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カテゴリ:資源開発の記事一覧

韓国政府「アラスカ産LNG開発に参画したい」→韓国ガス公社「ええっと、あのプロジェクトを47兆ウォンの負債を抱える我々にやらせよう……ってこと?」

アラスカLNG開発?…負債47兆ウォンの韓国ガス公社は困惑(中央日報)
韓国政府が米アラスカ液化天然ガス(LNG)開発プロジェクトに参加する可能性を高めている。米政府による関税などの圧力を低めるのが目的だ。投資をする場合、韓国ガス公社が韓国の「キープレーヤー」となるとみられる。

政府によると、トランプ米大統領は9日、韓悳洙(ハン・ドクス)大統領権限代行首相と28分間の電話をした直後、自身のSNSに「アラスカ州ガスパイプライン事業などを議論した」と明らかにした。関税交渉のために米国を訪問した鄭仁教(チョン・インギョ)通商交渉本部長も「アラスカLNGと造船を交渉テーブルに載せて十分に協議していくことになるだろう」と話した。 (中略)

政 府は投資をする場合、ガス公社を主軸に事業を進めるという内部方針を立てた。具体的に事業はインフラ(ガス処理工場・パイプライン・液化処理施設など)建設とLNG購買の2つだ。核心は総事業費が440億ドル(約6兆3200億円)と予想されるインフラ建設だ。アラスカの厳しい気候環境などを考慮すると事業費はさらに増える可能性もある。

問題はガス公社の財務構造がこれに対応するのが難しい点だ。昨年末現在の民需用都市ガス料金未収金は14兆ウォン(約1兆4000億円)で、前年比で1兆ウォン増えた。負債総額は47兆ウォンにのぼる。負債比率は400%を超えた。長期間にわたり都市ガス料金が原価を下回る「損する商売」をしてきたからだ。政府の支援が必要だが、大規模な税収欠損のため財政に余裕がない。

コンソーシアムを構成する形でガス公社が民間企業と手を握る方法が代案として言及されている。しかし仁荷大のカン・チョング・エネルギー資源工学科招聘教授は「国内外を問わず民間の業界はアラスカ事業のリスク(危険要因)が非常に大きいとみている」と指摘した。すでにグローバル石油・ガス企業のエクソンモービルなど主要企業が投資を検討して手を引いた状態だ。
(引用ここまで)




 韓国もアラスカ産LNGへの参画を考慮しているとされているのですが。
 その際に最大の問題になるのが韓国ガス公社にまったくもって余裕がないこと。
 ムン・ジェイン政権時代に原価以下でガスの供給を延々とさせられ続けた結果、負債は47兆ウォンを突破。
 負債比率は400%。

 ムン・ジェイン政権時代は物価が安定していたとか言い出しているメディアもあるのですが、公社系が山ほどの赤字を抱えさせることで仮初めの安定を得ていたに過ぎないのですよ。
 あというほど物価安定はしてなかったわな。
 物価安定してたら金利を上げたりしないだろうに。



 その一方でアラスカ産LNGの参画は米韓関係を考えてもなんとかしたいと現政権は思っているのでしょう。
 まあ、イ・ジェミョン政権になったらどうなるか分かりませんが。
 なにしろ「ウォンを国際基軸通貨(ハードカレンシー)にする」とか言い出すレベルの人なので。
 「基軸通貨入り(ハードカレンシーになれたら)できたら負債もすべて解決する」とか言っちゃうくらいには「経済通」なんですよね。

イ・ジェミョン「もっと政府負債を増やすためにウォンを基軸通貨入りさせなければ」→野党代表「国の負債解決のために基軸通貨国とか胸が高鳴るわ」(楽韓Web過去エントリ)

 おまけに反米志向を隠そうともしていませんし……。
 イ・ジェミョンが大統領になったら米韓関係がどうなるかってコラムをnoteで書いているのでそちらもどうぞ。



 まあ、どっちにしても韓国ガス公社、あと韓国電力公社あたりが救われるルートは見つかりそうにないですね。
 ムン・ジェイン政権下でやってきた公社いじめはそのまま継続しそうですし。

韓国人「日本は交通料金が高いよね」……「韓国の交通料金、電気料金が安い理由」の結果、5大公社の負債が320兆ウォン超えで首も回らない状態に(楽韓Web過去エントリ)

