょう。

 で、今回、サムスンは「半導体の試作ラインを設置する」のだそうで。
 300億円規模になるそうです。思ってたよりも大きい規模の投資ですね。
 この金額だと後工程かな。


 ムン・ジェインが「もう日本には負けない」と大見得を切って見せた後、大号令を発して素材、部品等を「国産」しようとしたのですが。
 メンツのためだけに日本からではなく、JSRのベルギー支社からフォトレジストを購入して「対日依存が減ったぞ!」とアナウンスするとかいう悲しい出来事を生んだわけです。
 けっきょく汎用品はともかく先端技術向けの素材、装置、部品といった長年の開発努力が必要なものがそう簡単にできるわけもなく。
 日経は別記事で「サムスンには日本のサプライヤーとの連携を深めたいとの意向がある」としています。

サムスン、日本重視に3つの理由 横浜に半導体開発拠点(日経新聞)

 というか2019年の半導体材料輸出管理強化の発表後、すぐにサムスン電子の総帥であるイ・ジェヨン副会長(当時)が訪日したこともあったほどで。
 たしかその2ヶ月前にも訪日したばかりだったにも関わらず。

 日本企業の強みはそのまま、ムン・ジェインのかけ声倒れに終わった、というお話だったのさ。

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韓国メディア「サムスン電子は急降下、急上昇を繰り返すメモリ事業だけじゃなくてシステム半導体製造を増やすべきだ」……それができないから詰みかけているのでは

カテゴリ:半導体関連 コメント:(82)
サムスン電子、墜落するジェットコースターから降りることができるだろうか(KBS・朝鮮語)
今年第1四半期、サムスン電子半導体部門が4兆5800億ウォンの営業赤字を記録する時、台湾のTSMCが依然として10兆ウォン以上の営業利益を記録した理由はここにある。三星電子はメモリー半導体世界1位の企業、TSMCはシステム半導体を製造するファウンドリー世界1位の企業だ。

すなわち、2023年の景気下降期にサムスン電子はTSMCよりさらに早く墜落するジェットコースターに乗っている。

メモリーとシステムに限れば、2022年基準で韓国半導体輸出のうちメモリー比重は63.8%だ。第1四半期の半導体輸出減少幅が-40.9%を記録した理由はここにある。 (中略)

世界全体で見れば正反対だ。世界市場でのメモリー比重は30.5%で、韓国の半分に過ぎない。
(引用ここまで)


 TSMCの今年第1四半期の業績が出まして。
 前年同期比の売上高は台湾ドルベースでは微増(+3.6%)、米ドルベースでは微減(-4.8%)。為替で四苦八苦しているのは台湾も一緒。
 純利益では+2.1%とこちらも微増(台湾ドルベース)。

 商売相手の最大手がアメリカ(63%)であることも考慮すると、さしものTSMCであっても微減を免れなかったと見るのが正解かな。
 決算レポートを見てもアメリカからのオーダーはぐっと減っているのは間違いないところ。前年同期比であってもそこそこ減っています。
 とはいえ、全体では微減で収められているところがすごいですね。

 その一方でメモリ製造が主体であるサムスン電子、メモリ製造しかしていないSKハイニックス1Q業績は見るも無惨でした。

 サムスン電子の1Q業績は営業利益がマイナス95.8%
 SKハイニックスのそれは3兆4000億ウォンの赤字でした。


 んで、冒頭記事は「このままメモリ製造が中心となっていてはいけない。システム半導体を製造することで平準化できるのはTSMCを見ても明らかだ」としているわけですが。
 んー、微妙。
 サムスン電子の方向性がそれであることは間違いないのですけどね。

 現状、TSMCに勝てる要素がない。
 アップルは次のiPhone15シリーズのシステム半導体でもTSMCを選んでいますし、他の先端技術を用いる半導体でも多くのメーカーがTSMCを選んでいます。
 あるいはサムスン電子から離脱しています。
 最近だけでもクアルコム、nVidia、あるいはテスラあたりがTSMCに鞍替えをしています。

 現状でサムスン電子を選んでいる大手はGoogleくらいかな。PixelシリーズのTensorについてはサムスン電子が製造しています。
 まあ……Pixelシリーズはそれほど売れているわけでもないのですけどね。

 TSMCにはそれだけの実績があり、サムスン電子には逆の意味での「実績」があるわけで。
 なんでもTSMCの創業者モリス・チャンは1970年代には「半導体はファブレスがメインになる」と見積もっていて独自のファウンドリビジネスを行うと考えていたって話ですからね。
 よくも悪くも半導体製造はTSMCが主役として存在していて、サムスン電子ですら脇役のひとりでしかないんですよ。

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 この本はおすすめ。あとこの著者の語っている動画を今度紹介します。

中国、米メモリメーカーのマイクロンに「サイバーセキュリティ調査」を発動……ここから見えてくるつばぜり合いとは?

