韓国野党・共に民主党など野党6党が今月9日に国会に提出した内乱特別検事法の波紋が広がっている。捜査範囲に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の「外患容疑」を追加し、「海外紛争地域への派兵」「北朝鮮への拡声器使用」「北朝鮮へのビラ散布拡大」「無人機の平壌浸透」「北朝鮮の汚物風船遠隔撃墜の試み」などを理由に「戦争あるいは武力衝突を誘導した容疑がある」と明記されているためだ。例えば「海外紛争地域への派兵」とはウクライナを意味するようだが、実際には派兵の事実はなく、また人道支援まで問題としたことが疑問視されているのだ。さらに大きな問題は北朝鮮の挑発を抑止する韓国軍の通常の活動を外患罪としたことだ。韓国野党のこのような発想に対し、米国でも強い懸念の声が出ている。
本紙が11日に取材した米国の複数の韓半島専門家は「北朝鮮への拡声器使用を問題とし、これを外患罪とするのは戒厳令と同じくらい民主主義の脅威となる発想だ」「これが外患罪とされれば国際社会の笑いものになるだろう」と口をそろえた。また「韓日関係改善」や「韓米日協力」を弾劾理由とした尹大統領の弾劾訴追案も問題視されており、共に民主党の外交安全保障政策の方針と米国の一般的な認識の食い違いがあらためて明確になった。
(中略)
米戦略国際問題研究所(CSIS)のビクター・チャ上級副所長は「尹大統領に対する特別検事法は戒厳令宣布をめぐる法的問題に焦点を合わせるべきだ」「(特別検事法は)外交や南北関係に関する政策を扱うべきではない。これらの政策は政党の支持を受けるかどうかに関係なく、法律違反や弾劾の理由にはならない」と指摘した。その上でチャ副所長は「政党の目的のために法体系をゲリマンダリング(特定政党に有利な形で選挙区を定めること)する行為は、尹大統領の戒厳令宣布と同じくらい民主主義と法治主義の脅威になる発想だ」批判した。特別検事法が法律を過度に恣意(しい)的に適用する恐れがあるからだ。
(引用ここまで)
特別検察官法は国会が弁護士などを指名して「特別検察官」の身分を与え、独自の捜査権を駆使できるようになる、といった主旨の法律です。
特別検察官が起訴まで行った事例としては、サムスン電子のイ・ジェヨン副会長(当時)を起訴し、最終的には収監したことが挙げられます。
当時のパク・クネ大統領を弾劾に追いこんだ捜査の一環として行われました。
韓国の場合、警察、検察、高位公職者捜査処、そして国会が捜査権を持つ場合があるのですね。
なので主導権争いがえらいことになったりもします。
現在のところ、大統領やその権力代行によって拒否権を発動されていますが、文面を変えて何度も提出されています。
で、今回のユン大統領に対する「内乱特別検察官法」はなかなかに奮っている内容となっている、との記事。
共に民主党はユン大統領に対する最初の弾劾決議案でその外交姿勢に問題がある、との内容を国会に提出しています。
韓国野党が最初に書いた弾劾決議案がひどいとアメリカで話題に……「日本中心の奇異な外交に固執」「国際的に孤立」したことが弾劾理由?(楽韓Web過去エントリ)
この弾劾決議案の中味、かなり彼らの持つ世界観を如実に現していることが話題になりましたね。
「日本中心の奇異な外交に固執」すると弾劾理由になるのだそうですよ。
で、今回の「内乱特別検察官法」の中味もなかなかの世界観を提示しています。
特別検察官を立てなければいけない理由として──
・「海外紛争地域への派兵」
・「北朝鮮への拡声器使用」
・「北朝鮮へのビラ散布拡大」
・「無人機の平壌浸透」
・「北朝鮮の汚物風船遠隔撃墜の試み」
これらが挙げられています。
無人機の平壌浸透はまあ、事実ですが。
それ以外の「紛争地域への派兵」はもはやなにを言っているのか不明。
ウクライナへの派兵はしてないしなぁ。むしろイラクに派兵を決めたのは当時のノ・ムヒョンだったりしますけどね。
北朝鮮への拡声器使用、ビラ散布拡大も「北朝鮮を刺激することは許されない」って共に民主党の世界観を表現しています。
北朝鮮に対するビラ散布は脱北者団体が行っていたものなのですが、これに対してキム・ヨジョンが怒りのコメントを出したことがあるのですね。
北朝鮮「韓国は北朝鮮へのビラ撒きを中止しろ。法でも作れ!」→韓国政府「いま! すぐに!! 作ります!!!」(楽韓Web過去エントリ)
当時のムン・ジェイン政権下でビラ散布禁止の法律を作ってしまったっていう。
まあ、それ以前から警察が阻止したりもしていたのですけどね。
3年後には憲法裁判所から「表現の自由の抑制である」として違憲判断されました。さすがにね。
今年前半にも共に民主党が政権を奪取することになりますが。
「日本と親しく外交をすれば弾劾レベル」
「北朝鮮を刺激することは外患誘致」
こんな感じの世界観での外交が繰り広げられるわけです。……楽しみですね。
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