 基本、イ・ジェミョンは「大きい政府」の信奉者で、ベーシックインカムをやりたくてしかたがないって方向性。
 政府債務なんていくら膨らんでもいいってくらいの認識しかありません。
 まあ……日本のほうさえ見なければなにやってくれても構わないんですけどね。



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 中味は長編記事。最新の記事は「イ・ジェミョンの「嘘つき」実績、晒します」となっています。


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韓国メディア「1回のボーリングが失敗したから『詐欺だ』などと言っていたら資源開発などできない」……韓国では無理、でしょうね

資源開発までもが政争の具となる韓国で何ができるのか【2月8日付社説】 東海深海ガス田探査(朝鮮日報)
「大王クジラ(シロナガスクジラ)プロジェクト」と呼ばれる東海深海ガス田開発事業の第1回ボーリングの結果は失望すべきものだった。 (中略)

 以前開発に成功した東海ガス田も11回目のボーリングの末に成功し、ノルウェーの北海油田は33回目のボーリングで油田を発見した。今回の第1回ボーリングの結果はある程度予想できたものだといえる。よって、その結果をめぐって成功だの失敗だのと言うのは性急すぎる。それにもかかわらず、既に「詐欺だ」という非難の声が上がっている。第1回ボーリングの結果だけで「詐欺だ」と言うなら、世界のほぼ全ての油田が詐欺だったことになる。

 こうなった最大の理由は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領がこのボーリングを政治問題化したからだ。 韓国石油公社が物理探査資料を基に石油発見の可能性を期待してきた大王クジラプロジェクトは、同公社と韓国産業資源部(省に相当)の次元でじっくり進めればいいものだった。ところが昨年6月、尹大統領が突然、国民に対してサプライズで発表した。(中略)すると、最大野党・共に民主党は「国会議員総選挙の敗北と支持率下落による局面を切り替えるための切り札だ」と批判した。事実、そうした面があると言わざるを得なかった。

 情けなくて嘆かわしいのは、このようにあらゆることが政治上の争いに帰結する国で何ができるのかということだ。これをやればあの党が反対し、あれをやればこの党が反対する。李明博(イ・ミョンバク)政権が海外資源開発を推進したものの、朴槿恵(パク・クンヘ)政権・文在寅(ムン・ジェイン)政権が突然、「積弊(前政権の弊害)」だとして断罪し、苦労して続けてきた資源開発プロジェクトがほとんど失敗に終わってきたという経緯がある。 その後、レアアース(希土類)の価格が高騰し、後々まで悔やまれた。
(引用ここまで)


 昨日、迎日湾ガス田プロジェクトについて、だいぶひどい社説をざっと羅列しましたが。
 どれもこれも「まるで詐欺じゃないか」とするものばかり。
 特に左派紙からの論評はひどいものでしたね。

 その中でも「試錐は1回で成果が出るわけじゃない」ってものも少ないのですがありました。
 冒頭記事の朝鮮日報の社説と、昨日のだとファイナンシャルニュースが擁護かな。
 あと韓国経済新聞のこちらのコラムも擁護というか、「科学的見地から見守るべきだ」って論調。

【取材手帳】シロナガスクジラ「失敗」と考えれば資源開発の未来はない(韓国経済新聞・朝鮮語)

 一応、こんな話もあるのですよということで。
 少数意見ではありますが。


 でもまあ、当該事業が継続できるかについては無理かな、との感触。
 まず、韓国石油公社は約20兆ウォンの債務超過状態。
 今回もっとも有望だった場所の試掘は単独負担したものの、これ以上は「国外企業との協業で……」とのことですが。
 乗ってくる企業がありますかね?
 一応、「天然ガス、石油自体は存在する」ってことなのでどこかの山師が引っかかるかなぁ。

 もうひとつの理由はまさに政治的なもので。
 ユン大統領がからんだ案件なので徹底的に潰されます。
 先日のLNGカナダの案件がイ・ミョンバクの資源外交がらみだったために潰されたのと同様。
 基礎科学研究院にまともに予算がいかなくなったのと同様。
 政治がからんだ案件は次の政権で必ず潰されるのです。
 韓国では。