カテゴリ:半導体関連 コメント:(49)
中国、米半導体メーカーミクロンサイバーセキュリティ調査に着手(ファイナンシャルニュース・朝鮮語)
中国当局が米国メモリー半導体メーカーのマイクロンテクノロジーに対するサイバーセキュリティ調査に着手した。

米中間の緊張が高まる中、中国で活動するグローバル半導体メーカーに対する中国当局の圧迫が本格化する信号弾と解釈される。 (中略)

これは先端半導体、半導体装備の対中輸出を阻止した米政府に対する対抗作戦と見られる。たとえ中国に先端半導体を輸出することはできないが、汎用半導体の輸出で中国で莫大な金を稼いでいる米国をはじめとするグローバル半導体メーカーに圧力をかけ、資金源を塞ぐ恐れもあるという警告と解釈される。

中国市場はマイクロンの中核市場だ。昨年の年間売上の11%、33億ドル(約4兆3000億ウォン)が中国から出た。 (中略)

中国のマイクロン圧迫は、米国が中国半導体掘削機を粉砕するための各種制裁を出す中で出た。

米国は昨年、中国最先端半導体メーカーを輸出禁止対象ブラックリストに載せた。ヤンツメモリーがブラックリストに上がり、このためグローバル半導体装備業者等がここに常駐していた職員を撤収させ半導体生産が一時停止したりもした。
(引用ここまで)


 ちょっと興味深い話が出てきたのでピックアップします。
 あと後年に振り返った時に重要な分岐点になっていそうな予感がするので。

 中国がアメリカのメモリメーカーのマイクロンに対して「サイバーセキュリティ調査」に着手。
 マイクロンって基本的にDRAMとフラッシュメモリ(NAND、NOR)しか作っていない。
 そんな企業の製品のどこにサイバーセキュリティ調査をするんだって話なんですが。

 たとえばインテルを「調査」すると話が大きくなりすぎる上に、中国にも影響が大きい。
 テキサスインスツルメンツなんかでも同様。
 じゃあ、マイクロンかな……ってなった感がありますね。
 もちろん、これは実質的にはアメリカのCHIPS法による対中半導体輸出規制への対抗措置でしかない。


 アメリカへの対抗措置であるのと同時に中国に大規模な工場を持つサムスン電子、SKハイニックスへの圧力ともなっている妙手。
 「おまえら、撤退だの縮小だのしようもんならどうなるか分かってんだろうな」っていう。

 サムスン電子、SKハイニックスともに、中国工場はいまひとつ「最新」とはいえない設備でしかない。
 CHIPS法による縛りで製造機器を10年間はアップデートできないので、もはやレガシーなメモリを作るしかない。
 それで採算が取れるのか、というとかなり微妙。地消地産なのでそれなりに引き合いはあるとは思いますが。

 ただまあ、韓国はなにも主体的に動けていないなぁ……という感触。
 中国とアメリカの作り出した渦に巻きこまれて、たまに浮上してどうにか呼吸しているみたいな感じ。
 日本の製造機器メーカーはまだアメリカの強い引き合いでなんとかなっている部分が大きいけど。
 もはや中国に工場持っているっていうのは本当にディスアドバンテージでしかないな……。

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半導体市況、NANDフラッシュ、DRAMは1年で出荷額が半分になっていた……やばない?

Intelとメモリメーカーは生き残れるのか? ~驚愕のMPU/メモリ市況(EETimes)
日本のWBC優勝に水を差すような話になって申し訳ないが、本稿では、PC市場の成長に急ブレーキがかかっており、それに伴ってプロセッサ(MPU)、DRAM、NAND型フラッシュメモリが、目を覆うようなひどい事態になっていることを報じる。そのため、米Intelとメモリメーカーが苦境に陥っていると考えられる。もしかしたら、半導体メーカーの統廃合が起きるかもしれない。事態はそれほど深刻である。 (中略)

DRAMが1年強で半分以下の49%に、NANDが1年で55%に、MPUはたった3カ月で40%減少した。これほどひどい出荷額の低下は、過去に見たことがない。 (中略)

今回のコロナ特需の終えんによる大不況は、過去最悪レベルになる可能性がある。そのため、業績が悪化したIntelやメモリメーカーなどを中心に、統廃合が起きる可能性が高い。半導体関連企業には、それに備えた覚悟が必要になるだろう。
(引用ここまで)


 以前にもちらっと取りあげたEETimesの湯之上氏によるコラム。
 半導体市況は相当に悪化してることは認識していたのですが、数字を出してみると恐ろしいことになってますね。
 ここからさらに1月分の数字を組み入れるとさらにえらいことになっているのですが、それはサイトのほうで見てみてください。

 個人的にも現在の下落具合はITバブル破裂以来のものになるのではと感じています。
 逆にいえば自作PCを新たに組み上げたり、現行のPCの増強には持って来いの貴重な「時期がいい」状況になっているともいえますね。


 冒頭記事ではSKハイニックス、サムスン電子にも言及があります。
 他の稼業をやっているサムスン電子はともかく、メモリ専業のSKハイニックスは厳しいのではないかと。
 さらに中国工場はレガシーなメモリしか作れなくなるのでかなり厳しいことになるだろうとも。

 ウォールストリートジャーナルが「CHIPS法によって半導体メーカーにとって中国とアメリカの選択が迫られている」との記事を掲載しています。

For Chip Makers, a Choice Between the U.S. and China Looms(WallStreetJournal・英語)

 ここでもメインで取り上げられているのはSKハイニックスとサムスン電子。
 両者ともにまだどうするのか、まったくアナウンスはありませんが。
 どう考えてもCHIPS法を受け入れる以外に手はないように思えます。

 特にSKハイニックスはどうするつもりなのやら。
 企業存亡の危機にあるのは間違いありません。

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