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韓国メディアから「海底油田騒動、1を10に膨らませた『ポン菓子詐欺』ではなかったのか」と各社がユン政権を糾弾……資源探査って無駄を積み重ねてなんぼだと思うんだけど……

【社説】むなしく終わった東海ガス田開発事業…当初から「希望拷問」ではなかったのか(中央日報)
東海(トンヘ、日本名・日本海)ガス田開発事業の今回のプロジェクトは事実上経済性がないことが明らかになった。産業通商資源部の関係者は「ボーリング作業でガスの兆候が一部あったことを確認したが、規模が意味のある水準ではない」と説明した。経済性を確保できるほどの炭化水素を確認できなかったということであり、技術的にさらに掘削する必要はなく、事実上、水の泡になったということだ。

当惑するのは、最初から油田発掘の可能性を性急に発表したという事実を政府が打ち明けた点だ。産業部の関係者は「(昨年6月の)1次発表は我々が考えられなかった政務的な影響が大きく介入する過程があった。意図していなかったが、今こういう結果が出て申し訳なく思う」と述べた。まだ「政務的な影響」の具体的な内容と経緯は明らかになっていないが、油田存在の可能性が高くなくても開発プロジェクトが進められた可能性があると解釈され、厳重な真相究明が避けられなくなった。

このプロジェクトは発表当時から釈然としなかった。過去にも油田開発は何度か水の泡となった。蔚山(ウルサン)沖の大陸棚でガス田試錐に成功し、韓国は2004年から2021年まで17年間も産油国地位に名を連ねたが、試錐をしたという象徴的な意味を超えられないほど経済性は微弱だった。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権で昨年6月から推進された東海7カ所の有望構造探査および試錐も可能性自体がないとは予断できないが、冷静に考慮するべきことが多い。

同プロジェクトは実際、尹大統領が国政ブリーフィングでサプライズ発表した時から怪しいという反応が多かった。当時同席した安徳根(アン・ドクグン)産業部長官は「推定埋蔵量は140億バレルで、サムスン電子の時価総額の5倍(当時の基準で2000兆ウォン)と評価される」と期待を膨らませた。4カ月前に韓国石油公社が予測した推定価値11兆ウォン(約1兆1520億円)に比べて根拠もなく膨らんだ金額だった。発表が性急だという実務者の意見を無視して大統領室が強行したという声もあった。試錐技術評価を担当した米国の深海技術評価専門会社アクトジオの実体も明確でなかった。
(引用ここまで)


 昨日お伝えしたガス田の試掘失敗について、韓国メディアが一斉に社説を出しています。
 いわく「政治的な案件だったのではないか」とするもので。
 冒頭記事は中央日報のものですが、これ以外にもけっこうな数の社説が出ています。

 左派紙のハンギョレ、京郷新聞からも。

[社説]「経済性なし」告白した「大鯨」、大統領室の「政務的介入」を明らかにすべきだ(ハンギョレ・朝鮮語)
[社説]「詐欺劇」に他ならない「尹錫悦」の大鯨プロジェクト、真相を徹底的に明らかにすべきだ(京郷新聞・朝鮮語)

 経済紙である毎日経済やファイナンシャルニュースからも。

経済性を確認できなかった大鯨のボーリング、国益·科学だけを見よ[社説](毎日経済・朝鮮語)
[fn社説]座礁の危機、大鯨、それでも資源開発への挑戦は続けなければならない(ファイナンシャルニュース・朝鮮語)

 保守系メディアである中央日報(冒頭記事)、東亞日報からも。

[社説]「サムスン電子の時価総額5倍」8ヵ月ぶりに「大鯨は経済性がない」… 詐欺劇の水準(東亞日報・朝鮮語)

 東亞日報の「大統領と大臣が国民相手に仕組んだ『ポン菓子詐欺』ではないか」ってのもなかなかに面白い表現。
 ポン菓子ってコメから10倍くらいの体積になるらしいので、そこからの連想ですね。


 逆説的にどれだけ韓国国内から期待されていたのかが分かりますね。
 「どうせダメなんでしょ……」って思いつつも、どこかで期待していなければこんな反応にはなりません。
 だいたいにして、ユン大統領がガス田の存在を明かした際のリアクションとかすごかったですからね?
 「これで韓国も一気に資源国だ!!」みたいな希望にあふれていたものです。

 ま、当初から「オーストラリア企業が見捨てた場所だった」とかも言われていたのですけども。
 資源探査、開発って失敗してなんぼの部分があります。
 一時期話題になったINPEXの島根・山口沖の試掘も「ガス、石油は存在するが商業化は難しい」として終了してます。

 パルリパルリ(早く早く)でなによりも結果を求めてしまう韓国人には難しい部分かもしれないですね。
 LNGカナダの権益を産出前に売却し続けたのも、「工事遅延があった」って部分が小さくないですからね。
 他国はそれでも「ここは有望だから」と事業継続していたのですが、韓国だけは20%あった割当分を5%にまで減らしてしまっている。
 たとえ1回の試掘に1000億ウォンかかるとしてもそれで見つかればいうことないし、見つからなくても「ここではダメだった」ってデータが残ると思うんですが。

 まあ、確かにユン政権の支持率回復のための切り札として使われていた部分は少なからずありますが。
 ここまで激しく糾弾されるようなことなのかなぁ……って気もします。

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韓国で「世界最大級の海底ガス田」、試掘するものの結果は……「まだ試掘は4回以上残っている!」とするものの、政府予算はすべて削減されている状況だった……

韓国東海ガス田プロジェクト、水泡に帰す…「経済性不足、ガス不十分」(中央日報)
韓国政府が「シロナガスクジラ」と命名された東海(日本名・日本海)深海のガス田有望構造に経済性はないものと判断された。シロナガスクジラ有望構造に対する探査ボーリングを終えた結果、これ以上掘る必要はないというのが韓国政府の暫定結論だ。

韓国産業通商資源部高位関係者は6日、政府世宗(セジョン)庁舎で取材陣に「今回のシロナガスクジラ構造ボーリング作業でガスの兆候を一部暫定的ながら確認したが、規模は有意味な水準ではなかった。経済性を確保する水準ではなかった」と明らかにした。昨年12月から東海の有望構造海域で探査ボーリング作業を進めたウエストカペラ号は4日に作業を終え韓国を離れた。 (中略)

ガス田事業では実際に価値のある石油・ガスがあるのか経済性を評価されても、採掘費用に対し利益が出るか採算性まで確認できなくては商業生産ができない。しかしシロナガスクジラ構造は最初の経済性評価段階で事実上失敗した状況だ。 (中略)

韓国政府は残る6カ所の有望構造には海外企業の投資誘致を受けて探査ボーリングを進める方針だ。関係者は「海外企業を通じて探査を追加で継続するのが資源開発生態系のために良いという考え。投資誘致条件と予算の必要性、専門家の意見と国民の世論を総合して推進する」と話した。
(引用ここまで)


 「韓国のEEZで世界最大級のガス田が見つかった」とユン・ソンニョル大統領が発表したのが去年の6月でした
 省庁の長官(大臣に相当)が発表するのであってもだいぶ異例ですが、大統領がわざわざ発表するのは異例中の異例。
 まあ、当時から支持率低迷に苦しんでいたこともあって、起死回生の一撃として出したのでしょう。

 当時から「オーストラリアの著名企業が契約を破棄した場所」とかなっていたり、その一方で「日本が嫉妬している」って話にもなってたりしましたね。

韓国、「世界最大級のガス田発見」に気分がうわずってしまう……「日本のEEZは関係ない(韓国外務省談)」「日本のYahooでこんなコメントがついた」「日本はすでに近くで天然ガス生産をしている(してません)」等々……日本、根本的に関係なくない?(楽韓Web過去エントリ)

 夢がめちゃくちゃ広がってて「サウジアラビアクラスの産油国に、俺はなる!」くらいの勢いでした。


 で、その試掘結果第1弾が出まして。

 経済性がありませんでしたー。

 ま、でしょうね。
 試掘1回目から出るわけはないのですが。
 相当に有望な場所でも試掘20回でようやくどうにかなったとか普通にありますからね。

 ちなみに試掘1回につき1000億ウォンが必要だとされていて、最初の試掘には韓国石油公社と韓国政府が出資する予定だったのですが。
 去年の12月に共に民主党が韓国政府負担分の497億ウォンをすべて削減した予算を国会で通してしまいました。
 というわけで、今回の試掘代金は赤字が累積しまくっていて資本蚕食が進んでいる韓国石油公社が全額負担しています。
 自己資金が出せずに銀行からの借り入れでまかなったそうですよ。

 一応、あと4回の試掘が予定されているのですが、こちらは国外企業からの投資を募って行うとのことで。
 ……投資してくれる企業、ありますかね。
 前述のようにオーストラリアの著名関連企業であるウッドサイドエナジーが撤退している場所での試掘ですからね。
 ま、がんばれー。

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韓国メディア「日本を見習って天然ガスを再販売する施設を保有すべきだ!」……やったとしても、次の政権で潰されて終わりなのでは

【コラム】米国産LNGと韓日「エネルギーハブ」競争(中央日報)
米国産LNGはオーストラリア・カタール産などと違い、契約条件が厳しくないのが長所だ。通常、LNG輸出プロジェクトは数十兆ウォン以上の大規模な資本調達が求められる。これに対して債権団は安定的収益保障のために輸出契約に硬直的な条項を入れるように強要する。代表的なものにLNGの最終目的地(港)を特定する「目的地制限条項」がある。この条項のため、引受者は必ず最終目的地まで行って荷下ろしをしなければならず、原油など他の原材料とは違って中間寄着地で中継取引を行うことはできない。幸い、米国産LNGの場合、大抵この条項がない。 (中略)

日本は別の理由で米国産LNGに狙っている。目的地制限条項のない米国産LNGを大量に導入し、最近天然ガスの消費が急速に増加している東南アジアや台湾などに再販売して差益を残そうとする下心だ。日本はすでに世界最大LNG輸入インフラも保有しており、世界2位LNG輸入国という地位を利用した価格交渉力も相当ある。近く東アジアのLNG取引ハブに浮上する可能性がある。

事実、われわれ韓国も「LNGハブ」という名目で蔚山(ウルサン)北港や麗水(ヨス)猫島(ミョド)に構築事業を行ってきた。実状は周辺の発電所などに自家消費用天然ガスを供給する引受ターミナルにすぎない。現在、蔚山南港の敷地に「北東アジアエネルギーハブ」事業構想が進行中だ。日本の事例を参照して米国産LG基盤取引ハブ構築を試みてみるのはどうだろうか。
(引用ここまで)


 トランプ大統領の公約のひとつに「掘って掘って掘りまくれ」がありまして。
 シェールガス、シェールオイルをばんばん掘って、燃料価格を低下させてインフレを抑える。
 ついでにロシアの現金収入も少なくするって方針のようです。

 そこまで価格が下がるとシェールオイル、ガスは生産コスト割れする可能性もあるのでそこまで下げられないとは思いますが。
 現状でWTI先物が1バレル75ドルくらい。
 目先からちょっと下げ気味ですが言うほどでもない感じですかね。

 で、韓国からそのアメリカ産LNGについて「日本がやっているようなLNGハブを構築して東南アジア向けに商売しよう」とか言い出しているのが冒頭記事。


 んーっとね。
 たぶん、そういった方向でやりはじめても政権変わったら潰されるんじゃないかな。
 すでに今日のエントリでそんな話をやりましたが。
 実際、国会でやり玉に挙げられていたんですよね。

 2015年だからパク・クネ政権下ですね。
 「イ・ミョンバクがとんでもなく高い買い物をした」っつーてLNGカナダの権益を5%手放させたんですよ。野党からの突き上げで。
 で、ムン・ジェイン政権になったら「こんな無駄なものをまだ残している」って残り15%のうち、10%を売却させられたっていう。
 ムン・ジェイン政権なんて「石炭火力を廃止して天然ガス火力にする」って政策を推し進めていたのに、イ・ミョンバク政権の成果であったって理由で売却してるんですからね。

 そういう意味で韓国政治に継続性を求めることは無駄なんですよね。
 2015年の日韓合意も同様の運命を辿りました。
 いま、韓国でやっている「韓国企業がお金を供出して勝訴した原告にお金を渡す財団」も次の政権で潰されるでしょうね。
 そういう前提の下で外交しなくちゃいけないんだから、面倒だわ。

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韓国、「世界最大級のガス田発見」に気分がうわずってしまう……「日本のEEZは関係ない(韓国外務省談)」「日本のYahooでこんなコメントがついた」「日本はすでに近くで天然ガス生産をしている(してません)」等々……日本、根本的に関係なくない?

カテゴリ:資源開発 コメント:(79)
外交部「迎日湾のボーリング、日本との紛争の可能性はない」(ニュース1・朝鮮語)
政府が今年末から慶尚北道浦項の迎日湾沖で石油·ガス探査ボーリングに着手する予定の中で「日本との紛争の素地はない」という立場を示した。

林首席外交部報道官は4日、定例ブリーフィングで関連質問に「政府が最近発表した該当水域は排他的経済水域(EEZ)と大陸棚に含まれる」とし「日本側がこれに対して問題提起をする余地はない」と明らかにした。

EEZは海を挟んでいる国家が経済的主権を行使すると宣言した海域で、国連海洋法上、自国沿岸から200海里(約370.4キロ)までだ。

現在、政府が深海ガス田があると推定する地域は迎日湾から38km~100km離れた地点で韓国のEEZ内にあり、8鉱区と6-1鉱区一帯だ。

これは韓日両国が共同開発協定を結んだ7鉱区とは遠く離れているところだ。
(引用ここまで)


 韓国外交部(外務省に相当)が「今回の迎日湾ガス田の掘削予定地点は日本と関わりのない場所だ」とのアナウンス。
 第7鉱区とは関係のない場所だとわざわざアナウンスする、しなければならないのがかなり面白い。
 先日ピックアップしたように、今回の「韓国のEEZ内で世界最大級のガス田発見」との報道で、第7鉱区──日韓大陸棚協定についてもスポットライトが当たりつつあるのもまた面白い現象といえます。

 なんというかこう、韓国人の自尊心の拠り所が「日本との関係性」にしかない(は言いすぎにしても、相当に依存が大きい)のだなぁと。  目盛りに「日本」と刻まれた定規しかないのかっていうね。


 日本のYahoo!のニュースでこの「迎日湾ガス田発見」が取り上げられた際に、いつものようにコメントがついているのですが。
 そのコメント内容をまた韓国でニュースにしています。

「日本海に石油? 中国に強奪されればいいのに」日本のネットユーザーの反応(ソウル経済・朝鮮語)

 この「日本で話題」「日本人がうらやましがっている」って形の記事はひとつだけじゃなくて、ざっくり10はないかなってところ。
 それとINPEXが試掘した(そして採算ベースに乗らないとしてやめた)山口沖ガス田についても報道されています。

日本、22年に東海ですでに天然ガスのボーリングを始めた(チャンネルA・朝鮮語)


 「韓国のEEZにかかっているのではないかとされる場所で掘削されています」って……そこもう試掘すらしてないけどね。
 韓国メディアにありがちな「情報のアップデートができていない」アレです。
 ま、こんな感じで「試掘してもダメだった」なんてことはものすごくよくあるので、資源開発は一喜一憂せずに見守るのが吉、なのですが。

 この3つの記事だけ見てもどれだけ韓国国内で気分がうわずっているか理解できるのではないでしょうか。
 ついついウォッチングにも力が入りますね(笑)。

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 「資源の現在地」を見るのに最適な書籍だと思います。
新しい世界の資源地図―エネルギー・気候変動・国家の衝突
ダニエル・ヤーギン
東洋経済新報社
2022-01-28

韓国政府「見つかった海洋ガス田は世界最大規模だ」→オーストラリア著名開発企業が「採算性ないから撤退」を決定していた場所だった

韓国南東沖の石油・ガス開発は勇み足? 政府が豪資源大手の撤退巡り釈明(聯合ニュース)
 韓国南東部の深海にあるとされる石油・天然ガスを巡り、オーストラリアの資源大手ウッドサイド・エナジーが「将来性がない」として共同探査事業から撤退していたことが、6日分かった。これについて、韓国政府は報道資料を出して釈明した。

 ウッドサイドがホームページで公開した2023年の半期報告書によると、同社は「探査ポートフォリオを最適化する過程で将来性のない鉱区を排除した」とし、その対象の一つとして「韓国」を挙げた。

 同社は07年から16年まで、先ごろ韓国政府が大規模な石油・ガス埋蔵の可能性が高いと発表した鉱区で韓国石油公社と共同探査を行った。

 この過程で石油が産出される可能性のある「有望構造」が発見されると、19年に石油公社と共同で韓国政府から鉱物を掘採し、取得する権利を確保して深海探査に乗り出したが、昨年1月に事業から撤退した。

 これに対し韓国産業通商資源部は、ウッドサイドが22年6月にオーストラリアの資源大手BHPと合併し、既存の事業を整理する中で事業撤退に至ったと説明。ボーリング調査の前段階である有望構造化段階まで至らずに撤退したとして、「ウッドサイドが有望構造に対する深層評価によって将来性がないと結論を下したという解釈は事実関係に合致しない」と強調した。
(引用ここまで)


 オーストラリアの石油大手ウッドサイドエナジーはうちでも知っている大手グループです。
 石油、天然ガスの開発・生産・販売を行っています。
 ニューヨーク株式市場にもADRで上場していますね(ティッカーWDS)。
 そのウッドサイドエナジーが、例のユン・ソンニョル大統領が大々的に発表した、海洋ガス田について「採算が取れない」として撤退していたことが判明。

 しかも、採掘権を50%確保したにも関わらず、撤退を選択していたと。
 こういった形で「とりあえず唾つけておこう」ってやりかたは油田・ガス田開発ではよくあること。
 大化けしたら儲けもんくらいの扱いですね。
 それなのにあっさりと撤退したと。

 韓国ではこの迎日湾ガス田、とんでもなく大きなものであるとの話になっていまして。
 「世界最大級のものである」とか産業通商資源部長官が記者会見で述べているほどになっています。

韓国産業通商資源部長官「迎日湾ガス田、南米よりも規模大きく世界最大の可能性」(中央日報)

 もう、お母さんガエルくらいに期待を膨らませている状況です。


 一応、韓国政府側もウッドサイドエナジーが撤退していることについては把握しているようで、「ウッドサイドエナジーがボーリング調査前に撤退している。今回の発表は物理探査を行った上でのもの」としていますが。

 さて、その一方で「有望だ」との調査結果を伝えてきたアメリカのアクトジオと名乗る企業がペーパーカンパニーなのではないかとの疑惑があります。

米アクトジオがペーパーカンパニー? オーナーがきょう訪韓「浦項油田はチャンス」(中央日報)
家庭が本社、年間売上3,700万ウォン?「アクトジオ」論議の中で訪韓(MBC・朝鮮語)

 登記されている場所は住宅街だったとか、登記内容は従業員ひとりでかつ業種が「職業訓練」であったりと怪しいことこの上ないと。
 ただ、そのひとりの従業員(オーナー)は業界の有名人とのことで。

 なんかこう末期ガン患者が「それでもなんとかして……」って標準治療以外の治療方法を探しているかのような感触があります。
 イ・ミョンバク政権時代に大々的にやっていた資源外交の二の舞になりそうな感じなんだよなぁ。これまでのパターンからして。

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韓国で見つかった「大規模海洋油田」、ユン大統領が発表記者会見までしたものの、本当にそこに油田はあるのか?

カテゴリ:資源開発 コメント:(69)
1964年、初のボーリング…60年念願の産油国の夢、今回は?(マエイル新聞・朝鮮語)
「いつも挫折した資源大国の夢、今度は実現できるだろうか」

尹錫悦大統領の慶尚北道浦項の迎日湾港の石油・ガスのニュースが伝えられたが、いざ浦項市民はただ喜ぶことは難しい。

すでに数回も天然資源の発掘ハプニングが繰り返され、もしかしたら今回もまた挫折感に戻るのではないかという期待と憂慮が半々に入り混じった姿だ。

浦項で石油・ガス埋蔵の可能性が初めて浮上したのは1964年だ。

これまで三国遺事の記録や地質分布図に基づいて埋蔵の可能性は常に提起されてきたが、当時、親会社企業と国立地質調査所で共同ボーリング作業を行い、天然ガスを発見したことが少なからぬ反響を呼び起こした。

しかし、当時発見された天然ガスはあまりにも少量であるため、経済性が全くないことが判明し、これ以上の開発にはつながらなかった。

その後も着実に天然資源の埋蔵可能性が提起され、1975年についに政府が乗り出し始めた。

1974年、第1次石油問題で困難を経験した朴正熙(パク·チョンヒ)大統領は、小さな希望にしがみつき、浦項(ポハン)石油開発作業に乗り出した。

米国が持分を持っていた韓国石油公社に代わって、当時「無所不為」の権力を誇っていた中央情報部が関連会社を立ち上げたほど、死活をかけた事業だった。

結論から言えば、実際に油が出ていた。

1975年12月、浦項市南区上道洞の地下1475m地点で真っ黒な液体が流れ、パク大統領は該当液体に直接火をつけてみて味まで見ながら喜びを隠せなかった。

1カ月後の1976年1月、年頭記者会見で朴大統領は「長い浦項迎日湾探査の末、3、4個の空穴をボーリングした結果、そのうちの1ヵ所でガスと石油を発見した」と発表した。

しかし、当時出た油はわずか10ℓ程度であり、それさえも原油と成分さえ違っていた。 むしろ軽油に近い油であり、ボーリング孔に近いどこからもこれ以上の石油やガスは発見されなかった。

米国と日本でも韓国の石油開発の便りに自主調査を進めたが、「議論する価値がない」と結論付けた。
(引用ここまで)


 海洋油田の開発は韓国において国家としての念願といっても過言ではありません。
 2004年に小規模とはいえ、採算ベースに乗りえる油田が発見された際には「ついに我々も産油国になった!」と大騒ぎでした。
 なお、2021年に枯渇済。

 今回、「大規模なガス田・油田があるかも」と発表されたのは1950年代から延々と探査し続けてきた結果ともいえます。
 大々的に発表したのは政権浮揚の意図があったのは間違いないでしょうけどね。

 記事にある1964年に油田が見つかった際にも大騒ぎになったものの、これも採算ベースに乗せられるような代物ではなかったことが判明して終息。
 ライターである崔碩栄氏の叔父は「非科学的だ」と進言したところ、KCIAに呼ばれて「よけいな話をした」と「警告」され、結果海外移民になったそうです。



 どこか2006年のファン・ウソクによるES細胞捏造事件に熱狂した韓国人の態度を思い起こさせますね。
 あの時もファン・ウソクの業績に疑問を持ったテレビ記者が「卵子入手に問題がある」とスクープしたら「国家的業績に文句をつけるとはなにごとだ!」と当該のテレビ局へのボイコット運動にまでなったっていう。

 1970年代にも当時の大統領であったパク・チョンヒまで出てきて「石油があった!!」と大騒ぎしたことがありましたが、これもまったく同様にポシャっています。


 ま、油田にしろガス田にしろ、実際に試掘してみないとなんともいえないというのはいつものこと。
 昨日も書きましたが日本のINPEXが期待していた山口沖のガス田も「天然ガスがあるにはあるけども、採算ベースには乗らないレベル」として試掘を終了しています。
 海洋油田の場合、この試掘自体がけっこうお金がかかるものなのですよ。

 今回は「試掘1本につき1000億ウォン、それを最低でも5つは行う」とのことで。
 タマネギ男ことチョ・グクの率いる祖国革新党はそのあたりに文句をつけています。

祖国革新党「ユン産油国の夢『天空』とは本当に関係ないのか」(マエイル新聞・朝鮮語)

 「天空」とあるのはユン大統領と知り合い(なのかどうかすらあやふや)の宗教家……というかシャーマン。
 ことあるごとに「ユン政権の政策は天空によって決められているのではないか」とされているのですが。
 いまのところ疑惑レベル以下。「この件を広めているのはキム・オジュンである」と書けばうちの読者は眉に唾するかな。
 「パク・クネ弾劾の夢をもう一度」と願っている左派はそれを信じ切っているので、こうして「天空と政権が無関係なわけはない。今回の油田もそうだ」としている、といったところです。

 というか、それ以前に「ユン政権に成果があってはならない」と固く信じているのですね。
 どちらにせよ油田・ガス田試掘は「採算ベースに乗らなかった」ことが多いのでなんとも。
 まあ、地域的には中国にどうのこうのいわれる場所でもないのでゆったりとやればいいんじゃないでしょうかね。

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